魔眼砲
オーガに殴り掛かったまでは良かったものの二匹のオーガが僕を囲む。
こいつ等の攻撃は遅いけど思ったより手数が多くて交わしきれない。
それに僕の剣でいくら殴ってもバランスを崩しもしない……
セリルが≪ストーンバレット≫で援護してくれているけど決定打に掛けるし、オーガのうち一体がセリルの方へ行ってしまう!
そうはさせるかと背中に剣を突き刺し、なんとか僕の方へ引き付けた。
あのままセリルの方へ行かれるとまずいし、前衛としての力不足を感じさせられるな……
それなら……≪ブラインドアロー≫、僕の闇魔法で闇の力の矢を顔に当てて見えなくする。
攻撃力は全くないけど、人間と同程度の感覚器官しかもたないオーガに対しては効果覿面のようだ。
視界を封じられたオーガ達は手探りでその巨腕を振り回している。
僕は巧みにオーガを誘導して同士討ちを成功させる!
≪ブラインドアロー≫の効果時間は短いけど、もう少し押せば倒せそうだ。
剣で叩きつけてもそれほど効果がなかったので今は剣をひたすら突き刺し、僕が攻撃を交せば≪ストーンバレット≫の嵐が飛んでくる。
二人の連携も徐々にだけど息が合って来る!
闘いは長引いたけど、ついにオーガの一体が膝をついて動きを止めた。
もう少しだ!!
その時大きな唸り声が聞こえ、オーガ達よりも大きな魔物が姿を現した。
ありえない程の大きさのトロルだ……
トロルはアトラスの進化前の魔物で、肉体再生能力に優れていて、嗅覚も凄い。
こいつを倒しきるには、僕達二人じゃ火力不足だ……
それに≪ブラインドアロー≫は嗅覚の優れたトロルに対しては効果は薄く、僕の剣でもセリルの≪ストーンバレット≫でも、大したダメージは与えられず、すぐに再生される為効果は薄いだろう。
撤退したい所だけど、オーガはともかく、この馬鹿でかいトロルから逃げ切るのは難しい……
「俺が引き付けている間にセリルは逃げろ!」
「駄目! ここでこいつを倒す!」
何が駄目なんだ!っと思ったけど、セリルは仮面を脱ぎ捨て、魔眼の力を使うようだ。
でも、右目の力は確か力の強い相手にはあまり効果がない。
このトロル相手には……「伏せて!」っと声と共に、僕はセリルの斜線から逃げるようにしてその場から飛びのき、地面に伏せる。
セリルの魔眼が輝き、とてつもない魔力の波がオーガ達とトロルを飲み込んでいった……
魔眼砲で湖が割れ、大きな波と飛沫を上げて元に戻っていく。
トロルもオーガも跡形もなく消し飛んでいる……
凄い威力だ……セリルは少しふらついているようだけど、問題はないようだ。
それでも、力を消耗した僕達がこのままここで狩を続けるのは危険だ。
戦闘経験と魔眼砲を知る事が出来たのは良かったけど、なんの成果も得られないまま帰るのは少し残念だな。
セリルの状態は、魔力切れでも疲労でもなく、あまりに強い魔力を放出したための魔力酔いと言う状態らしい。
呂律も回っていないし、言動も少しおかしい。
「いきるんらぁーお姉ちゃんが守るのらぁー」
仕方ないので急いで仮面を被せたセリルを背負って、来た道を引き返す。
湖をグルっと回るうちに運悪く、この前に出てきた黒い狼が見える。
追いかけられたら厄介だけど、距離もあるし、僕達が引き返す道的に無視する事が出来る。
そう思っていると、背負っているセリルから不穏な言葉が聞こえてくる。
「犬畜生がよぉーあてぃしのこと――馬鹿にしやがってぇー……石でもくらえーーー!」
セリルは魔獣達に向かって≪ストーンバレット≫を放っているようだけど、幸い射程外だし、向こうも魔法に警戒して近づいてこないようだ。
なんとか上層に繋がる入り口まで戻って来たので、後は安全な道を引き返すだけだ……
セリルを背負って入り口まで戻るといつの間にか眠りに着いている。
ダンジョンから街まではそれなりに距離もあるけど……
仕方なくセリルを背負って歩いて帰ると、宿についた頃には完全に日が沈んでいた。




