~ミランダ視点~ 夜のお仕事
「さて、没落貴族の老人への接触を任されたわね、何か手はあるの?」
「仕事を請け負った。 夜盗を鏖殺し、その死体を届け、まずはどういった人物像か把握する必要がある」
「楽しそうね。 その顔――ディル様の前では見せられないわね」
任務遂行の為、ギルドで借りたボロボロの馬車に乗り込み、商人のふりをして街の外へ。
馬車は商人達から提供された物で、最悪壊してしまってもいいとの事。
商人達も自分の利益を守る為に必死なのね。
報酬は素材なんかの価値を考えれば少ない方だけど、商人達に顔を売ると言う意味ではなかなかいい仕事を引き受けてくれたと思う。
まあ、アトラスはただ趣向に合った仕事を選んだと言えなくもないけど――
「人の匂いがする。 馬の匂いも離れた場所にある。 恐らく釣れたぞ。 このまま道なりに進めば……ククッ――すまない。 戦闘準備は整えておいてくれ」
夜盗も馬鹿ね。
絶対に出会っちゃいけない私達に出会っちゃうんだもの。
馬車が止まり周囲に人の気配が取り巻く。
数は大体八人って所ね。
私が荷台から降りるとビューっと口笛を鳴らす音が聞こえ、下卑た笑い声を夜盗達は私に向ける。
「偶数ね。 丁度半分ずつ分けられて丁度いいわ」
「ああ、任せてくれ」
夜盗の下卑た笑い声も一瞬で悲鳴に変わる。
私が見ているとアトラスに向かって行った四人の両足を素手で圧し折り、一人ずつ順番に甚振っていく。
それを見て逃げ出そうとした私が担当する四人の内二人をスキル《流体移動》によって先回りして捉える。
残り二人は私の体の一部を使ったスキル《粘動体》によって既に捕縛して捕まえているので逃げる事は出来ない。
「肋が折れたぞ! 君は恥骨を砕いた。 さあ! 悲鳴を上げろ! 呪いの言葉を吐け! 憎しみの呪言を吐露しろ!」
あっちは大はしゃぎなようね。
それじゃあこっちも。
「苦しい? ごめんなさい、口が塞がって何も言えないのよね」
スライムの体で二人の男の口から手の部分を入れて内臓を死なない程度に潰していく。
内臓を潰された男は悶絶しながら苦しんでいずれ死ぬ。
残りの二人はどうしようか?
「ねえ、どんな風に苦しみたい? 溺れたいってお願いしてみて?」
「た――助けてくれ!」
お願いを聞いてくれなかった方の首を飛ばしもう一度残った男にお願いしてみる。
「嘘だろ……お――溺れたい……です……!!!」
お願いを聞いてくれた男の口からスライムの体の腕を突っ込んで腸までいじくり回して傷つけないよう鼻と目から体を戻した。
あはは、「ゴバァッ」って言った。
もう一度お願いしてみると、「い……嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああああ!」と叫び声を上げたので「死にたい?」と聞くと「溺れさせて下さい」と何かに縋りつく様な目を向けて媚びてくる。
もう一度、口から体を何度か出し入れすると何度も「ゴバァッ」っと苦しんでくれたのでそのまま溺れさせて殺した。
アトラスの方を見てみると最後の一人を残して、必死に土を手に取ってジャリジャリとそれをかみ砕いている。
「何をしているの?」
「あ……ああああアアァァー! すまない――こうでもしなければ――昂ぶりを抑えられなくてね――ククックククッ」
「ディル様に諭したのにあなたがそれじゃ駄目じゃない」
「君だって楽しんでいるじゃあないか。 それにディル様に容姿を褒められたからと言って、足が着かないように姿形を変えられるのに――クククッ君はリスクを負ってでもその姿を維持している。 中身は似た者同士の化け物だ! これからも仲良くしていこうじゃないか」
いつも理性的に振る舞っているのにこういう時は歯止めが利かないのね。
他の人に見られたらどう言い訳するのか……まあ、その時は旅に出るメンバーを変えて次の街でまた戻ればいいかしら?
アトラスの最後の一人も片付けて、街へ戻る頃には日が昇りかけ、荷台に回収した遺体と共に、ギルドへ報告して報酬を受け取ると、そのまま目的の人物の所へ行くように勧められた。
屋敷の扉を叩くと目的の人物である老人が姿を見せたので、ギルドからの遺体処理の手紙を渡す。
「ほう、どれどれ……これは……惨いな。 酷く弄ばれた死体だ。 お前さん等こういう趣味があるのか?」
「いえ、私達が奮闘している最中魔獣にも襲われてしまったので……なんとかそれを凌いでいるうちに、魔獣達に食い荒らされてしまったようです」
「こっちの奴は溺れ死んでいるようだが?」
「スライムも居たかもしれませんね。 気絶してそのまま肺にでも入ったんでしょう。 まだ奥に潜んでいるかもしれません。 気を付けて」
「スライムは何も考えておらんようで、結構臆病な性格をしているはずじゃ」
「飢餓状態のスライムでも居たのでしょう。 飢餓状態に陥ると周りが見えなくなるものですから」
「ふむ、あんな何でも食べる奴が飢えるとは思わんけどな。 儂はあんたらが恐ろしいよ」
遺体の損傷を激しくして、ギルドの職員で取り扱わずに、直接この男に持っていくよう指示させるまでは良かったけど、少しやり過ぎたようね。
勘繰られていると言うのならいっそ、ここで勧誘を開始してもいいのでは?
「依頼は引き受けてくれるのだな? 私達はこう見えて忙しいのでね。 またの機会があれば宜しく頼む」
「ああ、次があるなら今度はもっと綺麗な遺体じゃと有難いのだがな」
馬車は後程この老人がギルドへ運んでくれるらしいので、そのまま宿へ戻る事にする。
アトラスと話し合い老人の勧誘は夜行う事に決めた。




