表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/88

出発!

 工房へ入るとギムロスが軽く会釈(えしゃく)をして、出来上がった装備を持ってきてくれた。


 「間に合わせの物だぜ。 質は良くないねぃ。 旅に出る四人分だけ先に仕上げたぜ。 真面(まとも)な素材が入ったらきちっとしたもの作るぜ」


 僕の分の装備を手に取ると、街で見かけた人間の物よりはるかに良い仕上がりだと思う。

 これでもギムロスにとっては質の悪い物と言うのだから今後の期待は膨らむ。


 「ありがとう。 大切に使わせてもらうよ」


 「くひひ。 そんなので感謝されても困るぜ。 近いうちにもっといい物作るからねぃ。 土産(みやげ)に酒あれば宜しく頼むねぃ」 


 それだけ言ってギムロスは背を向けて自分の作業に戻って行った。

 工房から出て一番最初作った部屋、何もなくて椅子とテーブルだけ適当に置いた部屋だけど、集まって話すのに丁度良かったのでそのまま会議室として使っている。


 旅に出る為、僕はホムンクルスに精神を移して、装備一式を身に着ける。

 セリル、アトラス、ミランダもさっき渡された装備に身を包み、出発の準備は整った。

 

 アリアドネの指示で僕達は人間の街に行っても問題のない格好をしている。

 ホムンクルスの僕は容姿や見た目はあまり変わらないけど、少し年齢を増して茶色い頭髪と同じ色の目をしていて、旅をする軽装の剣士と言う事にするらしい。


 セリルは魔獣の骨から作った口元の空いた仮面をしていて、動物の耳のような物が着いたフード付きのローブを身に着け、腰には小さなロッドを装備している。


 アトラスはその体躯(たいく)に見合ったメイスを持っていて、重戦士に相応しい格好をしているけど、物々しい感じはしない。

 そう感じるのは僕がアトラスの事を知っているからかもしれないけど。


 最後にミランダは僕と同じで軽装の剣士。

 武器は僕と違って細剣だけど実は、この細剣以外は何も身に着けていない。

 服に見えたりするのは全てミランダの擬態能力によるものだ。


 アリアドネからこの旅の目的などの再確認をしていよいよ出発だ。

 オウルとの訓練はお預けか……


 拠点を出ると(おもむろ)にアトラスがさっき受け取った装備を脱ぎ始める。


 「どうしたの?」


 「オウル殿の見送る顔が少し不安気(ふあんげ)だったのでね」


 アトラスがメイスを構えオウルに視線を送ると、オウルもニコリと笑みを浮かべて距離を取って対峙する。

 何故か分からないけど二人はこれから戦闘を始めるようだ。

 

 僕の時と同様に、腰を低く構えているアトラスにオウルは「行きますよ」と声を掛けて突進する。

 明らかに僕とやった時よりも素早い動きで……


 アトラスはオウルの突進に合わせてメイスを叩き込むが、そこにオウルの姿はない。

 突然アトラスの背後、後頭部よりも上に現れたオウルは、アトラスの首目掛けて蹴り上げる瞬間、アトラスの肉体を鋼鉄のように固くするスキル《アイアンスキン》によって、質量で劣るオウルは弾かれてしまう。


 体勢をくずしたオウルにアトラスはメイスを横なぎにして振り抜くと、オウルは勢いよく吹き飛ばされたけど綺麗に空中で回転して着地している。

 よく見ると軽い手傷を負っただけで、あまりダメージは見られない。


 信じられないけどあの状況でオウルはアトラスの攻撃を交わしたようだ。


 再びオウルは突進するけど、今度は土埃(つちぼこり)を撒き散らしながら突進する方だ。

 アトラスは先程と同じようにメイスをオウルに合わせて振り下ろす。

 当然そこにはオウルはいない。


 背後に現れたオウルは先程と同様に後頭部の後ろ辺りに居るけど、攻撃を仕掛けずに、背中から翼を出して少し間を置いて蹴り上げる。


 今度はアトラスに弾かれずに思い切りヒットした。


 背後に回った時にアトラスはすでに≪アイアンスキン≫を使用していたみたいで、使用中は硬直して動けないみたいだった。

 

 解除した直後も動き始めるまでには(わず)かに時間が掛かるようでその隙をオウルに狙われたようだ。


 たった一回のやり取りで相手の癖を見抜く、これが見切るって事なのか。


 その後も二人は殴りあい、スピードでまさるオウルが一方的に攻撃を当てているように見えたけど、アトラスも反撃を繰り返し、致命打はないもののオウルに幾度となく手傷を負わせている。


 「さて、こんなもので宜しいですかな?」


 「ええ、ディル様を任せたわよ」


 「まさか飛燕以外のスキルを封じたままほぼ完封されるとは思わなかった。 経験の差はやはり大きいな」


 急に打ち合いを止めた二人の会話だったけど、僕の事を守れるのかどうか試していたって事なのかな?

 僕は旅先ではホムンクルスに精神を移しているだけだし、危険はないはずだけど……アトラスの経験を積む意味もあったと言う事だろうか?


 「ミランダ。 君も一度手合わせをしてみてはどうだ?」


 「それはオウルが困るでしょ。 オウルにとっては私は天敵。 それでもスキルを使ったら私の方が分が悪い。 結果は見えている。 本気でやれば殺し合いになる」


 オウルにとってミランダは相性が悪い相手なのか、それでも本気でやればオウルに分がある?

 僕だけ会話の内容についていけてないみたいだ。

 もっと色々な事を身につ行けて行かないと……主として恥ずかしくないように!

 

 アトラスが装備を身に着けたのでいよいよ出発となる。

 まずは僕とセリルの居た街で情報収集をする事が目的だ。


 そして僕等は街へ向けて最初の一歩を踏み出した。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ