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38話 文化祭の舞台練習

 杏里が劇に選んだストーリの題材は宮本武蔵ミヤモトムサシの年表から創作したものだ。


 宮本武蔵は史実にも登場する戦国時代最後の兵法者ヒョウホウカとしても有名である。


 時は慶長ケイチョウ、1人の兵法者が頭角を現した。その名も宮本武蔵ミヤモトムサシ

 若い時に、新当流の有馬喜兵衛アリマキヘイと決闘し勝利する。

 次に、但馬国(現在の兵庫県北部)の秋山某アキヤマナニガシに勝利。

 関ヶ原の戦いの時、黒田官兵衛クロダカンベイに従い、九州で戦った。

 その後に京都の吉岡一門ヨシオカイチモモンと激しい戦いを繰り広げ勝利。

 巌流島ガンリュウジマで佐々木小次郎ササキコジロウと戦い勝利したとされる。


 刀祢が知る宮本武蔵に関する戦いはこれぐらいだ。


 佐々木小次郎については諸説があり、史実の人物であったかどうかも疑わしいが、刀祢は佐々木小次郎が富田勢源の弟子の弟子になっていることから史実の人物だと思っている。


 杏里の書いてきた物語は、始めは佐々木小次郎を主人公として考えていたらしいが、あまりにも資料がなく、主人公を宮本武蔵に変更したという。


 杏里の考えたストーリーは宮本武蔵を主人公とした創作物語である。


 宮本武蔵が新当流の有馬喜兵衛と決闘し勝利する所から始まり、数々の戦いに勝利していく物語。


 そして巌流島で佐々木小次郎となる男女の双子の兄妹が生まれ、妹の名前は多恵タエと言った。


 兄妹は富田勢源の弟子となって、兄弟子達と一緒に剣術を励み、兄弟子達を倒して、兄の佐々木小次郎は西国一の強者と言われるまでになる。


 兵法者として修業をしていた武蔵は小次郎に会うために、小倉へ行き、小次郎と妹の多恵と出会う。


 そして、武蔵は妹の多恵と恋をし、小次郎に妹の多恵を嫁に欲しいと相談する。


 そのことで怒った小次郎は武蔵と決闘を申し込む。そして2人は巌流島の戦いをし、兄の小次郎は負けて死んでしまう。


 その戦いを観戦していた、妹の多恵は、兄の仇として、武蔵に戦いを挑む。武蔵は仕方なく多恵との勝負を受ける。


 多恵との戦いに勝つが、恋仲だった多恵を自分の手で討ってしまうことになり、その場で泣き崩れる。そして一生を独身で暮らし、五輪の書を書き残すという物語だった。


 宮本武蔵を題材にした悲恋の物語である。


 剣道部の皆は、協力を要請すると快く引き受けてくれた。2年1組の劇の稽古は武道場ですることになった。



「さー、皆、元気に頑張るよー!」



 椅子持ち込んで、杏里がメガホンを持って劇の指導をする。


 刀祢は剣術のシーンは、普段のシーンでは照れが出てしまい、上手く演技ができない。



「何やってるのよ、刀祢。劇の最中に照れてどうするの。照れないで頑張ってー!」



 杏里はメガホンを振り回して、すっかり監督気分になって、いつもと性格が別人となっている。



「刀祢は黙って、威張ってるだけで、渋く見えるから、とにかく堂々としてよ。堂々と!」


「刀祢は木刀を触っているだけで落ち着くから、演技している時も木刀に触れていられるようにしてもらえるかな」



 心寧が刀祢のことを気にかけて、杏里に提案を出す。



「わかったわ。刀祢はどんな時でも、木刀に触れていていいから、演技を続けて」



 刀祢は言われる通りに木刀を触ると、心が落ち着くのがわかる。今までのように照れくさくない。今までよりもスムーズに演技ができるようになった。


 クラスの声優勢がいるので、声をださなくていい。それだけでも刀祢にとってありがたかった。それだけでも演技をしなくて済む。


 莉奈は村娘として登場し、迫真の演技を見せる。莉奈は声優もなしで1人で役をこなす。俳優になる素質があるのではないかと思う。


 佐々木小次郎は美男子としても有名で、イケメンの直哉が役作りをするとハマり役であることがわかった。とても似合っている。


 ポニーテールに道着姿の心寧も佐々木小次郎の妹役として演技をする。凛とした佇まいが、女剣士として、ハマり役だった。


 しかし、この配役で一番、注目を集めたのは刀祢だった。普段は学生服しか見たことのないクラスの皆は、刀祢の道着と木刀姿を見て息を飲む。


 演技こそ下手だが、その存在感と威圧感が半端ない。


 いつも険しい顔をして、不機嫌な表情をしている刀祢が本物の兵法者に見える。一番のハマり役は刀祢だった。


 直哉、心寧との、木刀での演技も実戦さながらの迫力があり、クラスの皆の心を熱くする。



「キィィイイエエ―――!」


「テェリャァアア―――!」



 剣道部員達も吉岡一門に扮して、刀祢と戦うシーンでは、刀祢が相手なので、剣道部員達も手加減抜きで襲いかかる。そのシーンの迫力は劇を盛り上げるには十分だった。


 杏里は考えてタイトルも「宮本武蔵と佐々木小次郎兄妹」と変更になった。


 担任の先生も、熱のこもった演技指導と、役者を務める刀祢達の迫力に拍手をし、ジュースなどの差し入れもしてくれた。


 最後の妹の仮(多恵)が宮本武蔵に負けて、宮本武蔵の腕の中に抱き上げられて死ぬシーンの時、刀祢と心寧が抱き合って見つめ合う。


 刀祢は恥ずかしくなり顔や目を逸らしてしまう。心寧も照れて目を逸らす。



「刀祢も心寧も本気で演技してよ。劇なのよ。劇。お芝居」



 杏里にそう言われても、照れるモノは照れるし、恥ずかしい。



「恋人同士なんだから、劇中でキスしてもいいから。もっと顔を寄せて」



 杏里が無茶な指示を飛ばす。


 どうしても照れてしまって、そのシーンだけは上手くいかない。


 クラスの皆の前で、心寧を何度も抱きしめて顔を近づける練習をする。クラスの皆が、そんな刀祢の姿を見て、段々と焦れてくる。



「キース! キース! キース!」



 最後にはクラスの皆からキスコールが巻き起こる。



「皆の前でキスなんてできるか!」



 刀祢は顔を真っ赤にして言い返す。心寧も顔を真っ赤にして恥ずかしがった。クラスの皆はそんな仲の良い2人を見て幸せそうに微笑んだ。

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