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36話 見舞いからの帰り道

アマアマを書いてみました。読者様、よろしくお願いいたします。

刀祢と心寧を温かく見守ってください。


 剣斗との面会が終わった後に、今、刀祢と心寧はバスに乗って、駅前のバスターミナルへと向かっている。


 バスの中は病院に通っているお客様で混雑していて、刀祢と心寧は身を寄せ合ってバスの中に乗っている。刀祢がバスのつり革をしっかりと掴み、心寧が刀祢の腰に捕まっている状態だ。


 20分、バスに揺られてバスターミナルへ着く。刀祢と心寧はバスから降りて2人で目を合わせて見つめ合う。



「バスで少し疲れたな。少し駅前で休んでいこうか?」


「うん、ありがとう」



 刀祢と心寧の2人はバスターミナルの近くにあるファーストフード店へ入る。ファーストフード店は混雑していて、受付カウンターには人の列ができている。


 2人で列に並んで受付カウンターへ向かう。そしてハンバーガー、コーラ、ポテトのセットを2つ頼むと。すぐにトレイに載せられて商品がでてきた。


 支払いを済ませて、それぞれにトレーを持って、2階の客室へ向かう。2階の客室は混雑していて、窓際のカウンター席しか空いていなかった。



「カウンターでいいよな」


「うん。刀祢の隣に座れるから、カウンターも好き」



 カウンター席にトレーを置いて、椅子に座って窓の外を眺める。窓の外は、行きかう人々が足早に歩いていく姿が見える。


 そしてバスターミナルへ入ってくるバス。発車していくバスの往来が、刀祢達の目を惹く。


 駅前だけあって、人の往来が多い。刀祢達の地元では見られない風景だ。



「隣街なのに、なんだか不思議」



 心寧が小さい声で呟きをもらす。


 この街から比べれば、刀祢達の街は小さくて、田園風景もあり田舎だ。利便性を考えれば、この街のほうが便利だとおもう。しかし、その静けさというか、のんびり感を刀祢は良いと思った。


 窓の外では、色々な人達が、色々な方向へと去って行き、色々な方向から駅とバスターミナルを利用するために集まってくる。


 その光景を刀祢達は珍しそうに眺めていた。


 刀祢達が医療総合病院で幸せそうに入院していた剣斗のことを思い出す。まさか入院している病院で看護婦さんと付き合っているとは思っても見なった。


 あんな幸せそうな剣斗を見たことはない。性格も丸くなり、まるで別人のようだった。琴音さんの影響を大きく受けて、性格も丸くなったのだろう。


 琴音さんは剣斗よりも3歳年上だという。剣斗が20歳なので、琴音さんは23歳ということになる。付き合うには丁度良い年齢といえる。しかし、仕切り屋の剣斗が年上の女性と付き合うとは刀祢も予想していなかった。



「琴音さんと剣斗兄さん、本当にお似合だったね」


「ああ」



 病院の個室で刀祢と剣斗は久しぶり、色々と自分達の近況を話した。琴音さんと心寧が同じ病室に居てくれたことが大きい。2人だけなら、またギコチナイ雰囲気になっていたかもしれない。


 心寧と琴音さんは常に刀祢と剣斗の話しが上手く流れるように、上手く話を流してくれた。女性2人の気遣いが刀祢にはありがたかった。



「今日は一緒にきてくれて、ありがとう」


「うん、私も剣斗兄さんのことが心配だったから」



 琴音さんと心寧も言葉数は少なかったが、すぐに仲良くなり、笑顔で女性同士の話しもしていた。琴音さんと心寧であれば、次に会った時には、もっと仲良くなっていることだろう。



「琴音さんと心寧は何を話していたんだ?」


「女性同士の内緒話」



 心寧は意味あり気な微笑みを浮かべる。女性2人で剣斗と刀祢のことを話していたに違いない。


 窓の外にシアタービルが見える。



「ゆっくりと映画でも2人で観に行かないか?」


「うん。嬉しい」



 心寧は嬉しそうに微笑む。



「これが初めてのデートになるのかな?」



 そう言えば、刀祢と心寧は付き合い始めたが、2人きりで出かけたのはこれが初めてだ。心寧をどこへも連れていっていないことに気づく。



「そうなるのかな? これからはもっと、2人だけでどこへでも出かけよう」


「刀祢と一緒なら、どこへ行っても私は楽しいよ」


「ありがとう」



 刀祢も心寧と同じ気持ちだ。こうしてファーストフード店で座っているだけでも心寧と一緒なら楽しい。


 刀祢はハンバーガーの袋を開けて、ハンバーガーにかじりつく。心寧も小さな口でハンバーガーを頬張っている。和やかな時間が2人の間に流れる。


 ハンバーガーをお互いに食べながら、目を合せる。それだけで楽しくなり、刀祢も心寧も嬉しくなって微笑む。


 刀祢がポテトにケチャップを少しつけて、心寧の口元へ運ぶ。



「少し恥ずかしいな」



 心寧は口を少し開ける。刀祢はそっと心寧の口の中へポテトを入れる。ポテトを食べ終わると、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっている。



「これって、すごく恥ずかしいから、刀祢も試して」



 心寧はそう言って、ポテトを1本摘んで、ケチャップをつけて、刀祢の口元へ運ぶ。周囲の人達が、刀祢と心寧をチラチラと見ている。心寧の言った通り、これは、かなり目立って恥ずかしい。


 刀祢は恥ずかしさを表情に出さずに心寧の手からポテトを食べる。



「うん、美味しい」



 そう言って、照れたように窓の外を覗きこむ。その様子を見て心寧は楽しそうに微笑む。そして、コーラーのストローに口をつける。


 まだ時間は夕方前だ。まだ地元に帰るには時間がある。



「さっきも言ったけど、映画でも観て帰ろうか」


「うん。楽しそう」



 2人はハンバーガーを食べ終わると、ゴミを捨ててトレイを置いてファーストフード店を出る。


 人通りが多いため、心寧が刀祢の右手を掴む。そして指を絡めてギュッと握る。手から心寧の温もりを感じる。刀祢も心寧の手をギュッと握る。



「逸れないように手を離すなよ」


「うん、離さない」



 駅前の雑踏の中をシアタービルを目指して、刀祢と心寧は手をつないで歩きだす。目の前の信号が青色が点滅し始める。



「渡ってしまおう」



 心寧はシッカリと刀祢の手を繋いで、2人で交差点の横断歩道を渡った。

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