表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/47

34話 幸せな帰り道

アマアマを書いてみました。読者様、よろしくお願いいたします。

刀祢と心寧を温かく見守ってください。

 最近、道場が終わると、刀祢が心寧の家まで送っていくことになっている。2人で自転車を押してゆっくりと歩く。


 旧市街と市街地の間には田園地帯が広がっていて、田園地帯は外灯も少なく、人通りも少ないというか、人が全く通っていない。


 車もほとんど通らない静かな道を2人並んで歩いていく。


 いつも心寧は、この人通りのない、暗い道を帰っていたのかと思うと不安が募る。直哉が心寧の送り迎えをしてくれていた意味がわかる。



「心寧、怖くないか?」


「刀祢が一緒にいるから安心だよ」



 刀祢は左側で自転車を押し、心寧は右側で自転車を押し、お互いに並んでゆっくりと田園地帯の道を歩く。


 秋風が気持ちよく吹いている。道場の稽古が終わったので心寧は髪を解いてロングストレートに戻している。艶々した黒髪が風になびいて美しい。


 心寧が刀祢に身体を寄せて、刀祢の右手の先を握る。心寧の手の温かさが刀祢に伝わってくる。心寧と手を繋いでいると気持ちが安心する。


 心寧が指を動かして、ゆっくりと指を絡めて、恋人繋ぎにする。そして、手をギュッと握る。刀祢も心寧の手をギュッと握る。


 心寧は嬉しそうに微笑んで刀祢の顔を見る。刀祢も笑って心寧の顔を見つめる。


 田園地帯の寂しい道も、心寧と2人なら温かくて楽しい道へ変化する。とても心が落ち着く。


 心寧が唐突に告白の時のことを思い出したかのように聞いて来る。



「あのね、刀祢に告白した時、刀祢から返事をもらえるとは思ってなかった。なぜ返事をしてくれたの?」


「心寧を大事と思ったからだよ! 心寧なしの学生生活なんて考えられなかった!」


「私もそう。刀祢なしの生活なんて考えられなかった」



 心寧とは中学の頃から口喧嘩をしてきたけど、心寧がいない時は寂しかった。心寧と口喧嘩していない時はどこか楽しくなかった。


 心寧でないと刀祢は心が楽しくなれなかった。誰でも変れるものではない。心寧がいないとダメだと刀祢は思った。



「心寧の代わりはいないからだ」


「そう言ってもらえると嬉しい」


「心寧はなぜ俺に告白なんてしたんだ?中学の頃、俺のことをあれだけ嫌ってたのに?」


「実は小学校4年生の時、刀祢が剣道の試合で優勝した時、刀祢がとても恰好よく見えて、刀祢が私の初恋の人なの」



 刀祢は心寧の、いきなりの初恋の男子宣言に驚いた。


 そんな小さな頃から、心寧が刀祢のことを想ってくれていたなんて、思ってもみないことだった。


 心寧は昔を懐かしんでいるように、少し遠くを見て微笑んでいる。



「中学の時は剣斗兄さんの考えを信じてた。でも本当に仲良くしたかったのは刀祢だった。そのことに自分で気づいていなかったの。ずいぶん、自分勝手なことを押し付けてゴメンね」


「俺のほうこそ、口喧嘩を吹っかけてばかりで、迷惑をかけてゴメン。あの頃は俺も荒れていた」



 2人でゴメンと謝り合って、顔を見合わせて互いに顔を赤くして微笑む。


 秋風が田園地帯の稲穂の上を撫でていく。風が通る道ができるみたいに稲穂が風に揺れて頭を下げる。


 中学、高校と本当に心寧と刀祢は色々とあって、その度にすれ違ったり、時にはぶつかったこともあった。


 そして今、本当に仲直りできたように刀祢も心寧も感じた。



「心寧と付き合うことを選んで良かった」


「私も刀祢と付き合うことができて良かった」



 心寧が優しい眼差しで刀祢を見つめる。刀祢は照れくさくなって顔を背ける。すると繋いでいた手を心寧がギュッと握りしめる。刀祢は顔を合せずに手をギュッと握った。


 とても暖かくて落ち着いた幸せな時間が流れていく。刀祢と心寧は互いに、その時間を楽しむように黙って歩く。


 田園地帯を抜けて市街地へ入る。住宅街が立ち並び、車の交通量が多くなってきた。


 歩道の中へ入って、刀祢が先頭に立って自転車を押して歩く。その後ろに心寧が自転車を押して歩いてくる。



「これからは刀祢と何でも相談して、刀祢の意見を聞いてから行動したい」


「俺も、心寧の意見を聞いてから2人で一緒に考えて行動したい」



 刀祢が後ろを振り返ると、心寧は嬉しそうに微笑んでいた。


 心寧の家は7階建てのマンションの5階だ。家の前で2人とも自転車を止めて、2人寄り添う。



「家まで送ってくれてありがとう。今度、お母さんが刀祢を呼んできてって言ってた。挨拶をしたいんだって」


「わかった!」



 思い出したように心寧が刀祢に告げる。心寧のお母さんと会うと思うと、少しだけ刀祢は緊張する。


 久しぶりに心寧のご両親に会おう。心寧と付き合っているのだから、ご両親にご挨拶する必要があるだろう。



「近々、ご挨拶させてもらうと、お母さんに伝えてくれるかな」


「うん、わかったわ。ありがとう」



 心寧が嬉しそうに微笑む。



「今日は送ってくれて、ありがとう」


「これから、ずっと送ってやる」


「うん」



 刀祢は心寧に向けて両手を広げる。心寧は刀祢の胸の中へ飛び込んで、刀祢の体をギュッと抱きしめる。刀祢はそんな心寧を優しく両腕で包み込む。



「刀祢、大好きだよ。幸せ」


「ああ、俺も幸せだ」



 2人はしばらくの間、抱き合ったまま幸せな時間を過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ