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18話 剣道部での稽古の手伝い

 月曜日に教室へ向かうと既に心寧と莉奈が教室の椅子に座っていた。


 手だけを上げて挨拶をして、刀祢は自分の席に座る。すると心寧が椅子から立ち上がり、少し左足を引きずりながら、刀祢の元へやって来る。



「足を引きずっているようだが、大丈夫か?」


「うん。痛みも少なくなったし、腫れも引いてきた。心配してくれてありがとう。これ、ハイキングの時のお礼」


「ああ、弁当か。助かる」


 心寧は弁当袋を机の上に置く。これで早弁ができるから嬉しい。


 ハイキングのあった日は、心寧の家まで刀祢が心寧をおぶっていくことになった。刀祢のロードレーサーは直哉が自分のロードレーサと一緒に手に持って歩いてくれた。莉奈も杏里も結局、付き合って歩いて帰った。


 心寧の家に着いた時には心寧の足のくるぶしの辺りんが腫れて熱を持っていた。心寧のお母さんにお礼を言われて、直哉と一緒に帰ったが、照れくさかった。心寧のお母さんは刀祢を見て、久しぶりと言って喜んでくれていた。


 今日の心寧は黒髪を結い、ポニーテールにしている。いつものスタイルだ。その姿を見て、安心する刀祢がいた。刀祢にとって心寧はポニーテールのほうが落ち着く。



「お母さんが刀祢にありがとうって伝えてって言ってた」


「ああ、おばさんと会ったのは中学へ入学して以来だったな。懐かしかったよ」


「今度はゆっくりと遊びに来てって言ってた」


「ああ、考えとくわ」



 心寧は左足を引きずっているが、痛みはほとんどなく、ゆっくりなら歩けるという。怪我が大したことなくて本当に良かった。


 刀祢は机の上に置かれた弁当袋から弁当を取り出して、フタを開けて、何時ものように早弁を始める。


 今まで、何かと文句を言っていた心寧だったが、最近は諦めたらしく、早弁については認めてもらえたようだ。



「この足だと剣道部へ行けないよ」


「その怪我で剣道は無理だな」


「どうしよう?この怪我だと剣道部の皆に稽古をつけられないよ」



 心寧は、この左足では剣道部へ行っても稽古をつけることができないと困った顔をする。直哉がいれば何とかなるだろうと刀祢は思う。しかし、直哉にばかり押し付けるのも悪い。今日は自分も剣道部に顔を出してみようと考える。



「直哉と一緒に、今日は俺も剣道部へ遊びにいくよ」


「本当! そうしてもらえると助かる。ありがとう!」


「ああ、心寧が怪我してるからな」



 心寧は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


 最近は弁当を作って来てもらう日も多い。ここでお返しをしておくほうが良いと刀祢は判断する。


 直哉が登校してきたので、今日は心寧が剣道部の稽古をつけられないことを伝え、刀祢も直哉と一緒に行くことを説明する。







 放課後になり、心寧、直哉、刀祢の3人で剣道部の武道場へ向かう。直哉と刀祢は道着を着ただけだ。直哉はいつも道着だけで参加しているという。直哉も刀祢も正式な剣道部員ではないから仕方がない。


 武道場へ着くと既に五十嵐達は基礎訓練を終わらせた所だった。今日は直哉と心寧が女子部のほうへ向かう。



「今日は君達の稽古を見せてもらうよ」


「「「「ハーイ! よろしくお願いいたします」」」」



女子部員達が直哉を見て嬉しそうだ。



「今日は手伝いに来たぞ。今日は俺が担当な」


「なぜ、直哉ではなく、刀祢なんだ」



 刀祢がそう告げると五十嵐をはじめ男子部員達は顔を引きつらせる。



「今日は新しい足さばきの練習をする。すり足で体の重心をブレずに歩くこう」


「わかったよ。皆、足さばきの練習をするぞ」



 五十嵐達はすり足での足さばきが苦手なようで、スムーズではない。すり足での足さばきができるようになれば、それだけ早く体を動かすことができる。


 竹刀を真直ぐにゆっくりと振りながら、すり足で道場を進んでいく。すり足で歩く時に、正中線がブレてはならない。


 竹刀に集中すると、すり足が疎かになる。すり足に集中すると竹刀がブレる。すり足と竹刀、身体全体に集中力を向ける必要がある。


 すり足の練習が終了になると、小休憩を挟んだ。五十嵐は刀祢の隣に座って、色々と話しかけてくる。ずいぶんと五十嵐も刀祢と打ち解けたものだ。



「前から聞きたかったんだけどさ。刀祢と心寧ってデキてんのか?」


「はあ? どこを見たらそう思えるんだ? 意味がわからん」


「刀祢と心寧を見ていると、すごく仲良く見えるぞ。そう思ってもおかしくない」


「心寧とは口喧嘩友達だ。小学校からの付き合いだから、付き合いは長いけどな。友達だ」



 五十嵐が複雑そうな顔をして刀祢を見る。そして呆れたようにため息をついた。



「直哉が言ってたとおりだな。これは重症だ。直哉に任せよう」


「五十嵐、お前、何を言ってるんだ?」



 刀祢のいない時に五十嵐と直哉は一体、何の話をしているのだろうか。当人がいない所で、あまり変な話をしないでほしいと刀祢は思う。


 練習を再開する。次は竹刀を振る基礎を練習。五十嵐と男子部員達は肩の付け根から竹刀を振る癖がある。そうなると竹刀を大振りするばかりで、体力を消耗するだけ無駄だ。それに標的に確実に当てることが難しい。


 刀祢は腕を折りたたんで腕の筋力だけで竹刀を振る練習をさせる。やはり、ゆっくりと竹刀の軌道を確かめながら竹刀を振って、止めさせる。



「竹刀をゆっくりと振る。竹刀がブレないように注意する。剣先をブレさせるなよ」


「なぜ、竹刀をゆっくり動かしているだけなのに、こんなに疲れるんだよ」


「文句を言わずに続ける!」



 刀祢は小学生の時に兄2人に徹底的に基礎を教わったことを思い出す。毎日、同じことの繰り返しで不満を持つこともあったが兄2人は徹底的に基礎を教えた。そのおかげで、短期間で基礎を体に染み込ませることができた。


 五十嵐が近々他校との他校との練習試合があると言う。練習試合で剣道部の男子部は勝ったことが1度もない。刀祢と直哉に参加してもらえないかと相談を受ける。刀祢と直哉は剣道部ではない。剣道部の試合は剣道部でするように促す。



「とにかく剣道部だけで頑張れ」


「そんなこと言わずに、刀祢と直哉も参加してくれよ。俺達、1度くらい練習試合で勝ちたいんだよ」


「それぐらい、自分達の力で勝て。十分に稽古すれば勝てる」


「そんなに簡単に上手くなれねーよ」



 他校との練習試合だけは直哉と2人で観戦しにいくことを約束する。五十嵐はそれだけでも心強いと笑う。


 そして、バイトの時間になったので、刀祢は五十嵐に伝えて、直哉と心寧に手を振ってバイトをするため道場に向かった。

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