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可愛いお客様


 次の日も紙芝居を作りにママさん達はカフェに来てくれた。今日はえみちゃんのママがシチューを持ってきたようでコンロを貸し出している。私自身はドリンクとサンドイッチの注文が入ったのでせっせとサンドイッチを作っているところだ。横ではえみちゃんママがシチューを温めている。


「紙芝居意外と早く出来そうね。」

「しょう君ママの絵が上手だからよ。本当に良かったわ。」

「やめて褒めても何も出ないわよ。」

「えみちゃんママシチュー作ったの?」

「ごめんなさい、これしかなくて。作ったんだけど口にあうかどうか。」

「大丈夫よ。えみちゃんママお料理上手だから。」

「ありがとう。褒めてもシチューしか出ないわよ。」

「あははは。」

 

「お待たせいたしました。タマゴサンドとツナサンドとカツサンドです。」


「わー美味しそう!雪ちゃんのサンドイッチ本当に美味しいわよね。」


「ありがとうございます。これおまけです。チョコのパウンドケーキよかったらどうぞ。」


 お皿に五切れのせてパウンドケーキを出す。


「私チョコ大好き。ありがとう。」

「私も好き。」

「パウンドケーキ美味しいわよね。」

「これまだある?娘がチョコ大好きなの」


「はい一切れ150円になります。」


「じゃあ買って帰るわ。三切れお願い。」


「はい包んでおきますね。」


 パウンドケーキは意外と高評価で十切れあったのは全て売れてしまった。生クリームをカップに入れて包んだのもとても喜ばれた。そしてまた颯爽とお子様を迎えに行った。紙芝居は完成したので明日は暇かもしれないな。そしてまた1人になってしまう。

 仕方なくネットで販売する腕時計を作っている最中だったので続きを作成する。アンティーク風なものが人気で、チェーンにたくさん飾りをつけるのが良いとコメントをいただいたのでこれはそのように作成するつもりだ。

 次のお客様がくるまでに1つ完成した。ドアの方に向き直りいらっしゃいませと声をかけると、制服を着た女の子だった多分高校生だ。テスト勉強にはまだ時期が早い気がするが。


「お好きな席へどうぞ。」


「今日泊めてください。」


「えっ?」


「家に帰りたくない。泊めてください。」


「……私があなたをはい分かりましたってここに泊めると誘拐罪で捕まります。だからご家族に電話してあげます。どうにか言いくるめて今日はここへ泊まれるようにします。それでどうですか?」


 女の子は捕まるという言葉に少しだけ青ざめた後、観念するかのように携帯を差し出す。画面にママと表示されていて後は通話を押すだけだ。


「あなたの名前と高校何年生かを書いてくれますか?」


 メモ紙を差し出すと可愛らしい字で加元涼と2年生と書いてくれた。そこで通話ボタンを押す。お母さんはすぐに出てくれた。こういう時は勢いと愛想よくだ。相手には考えさせない。


「涼さんのお母様ですか?私カフェ雪月花の神田雪乃と申します。いつも涼さんにはお越し頂いていて、カフェに来られるとずっと勉強されているんです。勉強熱心なお子様で本当に偉いですね。」


「まあ、いつも涼が。」


「はい。いきなりお電話してしまってびっくりされましたよねすみません。なんでも明日、学校で小テストがあるらしいんですが、難しい内容らしいんです。そこで私以前、塾講師をしておりまして丁度その内容を教えていたんです。それで勉強教えてほしいと涼さんに言われまして。」


「まあそうなんですか!それで。」


「はい。今まで学校で勉強していたらしいのですが分からなくてもう少し勉強するためにカフェに寄っていただいたようで、もう遅い上に今からお教えするので、帰りが危ないし。もしお母様のお許しを頂けるのならば今日は涼さんに泊まっていただこうかと。」


「まあそうですか。でもご迷惑では?」


「いえいえ!私は1人で住んでいますし迷惑だなんて。」


「では涼をお願いしてもよろしいですか?」


「はい!明日の学校はこちらから行かれると思います。もし何かございましたらカフェの方へお電話ください。涼さんにかわりますね!」


 そういって携帯を差し出した。女の子は少しためらった後、携帯をとり耳にあてた。


「あっうん。そうなの。うん。うん。分かった。じゃあ明日学校終わったらまっすぐ帰るから。うんじゃあおやすみなさい。」


 そういって電話を切った。なんとかなったな。さあお茶でも淹れるか。琥珀から貰ったお茶を淹れる。お湯は前もって沸かしておいた。


「涼さん、じゃあ約束です。勝手に出て行ったりはしないでくださいね。家にいてくれるなら何をしていただいても結構ですよ。」


「何もしないし。迷惑はかけないから。」


「そう。それなら良かった。お茶どうぞ。」


「ありがとう。」


「晩御飯今から作るのでちょっとだけ待ってくださいね。」


 涼という女の子はお茶を飲みながら頷いた。素直で可愛らしい女の子だ。

 今日はサラダとコーンスープとナポリタンにしようと決めており1人分の具材は準備しておいたのだが足りるだろうか?仕方ないサラダとコーンスープ、ナポリタンも全部分けてしまって足りない分はサンドイッチを出そう。ワンプレートで全てのせてしまおう。よし。


「ねえ。何も聞かないの?」


「えっ?何がですか?」


「だって急に知らない子供に泊めてって言われて泊めるって。」


「うーん。正直な話をしますね。怒らないで聞いてくれます?」


「うん。」


「ありがとう。うちには盗まれるようなものはありません。2階には余っている部屋がありますし、何より泊めてほしいと思い切って言う場所をうちに選んでくれたのが少し嬉しいし良いかと思って。」


「ふっ意味わかんない。」


 女の子は笑いながら泣き出してしまった。私は迷い無くプリンを差し出す。


「辛い時は甘いものです。生クリームのせます?」


「うんのせる。」


「はい好きなだけどうぞ。」


 ボウルごと差し出す。女の子はこれでもかと生クリームをかけ泣きながらプリンを食べ始めた。

 晩御飯を急いで作り女の子の前にそっと置いた。大きなお皿にサラダとナポリタンとサンドイッチとコーンスープのマグカップをのせたものだ。


「いただきます。」


 女の子はとにかくご飯を食べている。私も向かいに座って食べ始める。なかなか上手にできた。


「そういえばお風呂入ります?うちのお風呂とっても広いんです。足も伸ばせますよ。」


 ご飯を食べ終え話しかける。女の子はご飯を食べた後にクッキーを食べていた。


「うん、入ります。」


「じゃあもう沸いてるのでどうぞ。バスタオルとパジャマは貸します。下着類は新しいのがあったのでそれはあげます。全て洗面所に置いておきました。」


「何から何までありがとう。」


「いいえ。じゃあ案内しますね。店は閉めましたので。」


 大人しくついてくるのが可愛らしい、まだ子供なんだな。お風呂まで連れて行き簡単に使い方を教えて洗面所をあとにした。1階に降り全てのドアと窓の施錠を確認して、2階にあがり彼女の布団を私の部屋の隣の部屋に敷いた。そうこうしている内にお風呂から出てきたので彼女を布団に案内する。

 布団に入ったので部屋を出ようとすると呼び止められる。


「ママにね彼氏と別れなさいって言われてるの。確かにいい人ではないけど……。」


「そう。ママが何故別れなさいって言うようになったか原因は分かりますか?」


「それは……。」


「お母様はあなたが1番大切なんです。この世に完璧な男性はいません、それはお母様も分かっています。でもどうしても許せないことというものがあります。お母様はそれが許せなかったということでしょうね。」


「そうだね私、何故あんなのと付き合ってるんだろう。好きなのかな?」


「そう思うなら別れるべきでしょうね。時間の無駄ですから。」


「明日、別れてくる。」


「明日は金曜日ですね。学生さんなら次の月曜まで顔も会わせずに済みますしいいですね。」


「うん。ありがとう。そうする。おやすみ。」


「はいゆっくり休んでくださいね。おやすみなさい。」


 お風呂に入り一応そっと彼女の部屋を覗くとぐっすり眠っているようでほっと胸をなで下ろし私も眠りについた。




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