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新しい恋人


 琥珀は1日と開ける事なく現れるようになった。決まって他のお客様がいない時に。お客様がいると中にも入らずに帰ってまた違う時間に戻ってくるのだ。そして何かと具体的に妻になる人はこうあってほしいと話すのだ。私はさして興味がある訳でもなくへえそう。と頷くだけなのだ。そして帰る間際決まって言うのだ。


「雪乃、君は僕の理想の人だ。」


 まさかこんな若そうなのに私の勘違いだとは思うが好意を抱いているのだろうか。それならかなり迷惑だが。

 そして今日も琥珀はやって来た。珍しく他のお客様がいる時に。


「やあ雪乃こんにちは。」


 そう言って窓際に座った。メニューを持っていこうとすると少し不機嫌そうに、


「いつも同じものを頼んでいるじゃないか。」


 他のお客様は少しぎょっとして琥珀を見ているが琥珀は少しも気付かずただ座り直し本を読み始めた。他のお客様というのは涼さんとお友達だ。どうしたものか。さっとコーヒーとケーキを用意し琥珀の前に置いた。


「ごゆっくりどうぞ。」


「ああ。ありがとう。そういえば僕の家では…。」


「こんにちは。雪乃さん。今日はホットコーヒーとタマゴサンドにします。」


 琥珀が話し始めると同時に松岡さんが入ってきてカウンター席へ座った。


「いらっしゃいませ。少々お待ちください。」

「琥珀ごめんなさい。仕事だから。」


 カウンターに戻りタマゴサンドを作り始める。いつもはサンドイッチなんて頼まないのに。


「松岡さんサンドイッチは焼きますか?」


「ええ、そうします。」


「この前ホットサンドメーカーを買ったんです。」


「へえーいいな。次はホットサンドにしましょう。」


「鯖の味噌煮ではなくてですか?」


「ああそうだった。」


「お姉さんとお兄さん仲がいいよね。前も一緒にいたし。」


 涼さんが勉強に飽きたのか話に加わる。


「あはは、お年頃の女の子はそういう事が気になるんだね。」


 松岡さんはさらっとかわしたようだ。


「そりゃそうでしょ。」


「お待たせいたしました。コーヒーとサンドイッチです。」


「おお、美味しそうだ。」


「雪乃!君に誰もいないから僕が来てやっているのに!」


 怒鳴りながら琥珀は店から出ていってしまった。なんと厄介な事になってしまったのか。


「お姉さん、あの人何なの?神社の息子でしょ。評判良くないよ。学校でもいつも色んな人に迷惑かけてたって。もうとっくに卒業してるけど。5年位前じゃない多分。」


 仕方なく琥珀と出逢った時の話をした。泣いていた原因は隠して。


「お姉さん、私お父さんに言ってあげるよ。いくら優しくしてくれたからってあれは無い。とりあえず無銭飲食の件で。お父さん警官だから。」


「うーんでも。お客様だし。」


「いやこういう事はちゃんとした方がいいですよ。」


「そうそう。じゃあ私達は帰ろうか。じゃあねお姉さんとお兄さん。」


「じゃあ気を付けて。」


「さようなら。」


 涼さんとお友達、そして琥珀のお皿を片付け始める。


「雪乃さん。」


 振り返ると真剣な面持ちで松岡さんがこちらを向いて立っていた。


「はい。どうしました?」


「あの、私と付き合ってくれませんか?あなたが最初にここへ来た時、なんだかひどく辛そうでした。でも最近少し元気そうだったのに、さっきの彼が来た途端また表情が曇り始めた。嫌なんです。あなたのそんな顔を見るのは。笑っていてほしいんです。」


 顔が熱くなるのを感じる。恥ずかしさと照れと他にも色んな感情が渦巻いている。


「雪乃さん可愛いです。好きです。だんだんとあなたを好きになりました。」


 そういえば明夫にもこんな事を言われた事ないな。


「結婚式の当日私の恋人が親友と逃げたんです。それで全てを忘れる為に昔、何度か親戚に連れて来てもらったここへ来たんです。だからバツイチっていうやつです。」


「そうなんですか。それを聞いても気持ちは変わりません。付き合ってください。」


「うーん。でも私まだ。」


「いいんです。その気持ちはそのままで。付き合いましょうそれ以外断る気持ちがないのなら。」


「結構、強引ですね。」


「私は大人ですから。絶好のチャンスを逃しはしません。今週の日曜出かけませんか?」


「はい、分かりました。行きます。」


「良かった。じゃあ今度は忘れないでくださいよ。」


 松岡さんは笑いながら話す。まさか。


「なんの事ですか?」


「1回目忘れていたでしょう。顔にかいてありましたよ。」


「すみません。これから気を付けます。」


「いいんですよ。気にしないでください。ただあなたは顔に出やすいですね。気を付けてください。悪い人に騙されないように。」


 そんなこと初めて言われたな。顔に出るのか覚えておこう。


「じゃあ私も帰ります。おやすみなさい雪乃さん。」


「おやすみなさい。」


 松岡さんが帰った後片付けと店じまいをしていると男性が二人お店に入ってきた。


「すみません。お店の方ですか。」


「はい。神田と申します。」


「私は涼の父親で警官の加元です。こちらは琥珀君のお父さんの国分さんです。」


「この度は息子が大変申し訳ありません。」


「いえ、少し行き違いがあっただけです。ですので気になさらないでください。」


「本当ですか?娘からは店に入った時からあなたに態度が悪く店を出る時は怒鳴りつけて行ったと聞きましたが。」


「いえそんな。怒鳴りつけるなんて。」


「娘がこうも言っていました。あなたはひどくお人好しだと。だからちゃんと守ってあげてと。」


「とにかく訴えたりするつもりはありません。」


「ありがとうございます。お金は私が払いますので。息子にはあなたに近付かないように言い聞かせます。」


「分かりました。よろしくお願いします。それで今回は全てなかったことにします。」


 国分さんはお金を置いて帰って行った。


「神田さんいつも娘がお世話になっています。」


「いえこの度はご迷惑をおかけしてすみません。」


「この程度のこと気になさらないでください。娘から全て聞きました。私がしなくてはいけないことをあなたがしてくれた。ありがとう。」


「いえ大した事ではありません。」


「あなたは本当に優しい人ですね。娘が電話なんてしてくるのは久しぶりだったのですがあなたをとても心配していました。これからも娘をよろしくお願いします。そろそろ帰ります。娘に約束させられてしまってどうなったか話さなくてはいけないので。すみません。」


「いえ、ありがとうとお伝えください。お父様もありがとうございました。」


「では、おやすみなさい。」


「はい。お気をつけて。」


 今日は色んな事が起こったなぁ。恋人か明夫以外に付き合ったことが無いからどうすればいいのか分からないけど嫌な気はしない。日曜が楽しみだ。



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