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3.ギルド街外営業所

「ギャァァァ…」

「いってぇなあ…畜生」


10匹居た緑色の化け物の最後の1匹の意識を刈り取り、拳の痛みを取るように手をブラブラと振る。

緑色の化け物に叩き込んだ拳の皮がそろそろ裂けちまいそうだ。これはランニングウェアでも破っちまって簡単なバンテージを作らねえとマジーな。


スキルの確認も終わり街に向かって1時間、ようやく地平線の彼方にかすかに何か建っているいるなってのが判るような距離までは詰めることが出来た。

だが歩くたびに突然穴から出て来た緑色の化け物に、ひっきりなしに襲われることになっちまった。

なんか対策を考えねえとこのまま街まで行くのは厳しいかもしれねえ。


というか、確か経験値は気絶で貰えるって書いてあったと思うんだが今んとこレベルが上がる気配がないんだけどよ…ん?あれってスキルを発動させてないと貰えねえのかな?

そういや、スキルの説明で声に出さなきゃスキルが発動しない物もあるみたいなことも書いてあったかな。

取りあえず、気になっていた『異世界式ボクシング』とやらを発動させてみるかね。

ボクシングに異世界もクソも無いような気がするんだけどな。


「『異世界式ボクシング』…うぉぉ!?」


ビックリした…今日何度目か分からないリアクションだなこれ。心臓に悪ぃ…。

今俺の両腕には光で出来たブレスレットがオレの手首にあった。

そのブレスレッドから放出されている光りで出来た天使の輪っかみたいな物が、腕輪の上でゆっくりと回転している。


試しにその状態でシャドーをする。すると、このスキルのヤバさが判った。

まずスピードが段違いだ。プロボクサーのシャドーなどを間近で見ると、まずその空を切り裂くような音に圧倒される。『ヒュッ』って風切り音が、かすかに聞こえんだ。

だが、オレが今繰り出したジャブは人間に出せる速さじゃねえ。一発打ち込むたびに『パンッ』って、まるで爆竹のような音が鳴り響く。


次にパワー。これは実際に打ち込んでみねえことには分からねえが、これも腕に伝わる感覚から相当なもんだ。これを人体に打ち込んでもいいもんか如何か少し躊躇っちまう程だ。


と、あまりに高威力にどうしたもんかと考えているとお誂え向きに先に倒した緑色の化物どもの1体が起き上がって来た。

ナイフを握りなおし、こっちへの敵意も消えてねえみたいだな。OK、こいつで実験しようじゃあねえか。


「キシャアアア!」


此方に向かって走る緑色の化け物は足にキてるのか、すこしよろけている。

そんな怪物と距離を詰めて、いきなり右ストレートを放つ。スキルで高速化された拳が綺麗に化け物の頭に吸い込まれた。


パァアアアアン!


≪ゴブリンを倒しました。経験値を1獲得しました≫


甲高い音が響く。グローブでミットを叩いた時の音と似ているが、実際は裸拳でゴブリンに一発入れた音だ。

その一撃で、ゴブリンの頭が潰れて吹き飛んだ。まるで何か爆発物でぶっ飛ばしたみたいにだ。

…いやいや、それにしたってこれはヤバすぎるだろ。『異世界式』、って爆発するのか?

それに、拳に全く衝撃の反動が無かった。まるで質量のある空気を殴ったみたいに。

それに最後のアナウンスは一体何だ?経験値が手に入るとこうなるのか?


目の前の化け物の首からドクドクと青い血が流れているのが見える。

こんなデカい生き物を殺すのは初めてだ。家のネズミ駆除で捕まえたドブネズミを処理した時ぐらいか。

こんな風にボクシングを使うのは躊躇いもあるが、だからと言ってオレが殺されちゃ何にもなんねぇ。

こうして首が飛んでいたのは俺だったかもしれねぇんだ。次も躊躇わずに拳を振れりゃーいいんだが…。


にしても、これはもう少し真剣にスキルを調べて行かなきゃヤベぇわ。一先ず、『異世界式』は人には容易に使うべきじゃねえな。この世界にも人間がいるか如何か知らねえが、頭ぶっ飛ばして罪無しって所はねえだろうしな。化け物相手で手加減の練習をしよう。


というか、このブレスレッドが付いた状態はいつになったら終わるんだ?

試しにもう一度『異世界式ボクシング』と呟くと、あっさりブレスレットと天使の輪っかが消えた。

念のためもう一度試し、発動のオンオフが出来るかどうか確かめると、問題なく出来た。

成程、一回呟いて発動、二回呟いて終了っつー事だな。


そういえば、『ヘルプ機能』ってステータス画面だけでしか使えないのか?ちょっとやってみるか。

ゴブリンの死体を触りながら、『ヘルプ機能』と呟く。

ん?…おおお、どうやら『ヘルプ機能』をこういう風に使うと頭の中に相手のステータスが浮かび上がってくるのか。こっそりやればバレることも無いだろうし、此奴は便利だな。さて、ゴブリンのステータスは…


Φ=====================================Φ

名称:ゴブリン


年齢/性別:0歳/男性

状態:健康

種族:ゴブリン族


≪基本能力値≫

LV :2

HP :8

MP :2

攻撃力:3

防御力:2

行動力:2

特殊値:3


≪ノーマルスキル≫

短剣術LV2

Φ=====================================Φ


弱っ!…まぁ、ワンパンでぶっ倒れるしな。こんなもんか。

特に何か見るべきところは無いな。


他に今使えるスキルで試してないのは、『アイテムボックス』か。

生き物は入れることが出来ねえってことだっけか。なら、この化け物の持つナイフとかどうだ?

未だ化け物の死体が握りしめるボロボロのナイフの刀身を触りながら、『アイテムボックス』と呟く。

すると、ナイフだけではなく化け物ごと消えた。ナイフを握りっぱなしだったからか?


うーん、実験したいけど、ここでうだうだしていたら周りで寝ている化け物どもがまた起き始めちまうか。

流石に寝ている所をトドメ刺すのは何か違げーと思うし、今のうちに離れるかな。


初めての『異世界式ボクシング』を使ってから更に1時間、ようやく街っぽい所に到着した。

道中、他の化け物どもに絡まれたのを『異世界式ボクシング』を使ってぶっ倒したんだが、やっぱ一朝一夕にはいかず全部頭をぶっ飛ばしちまった。手を抜いて打ち込むっつーのは慣れねえし仕方ねえか。

一応、3体の死体をアイテムボックスにぶち込んだ。結構アイテムボックスは便利だな。

元の世界に戻ってもこのスキルは残ってほしいくらいだ。

他には、ステータスの『アイテムボックス』をタッチすると、保管している物の一覧が出てくることが判った。

因みに緑色の化け物の死体は『ゴブリンの死体』と表示されていた。あの化け物は『ゴブリン』って名前みてえだな。


街の周りを囲むような何かが有るのは『マップ』で判ってたけど、それがこんな滅茶苦茶デカい石垣だとは思わなかった。大体10mくらいか?

その石垣の中央、街に入る為の門は全て鉄で作られているみたいだ。戦争が起きてたとしても、門を破るより石垣ぶっ壊した方が速いなこりゃ。

時間は大体午後2時くらいかだと思うんだが、門からは人がずらりと街に入る為か長蛇の列を作っていた。

たいそうな鎧に身を包んだ人もいれば、普通のシャツにズボンの人もいるな。


まわりに比べてちょっと裕福そうな服に身を包んだ親父は商人なのか、馬車に大量の荷物を載せて護衛を侍らせながら、ゆっくりと街に入って行った。

門から少し離れた所にはスゲーデカいテントのようなものがいくつかあるが、気になるのはそこから少しだけ血の匂いがするってくらいかな。ここって、結構物騒な所なのか?


周りに習って列に並ぶも、18世紀な服装が基準の周り比べてランニングウェアとシューズな俺は明らかに浮いちまっている。

そもそも、俺は列に並ぶとかが向いていない。列に並んで1時間待つとかいうラーメン屋なんて狂気の沙汰だ。

俺の近くに居る連中、特に商人っぽい人らはチラチラと俺に視線を向けて来る。落ち着かねえが、今は我慢だ。


30分後、ようやく門の近くにまで寄ることが出来た。近寄ると石垣と門のデカさにちょっと圧倒されちまう。

ただここで問題が発生した。如何やら街に入るのに金がかかるらしい。

周りの連中の会話を聞き耳を立てる限り、「入街税が下がった」とか、「その代わり市税は微増なんだと」

とか聞こえてくる。スキルの効果なんだろうが、明らかに日本人じゃない人がすげえ流暢に日本語を使うのは中々シュールだな。吹き替え映画に違和感を感じる人ってこんな感じなのかもな。


革鎧を着込んだ門番っぽい人に、カードを見せている人は素通りなんだが、それ以外の人は基本硬貨を何枚か渡しているみてえだ。…日本円じゃあ駄目だよな?


「次の者、前へ」


いよいよ俺の番が回ってくる。門番が俺の姿を胡散臭げな視線を向けてくるが、俺は気にせずに一枚のカードを差し出した。

学生証だ。恐らくあの素通り出来るカードは身分証明書みてえなモンだと思うから、一先ず無駄だと思うが学生最強の身分証明書を出してみる事にした。

仏頂面の門番の一おっちゃんが訝し気にそれを受け取ると、眉の間のしわがますます深くなった。


「凄い印刷技術だが…なんだこれは」


「学生証っすよ」


「ガクセイショ?」


学生証をにらむように見ていた門番は、視線を上げてオレを見て来た。

イヤ、ホント、怪しい奴じゃないんで俺。


「うす。学生が持てる身分証明書っす」


「学生…魔法学校の生徒って事か、成程な。悪いが、その身分証明書は使えない。身分証明で有効なのはこの表に書いているものだけだ。どれか一つでも持っていたら提出して欲しい。文字が読めなければ読み上げるから言ってくれ」


「うす。…ところで、何が『成程』なんすか?」


「お前さんの不思議な恰好だよ。魔法学校では日夜新しいマジックアイテムが作られているというし、そういう恰好も向うの方だと普通なんだろう? いやまあ、気に障ったなら謝るよ」


未だにしかめっ面な表情に反して結構親切に対応してくれるな。顔で損するタイプじゃねえかな。

そう言って門番のおっちゃんから学生証を返してもらい、逆に渡されたのは一枚の紙だった。

見てみると、『冒険者ギルドカード、魔術ギルドカード、医術ギルドカード…』など聞いたことも無い身分証明書ばかりだ。

誤魔化してもしょうがないし、正直に言うしかねえか。


「すんません。どれも持って無いっす」


「分かった。ならば、あそこにある天幕に行ってくれ。そこで冒険者ギルドの仮カードを発行し貰える。並び直しになるがな」


「おー、どうもっす」


結構こういうことが有るのか、門番のおっちゃんは手慣れているような案内だな。

仏頂面の門番は手を振って速く場を離れるように促して来た。まぁここで詰まったら列も消費出来ねえからな。列に並びなおしになるのはちょっとキツイが、しょうがねえ。テントに向かって狩りギルドカードとやらを作って貰おう。


テントに近づくにつれて、血の匂いが濃くなる。一体ここは如何いう場所なんだ?

テントの周りには飲み物や食べ物を売っている屋台が見えたんだが、この血の匂いの中売れるのかね。

中に入ってみると、テントの見た目よりもさらに広く感じる。直径で50mくらいか?

そこには簡易的な長テーブルが10台と、それに合わせたイスが円になるように並べられており、その円の中には揃えの制服を来た人が忙しなく働いている。その周りを鎧を着込んだ人や、あの黒ローブを思い起こさせる物語の魔法使いみたいな人もいた。


荒事関係の仕事なら、強面が多いのかと思ったら、結構細いのも多いな。

円の中心ではどデカい牛の化け物みたいなのが解体中で、それだけでも結構見ごたえがある。


「どうかされましたかー?」


気付いたら足を止めて見入っちまってた。足を止めた俺を不思議に思ったのか、入口横の受付みたいな所にいた女の人から声を掛けられたらしい。

いけねぇ、見てないでさっさと仮カードを発行してもらわねぇと。


「あのー、すんません。ここで仮カードを発行してもらえるって聞いたんすけど」


「ああ、仮のギルドカード発行ですね。では今…10番受付が空いていますので其方へどうぞ。詳しい説明は其方で行いますので」


「どうもっす」と受付の人に会釈して、3番受付に向かう。10番受付ってのはテーブルに掛けられている垂れ幕の番号で良いんだよな?

『10』と書かれた垂れ幕を見つけ、そこのテーブルに備え付けられた椅子に座る。

すると、すぐに職員らしき人が対面に座った。黒髪ショートボブの切れ長の眼に無表情、年齢は20は超えたかなって所か。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


そう言いつつも、書類を職員の人は用意している。なんか「まぁ大体想像がつきますけど」と後に続くように聞こえるのは、俺が捻くれているからか?


「ええと、仮カードの発行を頼みたいんすけど」


「分かりました。では、この水晶に10秒間触れて下さい」


何の意味があるのか分からないが、言われた通りに水晶に障る。

特になにも無く10秒間が経過し、「もう結構ですよ」と言われたので手を放す。

職員の人はこちらを一瞥もせずに書類に何かを書き込んでいる。


「あの…この水晶って何の意味が有るんすか?」


「この水晶は『鑑定水晶』と言い、触れた人のステータスを読み取る物です。と言っても読み取れるのは名前、年齢、レベル、種族位ですが」


そう俺のクエスチョンに答えながらも、書類に書き込む手は止まらない。バリバリのキャリアウーマンっつーのはこういう人を言うんだろうな。

書類は一分もせずに書き終わり、「此方の記載に相違ないですか?」とその書類を渡された。確認しろって事か。

見てみると、特に問題は感じられないので頷いて書類を返す。名前とか年齢とかさっきの説明と同じことが書かれていただけだった。


「では、これから冒険者ギルドについて説明を致します」


「お願いするっす」


女の人が言うには、冒険者ギルドとは以下のような物だった。


・冒険者ギルドに所属した時、『冒険者』となる。


・冒険者が行うことは冒険者ギルドが発行するクエストを達成し、報告することである。


・クエストとは達成条件のある一度きりの仕事である。


・クエストと冒険者にはランク(H~A)が設定され、そのランクにより受ける事の出来るクエストが限定される。


・クエスト達成時の報酬・ギルドポイントはクエストによって変わる。


・ギルドポイントとは、冒険者ランクを向上させるときの目安である。一定以上溜めると冒険者ランクが上

 がる。ギルドポイントにより、冒険者の順位付けもされる。


・クエストを受けていない時、1日1ポイントずつギルドポイントが減っていく。


・冒険者ギルドは冒険者に対し、一切の責任を負わない。

 ただし、ギルドに過失がある場合は責任の所在を検討する義務がギルドに生じる。


早い話、日雇いの職業あっせん所だろ? で、難しい仕事は資格が要るよって事だ。

ギルドポイントで順位如何のこうのってのはやる気を出させるためか?

どうせ他に仕事の当ては無い訳だし、冒険者として一旦働くのも良いかもだな。

説明し終わった職員の人は、先ほどの書類にハンコを押すと半分に折り畳みオレに再び差し出して来た。

折り畳んで初めて分かったんだが、裏の方にもハンコが押されている。


「この書類が仮のギルドカードになります。失くさないように注意して下さい。街に入ったら、すぐにギルド本館で正式なギルドカードをお受け取り下さい。その際に簡単な試験を行います」


試験が有るのか…筆記だとアウトだな。

にしても、ここで全部出来るようにすればいいのに、と言うのは何処の役所でも同じみたいだな。


「ここで正式なギルドカードって作らないんですか?二度手間なような気がするんすけど」


「分業です。このギルド営業所は狩られた獲物の解体、素材の査定、引き取りの作業を第一としている施設ですので。もし魔物の解体や引き取りをご希望でしたら、引き続きお受けいたします」


「街の中だと解体出来ないんすか?」


「血や体液の匂いが濃い魔物も運び込まれますので難しいですね。衛生面から街壁の外にこうして解体所を設けているのです」


だから街中じゃなくてわざわざ外に営業所を作っているのか、成程ね。

確かにこの血の匂いが街に漏れるのはマジぃな。確実に臭害騒動になっちまう。


「成程…あ、ゴブリンの解体って大丈夫っすか?」


「可能ですが、ゴブリンは依託解体すると赤字になりますのでお勧めしません。心臓に魔石が有りますので、それだけ頂ければ換金出来ます」


魔石?って何か判ん無ぇけど、価値がある物はそれだけですよって事か。


「あー…ここで解体しても大丈夫っすか?」


「申し訳ありません。テント内で職員以外の解体は禁じられています。申し訳ないのですが、テントの外で解体をお願いいたします。解体が終わるまでこのテーブルは『応対中』にしておきますので」


「あ、すんません。じゃあ、外行ってきますんんで」


外に出て慌てて人があんまりいない所で解体する。ゴブリンの持っていたナイフを使い、胸を裂くと、青い血が少し零れる。正直クるもんがあるな、これ。気持ち悪さに耐えながら、さらに体の中を調べて心臓を見つけてナイフで同じように裂く。

すると、真っ黒な小石が出て来た。大きさはパチンコ玉と同じくらいだな。

『異世界式ボクシング』の練習台になった残り3体をを取り出すと、同じように魔石を取り出した。

取り出したゴブリンの死体は再びアイテムボックスに戻す。

ここに置いといたら腐敗して大変な事になりそうだしな。

再び10番のテーブルまで戻ってくると、先ほどの職員の人はまだそこに居てくれた。


「お帰りなさいませ。魔石を換金されますか?」


「うす!これで大丈夫っすか?」


差し出した計4つの黒い魔石を職員の人が手に取ると、小さく「『鑑定』」とつぶやいた。

少しの間黒い魔石を見つめていたが、「終わりました」という声と共に視線を再びこちらに向けて来た。

「ゴブリンの魔石ですね。換金金額は1つ200レンになります」


「200え…レンっすか。そんだけあれば豪遊出来るっすかね?」


「パンを1つ買うのを豪遊と言うのであれば、あるいは」


うーん、俺のギャグに真顔で返されちまった。口角どこらか眉一つうごかねえでやんの。

せつねー。

…まあ、つまり200レンでパンが1つ買えるって事ね。1円=1レンくらいで考えておくか。

そうして黒い魔石と引き換えに、職員の人から渡されたのは10円玉と同じような銅貨8枚。

パン4個分が今の全財産か…ちょっと心もとねぇな。もうちょいゴブリンを狩るべきだったか。

今狩りに出るのは時間的に中途半端だな。夜になったら真っ暗で狩りなんて出来ねえだろうし。


「因みに、街の宿屋って一拍いくらくらいっすか?」


「中堅どころの宿屋の平均としては5000レン程ですね。最低ランクの宿屋でも1000レンはするかと」


「マジっすか…」


「ただ、ギルドには宿泊所が有りますので、今お渡しした金額が全財産ならば、其方を頼ることをお勧めします。そちらはギルドカードを持っていると無料で利用できます。ほぼすべてセルフサービスですが」


マジでか。頭を抱えそうになってたところをナイス提案だ。結局野宿になる所だった。

タダ程怖い物は無いとは言うが、見知らぬ世界で野宿の方が100倍怖い。


「すんません、そろそろ行くっす。いろいろ教えてくれて有難うございました」


「いえいえ。本日の担当はトナがお受けいたしました。試験、頑張ってください。」


此方が席を立ち手を振ると、職員の人…トナちゃんが小さく手を振り返してくれた。

徹頭徹尾無表情なトナちゃんだったが、解体の時間を待ってくれたり結構良い人だったな。

さて、やたらと時間がかかってしまったがようやく街の中に入れそうだな。一先ず、仕事と寝床確保の為にもギルド本館にいかなきゃな。

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