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【第7話 妖怪レアオイテケ】

【第7話 妖怪レアオイテケ】



「とりあえずレアアイテム全部出して」


身長150cmとかなりの小柄で、腰まで伸ばした黒髪が特徴の女の子。

無愛想とも取れる態度が特徴で、誰であっても物怖じすることなく自分の要求を伝える強者だ。

そして、挨拶をする直前にいつも通りの要求が飛んできた。


「可愛い服着てるね」


「ありがと。レアアイテムは?」


「貰った武器役に立ったよ。貸出モードでいいよね?」


「対価はちゃんと貰うから気にしなくていい。それでいいから早く出して」


自分の欲望に忠実な女の子………言葉だけ聞くといいよね。

しかも見た目が見た目だからね、ついつい許しちゃう。



彼女の見た目は一言で言えば中学生だ。

150cmのAカップ、胸もお尻も小さくとても可愛らしい女の子。

実際は20歳を超えているから違法じゃない。

そして彼女はキャラとリアルの体型は同じらしい。

つまりは合法ロリだ。

反抗期に入った中学生的な見方をされており、自分にだけはデレてくれるんじゃないかと色々な人に貢がれている。

もちろん俺も貢いでいる、当然だろ?



「これで全部?」


「全部。掲示板に載せたけど、15レベの5階層。ボスは雑魚ラッシュでボス宝箱はなし」


「ん」


それだけ言うと、彼女はレアアイテムの確認に入る。

1つ1つ丁寧に、色々な角度から見て、触り、実際に装備して感触を確かめる。

その真剣な表情はとても可愛く、何時間でも見たくなる。


それから10分程時間を掛けて、全てのアイテムの確認を終えた。

一部βテスト時代に無かったアイテムがあったらしく、使用感やデザイン等かなり細かく確認していた。


「ありがと」


「こっちも良い物見れたからいいよ。で、ちゃんと登録された?」


「当然。これで失敗してたら苦情送るレベル」


彼女がしっかりと見ていたのは何もレアアイテムに興味があるからだけじゃない。

このゲームでの生産は、1から全てデザインしようとするとかなり手間が掛かる。

しかし、運営が用意したアイテムや他プレイヤーのデザインを一定以上観察すると、同じデザインをベースとして作ることが可能になる。

このベースがとても重要で、普通のプレイヤーは剣の重心や持ち手の太さなどほとんど知らない。

だからベース無しで作ると見た目は良くてもかなり使い難い物になってしまう。

どの生産職でも最初はNPCもしくはドロップアイテムを観察し、ベースを用意するのが基本だ。

そこから自分好みに発展させ、オリジナルを作りだす。

そうやって少しずつ作れる範囲を増やしていくらしい。


「さて……俺の装備更新したいんだけど頼める?」


「いいよ。βの時と変わらず?」


「変わらずで」


「ん。レアは?」


「必要なら全部使っちゃっていいよ」


「ん。先に必要材料の洗い出しをするから待ってて」


「あいあい」


ルナに武器の製作を依頼しつつ、ずっと無視していた人に向き合う。

露天通りに来て、ルナと会話する前からずっと俺を見ていた人物だ。


「で?」


「レアオイテケ」


「返せよ?」


「当然」



彼女の名前はソル。

ルナとはリアルでも交流があるらしい人物で、生産職の1人だ。

ただ、彼女を一言で表す場合は別の言葉になる。

それは、レアハンター………もしくは、コンプ勢だ。


このゲームでは運営が用意した装備品を含む全てのアイテムはナンバリングされ、図鑑に表示される。

これがとてもやっかいで、全て埋めると特別な称号【全テヲ埋メシ者】が貰える。

何も効果がない称号だが、欲しがる人はどこにでもいる。


自分の図鑑が埋まっていない場所のアイテムを持ってると聞けばその人を探し交渉。

その際、お決まりのセリフが先程の「レアオイテケ」だ。

もちろん、置いてけと言っているがきちんと返してくれる。

図鑑を埋めるのが目的であり、アイテム自体には興味が無い連中が多いからだ。



「あぁ……図鑑が埋まっていく…………素晴らしいぃ……」


「人の事言えないけどレアハンターやばいな」


「よぉグラン」


突然声を掛けられ、そちらを向―――


「用事を作るから無理だ」


「挨拶しただけだろぉが………そこまで警戒しなくてもいいぞ。今は特に用事はない」


そっと逃げる用意をしたが、杞憂だったらしい。

だが、まだ安心してはダメだ。

過去に同じことを言って油断させた後に連行された。

逃げる体勢を維持しつつ、警戒を怠らない。


「お前は信用出来ない。敵キャラの改心した発言レベルで信用出来ない」


「そこまでかよ……」


「あとアレンとキャラ被ってる」


「頼れるリーダーキャラのロールプレイしようとすると被るのはしかたないだろ」


「アレンと違って禿げてない」


「俺は禿げてねぇ!」


ルナとソルのクランリーダーである、武蔵との会話にアレンが割り込んでくる。

アレン禿説をもっと広めようと思ったのに……地味に良いタイミングで現れやがって、迷惑だぞ。


「なんで俺が責められるような目で睨まれなきゃいけないの?」


「アレン禿説を広めるタイミングで邪魔されたから」


「だから俺は禿じゃねぇって言ってるだろ!」


「なんとかかんとかの猫!」


「言いたいことは分かる………が、納得は出来ない」


「すげぇ……伝わった…………」


伝わると思ってなかったのでとても驚いた。

正確にはシュレーディンガーの猫であり、今の使い方であっているかは知らない。

日本人は昔から何となく言いたいことが伝われば多少の間違いは無視してきた人種だからな。


「装備更新終わったの?あと、このまま話逸らすの手伝ってくれる?」


「おい」


「俺は終わったけど他がまだだからもう少し時間が掛かるな」


「お前もか」


「その全身鎧も更新?」


「いや、これはまだだな。店売りにちょい足し以上の性能にしようと思うとどうしても専用施設が必要になるから、まだ無理らしい」



生産活動。

主に2種類の方法が存在する。

ボタンをぽちぽち押して作る方法と新規もしくは登録されたベースから実際の工程に近いミニゲームをクリアして作る方法。

ボタンを押して作る方法は細かい修正が出来ない代わりに簡単に作ることが可能だ。

センスもいらず、お手軽に作れる反面、ミニゲーム方式よりもワンランク性能が落ちる。

レベルやステータス不足が原因で、序盤は生産施設が使えず、ボタンぽちーで作るしかない。



「全身鎧は防御力高いからしかたないな。その点、俺の服はそこまで必要じゃないから序盤から高性能だ」


「でも当たれば死ぬよな」


「はっはっはっ、河豚かよ。………河豚食べたい、海行かない?」


「おっ?いいねぇ……ドゥヴァの街から海行けたよな?」


「だねー。あそこの海って河豚獲れたっけ?」


「わからん……」


「とりあえず掲示板だ」


料理人用の掲示板に


『河豚食べたい。ドゥヴァの街から行ける海で獲れたっけ?』


と、書き込む。

意外にも見ている人が多かったのか、すぐに返事が返ってきた。

曰く、


『河豚は獲れる。調理できる俺達を連れて行け』


だそうです。

しかたない……獲れたてを調理してもらう以上、連れていくか。


「獲れるって。行こうぜ」


「装備は?あと面子はどうするの?」


「装備は今ルナに「ん。出来た」……ありがとう」


掲示板への書込み中に必要素材の洗い出しが終わったらしく、色々な素材を要求された。

大多数は近くにいたアレンと武蔵から巻き上げ、武器の製作依頼を出した。

まぁ、素材をくれた2人には武器の強化を無料でやってあげたから大丈夫だろ。



【武器】麻痺毒の短剣 品質5

攻撃力48 毒 麻痺 耐久 180/180

レア武器を使用して作られた麻痺毒の短剣。

一定確率で対象を麻痺又は毒にする。

製作者:ルナ



【武器】呪殺の短剣 品質5

攻撃力31 呪い 耐久 80/80

レア武器を使用して作られた呪いの短剣。

一定確率で対象を呪い状態にする。

製作者:ルナ



以上2つが俺の武器だ。

両方とも攻撃力がそれなりにあり、レア武器を基に作られただけの性能だ。

麻痺は一定時間行動不可になる……が、これは嘘である。

STRが高ければ無理矢理身体を動かすことが可能であり、MINが高ければ一瞬で解除されてしまう。

意味が分からないが、ゲームだからしかたないのであろう。

そして呪い、こちらはランダム効果が発生する。

一定時間HPやMP、ENが減ったり、スキルの発動を失敗したりと、対策し辛いのが特徴だ。

まぁ、MINが高ければ一瞬で解除されちゃうんだけどね?


「毒と麻痺が一緒で呪いが別かー」


「流石に全部はまだ無理」


「生産施設が使えれば?」


「余裕」


「すげー」


「誰でも出来るから凄くない。それよりも私も河豚食べたい」


「お?んじゃ一緒に行くか」


「戦闘はしないからよろしく」


「そこはアレンとか武蔵に言ってよ」


「は?俺も行くの?」


近くにいた武蔵が素っ頓狂な声を出す。

何で行かなくていいと思ったのか小一時間問い詰めたい。


「…………そっか、嫌ならいいよ。武蔵は今後2度と自分の都合だけで俺を誘うなよ?」


「任せろ!全部蹴散らしてやるよ」


「ちょろいわー」


「ん。バカ」


「そこは思っても声に出さないで欲しいんだけど……」


「はっはっはっ、武蔵はバカだなーあっはっはっ」


「てんめっ……叩くな!」


アレンが武蔵の肩を叩きながら笑っている。

音が凄いんだけどこいつらSTR(筋肉)VIT(筋肉)やばいな。

俺なら間違いなくHP減って死んでる。


「えー……現状何人?俺とアレンと武蔵とルナだろ」


「料理人は何人?」


「あー……わからん。てか、あれだ。生産職を数えるのやめよう」


「まぁ、ほとんど戦力にならないからな。っとすると3人?」


「今サファイアに河豚食べに行こうってメール送った。河豚のひれ酒?とやらに興味あるって言ってたし来るでしょ。あとフィンは召喚するからカウントで」


「タンクが2のアーチャー1か。お前は相変わらずどこに分類すればいいのかよく分からんな」


「ジャマー?でも状態異常ばらまくからデバッファーか?」


「グランの役割なんてLUKだろ?」


「殺意がわくわくさん」


「やめろ」


アレンや武蔵と会話しつつも、フレンドにメールを送る。

道中にボスなんて存在しないから別に少人数でも問題無いが、どうせならわいわい行きたいと思って誘っている。

あと、俺が働かなくて良い状況を作りたい。

サボれる所は積極的にサボっていくのが俺だ。


「攻略組は?」


「既に3つ目………あー……えー……」


「トゥリー」


「それ!もうそこに行ってる」


「相変わらず早いなぁ……まぁ、うざいのがいないのは良い事だ」



βテスト時代から攻略組が存在している。

誰よりも先に、誰よりも早く、その為なら1日のログイン時間が20時間を超えてもいい。

そんな連中ばかりの集まりだ。

マナーが悪い人が多く、他人を見下す発言での喧嘩が発生している。

俺も喧嘩を売られたことがあり、


『お前ら遅いな。そんなゆっくりしてていいのか?』


『お前早漏かよ。病院紹介しようか?』


『殺すぞてめぇ……』


というやり取りをした。

完全に他人を見下した顔で笑いながら言われたからな、かなりムカついた。


最終的には攻略組に他人を見下す人が多いのは問題だと運営に直訴が集まり、精神鑑定が行われた。

残虐性や他人を見下し、差別する考えを助長するゲームなんて言われたくないからな、運営も必死だ。

その結果、結構な人数が一定期間凍結され、一部アカウント停止処理にまで発展した。

それからは表立って言ってこないが、明らかに不満を持っていますと言う顔をしている。

問題を起こしてないからいいけど、人よりも進んでいるから偉いなんて考えを持つ人は消えてほしい物だ。



送ったメールから返事が一通りあったたため、北にある門に移動する。

この北門からは次の街、ドゥヴァへの街道がある。

街道で出るモンスターはウルフ系とゴブリン系、そしてスライム系だ。

ウルフ、ゴブリン系は20前後とレベルが高く、南の草原と同じだと思ってると死ぬ。

スライム系は何と物理無効を持つアメーバタイプだ。

物理では如何なるダメージを与えることが出来ない最強さんである。

足が遅い為、放置して逃げることは可能で、魔法職以外には対処不可能だと思われていた。

誰が試したのかは不明だが、松明で炙ると死ぬと言う話が広まり、今では簡単に倒せるようになった。

なお、後半に出てくるスライムは松明で炙ると増えたりするので安易に試すのは危険である。


「えーっと……何人?」


「タンク5アタッカー2魔法2アーチャー2回復2LUK1の生産職いっぱいだ」


「ねぇ俺をLUKで数えるのやめて」


「なら俺を禿扱いするな」


「諦めるか……」


「何でそこまでして俺を禿にしたいの?ねぇねぇ、こっち見てくれる?おい、凄い頑張って目を逸らすな」


肩を掴まれて凄い揺さぶられているが、目は合わさない。

てか、肩が壊れるから離せ。

俺はお前と違ってかなり小柄なんだぞ。


「それぐらいにしてやれよ。首がガクンガクンなってるぞ」


「チッ………俺は禿じゃないからな」


「ふぅ………助かったよふさふさな武蔵」


「おい」


「まだ若いからなーあっはっはっはっはっー」


「てめぇ……」


そっとフィンの後ろに逃げつつ、武蔵の煽りポーズ高笑いを見る。

うむ……完全に見下してる角度だ、素晴らしい。

あの反り具合もそうだが、指の差し方、あくどい顔、笑い方、全てが高評価だ。

何故かモーション登録してくれないが、俺もシステムに頼らない煽りポーズを身に着けたいものだ。


「グラン、休憩はいいのか?」


「ん?河豚食って休憩」


「…………そうか。トトはどうする?」


「んー………寝てる奴が悪いってことで」


「……………文句を言うだろうな。まぁ、ログインしたら一緒に移動すればいいか」


「転移門使えば一瞬だしな。ソロで行きたいって言ったら放置するか」


「後衛職でソロは厳しいだろ」


「挑戦するのは可能だぞ?さて、そろそろ俺も切り替えるか。持ち上げてくれる?」


「任せろ」


物凄く軽い俺を、フィンは軽々と持ち上げる。

そのままフィンの肩に足を乗せ、全員を見渡せる高さに立つ。


「ちゅうも~くっ!」


全員がこちらを向き、俺の位置を確認すると笑いだす。

上から見下ろしてちょっとドヤ顔してるからな、中身を知らなければ微笑ましい光景だ。


「次の街から行ける海で河豚を食べるため……しゅっぱ~つっ!」


「おー!」


相変わらず聖女は空気を読む力が高い。

誰よりも先に掛け声と腕を上げ、ちゃんと合わせてくれる。

まぁ、ノリの良い人も遅れてだけどちゃんとやってくれたからな、嬉しいよ。





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