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【第6話 喫茶店での休憩】

新年、明けましておめでとうございます。


今回は3話更新です。

よろしくお願いします。

【第6話 喫茶店での休憩】



「ハンバーグ美味しい………」


「喫茶店でハンバーグ食うとか頭おかしいだろ」


ここの喫茶店では軽食に分類される物以外にも材料を渡せば作ってくれる親切なお店だ。

そのせいで雰囲気に合わない料理が大量に作られてるんだけどね?


「お前のグラタンも同レベルだからな?」


「色的にはマッチしてるからセーフ」


「いつもの謎理論」


グラタンは全体的に白いから店の雰囲気を壊さないは誰も理解出来ない理論だ。

臭いやお皿はどうなんだって話だよ。


「ようやく気力も回復してきたし………2人はどうだった?」


「疲れました。今日はログアウトします」


「この後って予定通り次の街に行くんですか?」


「ぶっちゃけ行きたくない」


「今から行くのは精神的に……ミスも増えるかと思いますし、安全マージンを取るべきかと」


アレンの質問にトトは短く答え、シンはげんなりとしつつ質問する。

すぐさまエドガーと椿が否定意見を出しつつアレンにアピールをし始める。

俺だって今からもう1回冒険に行くぞとか言われても困る。

精神的なスタミナはもう残ってない。


「いや、流石にこの状況で突っ込むのは危険だからな?装備やアイテムの補給しつつ、のんびりするかログアウトするかだな。PT全体での攻略はしない」


「個人では?」


「ダンジョンなら行こうかなって思ってる。今ならグランいるし」


「殺してでも逃げる。てか、アイテム持てないから嫌だ」


「そういえば枠足りた?」


「レベルが上がったおかげでぎりぎり足りた。道中のゴミを捨ててなかったらアウトだったね」


今現在のレベルは23。

雑魚ラッシュで結構な量を貰っているように見えるが、そこまで上がっていない。

雑魚ラッシュ前に18まで上がっていた為、本当にぎりぎり枠は足りた。

事前に粗末な武器シリーズを捨て、ポーション類も最低限しか持たなかったのが功を奏したね。

βテスト時代の経験が活きたよ。


「ねぇねぇグラン」


「どうしたトト?」


「このレベルの雑魚ラッシュを何度も経験してるんだよね?」


「LUK100は誰かしら確保されて連行されるからね、そりゃ何度も経験してるよ」


「これってどれくらい?」


「規模?」


「うん」


「普通くらい?そもそも疲れてるのは序盤に雑魚狩りしたのが無駄だったのかよってショックが大きいし、戦闘自体は楽だったからそこまでだよ?」


「あとはあれだ、ゴブリン自体弱いからそこまで集中しなくていいってのもある」


「ゴーレム系は硬くて近接職は泣きながら殴ってたよな」


「個人的にはゾンビ系が嫌いだね。あれはいつも以上に精神削られる」


「精神削られると言えばドッペル系だろ。見て分かるけどプレイヤーっぽい格好はFF怖くて一瞬反応遅れるんだよな」


「ミミック系は面白かったな。全部はずれの宝箱が大量に置かれてるのは笑ったよ」


トトの質問をきっかけに、β時代の雑魚ラッシュの話をする面々。

全てが懐かしく、その全てを経験してる俺は悲しくもなる。

それと同時に、新顔であるトトとシンの表情はどんどん曇っていく。

今回の規模は普通でどちらかと言えば楽な部類だと知れば当然の反応だ。


「……っと、βの話は置いといてだ。シンはどうする?今後ダンジョンは嫌だって言うなら別行動でもいいぞ?βの時もそういうプレイヤーは結構いたしな」


「……ちょっと考えさせてください」


「僕もダンジョンについて考えたいなっ」


「グランは黙ってろ。お前に拒否権は無い」


「人権下さい」


「無いです」


「こんな世界は間違っている。滅ぼさなきゃ………」


「レベルもステータスもこっちが上だからな、諦めろ」


βテスト時代から何度もやったこのやり取り。

よく一緒にいるメンバーがいる場合はこの後にどうやって世界を滅ぼすかなんて話をする。

まぁ、大喜利なんだけどね?


「まぁダンジョンは一旦放置して、武器強化はしてもらうぞ?」


「わぁいお仕事だぁ……」


「ハイライトオフでその発言はやばいからやめろ」


「わっ!凄い……どうやってるんすか?」


「これ?メニューにあるアクションを見ると色々あるからその中から選ぶだけ。決めポーズとか変なダンスとか面白いの結構あるよ」


「おー………プレビューも見れるんすね……変顔多くないっすか?」


「モーション登録して運営に送れば採用されるからだな」


「ぷるぷるおじいちゃんとかorzのポーズとか俺が送って採用されたの結構あるよ」


「ぷるぷるおじいちゃん………あっこれか……ぷっ…くくっ………」


俺が好きなシリーズはヤンデレ彼女シリーズだ。

ハイライト消したり、ゆっくりと振り向いたり恐怖心を煽る近付き方とか、面白い物が多い。

本物のヤンデレがモーション登録したんじゃないかってくらい精巧な為、結構人気のあるシリーズだ。


「トトはログアウトするんだっけ?」


「思ってた以上に削られたからね……流石にごめん………」


「無理させるつもりはないから気にするな。フィンはどうする?」


「装備の更新かな?戦闘するにしても装備が初心者のままはちょっと……」


「あぁ……俺も更新しなきゃな…………………そろそろメール開くか」


「メール?」


「俺……武器貰ったじゃん?その後ダンジョン踏破したじゃん?ワールドアナウンスで公開されてるからさ、強化石持ってレアアイテム見せに来いってメールが来てるの」


アクションのハイライトオフを使用しつつ、平坦で抑揚のない声を出す。

これで俺がどれだけ絶望を背負っているかが伝わるはずだ。


「どこのクラン?」


「ルナの所」


「あぁ……あそこ開幕森に特攻掛けてたのはお前の為か」


「廻り廻って自分達のクランの為だけどな」


「ついでに俺もそこで装備更新しよっかなー」


「え?ついでにキャラデリしてLUK100にするって?」


「お前の耳はおかしい定期」


「今ならサファイアの胸が付いてきますよ?」


「アレンは嫌」


サファイアからの唐突な拒否宣言。

つまり俺はいいのか……また揉んでも良いですか?


「禿は生理的に無理」


「禿げてねぇから!」


「βでも兜を取らなかった。禿じゃない事を証明出来ない」


「そう言えば見たことないですね、アレンさんの素顔」


「フルフェイス型のヘルム被ったまま食事が可能ってやばいよな。そのせいでアレンの顔見たことないんだけど」


「ゲームですよ?禿じゃなくてスキンヘッドだと思うんです」


「え?何?お前ら俺の事禿だと思ってたの?」


自分のPTメンバーからの総攻撃。

事あるごとに禿説を出してきたからな、漸く俺の策が実ったよ。


「リアルでも生え際がやばいんでしょ?」


「リアルはふっさふさだから」


「リアルは……」


「つまりゲーム内は……」


「リーダーが禿だったんだがってスレ建てなきゃ……」


「待て待て待て待てゲーム内でも禿じゃない!エドガー!スレはやめろ!」


「じゃあ代わりに俺が!」


「やめろ!俺が鎧脱がない理由知ってるd」


と、その時。

突然トトが消える。

あまりに脈絡もなく突然のことだった為、誰もが驚き静まり返る。


「…………寝落ちかな?」


「だろうね。口調もちょっと違ったしほとんどしゃべってなかったし……いきなり長時間戦闘はきつい」


「あとでリアルで連絡しておくから気にしなくていいぞ」


「一応俺も連絡入れておくか……まぁ、危なくなる前に強制ログアウトが発動するんだけどね」



強制ログアウト。

医療や技能研修、スポーツに旅にゲームなど、多くの分野で利用されているフルダイブ型のVR機器。

そんなフルダイブ型のVR機器には絶対に搭載されている機能で、法律レベルで義務化されている。

この機能に手を出そうとした犯罪者は全て即死刑になるレベルで厳しく取り締まられている。

この機能を使用すると、如何なる手段を利用してもゲームへの接続が一時的に不可になり、強制的にログアウトすることになる。

普通にフルダイブ型のVR機器を利用していた場合はほぼお世話になることがないこの機能だが、廃人とプロゲーマーは3日に1回はお世話になる。

トイレとか空腹とか睡魔とか………アラームを無視してプレイするからね、本当にお世話になってます。



「睡魔だとアラーム気付かずにそのまま落ちるよな」


「そもそもアラーム鳴るレベルでプレイするなよって話なんだけど」


「プロゲーマーはそんな甘えた事言ってる余裕無いんですよ……」


「あっ、その話聞きたいです。プロゲーマーって本当なんですか?」


「ん?うん。ジャンルはVRシューティングで、世界ランカーだよ」



VRシューティング。

一昔前まではFPSと呼ばれ、マウスやコントローラーで操作されていた。

現代でもFPSやTPSは一定以上の人気があるため、VRS、FPS、TPSと名前が分かれている。

VRSの場合は身体を動かす必要がある為、FPSやTPSとはまったく違う物が求められるのが衰退しなかった一番の理由だろう。

マウスを動かしてクリックするゲームと実際に自分で銃を構えて撃つのは別ゲームだって言われても仕方ないけどね。

余談だが、今でも煽りとファンメ文化は消えていない。



「世界ランカーとか凄いっすね………」


「うちはリーダーが優秀だからね。世界一の戦略家は伊達じゃない」


「実際の所グランの方が人気や知名度高いんだけどね。化け物とかジャックザリッパーとか忍者とか色々通り名的なの持ってるしな」


「まぁ、一般相手なら俺の方が有名だろうね。少しでも同じゲームやってる人ならリーダーの方がやばいってすぐに気付くけど」


「あの……」


「どうした?」


「もしかして……プロチーム【カミカゼ】所属なんですか…?」


「どうも、プロチーム【カミカゼ】でエースやってるグランエルです」


「同じくプロチーム【カミカゼ】所属のフィンです」


唯一俺とフィンのリアルを知らなかったシンは驚きで固まる。

ハンドルネームなんて被ることが多いから名前で気付くことはほぼない。

更に言えば俺もフィンもリアルとは似ても似つかない容姿をしている。

これで気付けは酷だろう。



プロチーム【カミカゼ】。

VRS専門のプロゲーマー集団であり、この名前で世界大会やイベントに参加している。

メンバーは20名程度で、少数精鋭チームと言われている。

戦略特化のリーダーを筆頭に、メンバー全員が役割に特化している為、安定した戦果を出すことが出来る。

その反面、違うVRSをプレイしようとした時に自分のメイン武器が無い為、慣れない武器を使わざる得なくなりクソ雑魚になるなんてこともよくある。

良くも悪くもプレイするゲーム次第で評価が変わるチームである。



ジャックザリッパー、忍者。

グランエルの通り名的な物であり、ジャックやジャパニーズニンジャと呼ばれることが多い。

呼ばれる原因となったのは数年前の世界大会の予選が原因。

あまりに敵のレベルが低かった為、舐めプ目的でナイフ縛りを行い、40KILLを達成。

軽い騒動になり、色々と通り名が付いた。

スポンサーの意向も合わせ、イベント時では忍者のコスプレをしている為、外国のファンが多い。



「お……おぉ………すげぇ……」


「あ、先に言っておくね?」


「え?あ、はい」


「俺らが強いのはVRSであってVRMMOじゃない。ジャンルが違えば求められる能力も異なる。だから、このゲーム内で俺らが物凄く強いとか思わないでね?」


βテスト時代によくあったことだ。

プロゲーマーであり、世界ランカーだから強いと思い込み、勝手に幻滅して騒ぐアホ。

なんで全てのゲームで強いと思ったのかは知らないが、本当に迷惑だからやめてほしい。


「え………あぁ、そうですね。対人と対モンスターでも全然違うんですから当然ですよね……」


「シン」


「え、あ、はい」


「グランに敬語はいらないぞ。こいつがこのゲームやってる理由の7割は女だ」


「じゃなきゃLUK特化なんて苦行やる訳ないってね」


「えぇ………」


露骨なまでにがっかりした顔をしている。

俺だって人間だ、性欲とか性欲とか性欲とかある。

誰かに迷惑を掛けている訳じゃないんだ、別に問題無いだろ。


「それに知ってるだろ?VRSの敷居の高さ」


「えっと……」


「初心者はとりあえず殺せ。殺したら煽れ。煽ったらファンメ送れがVRSの世界だからね。初心者離れは結構深刻なんですよ……」



初心者離れ。

VRSだけじゃなく、対人ゲー全般に言えるジャンル衰退の危機。

初心者と熟練者、廃人が入り乱れて戦うシューティング系ではこの現象が特に多い。

煽り耐性の高い人か一緒になって煽る人くらいしか残らないのも問題視されている……が、俺には関係ない。

そこら辺はメーカーやスポンサーが対応する話であって、俺はマナーを守って遊びましょう的な事を言っておけばいい。



「お前も煽る側だろ?」


「身内以外は煽ってないからセーフ」


「お前の身内煽りダンスは動画で見たけどくっそムカつくな」


「アメリカのランカーと煽りダンス研究してるからな、当然だろ」



煽りダンス。

古くからある敵をKILLした後に行う煽り行動の発展版だ。

敵の上に立って屈伸をしたり、無意味に銃を乱射したり、その場で回ったりと色々な種類が存在する。

FPSでは出来なかった自由な行動が出来るのがVRSの一番の特徴で、その特徴は煽りにもすぐに反映された。

武器を手放して踊ったり、自分が殺したことに大袈裟に驚いたり、ヘリが左右に小刻みに揺れたりとたくさんの煽りが生まれている。

余談だが、ゲームは下手だけど煽りダンスが異常なまでムカつくなんてプレイヤーも存在している。



「煽りダンスの極意は、如何に素晴らしいダンスを披露出来るかだ。なんか無駄に上手でムカつく……微妙に面白いのが腹立つ……そう思わせることが出来れば勝ちだ」


「煽りに勝ち負けは無いだろ」


「試合後にあの煽りくっそムカつきました。真似しますってメール来るともうね……こう……気持ち良くなっちゃうよね」


「変態かよ」


「変態だからこのゲームでLUKに振ってるんだよ?」


「そうだった……」


渾身のドヤ顔スマイル。

これもメニューのアクションに登録されている為誰でも可能だ。

個人的にはハイライトオフのドヤ顔スマイルが不気味すぎて好き。


「っと……呼び出し場所書かれたメール来たし、移動する」


「俺も一緒に行くわ」


「えー………フレに呼ばれたので移動しますね」


「呼び出されたのでの間違いだろ?」


「せやな…………はぁ……」


かなり気が重い。

別に彼女自身の事は嫌いではない。

が、彼女が所属しているクランが問題だ。

俺を一番連れ回したクランに所属しているって言えば俺の気持ちは理解できるだろう。


「まぁ……この大量のドロップを捌きたいし、装備の強化もしたいから行くんだけどね…」


「あ、ゴブリンの素材ってどうなんですか?需要あるんですか?」


「ゴブリンの魔石はまぁそこそこかなってレベル。MP回復ポーションの材料がモンスターの魔石だからね、需要は常に一定量あるんだよ」


「それに粗末な武器シリーズは地味に便利でな?素材を回収出来るんだよ。杖や盾は木の端材として、金属系は改鋳して練習用のインゴットにってな感じで色々と用途があるんだよ」


こういった情報はゲーム外にあまり出ていかない。

半ば常識になっている情報と最新の情報では、最新の情報が多く取り上げられる。

最新の情報が常に大量放出されている以上、知っていて当然な情報は後回しにされる。

その結果、ゲームをプレイしていない人は知らないテクニックがそこそこ存在する。


「ゴブリンが落とした武器を溶かして作ったインゴットよりも鉱石を溶かして作ったインゴットの方が高品質でいい武器を作り易いからな。埋もれちゃったんだよ」


「一番の理由はゲーム内情報を持ちだす人が少なくてまとめやウィキが機能してないことなんだよね」


β版ということで、結構な修正が何度も入った。

その度に検証し、ゲーム外の掲示板やウィキに記載するのはかなりの手間だ。

昔と違ってフルダイブしている為、別のブラウザを開きながら検証するなんて行動が出来ないからね。

ゲーム内で情報が完結するなんてことは最近じゃよくあることだ。


「あー……序盤のユニーククエストで俺が必要なのってあったっけ?」


「鉱石納品系?あんまり序盤のは覚えてない……ってか、ついでに俺らも一緒にクリアするのもありだな」


「殺意がわくわくさんだよ」


掲示板でユニーククエストを確認しつつ、移動を開始する。

このゲームでのユニークは単純明快、2度同じ物が手に入らない、発生しないだ。

通常のクエストは何度でも受けれるし手に入り辛くてもレアアイテムもちゃんと複数個手に入る。

けど、ユニークの名前が付いているのはどのプレイヤーでも1回しか受けれない。

うっかりクエストを破棄したり、アイテムを捨てたりすると物凄い後悔することになる。

実際βテスト時代では泣いてる人がいたし俺も泣いた。

ユニーク称号が貰えるクエストを間違えて破棄し、どうでもいいクエストに参加してしまった。

あのユニーク称号……【大海賊の子分】はネタ的な意味でとても欲しかった。

因みに効果は海賊の手下っぽいゲスい笑いが出来るようになるだけだ。

それでも2度と手に入らないと言われるとこみ上げてくるものがある。





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