【第4話 ダンジョン攻略】
【第4話 ダンジョン攻略】
「知らない顔もあるし、自己紹介するね?発見者のグランエル、人間で盗賊だよ?よろしくねっ」
「グラン、そのロープレ気持ち悪いな」
「ぶっ殺すぞアレン」
合流したフレンドに新顔がいた為、ロールプレイをしながら自己紹介をした。
速攻で気持ち悪い発言したアレンを殴りたい。
「腹黒ショタとかないわー。まだβの時の背伸びしてるショタの方がマシだわ」
「ふんすふんすしてるのはちょっと可愛かったね。キャラ変えるの?」
「最終的には幼女になって貢がせるプレイに移行するからさ、今のうちから媚売る練習だよ」
「表ではステータス偽装して貢がせて裏では暗殺プレイか。相変わらず怖いな」
「まぁな。リアルじゃ絶対出来ない事をやるって決めた以上、ちゃんとやりきるさ」
「余談はそれくらいにしようか。俺はフィン、ドワーフで戦士だ。ロールプレイは堅物だ」
「本サービス開始組で、トトです。エルフの魔法使いで、優男のロールプレイをします」
「トトはビルドミスに近いミスしてるからしばらくは戦力外な。魔法操作の低い範囲魔法使いって言えば大体理解出来るだろ」
「あー……知らないとあれ取らないよね。修正可能範囲っぽいし、気にしないよ。それじゃ、こっちの自己紹介だな」
リーダーのアレン。
ドワーフで戦士で、2mの巨体だ。
フィンとの違いは装備で、全身金属鎧の大盾とハルバードだ。
兜までしっかりと被っている為、顔や髪は分からない。
多分禿てる。
人間の戦士であるエドガー。
180cmとそこそこの大きさで、長剣を使うアタッカー。
部分的に金属を使っている革鎧をベースにしていて、機動力を落とさないようにしているらしい。
黒髪黒目の日本人らしい顔付だが、ややイケメンだ。
エルフの魔法使い、ルビー。
肩まで伸ばした桃色の髪が特徴的で、青をワンポイントに添えた白ベースのローブを身に着けている。
ステータスの構成はトトと似た感じらしく、色々とアドバイスを送っている。
中身も見た目も女性で、貴重な可愛い枠だ。
エルフの盗賊、サファイア。
俺を長身にした姿によく似ていて、とても美人だ。
機動力を落とさない革鎧を装備し、STRが必要ない短弓を使用する。
ルビーの姉であり、酒と煙草とギャンブルが好きな残念さんである。
人間の神官、椿。
小柄で腰まで伸ばした銀髪によく見る修道服を着ているのが特徴だ。
本タイプの術者で、回復とバフをメインにしているらしい。
見た目も言動も完璧な聖女であるが、中身はおっさんというかなりショックな人物。
新顔である人間の戦士、シン。
170後半の大きさで、黒髪青目の爽やか君だ。
魔法剣士を目指しているらしく、転職するまでは器用貧乏だと笑っていた。
雰囲気からリアルでもイケメンの可能性が高い存在だ。
余談だけど、椿は掲示板で中身が女性だったらよかったのにランキングで堂々の1位を獲得している。
それを聞いた本人は男らしい「っしゃ!」という掛け声とガッツポーズをしていた。
「それじゃ~しゅっぱ~つ!」
「お~!」
物凄く無邪気で子供らしい出発の声には、椿のみが合わせてくれた。
やはり、見た目も言動も完璧な聖女である彼は空気を読む力は素晴らしい。
これでリアルの性別が男じゃ無ければ本当の意味で完璧だったんだが…。
「……やっぱり素の性格を知ってるとあのロープレはイラッてくるな」
速攻でアレンが文句を言う。
こいつ1人だけ許可を取り消して追い返したい。
「おじちゃんは………僕のこと嫌いなの?」
「嫌い」
「死ねばいいのに」
「唐突に素でしゃべるな」
茶番をしつつもダンジョンに侵入する。
名前から予想していたがやはり、土の中を掘って出来たダンジョンだ。
これである程度ダンジョンの傾向が掴める。
「獣系なら罠無し率が高い、ゴブリンとかなら軽い罠があるから注意な」
「軽い罠は落とし穴、鳴子、袋小路や挟み撃ち用の通路を指す事が多い。今後もダンジョンに行くなら知っておくべき基本知識になるぞ」
アレンの言葉にエドガーが補足する。
やばい、何もしなくていいとかかなり楽だ。
「因みに、罠解除は盗賊が持つスキルだ。スキルが無くても0.1%の確率で解除が可能……つまりはそこでニヤニヤしてるアホは100%解除可能ってこと」
「ほんと?僕にも仕事があるの?」
「泣くほど働かせてやるよ」
「給料は?待遇次第じゃ帰るぞ?」
「お前が誘ったんだろ!」
「別件だけど、ダンジョンはどれだけ小さくてもプレイヤーが武器を振れるだけの広さが確保されてるから安心してね?逆に、異常なまでに広かったらその大きさの敵が出るって事だから」
アレンをおちょくりつつも新顔のシンとトトに説明をする。
今いる通路は最大身長であるフィンやアレンが自由に動ける程度の広さ。
つまりは、大型の敵は絶対に出ない。
「てめぇ……」
「敵影補足……数は4!2足歩行!」
アレンが怒り、こっちに向こうとした瞬間にサファイアが敵に気付く。
本来なら俺も索敵関係のスキルを取得し、気付かなければいけない。
が、そんなもん後でいいやと絶賛放置中だ。
サファイアが気付かなければ目視と経験以外での索敵は不可能だな。
「目視……武器持ちゴブリンか………しかも杖いるとかめんどくさいな」
アレンが独り言で文句を言う。
杖持ちが1階で出るとかその気持ちはよく分かるよ。
「グランは敵全部に攻撃、その後は後方待機。サファイアはフォロー頼む」
「まっかせてよ~」
「………俺とフィンで後衛を守り、グランが戻ったら俺、フィン、エドガーで討伐。魔法職はMP温存、シンは狭い場所で戦う場合どうするのかを見ておけ。普段と違う場所でいきなり戦うのは結構難しいからな」
「了解です」
「グラン、GO」
「【隠蔽】」
そっとフィンの後ろに立ち、スキル名を口にし、自分自身を隠す。
隠れる瞬間を見られると無意味になるが、大盾を持つ巨人の後ろにいればほぼ隠れる。
βの時からやっていた基本行動だ。
音をたてず、それでいてある程度の速度を出して敵に近付く。
もちろん、隠蔽の効果で俺を認識することは出来ない。
一番やっかいな杖持ちを最初に潰す。
「ゴギャッアアアアアアア」
攻撃をすれば当然、隠蔽は消える。
けど、1撃は確実に入れることが可能だ。
相手からすれば突然敵が目の前に現れたと思ったら攻撃されたんだ、反応できない。
そのままその隙を利用し、他の剣や小盾を持ったゴブリンにも軽く攻撃する。
俺の役目はダメージを与えることじゃない、戦闘に参加し、レアドロップを拾うことだ。
だから大きいのは狙わず、少しでも攻撃を当てることを優先する。
「カバー!」
目的を達し、離脱する為にヘルプを求める。
すぐさま味方の位置に向かって走りだすが、敵もバカじゃない。
とりあえず目の前の敵に向かって武器を振り下ろすくらいは普通にする。
それがいつもと同じ精度かどうかは別としてだけどね。
「ギャッ!」
「グギャッ!」
背を向けて走っているが、後ろから悲鳴が聞こえる。
サファイアが近くに居るゴブリンに矢を放ったらしい。
良いタイミングでのヘルプのおかげで楽に退避出来たよ。
「スイッチ!」
「杖持ちの目を狙うとかえぐいなお前………1人1匹で杖持ちは早い者勝ち!行くぞ!」
「了解!」
「任せろ!」
アレンが少し呆れてたけどすぐに切り替え、最後の指示を出す。
アレンとエドガーはレベルも高く、装備も俺達よりやや良い物を使っている。
この程度の敵は造作もないと言わんばかりに斬り裂く。
フィンはやはり適正レベルに達していないし装備も初心者用の物を使っている為、複数回の攻撃をしていた。
サービス開始日なのにある程度の差が出来ているのはなんとなく、悲しくなるな。
そのまま危ない場面も存在せず、無事にゴブリン4匹の討伐が完了した。
そもそも適正レベル以上のプレイヤーがいるとか2PT合同アライアンスだとか、余裕すぎる状態だったけどな。
この状況で危ない場面があったらそっちの方が問題だ。
★congratulation――――
《ゴブリンの魔石×2》
《粗末な鉄剣×1》
《ひび割れた木盾×1》
《武器強化石×4》
《経験値 2856pt》
――――――――――――
外にいるゴブリンよりもレベルが高い為経験値は多い。
が、所詮はゴブリンと言ったところか。
貰える経験値がかなり少ない。
1匹当たり700ちょっとはレベルの割りに少な過ぎる。
武器強化石を落とすことを考えれば妥当かもしれないけどね。
「グラン後で俺の武器強化してよ」
「え~…どーしっよかな~?」
「今度装備作り手伝うからさ、頼むよ」
「任せろ」
「急に素を出すなよ。助かる」
アレンからの武器強化依頼を受ける。
多分だけど他のメンバーもついででやることになる。
まぁ、アレン1人が装備作りを手伝う訳じゃないからいいんだけどね?
「………情報共有すべきだろう」
唐突にフィンがしゃべり、意味が分からずに静まり返る。
何の情報かを考えていると、ルビーが説明し出す。
「杖持ちゴブリンがここで出てきたこと、そこから予想出来るボスについてだと思います」
「なるほど、確かにそれは必要だね」
「………フィン、堅物から寡黙にキャラチェンジするの?」
「……………まだキャラが定まってないだけだ。安定するまで待て」
「……………俺も人の事言えないけどさ、慣れないキャラは辞めた方が良いぞ?」
「……いや、まだ大丈夫だ」
キャラが不安定で定まっていないのか、言葉足らずだった。
寡黙なキャラであれば先程の言葉で問題無いが、堅物キャラなら問題ありになる。
生真面目で融通が利かないけど、言葉足らずではない、そんなキャラを目指してほしいものだ。
因みに、俺もキャラを維持出来ずに素で発言することが多い。
腹黒の2面性うんぬんではなく、普通に素でしゃべっているだけだ、要反省。
「話を戻すぞ。ゴブリンはプレイヤーと同じく武器や防具を装備する。が、原則として粗末な物で扱い方を理解していないから危険度はほぼ無い。ほぼ…と言ったように、例外は存在する。職業持ちであるマジシャン、ヒーラー、ソードマン、もしくは上位種のハイ、ジェネラル、キングだ。推奨レベル15の1階で職業持ちが出てきたってのが今回の問題だ」
新顔であるシンとトトはアレンの説明を真面目に聞いている。
ネタを挟みたくなるが、一応真面目な話をしているから我慢する。
無駄に被弾したり死ぬのは嫌だからね。
「ここで想定されるのは2パターン。職業持ちがたくさんいる雑魚ラッシュパターンと、微妙にレベルの低いハイやジェネラルがいる強敵パターンだ。雑魚ラッシュパターンだとかなりめんどくさい。具体的に言えば敵の数が3桁が普通」
「…………100匹超え」
「めんどくさいだけじゃないですか……」
2人の顔が一気に嫌そうな表情に変わる。
雑魚ラッシュパターンはアイテム面で言えば凄く嬉しいがとにかく多くてめんどくさい。
βテスト時代の最大は確か1人300匹超えの8時間ちょっとだったかな?
苦情が結構多くて製品版でも更に修正されてる可能性があるけど、修正されてない前提で動く必要がある。
「設定では、たくさんいるから1階にまで出た、もしくは、強力なボスの命令で入り口付近を警戒している……らしい。2階で出るかどうかでどっちのパターンかは判明する。どっちでも負けは無いけど場合によっては長時間の作業になるってことは頭の隅に置いておいてくれ」
「了解です」
「分かりました」
アレンによる簡単な説明と全員の認識合わせが終わった後もゴブリンは定期的に現れた。
特に危ない場面も存在せず、全て軽く捻り潰した。
そして―
「宝箱発見……地味に長かったな」
宝箱発見と同時に誰かが若干疲れた声を出す。
無駄に曲がりくねった道や少しだけ坂になっている道、曲がった瞬間に行き止まりなど複雑じゃないけどめんどくさい通路ばかりだった。
「グラン」
「まっかせてよ~」
催促の声に答えつつ宝箱の前に移動する。
本来宝箱には罠が仕掛けられている。
盗賊の専用スキルで解除可能なほか、0.1%の確率でスキルを持たないプレイヤーも解除が可能だ。
つまりは俺は適当にやっても解除出来るってこと。
「はい罠解除っと……ゴミじゃん」
出てきたアイテムはこちら。
【アクセサリー】幸運のイヤリング 品質4
LUK+5 耐久 50/50
幸運が若干上がるイヤリング。
幸運が上がる装備品は貴重な為、高価で取引される
製作者:―――
幸運は100が限界値でそれ以上上がることが無い。
だから、俺が手に入れても装備する意味が無い。
バカでも分かる、俺にとってはゴミ以下の価値しかないアイテムだと。
「おーLUK関連のアイテムか。さっすがLUKカンスト勢、レアアイテム率100%は伊達じゃないな」
「開けた俺には不必要なゴミだけどな」
「まぁ、そう言うなよ。次の階に期待しな」
ダンジョンの宝箱は各階層に階層と同じ数だけ必ず存在する。
今いるのは1階、つまりは宝箱は1個だけとなる。
5階層のダンジョンなら15個、もしくは14個+ボス宝箱になる。
その内の1個がゴミとか悲しい。
「これってどうやって装備するの?」
「ん?ああ、チュートリアルだけじゃ分かり難いか」
トトから困惑声での質問がくる。
チュートリアルだと装備してみましょうで武器を手に持つだけだからな。
「装備したい場所に持っていけば勝手に装備されるし、外したいって思えば外れる。このゲームは装備スロットなんて存在しない。本人が動けるならどれだけ装備しても全て反映される」
装備スロットが存在せず、好きなだけ装備出来る。
誰だって思い付き、試すであろう防具の重ね着での能力上げ。
結論だけ言えば、服だろうが鎧だろうが動き難くなり被弾率がかなり上がった。
可能だけど、まだ信用出来るレベルに達していないのが現状だ。
ほとんどの生産職が既存の改良よりも新しい素材に飛び付くのが育ってない原因と言われてるけどね。
「服5枚着て革鎧と金属鎧着れば無敵じゃね?とか普通に考えて頭おかしいよな」
「革鎧がなければ動けてた説があるけど、そこじゃねぇよっていつも思う」
どこの世界にもバカはいる。
このバカはいいバカなことは確実だ。
「この階はもう用事無いし、次の階層への移動優先するぞ」
「は~い!」
元気よく返事をし、手を挙げると睨まれた。
キャラにあった行動してるのにその対応はひどいんじゃないか?
他愛ない会話やくだらない茶番をしつつも順調に攻略を進めた。
2階でも職業持ちが出てきたため、全員で溜息を吐いたのはちょっと面白かったな。
戦闘は適正レベル以上あるメンバーが多い為、何の苦労もしなかった。
簡単な罠やマッピングは全てサファイアがスキルで解決していた為、戦闘以外でも苦労はしていない。
1階ではMP温存、新顔へのレクチャーで戦闘をやや控えていたが、2階からは普通に戦闘していた。
まぁ、ここでも問題が起きなかったんだけどね。
そして、現在5階のボス部屋前にいる。
宝箱はきちんと15個全て回収し、残るはボス部屋だけだ。
今回のボスは雑魚ラッシュで確定している為、めんどくさいだけ。
修正されて雑魚の数が減っていることを願おう。
「これからボス……あー、雑魚ラッシュに行くんだが、装備の耐久確認をすること。最低でも30、50あれば特に問題視する必要はない」
被弾していないし防具は大丈夫だろう。
武器も柔らかい部分をちょっと攻撃してただけだし問題ない。
「全員装備品の確認が終わったみたいだな。じゃあ、作戦を説明するぞ。まず、このボス部屋の扉にある謎の数字を見てくれ」
そこそこの大きさがある扉には謎の数字『135』と書かれている。
雑魚ラッシュが確定していてこの数字、察したくないのに察してしまう。
「現実逃避したくなるが……十中八九これが出てくる数だろう。恐らくは推奨レベル×人数って所だ。修正されてるっぽいが………正直そこまで変わらないなって思った」
その気持ちはよく分かる。
一応修正入って数を減らしたのは理解できる。
理解出来るが普通に3桁出てくるとか苦行だからな。
「あー…まぁ、そこは置いといて。基本的には後衛は壁を背にして攻撃、タンクは後衛の守り優先だ。アタッカーは各自撤退ラインを決め、自由に動いてくれ。危なくなったらすぐに戻ってこいよ?最後にグラン、お前は全部に毒入れて来い」
「じゃあ最初はアレンに入れるね」
満面の笑みで殺す宣言をする。
そんな大変な仕事はしたくないです。
「にこやかにPK宣言するな」
「前向きに誠意努力を重ねてうんぬんかんぬん」
「意味が分からないがやりたくないって気持ちは伝わった」
「禿てるおじちゃん………僕、そんなにお仕事しなくちゃダメなの?」
「禿げてねぇし!」
怒られた。
本人曰く、紫の短髪らしい。
兜で蒸れて禿れば面白いのにな!
少し駄々を捏ねたが通じるはずもなく、やることになった。
まぁ、雑魚ラッシュは俺が一番輝ける戦場だからいいんだけどね。




