【第25話 探索してこい】
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2話同時更新で、こちらは2話目になります。
【第24話 大賢者の話……あ、うん】までお戻りください。
【第25話 探索してこい】
現実世界では季節も合わせてぎりぎり夕方、ゲーム世界ではお昼過ぎ。
トトがログインし、情報収集に出掛けた。
次に戦うボスでは俺が役に立たないから情報収集するように言った結果だ。
確定でこんなボスって所までは分からないだろうけど、多分こんな感じ……までは分かると思う。
そこまで分かれば俺が役に立たない理由が分かり、どう対策すればいいのかまで考えれるはず。
情報収集は部下の仕事かもしれないけど、最終的な判断はリーダーであるトトがしないとね。
「最近さ、DMGが気になってるんだよ」
「闇金か………あれはどうなのだろうな」
「オフゲだから普通に面白いと思うよ?」
「システム的には面白そうであるが……ストーリーがな…………」
「あぁ……まぁ、あの炎上作書いた人だろ?監督が有能だからセーフじゃない?」
「そう言って地雷を踏み抜いた回数はかなり多い。悪いが今回は様子見だな」
「マジかー……行けると思うんだけどな………」
トトが情報収集しているが、俺とフィンはのんびり喫茶店でお茶を飲んでる。
俺達が付いて行ったら意味が無いからな。
ダークマネーゲーム、通称はDMGもしくは闇金。
VRRPGであり、オフライン専用だ。
変わったシステムを採用していることから今話題になっている。
このゲームは全て金で解決する。
敵を倒してもレベルは上がらないけど、お金を払えばレベルが上がる。
レベルが上がってもステータスは上がらないけど、お金を払えばステータスが上がる。
どんなに努力してもスキルは手に入らないけど、お金を払えばスキルは手に入る。
NPC殺して捕まってもお金を払えば釈放される。
もちろん、ラスボスすらお金を払えば負けてくれる。
金額設定が未公開だからいくら積めばいいのかは不明だけどね。
ただ、このゲームには大きな欠点がある。
それがシナリオライターの存在。
この人、少し前にとあるゲームのシナリオを描いたけど……矛盾だらけで大炎上した。
しかも、本人はキャラの名前すら間違えると言う燃料追加行動もした。
そんな人がシナリオライター……不安要素が大きい。
「クソゲー引いたら引いただし、とりあえず買いかな」
「ある程度進んだら教えてくれ」
「あいよー。フィンは何か新しいの買う?」
「いや……農業ゲームがアプデされるらしくてな、少し戻ろうかと思っている」
「あれアプデくるの!?発売から何年経ったと思ってんの?」
「もう5年近く前だな……懐かしい。なんでも、難易度エクストリームが追加で、台風や疫病での畑全滅要素が追加されるとか」
「ちょっと心惹かれるんだけど……え?他には?」
「牧場要素も追加だったかな?ああ、野菜の値段が時価に変わるらしい」
「つまりは苺無双が潰れるのか……序盤辛いな」
「全難易度かは分からないがな」
僕らの農場。
VRシステムが一般利用され始めた時期に発売したゲーム。
ゲームらしさを残しつつ、現実に近い農業を体験できることでそこそこの人気がある。
ヒロインがとても可愛く、恥辱系の同人誌が今でも年5冊は出るほどだ。
ただ、全年齢対象のゲームだから手を出すことは出来ない。
ずっとヒロインを眺めてるだけのプレイヤーがいるとかいないとか……。
「くぅー……やりたいゲームがあり過ぎて本業無視したい気分だ」
「ふっ……同意出来るが、リーダーに怒られるうえに給料が無くなるから困る」
「いやー……ぶっちゃけゲームやらなきゃ遊んで暮らせるだけの金はあるんだよねぇ~」
「え?」
「ん?おー、おかえり」
「おかえり」
誰かの驚きの声が聞こえたと思ったらトトだった。
どうやら情報収集が終わったらしい。
「あ、うん。ただいま……え?そんな金持ってるの?」
「大会優勝賞金がウン千万だよ?それに、イベント出演料とかあるし雑誌のコラムとかインタビューとか……身近過ぎて忘れてるかもしれないけど、俺は世界一になったこともあるプロだからね?」
「いや……うん、そ…う……だけどさ………」
「けど?」
「一緒にコンビニ行ってどっちの弁当が安いかとか言ってる仲じゃん?それなのに金持ちって言われてもさ……」
「元々庶民だからな」
「ね。金銭感覚はそこまで変わってないよね」
ゲーム以外じゃ散財はしてない。
課金もガチャとかには手を出してないし、そもそも課金しないと勝てないなんて事はほぼない。
ちゃんと仕様把握してレベルを上げてアイテムを準備する。
それで負けたら原因分析して対策を練る。
そうやってコツコツ進めるのが好きだからね、課金して勝つことに拘ってないんだよね。
まぁ、ポーションの味とかは速攻で課金したけど。
「お前に一切還元されないお金の話は置いといて。情報収集は終わったの?」
「あー……えー……まぁ、うん。多分だけど……」
「多分?」
「グランが役立たずになるって事と、ここら辺で亀のモンスターが居なくなってる事をイコールで結んでいいのかなって思ってさ」
「いいよ」
「やっぱりかー……実験で居なくなったでいいんだよね?それで次のボスが亀系なんだよね」
「正解だね。で、どうするの?俺のSTRじゃ甲羅は当然として、皮膚に刺さらないよ?」
「だよねー……フィンは?」
「防げるし攻撃も通る……が、ぎりぎりと言った所だ。武器の耐久が壊れるのが先か倒しきるのが先かの勝負になるから真正面からはやりたくない」
「なるほど……NPC呼ぶのは確定なんだよ。で、誰を呼ぶかを考えてる」
「俺を抜く事は?ぶっちゃけ、一番いらないのは俺だよ?」
「…………分かってる。けど、突発的な出来事に対する対応力や搦め手はグランが1番でしょ?そこを切り捨てるのはどうなんだって……あとは、NPCをどこまで信用していいのかって所もある」
「うむ……一理あるな。NPCは初めて呼ぶ以上、どこまで計算に入れれるか未知数である。しかし、グランであればある程度は読める。何を優先するかをしっかりと考えるがよい」
トトはうんうん唸りながら悩んでいる。
俺らが一緒だからもあるけど、未だにトトは死んでないんだよね。
ダンジョンじゃ結構な回数死にかけてたけど、ちゃんとフォローしてたから死にかけ止まりだし。
俺とフィンはトトと一緒に居る時は1回も死んでない。
一緒に居ない時は……うん、ノーコメントで。
ただ、俺は戦闘で死んだ回数よりもキノコや河豚で死んだ回数の方が多いとだけ言っておく。
トトが迷ってるのを見ていると、ふと疑問が出てきた。
これは教えるべきか黙っているべきか……ヒントだけ出すか。
「トト」
「ん?なに?」
「NPC冒険者達の事覚えてる?」
「うん、覚えてるけど?」
「じゃあ、ミュウはパワー派?テクニック派?スピード派?」
「…………マジか」
「見た目で分かるから頑張って思い出してね」
「うわぁ……やべぇ………魔法とかわかんねぇよ………」
やっぱり知らなかったか。
呼び出し用カードは受け取ってもフレンドになったわけじゃない。
フレンドになっていれば、ステータスを見て判断出来る。
ちゃんとNPCにもフレンド申請してないトトの失敗だな。
「決まった」
「長かったね」
「ああ、長かったな」
「いや……どんな戦い方するかとか知らなかったから………」
「知ってる。俺が伝えなきゃ今回も呼ばなかったでしょ?それでトトは死んで終了だよ」
「う……」
「そもそも、待たされたこと自体はどうでもいい。待たせてごめんね程度で許してた」
「……そうだね、時間掛かるなら先に言うべきだったね………ごめん」
「苦しゅうない、面を上げよ」
「誰だよ」
「俺だよ」
くだらないやり取りで笑い合う。
どうやら3日前の事は完全に吹っ切れたようだ。
トトはあのイベントが終わってログアウトしてから2日間、このゲームにログインしてこなかった。
仕事が忙しいのか、1人になってから辛くなったのかは知らない。
その場は高揚感やロールプレイの影響で耐えれても、ログアウトして素に戻った瞬間に耐えれなくなる事は多い。
これで、トトは正真正銘、あのイベントを乗り越えた勇者になった。
「それで?誰が入るの?」
「リンとロコとイクスの3人。ちょっと掲示板で調べたけど、ミュウはテクニックタイプでリンがパワータイプだからリンを採用。火力要因と魔法の確認目的でロコ、万が一の回復要因でイクスの採用だね」
んー……悪くは無いかな?
欲を言えば俺を外してスーの戦い方を確認すべきだけどな。
まぁ、リア友外してでも呼ぶ必要があるのかって言われたら微妙だけどさ。
「まぁ、いいんじゃない?」
「うむ、悪くは無いな」
「反応悪くない?」
「ガチで言うなら選択肢が少な過ぎる。全部で5人しか呼べないんでしょ?普通に手札不足としか言えない」
「同感だな。近接5人、サポート5人、後衛5人の15人は最低でも欲しい」
「うへぇ……厳選作業めんどいな」
「見た目に拘らなければすぐに集まるけどな」
「気にする!」
「なら厳選頑張れ」
「憂鬱だ……」
見た目に拘るから憂鬱なんだけどね…。
真面目に攻略のみを考えればフィンが言った数すら少ない。
どんな状況にでも対応できるように幅広い職業を集める必要がある。
もしくは、相応のプレイヤースキルを持ったプレイヤーを集める。
そのどちらもやらない以上、苦戦は確実だな。
「トトが厳選を頑張る話は置いといて、実際に亀と戦う時の想定は?誰が何をするのかとかちゃんと考えてる?」
「一応は……」
「ほう、聞かせてもらおうか」
「まず、格闘家のリンに張り付いてもらう。とにかく、攻撃あるのみでヘイト稼ぎだな」
「女の子が亀の頭を攻めるとな!?」
「なんでそんな卑猥な言い方をするの?」
「どこが卑猥なんですか?具体的に何を想像したのか教えてくださいよ」
「ぐぎぎぎ……」
「遊んでいないで早く次を言うべきだな。あまり時間を掛けると、夜になる」
そう言えばそうだった。
次の街は鉱山にある鍛冶がメインの街。
だから、鍛冶場から出た煙で月が隠れ、夜はかなり見辛い。
まぁ、俺は普通に見えるし戦えるけどね。
「次はもう見えないってのは聞いた。ちょっと急ぐね。防御面はフィンに一任、とにかくリンを守って欲しい。で、俺とロコが合図を出してから魔法で攻撃、メインアタッカーだね。イクスは回復で、グランは搦め手?サポートで全体を見てほしい。正直、全体への指示出しをしながら戦うのはまだ無理だからね」
「ふむ……どう思う?」
「現状ある手札で考えれば良い手だと思う。吾輩も防御に専念すればかなり余裕があるし、万が一ミスしてもグランがフォローするのであれば心配事はない」
「うーん……」
「グランは何が心配なの?」
「亀って魔法防御どうだったっけなぁ……って」
「…………いや、流石に物理防御高いんだから魔法防御は低いでしょ」
「楽観視して死ぬのはいいけど、俺を巻き込むなよ?」
「うむ、確かに楽観視になるな」
「えぇ……どうすればいいの?」
「魔法が効かなかった場合はどうするの?アイテムの消費はどこまで許容するの?所謂暴走状態とか想定してる?俺やフィンはここから強くなるって伝えたよね?NPCは死んだらそこでお終いだよ?あの厳選作業が全部無駄になるんだよ?その程度の作戦で大丈夫なの?俺らが軽く言っただけで自信無くなるような作戦でいいの?」
「………ごめんなさい」
「1人で考えるからだ。吾輩達は横に居たぞ?」
「リーダーだから全部決めなきゃいけないってことはないからな?方針決めて丸投げもありだぞ?」
「そっか……そうだね………」
一応はトトがリーダーをやってる。
だから、やや厳しめに言ってる。
NPCの死亡を割り切れる性格なら特に言わないけど、無理だろうからね。
ちゃんと事前に考えさせないと。
「魔法が通る前提で考えるならさっきの作戦は?」
「悪くは無い」
「良くないの?」
「神官はバフ・デバフを使える可能性がある。どんなビルドをしているのかを把握してない以上、作戦を詰めるには厳し過ぎる」
「ぐっ……」
「まぁ……俺が本気出せば特定出来るけどね」
「え?どうやって?」
「装備に戦い方や属性が出るんだよ。例えば、火属性がメインなら髪の色や目の色が赤色になるとか」
これは全てのNPCに共通している。
筋肉の量や背の高さ、装備の色や性格、細かく見ていけばステータスやスキルは特定出来る。
ただ、細部まで思い出せるかと言われたら怪しいとしか言えない。
「ロコちゃんの髪の色は茶色、瞳の色も茶色。つまりは地属性の魔法は確実に持っている。これははっきり言ってやばい」
「なん……地属性は物理か!」
「正解。さぁ、戦力外の可能性が出てきました」
「マジでどうしよう……」
「…………そろそろ正解を教えたらどうだ?」
「んー……まぁ、このゲームのボスの事を知らなければ正解に辿りつかないよね」
「正解?このゲームのボス?」
「このゲームのボスは、元となった動物の習性を引き継ぐ。今回の亀は陸か?海か?」
「近くに海は無いから陸亀だね」
「陸亀は冬眠させると死ぬ種類がいるんだよ」
「へー……え?あ、え?そう言うこと?」
「いきなり魔族と融合させられ、身体がまだ馴染んでない状態で一気に身体が冷えたらどうなる?」
「………死ぬ」
「答えを教えちゃったけど、これが正解なんだよ。この情報も街で聞ける。ちゃんと近場にいる亀の弱点を聞いてきたか?」
「………聞いてませんでした」
「良い勉強になったな」
「はぁ……ならめっちゃ簡単じゃん」
「まぁな。ただ、先程言った通り想定だけはしておけ。全ての敵が運良く弱点を付けるとは限らないし、イベントで出てくる敵は理不尽な事も多い。今回はその練習だと思え」
ここら辺は微妙なんだよね。
運営が、開発が用意した弱点を付いているだけだ。
用意されたモノを使って勝つのは悪くないけど、想定通りの行動をするのも面白くない。
真正面から力でゴリ押すのも楽しいからね。
価値観や重きを置く場所次第で活用するかどうかが決まるから何とも言えない。
「ちゃんと調べてれば……思ってた以上にヒントって落ちてるんだね」
「本来なら探索は1日掛けても足りないくらいだからな。たった数時間で全部調べたと思っている方が問題だ」
「俺らはβテスト時代からやってるし、情報集めはきちんとやってる。街中でNPCに聞く事もそうだけど、掲示板で情報収集もしてる。ネタばれを許容するかどうかだけど、掲示板で攻略法を見るのも1つの手だからね」
「だね……でも攻略法見るのはなんかなぁ……」
「ストーリーを楽しむのならイベントが無いただのボスキャラは見ても良い気がするけどね。今回はアガレスいないし会話も無く戦闘だからね」
「でも居ないってのは分からないと思うんだけど」
「NPCが魔族を見たって話をすれば次の戦闘で魔族が出る。しなければ出ない。結構簡単に判断付くぞ」
「まぁ、でもここら辺はアレだよね。俺とフィンが情報を与えるだけで探索させなかったのが悪い。今回だけで全部を覚えろは流石にきついと思う」
「でも覚えろって言うんでしょ?」
「うん」
「鬼畜め……」
「NPC殺していいなら何も言わないよ?」
「ごめんなさい……」
何時間も掛けて選んだ精鋭だからね。
思い入れも強いと思う。
それが死ぬってなると流石にね。
それに、前のイベントが死に対する価値観を変える物だから。
余計に死なせたくないって思いが強くなる。
それ自体は悪くないけど、変に拗らせると面倒だからね。
ちゃんと起動修正してあげなきゃいけない。
「さて、正解も教えたし出発しますか」
「亀程度であれば問題無かろう」
「なんか一気に緊張感が無くなったな……」
「緊張し過ぎだったからね。ちゃんと調べたなら一部の敵以外は簡単に倒す方法が準備されてるから」
「今後はもうちょっと情報収集に力を入れるか……さて、切り替えるか」
「また僕のお仕事が無い戦闘か……」
「ふふ、グラン君には日ごろお世話になっていますから、そう落ち込まないでください」
「僕に出来ることを頑張るから大丈夫だよ!」
「お願いしますね……それでは、出発です」
モチベがやばい……。
あと、DMGをやってみたい。
似たようなゲーム無いですか?




