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【第21話 これもあなたの為だから】

しばらくは1話更新です。

【第21話 これもあなたの為だから】



ここは中央にある闘技場。

四方にある闘技場よりも大きく、活気がある。

全ての試合は満員であり、常に歓声と怒号が飛び交う。


レート戦の申し込みもこの闘技場で行われる。

ただ、手の内を晒さない為、レート戦は原則観戦不可となる。

両者が公開許可を出していた場合は観戦可能になるが、ほぼ無い。

誰だって手の内を晒すのは嫌だからしょうがない。


そして、俺は今闘技場に立っている。

目の前には魔法使いの優男がいる。

その表情は凄く嫌そうな顔をしており、俺と戦いたくないようだ。

けど、ここに立った時点で勝負しなければいけない、諦めてもらおう。

さぁ、勝負だ。







「待てや」


「はい」


「なんで乱入してくるの?」


「トトの成長を願って……」


「さっきフィンも乱入してきたよ?」


「これもあなたの為だから」


「そう言って2回目だよね?お前らが乱入してくるせいでクリア出来ないんだけど」


「これもトトの成長を願って厳しく接してるだけだから……」


「厳し過ぎるわ!」


「ほら……ライオンも子育てで崖から落とすって言うじゃん?一緒だよ」


「違うから。難易度が桁違いだから」


トトがうるさい。

ただ単に、トトのお使いクエストに乱入しているだけなのに。


「まぁ……気にするな。早く構えろよ」


「気にしないとか無理だろ……」


『Ready.....』


勇者ルートの闘技場では、普段通りか闘技場専用かを選べる。

普段通りを選ぶと、制限が全て無くなり、相手がレベルの暴力で襲ってくる為、闘技場専用が推奨されている。

自分よりもレベルが10や20高い相手に勝てる人は少ないからね、しょうがない。


もちろん、トトは闘技場専用を選んだ。

何度か調整してPVP用にステータスやスキルを弄っていたのを真横で見ていたから知ってる。

そして、挑戦者の俺も闘技場専用のステータスになっている。


だから、俺は銃を構える。

LUK100のエンジョイ勢ではなく、勝つことに拘るプロの姿で、構える。


『.....Fight!』


合図とともに全力で近付く。

トトは多少AGIに振ったけど、俺からすれば振って無いに等しい量だ。


「遅いよ」


「むっ……り!」


俺が一瞬で間を詰めたら、咄嗟の攻撃か杖を振って来た。

そんな咄嗟の攻撃が俺に当たると思っているのか?


「攻撃が雑。それに、次に繋がる動作じゃない」


そう言いつつ、俺はトトの脛を蹴る。

スライディングで、全力ダッシュの勢いを全て乗せて。


「いっ!?~~~っああああああ!」


「ほら、隙を見せない」


「ふっ……ざけんなっ!」


「魔法使いだろ?魔法使えよ」


「なら離れろや!」


「嫌でーす」


脛を蹴られたトトはそのまま回転し、顔面から地面に落ちた。

その際に杖を落とし、完全に攻撃も防御も出来なくなった。

ハンデとして、手の届く範囲で見てる。

一切追加攻撃をしないで、見てる。

めっちゃニヤニヤしながら、見てる。


「隙有ぃぃぃいい!!!」


「そんな物はない」


「くそがああああああ」


起き上がり際にタックルをするのは良い判断だと思う。

けど、俺の方が速いのに声出しながら攻撃したらダメでしょ。

PVPにおいては全てが俺の方が上なのに忘れちゃダメ。

もっと考えて足掻かないと。


「取った!」


「はい、ダメー」


「チッ………死ねばいいのに……」


タックルと見せかけての杖を拾いに行く。

なるほど……中々に素晴らしい行動だ。

けど、また声出してる。

何が目的かばれたら対策するのは当然だろ?

もちろん、威嚇射撃で足止めだ。


「弾って無限だっけ?」


「今使ってるのは無限だね」


「状態異常のやつは?」


「各種10発だけど、LUKが0だから状態異常にならないし、通常弾以下のダメージしか出ない」


「属性弾は?」


「各種10発。けど、使うと一瞬で終わるから使わない」


「舐めプかよ……」


「使わせてみろよ」


「使って早く終わらせろよ。次の人と戦った方がまだ見込みがある」


「次の人はフィンか武王だね。両方プロだよ」


「なんで俺の知らないプロが出てくるんだよ!!」


「俺とフィンが育成してるって言ったら興味あるって言い出してさ……面白いから紅蓮君以下ってのは黙ってる」


「性格悪いな………」


「知ってる」


会話で時間を作ろうとしているのは良い兆候だ。

時間が無ければ冷静になる事も作戦を考える事も出来ない。

通用するかは別で、とにかく通じるかもしれない策を思い付き、実行するのが大事。

少しでも勝率を上げる為に足掻き、咄嗟での判断を鍛えてほしい。


「もう少しさ……ハンデ付けない?」


「これもあなたの為だから」


「ちょっとレベルが高過ぎるんですよ……」


「これもあなたの為だから」


「楽しい?」


「めっちゃ楽しい」


「腹立つなぁ………ここぉ!!」


「はい、そこ」


なるほど……レベルを下げるお願いをしつつ近付くね。

ぶっちゃけ褒めれる手段じゃないけど、油断する方が悪いから良い手だ。

まぁ、俺には通じないけどね。


「痛い……銃使えよ………」


「使ってるじゃん」


「それ間違ってるから……」


トトがうるさい。

銃を使って、トトの脛を殴る。

ちゃんと銃を使って攻撃してるから問題無いはずだ。


「弱い者いじめだー」


「違うから。これただの初心者狩りだから」


「もっと性質が悪いよねそれ」


「間違えた………あの………あれだ。可愛がりってやつ」


「それ良いイメージ無いんだけど」


「俺も無いかな?」


トトが何かを操作している。

おそらくはアイテムを使おうとしている。

このタイミングだと……杖を回収して魔法を使えるようにするのが最優先だ。

なら、俺の行動を阻害する系……閃光玉か煙玉かな?


「くらえっ!」


「んー……?」


ボールを投げてきたのは予想通りだ。

けど、閃光でも煙でもない。

このボールの色ってなんだっけ……?


とりあえず、避けた。

途中で何かが起こるかもと警戒したけど、何も無かったから怪しい。

何らかの布石か……ん?


「これで通る……はず!」


トトが地面に煙玉を叩き付けた。

なるほど……普通に煙玉を使おうとしたら俺が邪魔をする。

だから、俺の隙をつくろ―――


ドガーン!!


は?

何の音……って、ああ思いだした。

さっきのは衝撃を与えると爆発する玉だ。

後ろから爆風が来て、煙を晴らす。

これじゃ煙玉の意味が無いんじゃ―――


「まぶしっ!」


「っしゃぁ!」


完全に油断してた。

煙でトトが見えなくなり、後ろの爆風に気を取られた。

トトが閃光玉を使うのに気付かず、普通に食らった。

これでしばらく……10秒ほど10cmくらい先しか見えない。

その10cm先も薄らとしか見えない為、本当に危ない。


「回収完了……アイテムもちゃんと組み合わせれば通じるんだよ!」


「おー……すごーい」


「ははははははは、これで俺はプロに勝った」


「VRSのプロは音で敵の位置を補足出来るんだよ?」


「……………………」


「俺が」


その成長を認めよう。

その成長を喜ぼう。

だから、少しだけ本気を出す。


「見えないだけで」


VRSだと閃光弾や煙玉は普通にある。

見えない状況で戦うのは慣れてる。

だからこそ、油断して食らったのは反省点だけどね。


「戦えないとでも?」


トトに向かって真っすぐ銃を構える。

俺の雰囲気が変わったのが分かるのか、やや緊張している。

敵を目の前にして緊張するとかダメだよ。

それに、回収した時点で攻撃しないのもダメだね。






「おつかれ~」


「もうやだ……」


「ふむ、今回はどうだった?」


「アイテムの組み合わせでいい感じにしてやられたかな?」


「ほぅ……被弾したのか?」


「いや?閃光食らって視界が無くなっただけ。そのまま俺が勝った」


「……………視界が無くなったのに勝ったのかよ」


武王が驚いている。

VR格闘じゃ視界が無くなるなんて事あり得ないからね。

VRSだと普通とまではいかないけど、結構あるから対策くらいはあるよ。

てか、居たんだ。

トトに冗談で挑んでくるよって言ったけど、居るとは思わなかった。


「………誰?」


「ん?おう、俺は武王って名前だ。よろしく」


「武王………?プロゲーマーか!すみません!俺雑魚何で挑まないでください!お願いします!」


「え?あ、おう……分かった………」


「必死過ぎて笑う」


困惑顔の武王に、必死に頭下げてるトト。

ニヤニヤしてる俺に何となく理解しているフィン。

周りから見たら意味の分からない集団だろうね。


「そもそもとして、俺はグランに挑みに来ただけだぞ?何で俺が知らない奴に挑みに来たみたいになってるんだ?」


「へ?…………おいグラン!」


「うん、嘘だよ?普通に考えたら挑まれる訳無いじゃん」


「くそがあああああ」


はははははは、やめろ。

街中じゃシステムの補正が無いから遅くて非力なんだよ。

ちょ、くすぐるのはやめろ。

待て待て待て待て、落ち着け。


「わっほい……助けて武王!」


「はぁ?意味が分からんから嫌だ」


「グランが全面的に悪い」


「あー……あれか?勇者ルートのお使いで乱入された口か?」


「うむ、その通りだ。吾輩とグランで対人戦の基本を教えていた」


「は?交代で乱入された時点で勝てないんですけど!?進まないんですけど!?」


「はっはっ、変な口調」


「てんめぇええええええ」


「必殺、武王ガード」


武王を挟んでちょうど対角線上に位置するように移動する。

これで武王が居る限り俺に近付けない。

これこそ最強の護りだ。


「うぜぇ」


「ちょ」


最強の護りは終了した。

武王が俺を掴み、トトの傍に放り投げたからだ。

くっそぉ……身体が小さくて軽いのが仇になったか。


「くらえ!見よう見真似プロレス技!」


「あだだだだだだだ痛い痛い痛いダメダメダメダメそっちに曲がらないからやめてえええええええ」


「………楽しそうだな」


「うむ、賑やかで中々に楽しいぞ」


「俺はいいや。こうやって賑やかに遊ぶよりも戦ってる方が楽しい」


「闘いが楽しいか………よく分からないな」


「だろうなぁ。VRS組のほとんどが冷静に、忠実に動く事を基本としてるからな」


「トリガーハッピーでもいいのだが、アレは性に合わないからな」


「お前ら助けろぉおぉぉおおおおおぉおおおおぉぉぉおおお」


なんか楽しそうに会話してる。

助けて、いや、本当に痛くて辛いから助けて。

マジでお願いします……。


「トト、それくらいにしておけ。あんまりやると、後が辛いぞ」


「……………だね。絶対にやり返してくるからここらで止めてやるか」


「チッ………童貞の癖に…………」


「あぁん?」


「やぁ、チェリーボーイ。ソロプレイは楽しいかい?」


「ぶっ殺す!!」


「何で助かった瞬間に煽るんだ?」


「あれがグランだからだ。あいつにとって、仲の良い友とはああやってじゃれ合うのが基本だ」


「相変わらずだな………。そろそろグラン貰っていいか?」


「構わん。この後は特にやることはない」


「よぉーしっ!グラン、とりあえず10戦くらいでいいから殺ろうぜ」


「え?嫌なんd「隙有!」ぐぁ!」


くっそ……。

童貞の分際でしつこいぞ……。

システムの補正さえあればこの程度余裕なのに……くそっ。


「そのまま押さえてろ!闘技場まで連行する」


「甘いぞ武王!必殺、ログアウト!」


「あ、てめ!」


両手が塞がってても思考操作でログアウトは可能だ。

この後は何も無いからこそこの手が使える。

じゃあな。





グラン「攻撃が雑。それに、次に繋がる動作じゃない」


武王 「回避が雑。それに、次に繋がる動作じゃない」


グラン「や め ろ」

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