「12歳-好きな食べものはお茶漬けで、-」
ついに後醍醐との初対戦。
だがその前に、菅野にも青春があって……?
※7,000字程度です。
※思い出しながら書いてます。
※シリアス注意。若干BL注意報。
2007年6月某日昼休み……
藍竜組付属中学校 中庭
菅野
俺には好きな人が居る。
なんてこと裾野にも友達にもこの時言うてへんかった。誰かって、前も話そうとしたんやけど、同じグループに居る子や。名前は龍勢淳。陸上部に入ってるで。
あの時は「終わり終わり!」言うて焦っててごめんな。
淳には義理の兄貴が居る言うてて、あの時はまだ会ったことは無かったけど、義理の兄って羨ましいな思った記憶はあるで。武器は妖刀。刀のことはようわからんからパスやけど、太刀筋は紫とも黒とも言いようのない感じやってん感動したで。
せやけど、その子は固定でいつもいる訳とちゃうくて、良く言えば誰とでも仲良くしようとする子やってん。ただ、俺らのグループが1番話が合うらしくてよく居るってだけやな。
う~ん……好きになったタイミングとかは無いねん。吊り橋効果やらノート貸して貰たとかでも無いし、何となく……居心地がよかったんやろな。
せやから最近2人で抜けて、廊下、中庭、屋上で話すことが多くなってきたし、あいつらは特に何も言うてこんし、俺は「1番仲の良い好きな子」思てたんやけど、相棒の友達が情報屋やと何かと面倒やということをこの年で思い知らされたんや。
その日も中庭の端にある木陰の3人掛けベンチで、好きなテレビ番組の話と音楽の話で盛り上がってたんやけど、そこに裾野が”珍しく”1人で、”珍しく”学ランを着て、”珍しく”黒縁眼鏡なんてかけてふらっと来たから、大きく手を振って呼んだんやけど、何やろ……浮かない顔? ちゃうな、語彙力が無くてわからんけど、複雑な表情をしてたんや。
「裾野、どないしたん?」
俺がポンポンと自分の隣を叩いても、裾野は乗り気とちゃうかってん。
たしか、渋々座った感じやったな……。
「いや? 隣の子は彼女?」
裾野が小指を立てて言うけど、俺にはそれが何の意味かようわからんかった。
せやけど淳は、両膝を合わせたビシッとした姿勢で「違います」とキッパリ言うてくれてん。
「そうか……。じゃあ菅野、こんな可愛くて良い子と仲良いこと、どうして俺に言わないのかな?」
裾野は俺の肩に手を回してニヤリと口の端をゆがめて耳元で言うけど、そないなこといちいち言う奴って居るの?
「別にええやんか、付き合ってる訳やないし……。そういう裾野は居らんの?」
俺が横目で裾野を睨みつけながら言うと、裾野はフッと鼻で笑ったんや。ほんまムカつくなあ……!
「居たら違約金でも請求するのか? ……失礼。名前は?」
裾野は咳払いを一つすると、淳はパッと明るい笑顔になり、
「龍勢淳です。菅野と同じクラスで、陸上部に入ってます。」
とハキハキ言うから、ほんますごいと思うで。若干イラついてる裾野に笑顔で対抗や。俺なら出来へん。ま、裾野には俺を捨てることもできるしな……。
「ご丁寧にどうも、裾野だ。君の4つ上のA型。」
この時裾野がA型ってことを初めて知ったんやけど、めっちゃ予想通りでつまらんかったわ。
細かいし、細かいし、細かいし、細かいし、やかましいな! ……って、これ今だから思えるんやで?
「そうなんですね。よろしくお願いします。」
淳はそこで言葉を区切ると、一気に無表情になったから怖かったで。やっぱ、イラつき気味の裾野に笑顔はキツいやんな。めっちゃわかるわ~。
すると裾野はまた俺の耳元で、
「放課後、”絶対に”寄り道しないで鳩村のところに行って、後醍醐傑の情報を聞き出してね。鳩村なら組の屋上に居るから。」
と、ホラー映画やったら、寄り道して死ぬパターンになりそうなくらい裾野はゆっくり低い声で言うてて、今日は裾野には逆らわんておこうと心から思ったから、無意識に何度も頷いてたで。
「じゃ、またね。」
裾野はパッと明るい声で言うと、俺の頭をポンポンと撫でてから早歩きで行ったで。
そしたら淳は制服のスカートをぎゅっと握って、うつむき加減でこう言うたんや。
「……私もA型や。」
「いやいや、そこ気にするとことちゃうで? 俺はそんなこと気にせえへんし。ほら、俺がO型や~言うても嫌やないやろ……?」
と、焦って早口で言うと、淳は顔をあげて嬉しそうに頷いてくれたで。
ふぅ……ほんまよかったわ~。
「菅野。」
「何や?」
「もうちょいしゅかり伝えたほうがええんちゃう?」
淳は眉を下げて心配そうに言うから曖昧に頷いたんやけど、裾野に強く言える訳あらへんやんか……って、淳にはまだ事情は話してへんかったからなんやろうけど。
それから昼休みが終わるまで2人で話して、授業も終わって放課後になったんやけど、淳の表情が暗かったのが気になってん話しかけたんやけど、俺の脇を通り抜けてどこかへと走って行ってしまったんや。
そんなに部活の時間ギリギリって訳でもないんやけど……もしかして、大会が近いんかな?
放課後……
藍竜組 屋上
菅野
屋上の住人こと鳩村はん。とか言うたらキレられそうやけど、銀もやしはあの時みたいにしゃがんで鳩に餌をやってたで。
試しに”アサシン”で物陰に隠れつつ近づいていると、
――クルッポー! クルッポー!
と1羽が鳴きはじめて、どんどんつられて鳴き始めて俺はあまりの煩さに耳を塞いだんやけど、そしたら後ろから脇腹をちょんと指で刺されてん。
ハッとして振り返ったら、しゃがんだ姿勢のまま微笑む鳩村はんが居ったんや。
……鳩村はんのこと、ずっとこの時まで弱いと思ってたんやけど、情報屋やからこのくらいは当然なんかな?
でも、もし鳩村はんが武器を持っていたら……俺は死んでたんやな。
「菅野……くん。」
長い銀色の前髪から覗く瞳とオーラには何となく後悔が見えたんやけど、別に怒ってへんよ……?
「なんや?」
「せ、隻眼さんについて……だよね?」
目をしきりに泳がせて言う鳩村はんの声は、本当に蚊と勘違いする程か細くて聞き取りづらい。
せやけど文字を打つ時の目は真剣そのもので、鳩村はんの携帯のボタンにだけは生まれ変わりたくないと誰もが思うで、きっと。
ほんで5分くらいで打ち終わると、震える手で送信ボタンを押してん。
そこには夥しい量の文字……流石情報屋様やな~……あはは。
間違っても口頭で言いたない程の文字量、余白改行含めて全部で3,000字。1人の人間についてのレポートみたいやんな。
『とりあえず戦闘に使えそうな弱点は、隻眼であること以外は特に無し。』
………………嘘やん!?
このクソ依頼主、どうして俺に依頼したんやこん畜生!
「鳩村はん。どないして勝てばええ?」
藁にもすがるような気持ちで言う俺に、鳩村はんは首をひねったんやけど、すぐに目を一瞬見開いたんや。
「……今の……僕みたいに…………やってみたら? 隻眼なら……片方、見えない……から。」
「それや! 耳も塞げれば俺の勝ちやんか! よっしゃ、ありがとう鳩村はん!」
ついつい嬉しなった俺は鳩村はんの手を取って、ぶんぶん振り回してしまってん。その時の鳩村はんの顔は、ほんま青ざめてたで。ごめんなさい。
「あのね……?」
鳩村はんは隙を見て俺の手からスルッと離れると、10秒もかからんくらいで画面を見せてくれたんや。
『裾野くん、最近イライラしてるんだ。ちょっと変わってるところがあるから、”行動”に気を付けてみて。裾野くんだって完璧じゃないよ? それに――』
まだ読んでいる途中なのに、鳩村はんは携帯を閉じて笑顔で「またね」言うてどこかへ行きはった。
たしかに、鳩村はんが屋上の扉を開けた瞬間に何か不穏なオーラは感じたのやけど……誰やろ?
依頼日当日……
とある大通り 昼
菅野
関東は広いな大きいな~……って、オトンがよう歌ってたんやけど、関西の方が大きいやろシバくぞ。
まぁええわ。ほんで俺と裾野の武器はカムフラージュしとるけど、普段着で”関東の中心”なんて言われてる交差点を歩いていたんやで。
依頼日程が昼やから、間違ってもあんな制服は着られへんって裾野が言うてたけど、たしかに歩いてみるとようわかるわ。皆最先端の奇抜なファッションしてはるわ。
それに比べれば、俺らの恰好は地味でそんなに目立ってへん筈やったんやけど、渡り終わって裏通りに入った途端に前から来た怪しげなお兄さん2人に話しかけられたんや。
「ねぇねぇそこの茶髪のカッコイイお兄さん。モデルに興味ありません?」
「君ならトップモデルになれるよ!」
と、うさんくさい言葉と顔で言う2人に言い返そう思ったんやけど、裾野がそれを制したんや。
「悪いけど、俺たち急いでいるので。」
そう意味ありげな笑顔で言うと、「首にしがみついて」と耳元で言われ戸惑う俺をひょいとお姫様抱っこして、初めて藍竜組に来たときみたいに電光石火で走り抜けたんや。
俺の記憶が確かなら、ビルの壁も走ってた気がするで?
ほんでふと後ろを振り返ると、2人の首が……無い?
「え、あのさ……裾野?」
目的地である山に着いても降ろしてくれない裾野を見上げて言うと、裾野は全く疲れてなさそうやった。
「ん?」
裾野は俺をゆっくり降ろすと、サッとどこかの陰に隠れてしまってん。
そう言えば、俺1人の設定やったな。
とりあえず武器だけでも出しとくか……はぁ。
この山……たしか多村麗華を弓削子っていう殺し屋が殺した場所やったな。
ここの話は騅の話で出たから俺からは特に話さへんかったけど、多分裾野ならもっと詳しく話してくれると思うで。
それにしてもあの時の俺は……誰やったんやろう?
「死ぬぞ?」
山のどこかから声がした。近いような遠いような。
こういう時はたいてい……後ろやろ?
そう思って振り向いた時には、飛び上がる黒い影が一瞬見えたんや。
そして俺の目の前に着地すると、薄い唇にかかった前髪をふっと息で払い、殺気の宿った隻眼で俺を睨んだんや。こいつが間違いなく後醍醐傑やな。
「俺もなめられたもんじゃねぇか。……ったく、どこぞのモデルを連れてきてやがる?」
傑は銃口を足先から頭に向けながら言う。これって完全になめられてるの俺なんちゃう?
「モデルとちゃうで。これでも殺し屋や。」
「へぇ。裾野さんも面白いモノを相棒にしたもんだ。それで、毎日してんのか?」
傑は銃口で顎を掻きながら好奇の目で見てくるんやけど、誤射したら大変そうやんな。
「何をや?」
「うわ……裾野さんの”相棒”になったのに、まさか我慢させてんのか? あの人いつまでもつかな~。もしかして寝ている時に少しずつやっちゃってんのかな~?」
と、傑は辺りを見渡しながらわざと遠くに聞こえるような声で言うんやけど、さっきから裾野の悪口言うてるんかな?
せやけど、一通り見渡したところで俺の方に向き直って、
「……まぁここまで言っても本人が出てこないとなれば、お前1人ってことでいいんだな?」
と、口の端をわずかにあげる傑に、やっと俺の思考回路が追いついたんや。
わざとムカつかせる作戦やったんやろ!? 賢い裾野がそんなことで出てくる訳ないやんな。
「せやで。」
俺が短く言葉を切ると、傑は銃口がやたら大きい銀色の拳銃を2丁構えて何発も撃ってきたんや。
初めて敵意をもって撃たれる銃弾は、やっぱり訓練で総長の撃つ迷った銃弾とはちゃうものがあったで。
俺は訓練通りに避けて、距離を離したがる相手に対してどんどん詰めていく。
体育学年ナンバー1をなめたらあかんで!
そう思いながら隙を狙っていたんやけど、やはりリロード0秒。くるっと1回転したらもう撃ってくる!
それも薙ぎ払うには、イマイチ時間も距離も足りないところでやりよる。
そうした俺の焦りを感じ取ってか、銃口はさっきより小さいけど、高級感のある銀の装飾付きの黒い拳銃2丁に持ち替えた傑は、あえて俺の槍を狙って撃ってきたんや。
――こんなん、弾けばええんやろ?
俺は高をくくって銃弾を薙ぎ払おうとしたんやけど、銃弾が薙ぎ払った風で…………避けた?
そんな訳ない! 薙ぎ払いで飛ぶ銃弾は無いて総長も言うてたのに?
そのまま唖然とする俺の左肩に当たった銃弾は、貫通することもなくとどまったんや。
「いっ……」
その銃弾はしばらく俺の肩にとどまって鈍痛を与えた後、痛みが急に消えてん意味わからんやろ?
それから傑は急激に俺との距離を詰めて、眉間にその銃口を突きつけたんや。
初めて突き付けられて、俺の眉間を中心にどんどん身体が冷えていく感覚がしてきたんや。
もう死ぬのかもしれない。後醍醐傑との実力の差が……悔しすぎるけどあったことで。
「さて……俺も暇じゃねぇんだ。裾野さんによろしく伝えておきな。『先に逝ってしまってすみませんでした』とでもね。」
傑は余裕そうな笑みを浮かべて言う。
眼には溢れんばかりの殺気の色が色濃く、銃を握る手は震えてへんかった。
せやけど俺もここで死ぬ訳にはいかんやろ?
――耳を塞がせ、隻眼の無い方へ回れ。
そうや……鳩村はんのことを思い出せばこんなこと!
俺はニッと歯を見せて笑うと、見えない方の目側に回りこんで耳を塞がさせるようなこと……とりあえず叫んでみたんやけど、傑は苦い顔をしただけで特に嫌がる素振りも見せなかったんや。
でもそれで十分やった。
俺は槍を振り回し、首を斬りにかかったんや。せやけど……怖かってん。
そんな槍筋に迷いの出ていた槍を、振り向いて見事に撃ち落とすと、俺の腕をぐいと引き背後から抱きかかえ、銃から銃剣を出し俺の首元に当ててん。
本当に死ぬ。
息のあがった俺の思考回路は、もう正常に動きそうになかったんや。
全身から汗が吹き出し、首筋を背筋を脚も伝う。
「死ね。かわいそうな貧乏人。」
傑の銃剣が俺の首筋に僅かに刺さる…汗と血が混じって俺の心臓はドグドグとその小さい傷から血を吐き出させる……。
何なん……? かわいそうかわいそうって……貧乏人の何が悪いんや。
せやけどもう……俺は――
「菅野!!!」
裾野の張り裂けんばかりの叫び声と共に飛んでくる赤い斬撃。
俺が咄嗟にしゃがむと、避けようとした傑の銃が真っ二つに割れたんや。
「ちっ!! 裾野さん……!」
傑は割れた銃を回収し、尻尾を巻いて逃げてん。
安心感からへたりと座り込む俺を無慈悲の目で見下ろす裾野。
今度は裾野に殺されるん……?
「帰ったら……お仕置きだ。」
裾野の無慈悲な目は、俺の心の奥に縮こまっている勇気軍を更に撤退させていったんや。
ここじゃなくて部屋で殺されるんやな……はぁ。
部屋に戻り電気をつける裾野の後ろ姿は、あの時の赤黒いオーラがムンムン漂っていて、俺の人生は後数秒なんやろな、なんて考えていたんや。そしたらベッドルームに入ったんやけど、すぐに腕を引きちぎれそうなくらいの力で引いて、ベッドに押し倒されたんや。
あぁなるほど。ベッドで殺せば血の飛び散りも最小限で済むやんか。
でもその目には殺気が無い。オーラも消えている……?
「菅野。」
「……?」
目を見開く俺に、裾野は更に身体を近づける……ほんまに俺は殺されるん?
「お前はこうやって男をベッドに誘って殺すか……」
裾野は俺に聞こえるか聞こえないかくらいで呟いたと思ったら、急に喉元を潰さんとばかりに首を絞め上げ、
「槍で殺して依頼者様を救うのと……!! お前はどうしたいんだ!?」
鼓膜が引き裂かれそうな声で叫ぶ裾野の大きく見開いた目と赤い顔に声……一生の俺のトラウマになったんや。
あまりの怖さと覇気ってやつでな……。
ほんで俺が恐怖から過呼吸を始めた頃に、裾野は俺の隣に寝転がって髪を撫でてきたんや。
「……悪い。ガツンと言い過ぎたかな?」
裾野は全然過呼吸の収まらない俺の様子を見ても焦らへんまんまで、むしろ胸をゆっくり、でも安心させてくれるように優しく叩いてくれたんや。
「過呼吸かもしれないから、30分くらい安静にして。……本当に言い過ぎた。」
裾野はそう耳元で言うと、ずっと……30分くらいは一緒に居てくれたんや。
そうして30分くらい経ったんかな。
俺の過呼吸が収まって、お礼を言おうと裾野の方を見ると、急に顔を赤くして俺に背を向けてベッドに座ったんや。せやけど、高そうなジャケットには1円玉くらいの穴が……。
「ありがとう、裾野。……ジャケット、穴空いてるで?」
そう言うと、裾野は慌ててジャケットを脱いで確認してん。せやけど、溜息をついてゴミ箱に向かおうとするから、
「もったいないで。高そうやのに。」
と、膨れ顔で言うてみたら、「は? 何で?」とでも言ってきそうな、何て言えばええのかな……バカにしたような顔で俺を見下ろすんやけど、名家様はそんな小さな穴程度で捨てるん?
「いや、穴が空いてるだろ。」
「……」
俺は居ても立ってもいられへんから、起き上がって裾野からジャケットを引ったくったんや。
全くこれだから名家様は~……やろ?
「そないな小さな穴くらい、縫えば直るで。」
「そんな頭痛くらい、寝れば治るみたいに言うな。」
「ほんまやもん。針仕事はいっつも俺がやってたで。」
「……そうか。針仕事も大事だけど、今日のようなことが二度と無いように。」
裾野は目を伏せてそう言うと、すぐに「報告に行ってくる」言うてすぐに出てってん。
俺は誰も居ない部屋でちゃちゃっと針仕事を終わらすと、すぐに風呂に入ってん。
消えない傷。
それって今日まで胸の下の火傷と太腿の印だけやと思ってた。
せやけど、今日初めて……トラウマという言葉の本当の意味を知ったんや。
――それと日に日に黒くなる太腿の印。
このまま真っ黒になって消えへんかな……? けばけばの生き物になって。
……なんてな!
でも裾野に会えへんまま中途半端な殺し屋になったことを考えたら、少しは気が楽になったで。
よっしゃ、詰まった時は風呂やな! 全身が洗われる感じがするし。毎日入れるんやし?
俺だって体育と裁縫は1位なんやから、明日から怒られへんように頑張ってみようかな。
現在に戻る……
裾野、菅野&騅の部屋
菅野
「質問でーす! 淳さんとは――」
「ねこぱーんち!」
……まぁええわ。
騅とリヴェテは、淳について知りたがってはるけど気にせんとこ。
「そう言えば菅野。お前の太腿の印は今、どうなってる?」
相棒でも知らんのは当然のことや。まさかこの歳になって一緒に風呂に入らんし。
「……」
でも言えへん。俺は裾野に察してもらおうと俯いたんやけど、その隙にベルトを……!?
「は!? 裾野、ほんま殺すで!? リヴェテ、嬉しそうにするんやない!」
まぁ何とか裾野の行動は阻止出来たんやけど、裾野は何だか残念そう。
……そうなるわな。
「菅野さん、その……モテますね。」
「……モデルスカウトなんて嬉しないで。せやから逆にこの体型が嫌になる時もあるねん。……それに裾野がいつも首はねるからな。」
「……!?」
騅とリヴェテは口をぽかんと開けて青ざめた表情で裾野を見てはるけど、裾野としてはモデルスカウトは重罪らしいで。
あまり俺を光の世界に誘わんといて。
心の中ではそう言い返してるんやけど…………。
次は裾野&菅野の再出発のお話。
しかし身体の異変を感じる菅野に対し、裾野の口から出た告白とは……!?
来週の土曜日、お楽しみに^^