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「第二十八-あの日から夢見た理想の相棒-」

裾野と菅野。

相反する2人を引き寄せたオークションの裏側。

菅野では見えなかった角度のお話。


※投稿が遅れてしまい、大変申し訳ございません。

※6,700字程度です

※淳ちゃん、久しぶりの登場!!

2015年7月10日 午後(天気:晴れ)

喫茶店「ふるよし」

裾野(後鳥羽 龍)



 焦げ茶色を基調とした落ち着いた店内。

シックストゥエルブで70歳までアルバイト、社員、そしてオーナーをやってきた生涯現役の店員さんを始め、高い接客レベルと守秘義務を持った方々が揃う。

ここ、喫茶店「ふるよし」は騅の話でも後醍醐家の人間たちが密かに通っている描写があった、人知れぬ名店なうえに、前日までなら貸し切りも受け付けている。

 どうやら今日は、菅野と淳から相談があるという……。


 窓際の席を好む方々も多いだろうが、余程の事が無い限り俺も菅野もカウンター席を選ぶことが多い。

端から俺、淳、菅野の順に座ると、マスターに「いつもの」と、片手を挙げて言うと、淳がこちらを振り向いて、「かっこええなぁ、私も言ってみたい」と、菅野のように純粋な目の輝きを見せた。

「そうか」

と、半ば生返事をした俺は右掌の親指と人差し指を擦り合わせ、甲側の人差しで下唇をなぞった。

要するに口寂しいのだ。煙草を吸う方ならご理解頂ける話だな。

 それから淳と菅野は2人でメニュー表を見合って、「ロイヤルミルクティーお願いします~」と、店に響く活発な声。

それに少し遅れて、「同じものをお願いします」と、落ち着いた声が後を追う。

「かしこまりました。龍様、例の物はいかがいたしましょうか?」

マスターは2人に一礼すると、その姿勢のまま俺に柔らかい笑みを向けた。

例の物とは、喫煙者に必須のアレだ。

「あぁ、お願いします」

俺はカウンターテーブルに、箱ごと入れられるダークブラウンの革のシガレットケースと、アンプデザインのシックなジッポライターを左側に置いた。

すると菅野が目を輝かせて身を乗り出し、

「かっこええなぁ~! 1本吸わせて~!」

と、淳の肩越しにお願いしてくるが、これから結婚、子育てを控えているのに今更始めることも無かろう。

俺は利き手側に除け、淳にも触らないように口パクで言うと、かなり上手くウィンクをした。

「駄目だ。ほら、相談したいことがあるのだろう?」

と、俺が目くじらを立てて言っている隙に、灰皿と”いつもの”が音もたてずに置かれ、俺はマスターと微笑み合った。

それを皮切りにケースから1本取り出し、カチンと蓋を開けてライターで火を付けた。

火を付けた後は蓋を閉じれば消えるのだが、カチャンと蓋が閉じるこの音が好きな人も多いだろう。

……俺も例外ではない。

 そう言えばかれこれ吸ってから4,5年が経つが、一度もケースもライターも変えたことがないな。

そろそろ変えてもいいのだろうが、タイミングが合わないことや、息子の空にお金をかけてあげたいという気持ちもあって、すっかり後回しにしてしまっている。

「うん。結婚後の生活についてなんやけど……今まで通りか、週に何回か2人で過ごす日を作るか、で悩んでるんやわ」

菅野は今し方来たロイヤルミルクティーに口を付け、両手でカップ周りを包んで口火を切った。

なるほど、それは悩みどころかもしれないが……。

「2人で話し合って2択まで絞れた、と解釈してもいいのか?」

と、砂糖スティックの開封の仕方が分からず慌てる相棒を見遣ると、「せやで」と、短い返事が返ってきた。

「これ、こうやれば……」

と、見かねた淳が砂糖スティックを半分に折ると、見事に裂け目が出来て粉砂糖が待ちくたびれたように降り注いだ。

「うわ、すご! ほんまありがとう!」

菅野は満面の笑みを見せ、途中からは自分で砂糖スティックを押さえて調節している。

いつも砂糖を入れるといっても瓶に入れてあるものだから、勝手がわからなかったのだろう。

 紫煙を燻らせ、肺から毒素を抜くように息を吐く。

だがまた毒素が肺一杯に入り、少しずつ唇の隙間から抜く……。

「ええんよ。ほんで、2択からは平行線やねん」

淳は手に付いた砂糖を御手拭きで拭うと、ぼんやりと遠くの方を見遣った。

「そうか、そうか。それなら相棒としては今まで通りにしてほしい。というのもな、過去語りが終わるまでは平日休みが取れるのだが、終わったら土日休みに戻したいんだ。……俺の都合で決めてもらうつもりはないのだが、参考にしてもらえたら――」

と、俺が言いかけると、

「裾野が言うなら、今まで通りにしよか! いつもスケジュール決めてるんは裾野なんやわ……。せやから、少しでも……楽にしてあげたいから……」

と、頬をほんのり赤く染め、目を頻りに泳がせる相棒は、淳の目から見ても微笑ましかったようで、

「せやな! そうしよか! ありがと~龍くん」

と、満面の笑みを見せ、軽く机をトンと叩くジェスチャーをした。


 こうして純粋な2人を見ていると、自分の欲望が如何に薄汚いかを実感させられるのだ。

まだ4つも若いのだから、力を合わせて乗り越えてほしい。

「……本当によかった」

だからこそ、心の底から安堵の声が漏れたのだろう。

菅野は決まった嬉しさでロイヤルミルクティーを味わっており気づかれなかったが、淳はカップを両手で持って静かに微笑んでいた。

 俺はトントンと灰皿に灰を落とすと、再び既知の毒に口を付けた。

癖になる香りと味……菅野が離れて行けば、息子と煙草しか直接慰めてくれる相手が居なくなりそうだ。

そう思いながら口から離し、ふっと一息つくと、

「何かあったら飛んで行ってあげるで?」

と、カップを傾けながら言うので、空調のせいか方向転換した毒霧を淳の方に行かせないように手で扇いだ。

「……」

俺は菅野に悟られないよう、口パクで礼を伝え、

「さて、菅野の話とはあまり重ならないように話すとするか……」

と、口から紫煙を吐きながら言い、灰皿にそっと毒を押し消した。



2005年8月29日

オークション会場

裾野(後鳥羽 龍)



 後に菅野と呼ばれる”目玉商品”の少年が売られ、大盛況のまま幕は閉じた。

だが名家の方々は一向に帰ろうとしない……のではなく、ここで井戸端会議なるものをし、情報交換をするのだ。

 そこで俺は隣のボックスに座る太田兄弟を見遣り、数年前から総長に言いつけられた言葉を思い出していた――


「太田兄弟は入場したその時から標的を決めているらしい。そこで目を付けられれば、将来の相棒の話は流れる。……そうだな~、なるべくその場に同化してみればいい」

そうか……。今、俺は誰とも話していない……最初から。

これは景色には同化しているが、状況には同化出来ていない……?


 俺は頭をフル回転させ、1番目立たない恰好をしている名家グループの近くに立ち、話し込んでいる演技をした。

その直後、まず斬り刻まれたのは司会者。

それから1番派手なグループを襲い、次々と目立つグループを襲っていった。

隙をついて会場の外へと逃げだした俺はすぐに変装道具を脱ぎ、あまりの温度差に汗が噴き出したので、手で扇ぎながら日陰に入った。

 すると今度は壁が大きく斬り開かれ、そこから太田兄弟に連れられた少年も出てき、日陰で休む俺を素通りして御手洗いに行った。

「……慌てているのか」

俺はぼそっと呟くと、暑そうに額を拭う少年を目に焼き付けた。

……なぜここで攫わなかったか?

ここは繁華街の側にある音楽ホールで、直に警察も来る場所だ。

そんなところで子どもを攫ってしまえば、厄介なことになってしまうからだ。

 しばらくすると太田兄弟が紙袋片手に戻り、少年と共に歩き去った。

「報告しておくか……」

俺は携帯で鳩村と総長に報告を入れ、すぐに後を追おうとしたのだが、

「龍? 何してんの~?」

と、気だるげに呼びかける”怠惰”の紅夜(こうや)兄さんに、ものの見事に捕まってしまったのだった。


 どうやら紅夜兄さんは地域交流活動に参加しているらしく、ホール側の広場で縁日のようなものをやっている。

「後鳥羽家を支持してくれる人たちには、ちゃーんと御挨拶しないと駄目だよ~? 傲慢にしていたらいつか誰かに裏切られるし、あれもこれも欲しいって動けば、後悔に苛まれて殺害をせがんじゃうかもしれないからね~」

紅夜兄さんは、車椅子にスーツではなく始まったばかりのクールビズの宣伝も兼ねてか、ネクタイもしていない。

その横に視線を移せば、新田執事長もシャツ姿でネクタイをしていない。

「そ、そうですよね……。では、挨拶だけでも……」

俺は相当引きつった笑みを浮かべていたであろうが、紅夜兄さんは目を細めて頷いている。

兄さんは確かに家では”怠惰”な面があるが、外に出れば立派な後鳥羽兄弟の1人になる。

そこが他の兄さんとは違うのかもしれない。

 だが挨拶だけのつもりが、片桐組時代に鷹階と迷っていたこともあり、射的や輪投げが得意なため、次々と子どもに強請られてしまい、苦笑いする店主の痛い目線からもなかなか抜け出せなかった。

「はい、大事に持って帰ってね」

と、最後に手渡した白猫のぬいぐるみを見て、俺は橋本に貰ったものを思い出してしまい、つい愛想笑いではなく本物の笑顔が顔を出すと、

「龍お兄ちゃん、大好き~!」

と、小学校3,4年生くらいの女の子に抱き着かれてしまった。

「あぁ、ありがとう」

俺は元の愛想笑いに戻し、ツインテールにしている髪をふわふわと触ってあげると、

「にゃ~! 大きくなったら、龍お兄ちゃんと結婚するにゃ~!」

と、白猫で顔を隠して恥ずかしそうに言う女の子の側には、両親らしき人物が居なかった。

もしかしたら目を離してしまったのではないか、と思い、

「そ、そうか。キミ、お父さんとお母さんはどこかな?」

と、首を振って女の子に似た大人を探してみたのだが、どこにも居ない。

「居ないよ」

と、下から聞こえてきた重い言葉に、俺は思わず顔を強張らせた。

「お父さんもお母さんもまーくんも、みんな殺し屋に殺された。でもねりーちゃんね、りーちゃんみたいに奪われた人のために……いい泥棒さんになって返してあげたいの」

女の子の突然の告白と決意に俺の目は泳いでしまったが、すぐに気持ちを引き締め、

「……ごめんね。でもそれなら、誰も傷つけないね」

と、優しく諭すように言うと、女の子はパァッと明るい笑顔になり、

「うん! りーちゃん、龍お兄ちゃんのハートも奪っちゃうからね!」

と、白猫の顔を俺の下腹部にぐりぐりと押し付け、またしても恥ずかしそうに頬を赤らめて走り去って行く。

俺は後を追おうとも思ったが、一通り挨拶も終わったので、紅夜兄さんに一言断りを入れて将来の相棒を追うことにした。

一度振り返ってみれば、いつの間にか新田執事長が俺の変装道具を腕にかけていたので、あとで感謝状を直接渡そう。


 慌ただしく待ち合わせの犬の像あたりの繁華街を走り回っていると、裏通りに入ろうとする3人と白猫が見えたので、優しく抱え上げて視界に入るような方向に放してあげた。

すると少年は嬉しそうに猫を追い、俺は気づかれないように後を追った。

……スカウトの男のことはいいか。

 それからオドオドする少年をよそに、俺はファミレスに連れ込んだ。

あとは菅野の話の通りだから、入隊した後に俺だけ総長室に呼び出されたときの話をしよう。


 煙草の匂いが充満する総長室に戻ると、総長がちょうど入隊書類を書き終えたところであった。

「菅野、ね。面白い」

総長は何だか嬉しそうに槍形のペンを器用に回し、ペン立てに戻した。

「はぁ……」

「裾野。これからのメインミッションは、一生の任務だ。敬語も使えない、人も殺せない、それでいて槍にトラウマすら感じる菅野を、立派な殺し屋、誇れる人間にしてみろ」

総長はドンと机を叩いて椅子から立ち上がると、1枚の紙を手渡した。

そこには『相棒契約書』と書かれた、シンプルだが威圧を感じる文字で、


 一、裾野(本名:後鳥羽 龍)は、菅野(本名:関原竜斗)が20歳を迎えるまで命を懸けて守る。

 一、正しく衣食住を提供し、副総長、総長などの訓練や稽古を付けること。

 一、裾野は先に死んではならない。

 一、スケジュールを管理し、決して過労状態にはさせない。

 一、体罰の許可有れども、自らの手で拷問してはならない。

 一、スキンシップは認めるが、肉体関係を持ってはならない。

 一、上記に関しては、同性婚が認められ次第削除する。

 一、人として立派に、殺し屋として優秀に育てること。

 一、裾野も共に成長し、20歳までには自立させること。


 これらの1つでも破られた場合、相棒契約を破棄 乃至(ないし)は裾野への拷問、追放とする


藍竜組総長 藍竜』


 俺は一通り紙に目を通し小さく頷くと、

「菅野は裾野が散々語っていた理想の相棒そのものだからな……破ることは無いが、一応全員にそれぞれ課しているからね」

総長はそう囁くように言い、そっと目を閉じた。

「はい。必ず立派な人間にも殺し屋にもしてみせます」

俺は自信満々に言い放つと、最敬礼をした。

 人間オークションの一件を任されてから、俺の夢見る理想の相棒は菅野の容姿そのものであり、明るい性格で泣き虫な男の子、年下、槍を扱う子がいいな、とも言っていた……。

「頼む。裾野だから任せているんだ……弟には任せられない、人間の”ここ”が必要なことだろう?」

総長は厚い胸をドンと叩いてみせると、歯を見せてニッと笑った。

 これだから藍竜組の隊員は謀反を起こそうとしたりしないのだ。

……総長の人望、人柄の良さ、厳しさ……そして隊員への還元。

どれをとっても申し分無く、むしろ貰いすぎてはいないか、と心配する者もいるくらいだ。

「……はい。こんな俺をかってくださり…………感謝してもしきれません」

俺は頭を下げたまま多少声を張ると、総長は大らかに肩を揺らして笑ってみせ、

「裾野、これからが大事だ。期待している」

と、急に真面目な顔をして言うのだ。

俺は更に深く頭を下げ、その場を後にした。


 それから逐一菅野の様子を報告し、服を買い出すときには経費も出してくださった。

もちろん、前々から出来る相棒用に選んでいたブランド物の服を買った。

店で1番大きい紙袋5袋分、帰る途中で入れなおしたら4袋に減ったので、そこに日用品を詰め込んで菅野に渡した記憶がある。

 それほどに大事にしたい相棒だ。

いつか俺のことを信じさせてほしい。願わくば、1人の人間として好いてほしい。

二度と裏切られるのは御免だから……これ以上人間不信にならない為に、敢えて厳しく接した。

それで辞めてしまえばそれまでだ、と諦め半分で接してきた。

だが菅野は……どんなに厳しくしたところで、どんなに泣きっ面になっても俺に付いて来た。

謝ることができる人に、感謝できる人に、努力する人に、諦めない人に――そして人を愛することが出来る人に。

そうやって育っていく相棒を見て、俺も負けじとやってきた。

 そうしているうちに、俺は…………気が付けば、恋愛対象として彼を見るようになってしまった。

ただのありがた迷惑な感情だ。

それを消すには、一度でも嫌われた方がいいと思っていた。

だから……菅野にキツく当たったり、淳にも酷いことをしたと思っている。


 それからしばらく経ったある日、菅野の態度が急変した。

後醍醐詠飛の母から、多村麗華という女性を殺してほしいとの依頼が舞い込んだ時だった。

「ほんなら、いっちょ殺りにいきまひょか~」

と、全く違う口調で話し始め、二刀を持つかのように槍を構えた時に、”商品の印”についての記憶が舞い上がり、本能の警鐘を鳴らし始めた。

「……あぁ」

俺はこのとき初めて、菅野に対して恐怖の感情を抱いた。

身のこなしが軽すぎる、槍を扱う人間の動きではないことから、二刀使いの太田雄平が乗り移ったのだと察した。

決定的な一打は……関西弁が下手すぎる。

菅野は生まれも育ちも関西中心部なのに、隣の大都府の言葉など使う訳が無い。

だからこそ俺は、騅の話で出てきた通りノッた振りをしていた。

 その後菅野には話していなかったが、部屋に帰って寝てみれば元通りになっていたのだ。

俺と菅野に不穏な足音が近づいてきた瞬間であった。



現在に戻る……



 ロイヤルミルクティーを既に3杯飲み干し、水を貰っている今の菅野があるのは……俺のおかげなのかもしれない。

そう言ってもらえる日が来れば、もう未練はない。

 俺は2本目の煙草に火を付けると、さっと俺の右側に来ていた菅野が煙草を引ったくった。

「おい、やめなさい」

俺はすぐに取り返そうと手を伸ばしたが、それよりも先に口を付け、盛大に咳き込む菅野に淳は呆れ顔であった。

「けほっけほ……何やこれ……あっ……裾野のコーヒーの味がすっ……ゲホッ!」

俺は間接であれ口づけされていることに頬が緩んでしまい、取り返す気すら薄れてしまった。

すると淳が煙草を俺の指に戻し、

「ちゃんと注意せなあかんで?」

と、年下の女性に真剣な表情で言われ、

「そうだな」

と、俺は片方だけ瞼を閉じ、可愛らしくも恰好良くもないが、密かにウィンクし菅野が口付けた煙草を再び吸った。

……ロイヤルミルクティー味、か。

これならいつもより甘くて美味しいかもしれない。

そう思い、煙を吐きながら菅野の方を振り返ると、

「あっ!!」

と、菅野は俺がいつもより楽しそうに吸っていることに気が付いたのか、急に顔を真っ赤にした。

「ふっ……隙が多いな」

と、顔を背けてから紫煙をまた空気に混ぜ、菅野の穢れのない腰を撫でた。

「あ、またや! 淳の目の前でせんでもええやんかぁ……」

予想外のスキンシップに菅野はタジタジで、淳は「ちょっと何してんの~?」と、笑い飛ばしながら俺の肩をぺちぺち叩いている。

だがそうやって恥ずかしがりながらも耳元に顔を寄せ、

「……俺、もっと頑張るから」

と、震える声で決意を固める菅野に、俺はニヤけた顔のまま頷いていた。

「あっ待って! なぁ裾野?」

と、ハッとした表情の菅野は、すっかり真面目な顔に戻った俺に目を見開きながら言い、続けて、

「これ……」

と、ポケットから出したのはぐしゃぐしゃに丸められた紙。

よく見てみると、”後鳥羽家主催!! 花火大会!”と、盛大な花火と実家をバックに江戸勘亭流書体で書かれた文字が目に飛び込んで来た。

そのうえ日時が来週の日曜となれば、行くしかないだろう。

「……そのときに次の話をしような」

俺は菅野の(はだ)けた浴衣姿を想像し、既に頭の中が沸きそうになっていたのだが、淳は真剣な表情をし、

「次の話はあの話になりそうやな……」

と、呟いたのだ。


 あの話とは、騅の話も菅野の話も聞いた人なら分かることだ。

俺、菅野と弓削子が受けた依頼が原因で、少しばかりの喧嘩をしてしまったあの話のことだ……

執事長の乞田です!


いや~、これ読んでしまいますと、いかに私乞田の告白が薄いものか、分かってしまいますね……。

橋本へのご寵愛が向かわないかな、とさえ考えてしまいますよ!

菅野様を見る目が変わったとき、相当お辛かったと思います。

本当なら皆さんに相談したりしているんです……。話せないのでしょう。


次回投稿日は、7月15日か16日、予備日として17日を置かせてくださいませ。

また土日にお出かけのご予定が入っております故、大変ご迷惑をおかけ致しますが、ご了承くださいませ。


それでは良い一週間を!


執事長 乞田光司

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