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『虎と呼ばれる男の素顔、そして龍の奏でる交響曲』  作者: 趙雲
~☆~☆~☆~季節限定☆~☆~☆~
37/69

☆殺し屋たちの願い事☆彡

笹の葉さ~らさら。

今日は七夕ですよ!

というわけで、番外編ということはあまり考えずに、ルーレットアプリでキャストを決めさせていただきました。


皆様はどんな願いを込めますか?


※約2,400字です。

2017年7月7日 午後(天気:晴れ)

鳩村公園



 藍竜組と没落貴族の鳩村家の間にある鳩村公園には、連日多くの家族連れや老夫婦、休憩中のサラリーマンなど、老若男女問わずやってくる。

そこに毎年飾られている七夕飾りに、子どもたちが机を占拠してまでも各々の願い事を書いている。

「あら、もうそんな時期だったかしら……」

と、非番らしき1人の巨漢が公園に足を踏み入れた。

子どもたちはその男の姿を見るなり、数年前から流行っている漫画に例え、「突撃の巨人だ!」と言ったり、見た目から「オカマだ!」などと囃し立てる。

「ちょっと! オカマは認めるけど、なんとかの巨人っていうのは違うわよ」

男のコードネームは、ゆーひょん。

片桐組の中でも重量級武器を扱う象階のエースをやっており、裾野とは元同期だ。


 そんな奇抜な見た目の彼だが、それよりも目を引く者が公園の木々を揺らしている。

「見ろよ! あれ、忍者じゃね!?」

「ほ、本物だー!」

男の子たちが主に目を輝かせるのは、彼らの言う通り本物の忍者である藍竜組副総長だ。

「何よあれ……って!」

これのは流石のゆーひょんも顔を青くする。

というのも、片桐組と藍竜組は表向きでは非協力関係だからだ。

「……」

副総長は何も言わず、さらっと高木から降りてみせると、ゆーひょんを一瞥した。

そこでも子どもたちはぴょんぴょん跳ねて喜び、抱き着こうとする子も居たが、それすらもひらりと躱し、隙あらば短冊に願いを書いている。

「あらまぁ……珍しいもの見ちゃったわ。非番で良かった……さ、何か書いていこうかしら」

と、ゆーひょんが子どもたちに混ざって短冊に願いを書いていると、

「へぇ、己の剛腕に自信があっても書くものですか」

と、同期で烏階のエースをやっている蒼谷茂が、ノートパソコン片手に後ろから覗いている。

「あら、茂じゃない。まぁそういうものかしらね」

ゆーひょんは茂なりの皮肉をもろともせず、願いを書き終えたのか、早速1番上の笹の葉に引っ掛けている。その隣には、副総長の短冊も掛かっている。

「そうですか。それなら、願いを込めて書きます」

茂は無表情で言うと、ゆーひょんからペンを貰って書き始めた。


 すると子どもたちよりも頭いくつかぐらいしか違わない黒髪の女性が、必死に上の方に掛けようと背伸びをして、子どもたちにヤジを飛ばされていた。

「おねーちゃん、ちっちぇ~」

「だっせー」

主に男の子たちに。

「うっさい! こっちは遺伝なんだから諦めてんだよ」

その女性の名は、(れん)。片桐組の唯一の女性情報屋で、役員の藤堂からすさんに指導をしていただいている半人前だ。

「あらま。恋さんじゃない。掛けてあげようか?」

ゆーひょんは”本当は”茂に言われ、仕方なく話しかけた。

「おっ! ありがとうございます~!」

恋は嬉しそうにトレードマークである八重歯を出して笑うと、短冊をゆーひょんに渡した。


 今度は入口の方が騒がしくなり、よく聞けば女性たちの黄色い声であった。

「いいのよ。あら、今度は向こうの方が騒がしいわね」

ゆーひょんと茂が振り向くと、そこには笑い皺が特徴的な冷泉湊(れいぜい みなと)と、親分感のある藍竜組の総長がそろって公園にやってきている。

「おーよよ。総長だ」

恋はニヒヒと笑いながら、2人を見遣っている。

「藍竜組を率いる総長でも、願い事なんてあるんですね」

茂は嫌味だろうか、また口をぐにゃりと捻って言っている。

「そう言えば、副総長はもう帰ったのね」

ゆーひょんが公園の高木を見渡して言うと、

「あ~本当ですね」

と、恋も同じ風に視線を泳がせる。

「……もうそろそろ仕事なので、失礼致します」

すると茂はノートパソコンを持つ手を替え、2人に一礼して帰った。

「あーい、お疲れ様~。って、何かあそこで賭け事している人が居ますよ」

恋が公園の一角を指差すので視線で追ってみれば、昼間から休憩中のサラリーマンを相手に、ゆーひょんと同期でスナイパーを扱う鷹階のエースをしているあことしが1人勝ちをしている。

「あことし……あいつったら」

ゆーひょんが賭け事を止めさせようとすると、横から突然ふわっと現れた神崎颯雅(かんざき そうが)と、片桐組の役員の藤堂からすに阻まれた。


「好きにさせてやったら~?」

だらっとした雰囲気の藤堂は、颯雅とゆーひょんの肩をポンポンと叩きながらヘラヘラと笑う。

「はぁ……」

恋はその様子を見ながら溜息を1つ。

 だがそれからは子どもたちと遊ぶゆーひょん、藤堂、颯雅、湊、相手が居なくなったと寂しがったあことしを眺めていた恋だが、ふと全員の願い事が気になり、近くにあった脚立を借りてこっそりと笹の葉を探り始めた。


『健康でいられますように 恋』

うわ、まずは自分のか……。

『世界平和!! あことし!』

うん、それっぽい。

『殺し屋が居なくなりますように。 片桐組烏階エース 蒼谷茂』

全部書いちゃってるよ……。真面目だなぁ。

『今年こそ結婚できますよーにー からす』

藤堂さん、そう言えば好きな人が出来たって言ってたっけ?

今年結婚できたらいいな。

『相棒がギャンブルを控えてくれますように ゆーひょん』

あ、あぁ……あことしのことね。自分のことはいいのかな?

『幼馴染が無理をしませんように 颯雅』

お、おお! 幼馴染って、誰の事かな~……私には分からないな。

『来年も桜が咲きますように 』

これは明らかに藍竜組の副総長だね。たしか、桜を傷つけると拷問だったか。

『各々が目指す殺し屋になれますように 』

これはもう、藍竜総長のじゃないかな?

へぇ、結構皆さん真面目に他人の事を書かれるのですね……。

『CMありがとうございます。今年も兄妹たちが活躍できますように 』

……これはオチにはぴったりだね。

殺し屋業界にもテレビがあるから、きっとそのCMが頂けたのじゃないかな?

おそらく、湊さんよね。


 皆さんはどんな願いを捧げますか?

って、私は健康だったけど……。自分のことでも、他人の事でも神様はきっと見てくれるよね?

さぁ、天の川観測の準備をしなきゃ!


「藤堂さ~ん、帰りますよ~!」

前書きに引き続き、作者です。


七夕特別編、お楽しみいただけましたでしょうか?

明日はいよいよ菅野との出会い編!

菅野編では分からなかったことも、次々と判明していくような角度の違ったお話に出来たらいいな、と思っています!

是非、こちらも乞うご期待下さいませ。


作者 趙雲

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