「IF-Another True Story-」
ハッピーエンド1
ハッピーファンシー薔薇園エンド(タイトルは違いますが・・・)
こんなエンドにしたかった……というのはウソですが、1番のお気に入りキャラが笑ってくれる程、作者として嬉しいことはありません!!
閑話休題。
……条件は2つです。
・裾野が弓削子さんと結婚しない。
・菅野が淳と付き合わない。
・菅野に若干ソッチの気がある。
……ぐらいですかね。なので、本編から考えると絶対にありえないエンドなのですが……。
バッドで散々な目に遭わせたので、心安らぐエンドもあっていいと思います^^
※約5,800字です。
※BL注意
※ほっこりします♪ 菅野の笑顔を守りたい……!
2012年8月20日夜……
藍竜組1階総長室前
菅野
何とか報告も終わったし、部屋に戻って騅を助ける方法を考えんとあかんやんな?
そう思って裾野にも言うたんやけど、裾野は俺の腕をグイと引いて耳元で、
「一緒に食事しに行かないか?」
言うてん。しかも顔めっちゃ真剣やん。
せやから俺は大きく頷いてん。
すると裾野は「じゃあスーツに着替えようか」ボソッと言うて、そのまま俺の腕を引いて部屋まで戻ってん。
移動中に何度も理由を訊いたんやけど、裾野は丸っきり無視。
これはこれでツライで……。
とりあえずスーツに着替えたんはええんやけど、葬式で着ていくようなシンプルなスーツしか持ってへんくて、気まずくってん。せやけど、裾野は「それでいい」言うて、いつものように頭を撫でてくれたんや。
ほんま……ええヤツ。しかも、何やろう……最近やねんけど、裾野のこういう仕草に心臓がドクンと跳ねることがあんねん。
前まではそんなこと、女の子に告白するとか……したことあらへんからわからんけど!
多分そういう時になる筈のものやろう?
……まさか、な?
数十分後……
某高級フランス料理店
菅野
店の名前は普通に日本語混じりやねんけど……住宅街の中にあるからか、静かやなぁ。
まぁ……外観の説明でもしとくわ。
関東の中心にある筈のそのお店は、めっちゃ家感半端ないで。
ツタとか木とか草とか……とにかく盛りだくさんの自然の中に、ポツンとレンガ造りの家があるイメージや。
しかも入口には、高そうな黒いスーツを着た……しかも白い手袋まで付けたおじさんが、「こちらです」言うて、中に入って色んな個室の扉の前を通り過ぎて、階段も上ってん。
しかも階段を上りながら、飾ってある絵の説明までしてくれたんやけど、俺にはサーッパリ。
せやけど、裾野は大きく頷きながら、意見を言ったり絵の作者について、おじさんと話しててん。
ほんでやっと2階に着いたはええねんけど、1部屋しか無いねん。
それを訊こうと口を開くと、おじさんが色々説明してくれてん。
……まとめると、2階にはこの部屋しか無いねんて。
特別個室とか……とにかくすごいわ。なんぼするんやろう?
キラキラした扉を開けてすぐに目がつくのは、大きな窓と広い庭、紫色の絨毯。
それと白ベースの洋風なテーブルクロス、楕円形のテーブル、と……この天井のは何やろう?
めっちゃ眩しいで~。触覚いっぱい生えた照明はん!
「菅野、これはシャンデリアだ。」
裾野は俺の目線の先を追ってそう言うと、俺の分の席を引いて丁寧に手で指しててん。
「シャン……シャルデル、まぁええわ。ありがとう。」
俺が座ろうとすると、ゆっくり椅子をテーブルの方に近づけてくれてん。
「……なぁ、裾野?」
色んな種類のスプーンやフォーク、グラスに戸惑いながら話しかけると、裾野は布みたいなのを膝に敷いきながらこっちに目線を送ってきてん。
「な……なんぼしたん?」
俺が震える声で訊くと、裾野はフフッと上品に笑ってん。
「気にするな。」
ニコッとほほ笑む裾野の後ろから、カッチリした服装の男の人たちが来て、料理を持ってきてん。
あんな? 前菜とかなんちゃら菜とかメインとか……何やろう?
美味しかったんかな? ほら、俺って貧乏やんか?
高級すぎて味が……全くわからん。
せやけど、裾野はほんまに美味しそうに味わって、ゆーっくり食べてはるし、俺も真似してんけど、全然ダメで。オソダチの違いって面倒やなぁ。
しばらくすると、言うても何時間か経ってる気がしてならんのやけど、「本日のデザートです」言うてシンプルなホールケーキがテーブルの上に乗せられてん。
――イチゴのショートケーキ1ピース……。
オトンが頑張って買ってくれたあのケーキ、ほんま美味しかったな。
俺、何言うてるんやろ。……オトン、向こうで元気にしてはるかな?
「菅野。」
俺がぼーっとしてたんか、裾野は心配そうに眉を下げて話しかけてん。
「ごめん、何や?」
俺が裾野の方に視線を向けると、裾野はナイフとフォークを持って、
「いや。このケーキ、大きい包丁でキレイに切り分けられないからさ。行儀悪いが、ナイフとフォークで刺して……こういう感じで食べてほしい。」
言いながら、丁寧に切り取るような感じで分けて食べてん。
ホールケーキは、思い切り何等分とかに出来るんとちゃうかった……?
せやから1ピースもあったやろうに……。それにしてもホールって大きいんやなぁ。
オトンに見せてあげたかったし、食べさせてあげたかったわ~。
そう思いながら、食べ進めていたんやけど…………ん?
――カツン。明らかに何かに当たったような音。お皿にしてはまだ浅すぎるで?
「え、何で?」
俺が何回か突っついていると、裾野は少し嬉しそうにしててん。
何や? 裾野のその顔……。めっちゃ気になるやん!
「周りも食べて。」
裾野は自分の方だけキレイに食べ終わってるらしくって、俺の方をニコニコ笑いながら見ててん。
仕方ないし気になるから、そのまま何かの型に沿って食べていくと……
う、嘘やん!?
生クリームで若干見えづらいけど、透明なドームの中には……ゆ、ゆ、指輪!?
「た……誕生日プレゼントなら、な? も、もう貰ったで?」
俺は平常心を保ててへんまま、裾野に話しかけてん。
よく見たらナイフとフォークを持つ手も震えてるし、俺は何を思ってるんや?
値段の怖さか? そ、それや、それやきっと……せやせや。
「そうだな。」
裾野はそう言うと、ドームをカパッと退かしてテーブルの上に置いてん。
…………ふ、2つの指輪に、”R to R”の字に、シンプルなデザインのシルバーリング……って。
こ、これ……俺の貯金から出る? 無理やろ……?
そうわなわなする俺の方をじっと見て、裾野は頭を下げてん。
「菅野、俺と結婚を前提に付き合ってほしい。」
裾野の真剣な告白。
この人は俺のことを好き。それも、俺が考えているような”友達の好き”やない……好き?
マズイ……色々わからん。結婚のことも、どうやってするのか知らんようなアホやから。
「ま、待ってや? 気持ちは嬉しいねんけど、結婚って……何すればええの?」
頭が混乱しきっている俺に、裾野は1から結婚について、申し出る時のあれこれを説明してくれてん。
……あー、ようやくわかったで! ……多分やけどな。
一旦、自分の気持ちと状況を整理しよか。
裾野と付き合うってことは、ずっと一緒に暮らすってことやんな?
それは構へん。一緒に居て落ち着くし、優しい裾野が好きやから。
結婚は……やっぱり想像出来へんけど、これも一緒に暮らすこと……。ずっと指輪をせんとあかんことは、問題無いやんな! 仕事中だけ外せば、壊すことも無いやろうし。
それと、夫婦のたしなみがどうこうは何のことやろうな?
……うーん、まぁええか! 一緒に寝るのは、いつものことやし。
「ええよ! これからも、よろしく頼むわ!」
俺が笑顔で答えると、裾野はほんまに嬉しそうに笑ってくれてん。
ほんで俺の左手の薬指に指輪を通して、俺も同じように通してん。
裾野の指って、じっくり見たこともあらへんかったけど、ほっそい指してはるなぁ。
でも……俺も似たようなモン、か。肌が白いってだけで、なんやろ……弱そうに見えるわ。
こういう形になったんは、男同士はまだ式が挙げられへんからって言うても、結婚のことをほぼ知らん俺には、あんまり関係あらへんことやわ。
もう帰るってなって席を立つと、裾野はほんまに嬉しかったんか、俺をぎゅーっと強く抱きしめてん。
俺も裾野はほんま温かいから好きやし背中に腕を回すと、初めて聞いた色っぽい?……んー、熱っぽい声で、「愛してる」言うてくれたんやけど、それって好きと何が違うんやろう?
俺が首をかしげて考えていると、裾野は目が合うように少し身体を離して俺の顎を指でクイと上げて、
「目……瞑ってくれるか?」
そう恥ずかしそうに、目を逸らして言うてん。
何をするんかわからんし、とりあえず言う通り目を瞑ると、唇にふわっと何かが当たってん。
何や? いつの間にか、身体がじわじわ火照る感覚もするし……何されてるんやろう?
しかも裾野のいつもの何かをくすぐる感じの香水も、何だか近くで香っているような気が……。
そう思って目を開けると、目を瞑った裾野の顔が目の前に居って、反射的に押しのけてん。
「……な、何したん!?」
思わず顔を手で覆って言うたんやけど、顔がめっちゃ火照ってる……!
「俺なりの愛情表現のつもり、だが。」
裾野はもごもご言いながら、ほんのり頬を赤くしてて……何なん? 俺まで赤くなりそうやわ。
「……そ、そうなんや。」
俺が火照っているのが恥ずかしくて俯いていると、急に手を握ってきてん。
「この部屋を出るまで、な?」
裾野も何だか落ち着かへん感じやし、俺も小さく何度も頷いてん。
てっきり余裕そうにやるんかと思ってたんやけどな~……言うてる俺は、何のケーケンも無いんやけど。
でもな……? この感覚が、一般のテレビドラマで言うところの”恋”……なんやろ?
こんなん何回もケーケンしている人って、心臓壊れないん?
1回目でこれやぞ!?
……はぁ、すごいわぁ。
今まで避けてきただけに、もう……心臓がやかましや、どころやないで、このまま壊れそうや。
数十分後……
裾野&菅野の部屋
菅野
やっと部屋や~。
いつもの場所に帰れば、少しは……はぁ、まだドクドク鳴ってる。
パーテーションをくぐると、裾野はもうジャージ姿に着替えててん。
ほんで、2人分のスーツの上着をハンガーにかけてお手入れをしてくれているんやけど、何だか落ち着かへん手つきでやってて、自分のベッドに腰かけて見てんのに、そわそわすんねん。
「裾野、どないしたん?」
俺はスーツのズボンからジャージに着替えながら訊いてんけど、裾野は俺の声に驚いて霧吹きスプレーをガシャンと落としてん。
「悪い。ズボンくれるか?」
せやけど何ともないような顔して拾って、俺の方に手を伸ばしてん。
仕方あらへんから適当に畳んで渡すと、「シワになるだろう」とか言いながらパッパッとズボンを伸ばしてん。
それが1通り終わると、裾野は俺の方を満面の笑みで振り返って、
「恋人は一緒に風呂に入るそうだ。」
声まで嬉しそうに言うてん。しかも俺の腕をグイグイ引っ張って、ほぼほぼ強制的に風呂場に連れてかれてん。
裾野と風呂に入るのは、何年振りや?
藍竜組に入った初日の夜が初めて……やったかな?
でもその日以来一緒に入ってへんし、6年振りかぁ。
今日は髪の毛を洗いあったり、互いの背中を流したりしたんやけど、裾野の身体って意外と傷が多いんやな……。腕にはあんまり無いんやけど、背中とお腹には結構あったで。
俺には胸の下の火傷と……印、くらいやろうな。まぁ小さい傷ならあるかもしれへんけどな!
風呂からあがって、サイズ違いの紺色の若干着物っぽいデザインのバスローブに着替えて、寝る前の支度を済ますと、裾野は先に脱衣所から出ようとする俺を後ろから抱きとめてん。
「今日は先に寝ないでほしい。」
裾野は耳元で囁くように言うて、俺の髪をふわふわ撫でてん。
いつもなら俺が先に寝て、落ちる前に裾野が「また明日」言うてくれるんやけど、何か特別なことでもするんかな? それか、面白いドラマとか歌番組でもやるんかな?
……言うても、もう午前0時やけど。
「わかった。」
俺はそう言うと、先にベッドのあるパーテーションをくぐって、ベッドに腰かけて待っててん。
うーん、遅いしテレビでも付けようかな、思ってリモコンに伸ばそうとした腕を掴んで、裾野はベッドに押し倒してん。
「……っ!?」
俺が目を見開くと、裾野は俺の股の間に割るように膝を滑りこませて、一気に鼻が触れそうなくらい顔を近づけてん。俺の腰あたりが温かいのは、何でやろな? 8月やし、冷房も付いているのに……意外と腰痛持ちなんかな?
「恋人のたしなみだ。」
裾野はそう言うと俺のバスローブの紐を緩めた隙間から、腰に手を回してん。
「……っ!」
裾野の手がヒンヤリしているせいで身体が少し跳ねたんやけど、裾野は俺の反応が面白かったんか、そのままゆっくりお尻の方まで手を這わせてん。
「な、何……?」
俺は裾野の行動にも戸惑っているんやけど、俺の表情を楽しんでいるこのドSの顔を持っていたことにも戸惑ってててん。かぼっそい声で話しかけると、裾野はグッと顔を近づけて、喉にふわりと唇を落としてから俺を見上げて、
「もっと菅野を知りたい。」
そう愛おしそうに言うと、俺の唇にそっと包むように重ねてん。
しばらくそうしていたんやけど、裾野はふっと唇を1回離して、今度は舌を口の中に入れてきて、何て言うたらわからん、ふわふわした感覚に包まれてん。
ほんでまた唇を離すと、裾野は熱っぽい目で俺を見下ろして、
「このまま朝までこうしていたい……いいか?」
言うて、俺の胸を手でさすってん。
「ん……ええで。好きやで、裾野……」
俺は裾野の首に腕を回して、頬も身体も火照るこの感覚を楽しんでいたんだわ……。
現在に戻る……
高校は卒業して、そのまま大学生以上が通う自主的に講義が受けられたり、武術訓練ができる藍竜組の学校があるんやけど、そこでは裾野と一緒に受けることもあんねん。
それに、廊下ですれ違う時もあって……そん時は裾野だけにわかるようにウィンクをしたり、目が合った時だけニコッてしたりしてんねん。
「……って、別にノロけてへんよ!」
俺が暗くした自分の茶髪をわしゃわしゃと掻き乱すと、淳と弓削子さんは目を合わせて笑っててん。
「「お幸せに!」」
合宿で仲良くなっただけになってしまった淳も、半分裾野を奪う形になってしまった弓削子さんも、今ではめっちゃええ友達やし、学生時代からの友達も応援してくれてはる。
せやった! 裾野が副総長になる話は保留らしいねんけど、同性愛は認めるんやて。
もしかして、俺らのおかげかもしれへんな!
……この大学がしっかり整備されたのも……裾野が何か言うたらしいで?
ありがとう、愛してるで……龍。
オトン、見てる?
あの時オトンが関東にやってくれたから、こうして幸せに……暮らせているよ。
お金が貯まったら、絶対に墓参りも銭湯仲間への挨拶もするから、楽しみに待っといてな!
あと、ものすごくイケメンになっているから、ビックリせんといてや。
オトンのことを心配してくれていた男の人と付き合っている……なんて言うたら、驚きすぎてお墓から出ちゃうんやない?
まぁ長くなったんやけど……ほんまに……俺を育ててくれてありがとう。
IF-Another True Story-
”新しい愛のカタチ”
菅野の笑顔は、太陽よりきっと眩しいはず……!
画力が無い自分を恨みます;w;
そんな守りたい笑顔が、違う形で咲くのがハッピーエンド2です^^
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