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「14歳-大嫌いなことは勉強、-」

命の恩人・裾野のために、大嫌いな勉強を頑張る菅野。

2回目の喧嘩は一味違う?


※思い出しながら書いてます。

※8,500字程度です。

2009年8月15日昼……

藍竜組 医務室

菅野



 終戦記念日のニュースと特別番組ばかりやわ、もう見飽きたでほんま~!

俺はリモコンでテレビの電源を切って、ふかふか枕にボフッて音が鳴るくらい思い切り倒れて布団をすっぽり被ってん。

 せや、今俺は主治医から1週間の入院を言い渡されて、めっちゃテンション下がってんねん。

まぁそうは言うても半泣きで訴えたら、毎日の基礎訓練くらいはお許し(もろ)たけどな。

だって槍が側にあったら動きたいやんか!! 穴があったら入りたい並みの衝動やで?


 ほんでちょくちょく裾野からは写真付きで連絡が来てんねんけど、庭師の元気印のおじいちゃんが怪我した言うた時は驚いたな。

庭を整えてたら、お金持ちン家の屋根の尖がってるとこに白い花が1輪咲いてたことに気づいたらしいねん。

ほんでそれを取ろうとして、作業用の脚立の1番上から落ちたらしい。

 多分田辺さん家やろな。あそこめっちゃ金持ちで有名やし、銭湯仲間でもあったし……うわ、今元気かな~?

いつもつまらんオヤジギャグ飛ばしてはったおじさん、今でも言うてはるのかな?

 ちなみに、おじいちゃん家とはあんま仲良くなくて、小さい頃はよう泣かされてん。

せやから、日記にも一切出てこんへんかってん。せやけど、めっちゃ元気やねん。俺にはようわからんけど、色んな意味で。


 あ~話逸れたわ。

もうちょい逸らすなら、裾野の意外な欠点を見つけたで?

マメに連絡してくれはるのは暇つぶしにもなるし、結構嬉しいねんけど、「大きなカニ!」とか「ふぐも居る!」とか……何やろ? もっとあるやんか……。例えば、「カニのサイズどえらいで!」とか?

しかも自分全然写ってへんし、毎回角度が惜しいねん。

 まぁ俺は言うても皆に言われるまでそんな気にせえへんかったけど、見舞いにきた同級生に見せると大ウケやねん。

それに「この角度でこの、この、これ!?」とかで笑いあったり、関東の人の笑いのツボがようわからん時もあんねんな。

俺はただ皆からすると怖いイメージしかあらへん裾野が、写真送ってくれたりマメに連絡してくれはることを自慢したかっただけやねん。

なぁ、どないすればよかったん……?


 本題に戻そ。話したかったことを話さんとこのままズレるわ。

俺な、バイセクシュアルの勉強を始めてん。

理由? ……裾野は命の恩人やし、本人しばらく帰って来~へんし?

色々調べるチャンスってやつやんな!

えっと……ん~それもあんねんけど、単純に寂しいねん。

それにエラい反抗したやんか? せやから本人居なくなった瞬間、めっちゃ……あーもう無し! なーしー!

 まぁそうは言うても皆に秘密でな?

だって~、自慢したら誰かが裾野にチクりそうやんか!

 ほんでほんで、色々調べてはみてんねんけど……難しすぎて何がなんだかわからへん。

かと言って本人に聞けへんし、鳩村はんに聞くのも何か嫌やし、そう思て辞書片手に頑張って読み解いてん。


 それで3日くらい経ってしもうてん。

その間鳩村はん特製ご飯と着替えが来る時、お風呂とトイレ以外は、ずーっと枕に携帯を乗せて首だけ起こしたうつ伏せで調べててん。冷房結構きいてはるから、首の下まで布団は被ってぬくぬくしてたわ~。


 裾野は今日の夕方帰ってくる言うてるし結構焦ったんやけど、ま~だいたいわかったで!

簡単に言うとバイセクシュアルは両性愛で、人によって違うんやけど、どっちも好きにはなれるんやて。

ほんでどっちも好きになるとは言うても、どうしてもどちらかが強くなるらしいねん。裾野は今でもどっちかわからんけど、例えば男6割女4割? 多分そういうことや。

 気になったんは、俺みたいな普通の恋愛をする人との違いを議論されてたり、キリスト教が関係あるらしいことやねんけど、何回読んでもさーっぱりわからへん。せやけど、あんまり理解されてへんってことくらいはわかった!

 あとほんまカタカナの用語多すぎやろ。下ネタの用語もめっちゃ出てきて、意味調べる度に顔真っ赤になってん。クリックする前に注意してくれはったらええのになぁ。


「ふぅ。もう15(さん)時か~。」

俺は携帯を枕の横に置いてゴロンと仰向けに寝転がってん。

そしたら聞きなれないメール受信音が鳴ったから、布団から出て音の出所を探したんやけど、意外にもこの前裾野が座ってた椅子の上にあってん。

その白い携帯には、「裾野・サブ」って書かれててん。

「……」

内容を見るか見ないか、俺の葛藤が始まってん。


 まずは悪魔のターンや。

――この前日記を見られた。

――寝顔の写真を撮られた。

――勝手に好きになった。

――笑われるのが嫌言うてた。


 次に天使のターンや。

――反抗したのは俺

――命の恩人

――新しい槍をくれた。

――いつも日用品、服、とにかく全部買ってきてくれはるし、ごっつ美味い料理も作れる。


……この後第3ラウンドまで続いたんやけど、悪魔の圧勝やってん。

てか天使側のネタ切れ、それが原因やわ。

 というわけで、ベッドの中で「覗き見! 相棒のサブ携帯!」


『新着メールが1件あります。』

……俺の予想は仕事のメールや。

それか、依頼主からの感謝メール。あと考えられるのは、迷惑メール?

弓削子さんに鳩村はんも居るし、龍也さんも可能やけど、サブ携帯に連絡せえへんやろ。


 メッセージを消そうとクリアボタンを押した瞬間、「あっマズいやん!」思ったんやけど、ロックがかかってないことに衝撃を受けてん!

裾野は慎重なところもあるし、プライベート厳重そうやのに意外やんな~。


 ほんじゃ、見るで?

俺は手汗をハンカチで拭き取ってから、メールボタン、それから受信ボックスを押してん。

せやけど、裾野の携帯の連絡帳登録の仕方が殺し屋らしすぎて、ため息が出てしもうてん。

送り主の名前、「SJ:SU's 1L」これ意味わかる!?

 今ならこの登録の仕方は普通やねんけど、この時は全然知らんかったから受信ボックス一覧から数分は進めへんかってん。


 あんな、新着メールの中身を見たんやけど、まず件名から驚くで?

『俺の愛する裾野へ。』

…………やっぱ無理。無理、無理。

ほんでクリアボタンを押したんやけど、でもここまで来たのに引き返すのも嫌やし、また勘違いで喧嘩したないから、思い切って決定ボタンを押してん。


『もう一体いつまで俺を待たせるつもりなんだい?

 うずくこの心の責任は、裾野、君に取ってもらいたいのに。まあ

 この際君じゃなくたっていいんだよ? だって君の相棒にどうこうし

 ろって、この前言わなかったかい? あれ? もしかしてまだ手を出

 す決心がつかないのかい? SJ』


 え?

俺に手を出すって、殺すか俺の嫌な方法のどちらかやんな?

まぁ少し怖いけど……他にも見てみることにしたで。

見ればどっちかわかるかもしれへんし……。

 とりあえず、1つ前。結構日付は飛ぶなぁ。

俺にバイセクシュアルだと言った時ぐらいや。


『かわいい相棒だね。結構難しかっただろうに、そそる寝顔のしゃし

 ん、本当にありがとう。情報屋に頼んだ? 本当に異名”狼狩り”

 の力はすごい! そうだ、前もその前も片桐を利用して送らせてるって

 くどいな。あんまりしつこいと俺が相棒に何するかくらいは、すその

 んならわかってくれるよね? 当然俺の美しさに免じて許すでしょ?』


 何やこれ?

せやけど、裾野は脅されてる……?

てかそれよりも、こいつ相当なナルシストやろ?

裾野に愛されてる自信ありすぎとちゃう?


 はぁ……あ!?

今読み返したら、寝顔の写真て! 鳩村はん、気配力無いから気づかんかったわ~。

まぁ鳩村はんならええんやけど、ようわからん奴にまで出回ってるのは結構嫌やで……?

 他にも何通か見たんやけど、同じような内容やな~。やっぱり脅されてたんかな?

裾野、ほんま何が…………っ!?

 俺は驚きすぎたあまり、携帯をボフッと枕に落としてしまったんや。

「嘘……やろ?」

俺は手が震えて携帯を持つことも出来へん状態やってん。


――だって……だって……


 何かを考えようとするだけで、今度は涙があふれる。

裾野は一体何者なん?

何人周りに敵がいるん……?

味方はどこにも居らんの?


――カワイソウニ、カンノクン。

――ハハハ! オカネガナクテ、カワイソウ、カワイソウ!

――ホレ! オカネクレテヤルヨ! ヒロエヒロエ!


 嫌や、やめろや……! もうお前らとは会わん筈や!

どうしてずーっと俺の中に居るん!? お前らが出てけ!

出てけ……! 出て行け……!!

もう俺はカワイソウやない!!!

お金はあの時よりある。

ええ食べ物も食べてる。

お風呂も毎日入ってる……!!!!

なんでまだ居るん!? どうして俺を囲むんや……!


「出て行け!!!!!!」

俺が絶叫にも近いくらいに叫んだとき、後ろでドアの開く音が聞こえてん。

「……菅野?」

裾野のか細い声が聞こえて、俺はまだ精神的に不安定のまま、裾野のサブ携帯を布団の隙間から投げ返してん。それを受け取った裾野は俺にも聞こえるくらいに息をのんで、ドサッと土産袋か何かを落としてん。

 今なら察しがつくで。あの時も、キツい声で出て行け言うたから。

「悪かった。菅野……俺は――」

裾野の声が珍しく震えてる。もしかして、あの内容はほんまに……。

「脅されてたん……? 仲間は居らんの? 裾野は1人なん?」

立て続けに聞く俺の声が聞き取れなかったんか、布団を優しくめくってきたんやけど、俺は不思議と嫌な感じもイラつきも無かってん。

「もう1回、いいか?」

ベッドの側にある丸椅子に座って俺の顔を覗きこむ裾野。やっぱり保護者みたいやわ。

「裾野は……1人なん? カワイソウな人なん?」

俺は裾野の顔も姿も見られへんくて、嗚咽を繰り返しながら言うてたんやけど、裾野はそれでも俺に視線を送ってくれててん。

「お前が居るだろ。それに鳩村も龍也さんも総長だって、な? はぁ……かわいそうかどうかは……何とも言えないけどな。」

「……」

カワイソウって、どうやって判断してんねん。今でもようわからんことやねんな、これも。

「携帯見たんだな。」

「……」

俺が黙って頷くと、裾野はふふっとため息を漏らすように笑った。

「俺、恰好悪いか?」

「……知らん。」

脅されてSJの言いなりになってる裾野が恰好悪いかどうかとちゃうねん。

きっと裾野は心の中は孤独なんちゃう……?

「メール見たんだろ? 俺の事を罵倒……いや、『出て行けー!』って言わないのか?」

裾野の方に目を向けると、何日か振りに見たからかエラい疲れた顔をしてたんや。

ほんで目が合って俺の目がうるうるなことに気付いて、ハッとした表情になってん。

「……いや、忘れてくれ。あと、俺に同情はするな。」

そう言うて目から零れた涙を指ですくうと、

「その涙はもっと他のことに使ってくれ。」

と、表情をほんの少しだけ和らげてん。

そうやって、俺には何にも……背負わせてくれへんの?

「俺は……俺には……裾野のこと、何にも……教えてくれへんやん。どうして? こんなアホなのに?」

何でやろ? この時悔しかったんかな。相棒やのに何も知らんことが。

他は皆相棒について語らすとうるさいのに、俺は薄っぺらいことしか話せへんから?

アホなら裏切らへんのに。てか、裏切れへんのに。

「アホだからだよ。」

と、何のためらいもなく言う裾野に、俺は唇をぎゅっと噛んだんや。

「アホだから、知らず知らずのうちに裏切っていることに気が付かない。無意識に人を傷つけて、勝手に……勝手に理解して、他人(ひと)の人生を狂わせる。……俺の言ってることがわかるか、菅野?」

裾野はどんどんまくし立てるように、俺を煽ってはる。でもどこか寂しそうに言う裾野に俺は怒れへんかってん。それに、そのオーラの色……もしかして……裾野は――はぁ、どんだけ無理すれば気が済むねん。

 ほんで俺は寝返って裾野と向き合うと、

「裾野こそ、ほんまもんのアホや! そないに俺の事信んじられへんのやったら、もう相棒なんてやってられへんやんか!」

と、涙を引っ込めて怒り全開で裾野に言葉でぶつかってん。

ちょっぴり大人になれた? すぐ手が出なかったから褒めてや?

「そうだな。……じゃあな。」

裾野は俺が反論しようと口を開きかけた時には、もうどこにも居らんかってん。

強いて言えば、関西の土産袋があったけどな……。

 それにしても何や別れの時のあの表情。

深いクマもあったし、結構危うい感じやってん。

裾野の過去に何があったん? どうして俺に話してくれへんのやろう……?


 あ~~ダメや!! アホがいくら頑張っても出てこーへん答えやから終わり!!

そう思ってボンッと布団を叩いたんやけど、埃が想像以上に舞って咳が止まらへんかってん。


 それから数日後。

ついに退院の時が来て、同級生の皆と鳩村はんがお祝いに来てくれはったんや!

せやけどそこに裾野は居らん。

しかも、何故かハッピーバースデーの歌まで歌ったりしてワイワイ騒いだお祝い会の後に残ってくれた淳に聞いてみたんやけど、

「解散説が流れてんねんけど、ほんま?」

言われた時は、耳を疑ったで!

「……え?」

「龍也から聞いてん。詳しいことはよく知らんから、裾野さんに直接話聞いてみたら?」

淳は心配そうに眉を下げて言うてくれてるけど、裾野が話してくれるかどうかは半々やな……。

信じてへんからって突っぱねられるか、来てくれたからって話すか……ギブ! これ以上は頭が爆発する!

「わかった、ありがとう。」

俺は笑顔で淳と別れて走り始めた頃に気付いてん。

――告白してへん!!

 せやけど今は裾野を捕まえんとアカンやん!? 嫌や、選択肢が多い!!

そう思いながら、俺らの部屋に着いてん。



 鍵がかかってないことを確認して開けると、裾野は入って正面突き当りの高窓を開けて涼んでてん。

結構風が強いんか、黒いカーテンも風圧で全開状態になってて、その度に夕日がチラチラ入ってきて眩しかってん。

「……裾野。」

なるべくいつものトーンで名前を呼ぶと、裾野は肩をピクッと動かしてん。

「ん? 菅野、どうした?」

そう言う裾野は全くこっちを見向きもせえへん。

どうしたらこっち向いてくれはるかな……?

「あ~……お腹減った~。」

どや! どや!? 結構力作やねん! 裾野と言えば料理やもの、これで振り向くやろ!?

そう期待に胸膨らませてたんやけど、裾野は窓枠に左肘を乗せて頬杖をついてん。

「自分で作りなさい。」

裾野は頬杖をついたまま喋るから、頭がガクガク動いてて少し面白かってん。

「嫌や。裾野の料理がええ。」

と、口を尖がらせて言うと、裾野はあきれ顔でもやっとこっち向いてん。

「……今日は親子丼、緑黄色野菜のサラダとわかめの味噌汁。」

そうブツブツ言いながら青いパーテーションをくぐる裾野の後を追って、

「めっちゃ美味しそうやん!!」

と、目を輝かせて言うと、裾野は照れ臭そうにポンポンと俺の頭を撫でてん。


 裾野が料理する姿を見るのは結構好きや。

変に恰好つけたりせえへんし、ほんまに丁寧にやるし、ダシをとるのにも気使ってたで。

ほんで出てきた料理は、いつも通り逸品や。親子丼も俺のは卵多めの三つ葉少なめやし、裾野は逆。

サラダは珍しいのかもしれへんけど、ドレッシングは無しやし個別の皿で盛ってくれるから、突っつきが嫌やとか考えんでもええ。

「いただきます。」

「いただきま~す!」

2人で手を合わせてから食べる料理は、やっぱりそこらの店より美味しいと思うわ~。

前も言うたけど、俺の外食経験はグストだけやから参考にはならんけど。


 話すなら今や。聞くなら今や。勇気軍、進軍!

「裾野。SJって誰や?」

大きめにカットされたニンジンを頬張りながら言う俺に、裾野はサッと流し目をしてから目を合わせてん。

「簡単に言えば……そうだな、SJこと佐藤順夜(さとう じゅんや)は俺の元恋人で、元同期、そして前居た組織から俺を追放しておきながら自分で組織を経営し、4年以上も付け回してるストーカー男ってところだな。」

…………ストーカーって、男から女だけやと思ってた。

あかん、これは決めつけやんな?

せやけど、それにしても裾野みたいな力持ちの男の人を付け回すって、相手も相当なんかな?

「ツッコミきれへん。」

ニンジンを食道にゴクリと流し込むまで、どこからツッコめばええか思いつかへんかってん。

「だろうな。そいつは俺を自分が経営している組である、”佐藤組”に入れようとしている。メールでもあった通り、菅野を捕まえて利用してまで、な。」

裾野は視線を自分の膝に落として、迷惑そうに言うてはる。

 てか、お育ちがええせいか、絶対口に何か入れたまま話さへんなあ。

それに肘もついてへんし、ほんま……って、言うてる俺が肘ついてるわ。

 ん~なるほど? 俺を利用するための文やってんな? てっきり裾野が……かと思っててん。

「じゃあ、4年以上も誘ってくれてはるのにどうして? 4年以上やろ? 俺と出会うちょっと前からやん。」

俺がカボチャを口に運びながら言うと、裾野は俺に一瞬だけ熱っぽい視線を送って、

「お前から逃げないと言ったのは、他でもなく俺だろう……? それに4年前と言っても、お前と出会ったのは何月だ?」

ほんでじっと俺の目を見るから、カボチャ食べる口止まってしまったやん。

たしかにそう言うてたけどな。

「8月やで。」

今日はまだあの日ではない筈。ますますわからんわ~。

「アホ。何にも察せないのか? ずっとお前のような新米殺し屋を待ってたんだよ、俺は。」

裾野は眉をギリッと潜めて言うんやけど、何をどうあれから察しろ言うねん、普通無理やろ~。

「えっ、どういうこと?」

俺が少し残ったカボチャを水で流し込んでると、裾野は首をぐるっと回して、

「はぁ……話せば長い。食べてからでもいいなら、4年前からお前と出会うまでを話そうか?」

言われた時、藍竜組に入って早々の俺らの会話を思い出してん。



2年前……


「裾野の過去を探ったのは、ただ知りたかっただけやねん……それでもあかんの?」

今にも恐怖から泣き出しそうだった俺を見下ろす目が、少しだけ揺らいだ気が、気だけしてん。

「二度と探るなと言ったよね?」

裾野は威圧的な目で俺を睨んでいる。もうそれだけやってのに、心臓はバクバクで肺も酸素を求めて焦っている。

「じゃあ……”本当の相棒”に……俺は…………いつ……なれるん?」

俺の涙が目を超えて頬にまで流れ出ている程、裾野の睨みは恐ろしいものがあってん。声もどんどん思い通りに出せなくなってきていたんや。

 せやけど裾野は、目を伏せて長い溜息をついただけやった。

この時の俺は、てっきり追い出されるか、殴られるとばかり思ってたんやけどな。

「俺がお前のことを心から信じたとき、かな。」

そう言う裾野の声は穏やかで優しかってん。



2009年8月……



 裾野はやっと信じてくれたん? それとも今までに信じたことはあっても、信じきれなかったん?

「……裾野?」

「ん?」

「俺のこと……信じてくれるん?」

俺の声はガクガクに震えててんけど、裾野はふっと表情をやわらげてん。

「あぁ。今から菅野、お前は本当の相棒だ。」

裾野の声はあの時みたいに優しくて、さっきの疲れ切った声はどっかに行ってん。

せやから、俺は大きく頷いてん。やっと、信じてもらえた!

 一度は心を殺された裾野の……相棒。

俺、めっちゃ責任重大やわ。ま、裾野のこと嫌いやないし、むしろ歓迎やけど。

そう思いながらメインディッシュに手を付けたんやけど、なんやこれ美味しすぎて頬っぺた落ちるで!

「おいしそうに食べてもらえて、食材も喜んでるだろうな。」

親みたいな顔して言う裾野って、ほんまにたったの4つ上? 詐欺ってへん!?

「ん~ようわからん。」

俺が首をひねってると、裾野はククッと口元に手を当てて笑って、

「今度一緒にスーパー行くか? 食材の気持ちがよ~くわかるぞ。」

と、試すように言うから、「のぞむところや!」言うてしまってん。

それに裾野は大爆笑。「そんな意気込みで行く場所ではない」言われてん。

……やらかしたわ。挑発にすぐ乗るのも、俺の長所やろ!?

 ほんでついに裾野の4年前からの過去を聞くことになってん。



現在に戻る……



「日本のスーパーって、本当に工夫されてるよね!」

リヴェテは目を輝かせて言うんやけど、俺は意識したこと無いな~。

「フランスこそオシャレそうなのに。」

騅は少し残念そうに言うてはるけど、たしかにオシャレなイメージあるな。

「イメージに惑わされない方がいいぞ。海外行くと色々残念だから。」

裾野はため息をつきながら言うんやけど、流石名家様出身やな。経験の量がちゃう。

「え~……言うても今度海外旅行行くやん。」

せやせや、今度裾野とグアム行くねん。同級生たちには散々避妊具が何とかって言われたけど、そう言えば何を準備したらええのか誰にも聞けんままやったわ。

「え!?」

しかも親子は目をギラギラ光らせてはるし。何想像してるん?

「菅野と2人っきりで行ってくる。」

裾野もめっちゃ鼻高々に言うてるし、俺と行くことって自慢になるん? だとしたら初耳やで!?

「おぉ~、これはこれは。」

リヴェテは心からの感心とか言いながら、お偉いさんがやるような拍手をしてんねんけど、このにゃんこも何期待してんねん。絶対普通の想像とちゃうやろ!?


 海外旅行は楽しむけど、それよりもまず俺の過去を話し終える方が先な気するで……まぁ全部裾野の奢りやし、別にええけどな?

本当の相棒として認められた菅野だが、あくまでも聞く過去は4年前から。

そして菅野は裾野のことでまた驚かされることとなるのだが、それは来週の土曜日に。


お楽しみに^^ノ

いつも応援してくださって本当にありがとうございます。

関西弁に磨きをかけたいです。

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