「13歳-得意技は薙ぎ払い、まつり縫い-」
喧嘩したあとの菅野はどう過ごしているのか……?
そしてあの人との出会いと裾野の陰謀が垣間見える回です。
※思い出しながら書いてます!
※7,800字程度です。
2009年6月某日夜……
裾野&菅野の部屋
菅野
心の闇が深い中学2年生。自分が神になったり、悪魔になったり、黒が好きになったりな。
もちろん、俺も例外やないで。ならなかった裾野がおかしいねん。
そうそう! ついに俺、制服貰ってん! 初殺人は省略……というか、日記に書いてへんし、俺もイマイチ覚えてへんよ。罪悪感を覚えられるほど、頭も良くないことやしな。
ほんで俺は裾野に「大事な話がある」と言われただけで、仕方なく部屋で待っているところや。
正直暇やわ~。……せや! 鳩村はんにメールしてみよ。
『裾野が来~へんよ~暇や~』
こんなしょうもない内容やから、絶対返信来んへん思ってたんやけど、5秒くらいで返信が来てん!
こいつこそ神なんちゃう?
『裾野くん? それなら龍也さんと一緒に居たけど、何かあったの?』
……何やて? この俺を呼び出しておいてその態度は無いわ~。神たる……今は言うだけでも恥ずかしいわ~。それに期間限定神様なんてお天道様に失礼や。
『ムカつく。呼び出されたから来てやったんやで~?』
『そんなこと言われても……。一応2人のことは聞いてるから、僕から連絡してみる。』
鳩村はんには喧嘩したこと伝わってるんやな。龍也さんにも伝わってるんかな~?
同級生のやつらも近寄りがたそうにしてはるし、ろくな噂立ってなさそうやな。
待つこと5分。ようやく鳩村はんからメールが来たんや。
あー5分が1時間に感じたわ~。ま、この時の俺は短気やしな。
『裾野くん、今から行くって。総長にも呼び出されてたみたいで、連絡できなかったみたい。だから、怒らないであげてね!』
鳩村はんの平和すぎる優しさに俺はつい笑顔で頷いてたんやけど、そういう問題とちゃう。
まぁ総長から叱られてたんやったら、絶対イジったろ。
ほんで鼻歌混じりに待っているときにドアが慎重に開いたから、俺は咄嗟に槍を構えてん。
息を殺して自分を殺す。間合いはオーラから考えると、入り口付近やな。
裾野は気配を消せるから、もしかしたら鳩村はんかもしれへんけど、怒ると消し忘れるとこあるし、多分あいつやろ。
俺はヒーローさながらにパーテーションから勢いよく出ると、
「はぁ……菅野。待たせて悪かった。」
目の前にあきれ顔の裾野が居って、即槍没収や。この怪力男め!
「別にええけど?」
「……単刀直入に言う。」
何やそのわかりやすすぎる戦線布告。俺、なめられてるん?
「ん?」
「え?」
そんな俺の予想に反して裾野の頭上には、いくつもの「?」が見えてん。
尚更わからん!
「短刀直入って何や? 俺を殺す気やな!? 武器、隠し持ってるんとちゃう!?」
なんて慌てる俺に対し、裾野はプッと吹き出して、
「なんだ、そういうことか。単刀直入は、前置き無しに本題に入ることだ。間違っても刀ではない。」
それを聞いた俺は何だかムカムカしてきて、裾野の胸倉を掴んだんや。……あの時みたいに。
ほんで歯をむき出しにして唸る俺に、裾野は……何もせずに俺を見守るような目つきで見下ろしていたんや。……あ~ムカつく!! 保護者面しやがって!! 言うても今の保護者は裾野やけど。
そう冷静に考えたら胸倉掴んでる自分が嫌になって、すぐに手を離したんや。
「ふぅ。菅野、お前が探して欲しいと頼んでいた弟の件だが。」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が1回だけ変に鼓動を打って冷や汗がどっと流れ始めたんや。
何でやったんやろう?
「……」
「元気な姿で見つかった。ここからそう離れていないとあるアパートに居る。」
「……」
「菅野?」
俺は最悪の結末を予想していたから、とりあえず回避はできたんやけど、問題はそこやない。
一般人である弟に、もう人殺しをした殺し屋の兄なんて……オトンにまず顔向け出来へんと思ってたのに、弟まで顔向け出来へんなんてな、笑えるやろ?
そう思っていたら何も言葉が出てこんくて、黙って頷くことくらいしか出来へんかったんや。
会うか? そう言われたらすぐ断ろう。無事ならええ。元気に学校に通って、結婚してくれたらそれでええよ……。俺なんて居なかったことにしたらええやん。もう闇の世界に入り浸ってる俺なんか。
「菅野、いや……関原竜斗。」
「気安く本名で呼ばんといてくれる!?」
「……悪い。お前の弟である関原和斗は、同業者で佐藤組所属の槍部徒弟だそうだ。」
刹那、ほんま一瞬。俺の足に電気が走ったような痛みがあってん。
せやけど、それよりも同業者になっていることがショックやった。
俺があの時あんな勝ち方をしたから、きっと俺を殺したいから……俺の首を狩って……せやろ? 和斗?
今ならかかってこい言えるけど、当時の俺には怖くて怖くて仕方なかってん。
だってどれだけ強いのかもわからんし、復讐の力は強大やと最近週2もある道徳で習ったばかりやったから。
すると裾野は、大げさにため息をついてん思わず見上げると、
「お前のせいではなく、前科者の母親のせいだ。気を落とすな。」
優しいいつもの裾野の顔。
――でも俺のことが…………。
そう思うとすぐに裾野を跳ね除け、俺はまた屋上へと逃げたんや。
よく考えれば、この時よう裾野から逃げてたなぁ。戦いもせずに。
2009年7月初旬
藍竜組付属中学校 男子トイレ
菅野
ちょいと腹イタで個室に籠っていたんやけど、出口が見えてきた時にメールの音が鳴ってん、結構イラッときたで。仕方なく内容を見ると、鳩村はんからやった。
『突然ごめんね。菅野くんのお父様がお亡くなりになったんだ。今、裾野くんが病院に行ってるから、菅野くんは部屋で休んでてもいいよ。学校には説明してある。』
俺はその無機質な文章をしばらくじっと目で、何度も追っていたんや。
ほんで時間が経ってくるにつれて、歯がガタガタ鳴り出して、どんどん視界がぼやけてきて、俺は携帯をポケットにねじこんで、口を大きく開けても声が出せないまま、とめどなく流れる涙に溺れていたんや。
「貧乏人は心が豊か。せやから、絶対大金なんか持っても無駄遣いせえへん。もうパチンコ通いもやめたしな。」
オトンのあの笑顔とあの言葉があったから、乗り越えられたんやで。
いつか……お金に余裕が出来たら関西に帰ろうと、密かに裾野の財布から10円ずつ盗んでいたことは謝るから、悪いことをしてたのはわかってるから……依頼報酬のお金も全部貯金して、あと少しやったのに……もう少しで、あとほんまにもう少しで、帰ってオトンに大きくなった姿を……あの時怒って出て行ったことを謝ろうとしていたのに。
オトン……どうして…………? せや、全部俺が悪い。和斗のこともきっとそうや。裾野の優しい嘘なんやろ? 俺が黙って家を出ずに、一緒に頑張ってたら……こんなことには!!
全部俺のせい、かわいそうに、かわイそうに、かワイそうに、カワイそうに、カワイソうに、カワイソウに、カワイソウニ、カワイソウニ……!!
いじめてきたあいつらの顔が浮かんでは、俺をバカにしてきてん。その中に裾野も居た気がして、俺は何時間も泣き続けてん。そないなことしたって、どうにもならないと知りながら……。
2009年7月中旬
藍竜組付属中学校 2年E組
菅野
結局1週間くらい休んだんや。どうにもならんくて、起き上がれられへんくて。
もちろん、今は裾野の部屋やなくて鳩村はんの部屋で寝泊まりしてるで。
あいつの部屋なんか帰りたくもあらへん。
そんな話をしたら鳩村はんにため息をつかれたんやけど、よく考えたら板挟み状態やったんやもんな。
ほんまごめんな~。
教室では相変わらずグループ行動が好きやから、いつものメンバーと居ったけど、正直1週間休んでも体調も心も戻ってへんかった。せやから、空元気ってやつやな!
それでも全員気付いてへんみたいやし、裾野と廊下ですれ違うても無視できるくらいにはなったで。
「菅野~! あそぼ~ぜ!」
「面白いこと言って~!」
「古本新嬉劇見たよ! 今度一緒にやろうぜ~!」
……せや、気が付けば俺は人気者になっていてん。
あまり淳とだけやなく他の人とも遊ぶようになって、まぁ今の言葉で言うならリア充やな。
裾野のことなんか気にせんと、アホやからアホ騒ぎしとったで。
ほんで今は鳩村はんと部屋で勉強中や。
「ふあ~……」
「……菅野、くん。」
薄茶色の新しそうなローテーブルにアイスコーヒー砂糖とミルクをドバッと入れた、所謂菅野スペシャルを用意しながら、鳩村はんは一向に進まない課題に心配そうな顔を浮かべてん。
「大丈夫やて! 終わらす、終わらすってば!」
俺が慌てて胸の前で手を振ると、その弾みで鳩村はんの茶色縁メガネを落としてしまってん。
「うわっ、ごめん!」
焦って拾おうとする俺の手をバッと払ってバッとメガネを拾う鳩村はん。
正直怖かってん、背筋がゾッとしたで。
「……」
しかも真顔で見つめてくるねん。
「菅野くん……気を、つけてね? その…………怪我、しちゃう……から。」
せやけど、ボソボソ言うても心配してくれる鳩村はん。ほんまええやつ!
「ありがとう。」
笑顔で返すと、鳩村はんはメガネをかけながらノートパソコンを開いてん。
訳を聞くと、「仕事……」とボソッと言っただけやったわ~。
話し相手もしてくれへんし暇やから、俺は何も考えずに部屋を出てブラブラ歩いてたんやけど、そしたら眩暈がして、壁に思い切り頭をぶつけてん。ゴンっていうあの音に俺の歯がギリッとなって、更に耳鳴りまで連鎖して、ほんまに沸騰しそうになったわ~。
「いっ……つー!!」
ここは3階。ほとんど目上の人しか居ないんやけど、廊下は物音1つもせえへんし、騒ぐ声なんてもってのほか。少しだけ恥ずかしくなってん。
「ごきげんよう、裾野の相棒さん?」
色っぽいような甘ったるいような声で後ろから声をかけてこられて、俺は暗殺された感覚になったで。
「何や?」
振り返ると、そこには短いつやつやの黒髪に厚い唇には赤い口紅、目は切れ長で化粧のせいかもっと強調されてる感じで、鼻はかなり高い。せやけど、血みたいに赤い膝上くらいまでのブラトップドレスと同じ色の高いピンヒールには鼻高々なお嬢様的雰囲気もあったわ。あとは肌がかなり白いし、身体は腕と肩以外は本当に華奢な感じや。まぁとにかく俺の苦手そうなタイプ。それが第一印象やったな。
「あの時はどうも。素晴らしい槍裁きだったわ。」
への字の眉を下げわざとらしく拍手をして、心からそう思ってる風に見せてる女。その仕草に俺の直感は、年下なわけあらへんことを告げてくれたで。
「……?」
俺が首をかしげると、女は驚いたような顔をしてん。多分、本心とちゃうな。
「あら? 人違いだったのならごめんなさい。」
女は俺のつま先から頭まで一通り視線を送ると、思いついたような顔を大げさにしてん。
「あなた、もしかしてモデルさん?」
「……」
その質問に黙って首を横に振ると、女は更に顔を近づけて、
「かわいい!」
と、満面の笑みで言ったと思ったら、突然影しか無いような顔に一瞬で変えて、
「殺しちゃいたいくらい。」
この時の声、成人男性の声の高さの平均くらいやったわ! とにかく背筋がぞわっとなってん。
ほんまに気に入ったやつは殺して剥製にしそうやもの、この人。
「ごめんなさいね? 私はユミコ。矢を使う「弓」に、「削」るに、子どもの「子」。裾野の1つ下で、結構気に入られてるの。今も裾野のことを探してるんだけど、知らない?」
女改め弓削子さんは、いつも腕を組んで話しかけてくるんやけど、何で自信のありすぎる奴って腕を組むんやろな?
「……知らん。」
「そう。」
弓削子さんは無表情で短く言葉を切ると、早歩きでカツカツ靴音を鳴らしながらどこかへ行ったんや。
――まさか。
俺の思考回路は偉そうな態度へのイラつきよりも、俺を人間オークションに出品した女たちのことに飛んでいたんや。
「ユミコ! あんたはほんっとうに下手くそね! しっかり洗わないと、”商品”として出せないじゃないの!」
「すみません。」
――ちゃうやんな? まさか、あのユミコが弓削子さんってこと……ありえへんやんな?
せやけど名前が一緒やし、どことなく声も似ているような気もしなくは……って、全く声の感じなんて覚えてへんのやけど。
それにしたって、でも、弓削子さんを見る限りお金には困ってへん感じやし、下っ端のイメージも無い。
まぁ、ありえへん、ありえへん。考えたってアホにはわからんし。
「ふぅ。」
俺は息をついてまた歩き出したんやけど、今度は真正面に淳が居たんや。
「菅野。」
「ん?」
淳の表情は俺の心を見透かしたような感じで、そうされるのは好きやないから多分眉間に皺でも寄ってたと思うわ、ほんますんまへん。
でも自分でオーラを見透かすのは好きなんやで。
「ちょっと休んだ方がええよ?」
「……」
俺は弓削子さんの一件もあったから、多分疲れていただけとちゃうかな。考え事すると疲れるし。
「部屋まで送る? てか、送らせて。」
「ほんま気使わんといて。」
ムッとした顔で素っ気なく返事したんやけど、淳の表情は変わってへんかってん。
「顔色悪いやん。医務室行くで。」
ほんで淳に腕を引かれてしばらく歩いていたんやけど、1階に下りたところで弓削子さんと再会してん。
ちょっと振りやな。なんやけ、裾野が恰好ええ言葉知ってるんやけど忘れたわ。
弓削子さんは下駄箱前の壁に寄り掛かって腕組みをし、淳を目で射るみたいに鋭い眼光で睨んでたで!
怖いわ~。
「あら? たしかあなた、裾野に注意を受けてなかったかしら?」
「はい。」
「じゃあ、お約束は守らなきゃ。」
「すみません。」
そう言うと、俺の腕から手を離す淳。
この2人、初対面とちゃう雰囲気があるわ。それに裾野からの注意って何や……?
俺何も聞いてへんけど。そうは言うても、俺が聞いてあげてへんだけやな。
「はい、よくできました。」
この時の弓削子さんの勝ち誇った顔、俺なら耐えられへんで。精神的に。
ほんで俺のおでこに手を当てて、
「裾野の相棒さん、体調悪いの?」
なんて甘ったるい声で言われて、俺は内心冷え切ってたわ。ほんまに怖くて。
「……」
俺が目を見開いて無言で首を横に振ると、淳は穏やかでない顔をしてたで。
ほんまにこの時俺は眩暈も起こして体調が悪かったんやけど、心配かけたなかったから無理にでも元気を出してたんや。「俺は大丈夫」って言い聞かせて。
ほんで「飽きたー」言うてる弓削子さんが去り際に淳の耳元で何かを言うたんやけど、俺には聞こえへんかった。
「なぁ」
「あの」
まさかの同時。
「先話してええよ。てか、弓削子さんと何があったん?」
「……」
淳は言いにくそうにうつむいてはる。弓削子さんと裾野は一体何を考えてるんや?
「あー今の無し! それよりも医務室に行かんとあかんな! 注射は嫌やな~!」
俺が無理して笑顔を作って、腕をまくったり注射を打つ真似をして遊んでいたんやけど、
「…………やろ、全部。」
淳はかすれて消えそうな声で言うから、始めの方がよく聞こえへんかってん。
「ん?」
「空元気やんか。医務室でゆっくり休んで、もう無理せんといて。」
「う、うん。ありがとう。」
そうして2人で医務室前まで来たんやけど、ほんまは行きたないから、
「もうここまででええよ。送ってくれてありがとう。」
と、歯を見せて笑うと、淳は小さくため息をついてん。
「絶対行かないつもりやろ。」
淳は立ちはだかる壁さながらの仁王立ちで言うんやけど、それなら股の下をくぐれそうやな。
「……ごめん!」
俺は最近体育で習った”股抜き”、まぁこれほんまは武器を使って相手を縦真っ二つにも出来る小技なんやけど、淳相手やからすり抜けるだけやで!
「はぁ……」
俺が残りの体力をフル稼働させて走っている時に、遠くの方で盛大なため息が聞こえたんやけど、気のせいやんな?
それと、「心配して損した!!」言う叫び声も聞こえた気がするで。
ふふっ、ほんまごめん。俺の注射嫌いに免じて許したってや?
2009年8月12日
藍竜組付属中学校 グラウンド
菅野
俺の大好きな体育、いや殺し屋訓練をしとってん。
いつも通りぶっ通しで2限分。1限が45分やから90分やな。
それが1日の最後の授業やから、終わるとすぐに部屋に戻る。
ん~あんま言いたないけど、着替えはいつもイジられんねん。
腹筋くらい皆割れてはるのに、「お前のは何か違う」言われてな。
あんまり……身体のことどうこう言われんの嫌やねん。
あと、誕生日が明日ってこともあって皆プレゼントにパーティも用意してくれはるみたいやで!
めっちゃ楽しみやけど、最近眠れへん上に身体のそわそわの正体もわからんままやし、オトンのことも立ち直れてへんねん。
まぁ言うてもここまではいつもの俺やってん。
まずは疲れのせいか裾野の部屋に戻ってしまった時やったな。
部屋に入ると真っ暗やったから、とりあえず電気を付けたんやけど、そしたらすぐに太ももに鈍痛が走って、腫れたみたいな痛みになって、ついには立っていられなくなってんその場に座り込んだんや。
「いっ……。もしかして……この印!?」
気になって制服のズボンをズラして印を見ると、言葉では言い表せないくらい汚い血の色で、俺は思わず口に手を当てて短い悲鳴をあげたんや。
「うっ! 医務室まで足を引きずれるか……自信ないで、ほんま……冗談抜きで。」
藍竜組の医務室は総長室の隣の隣。裾野の部屋は4階角部屋。それまでに誰かに見つかれば、要らん心配もかけるし、変な噂の的にはなりたくない。
そこで俺は何とか裾野の部屋から脱出して、重い体を引きずりつつ階段を目指したんや。
幸いにも誰も居らんかったし、何とか辿り着けるかもしれへん。
せやけど、俺の願いとは反比例してどんどん痛みを増す太ももの印。
それにオトンの死、空元気、その他諸々の今までの無理も祟ってか、俺はそこで意識を失ってん。
現在に戻る……
裾野、菅野&騅の部屋
菅野
「医務室から最も遠い部屋、料理研究家の部屋でーす。」
騅が珍しく笑いに走るから、とりあえず苦笑いくらいはしたんやけど、騅はすぐに「すみませんでした」と謝ってて、完璧な人間が居ないことの証明にもなったわ~。
「……」
対する裾野はだんまりや。首が痒いのか、ときどき引っ掻いてるんやけど、どないしたん?
「なるほど。倒れた菅野くんに~?」
「裾野さんが~?」
「半殺ししたりしてへんで!」
俺がわっと口を挟むと、1人と1匹は完全に真顔になってん。え? 何か間違えた?
「菅野、安心しろ。」
裾野は眠そうな顔でそう言うんやけど、何が安心しろなん?
さっぱりやねんけど!
ほんでまたニヤニヤしてるしな……この親子ほんまわからんわ~。
意識を失った俺は一体どうなったんか、このままだったのか、医務室に運ばれたのか、それとも……?
倒れた菅野を救うのは一体誰……?
そして、その原因とは!?
また来週の土曜日にお会いしましょう!




