占い師に騙されて、異世界に行きました。
で、異世界でうはうはハーレムがあるわけでもなく、勇者や魔王みたいなチートでもなく、ごくふっつーの村人Aになったとさ。
……って、おーーーーーいッ!!ちょ、待てーーーーーい!!
おい、おいおいおい、何俺はこのカントリー風の村で村人Aなんてしちゃってんの?いや、彷徨っていた見ず知らずの異世界人なんて拾って、面倒見てくれるお爺さんとお婆さんにはとっても感謝しているけれども!
えっ、俺運命の赤い糸の相手が居るって言うから、日本を捨てて異世界に嫁いだんだよね?この村、女子少ないよね?百人くらいの村で、若い娘って言ったら5人くらいしかいないよね?しかもみんな許嫁いるし。
ほかの女子…半世紀くらい前は女子……しか、視界に入ってこねぇぇぇええぇぇえええええ!!
それに俺自身もいろいろ問題あるし。あ、もしかして俺、騙された?騙されちゃった??
なんか異世界に来て半年、見ないように認めないようにしてたけど、もしかして異世界に嫁いだんじゃなく、ら、拉致?!!もしかして、まだ目覚めていない潜在能力が?
ひとり畑の真ん中で悶々としていると、ぽん、と頭を撫でられた。
「あら~アキラちゃん、小さいのにお利口ねぇ。今日も畑のお手伝い?」
近所の女子(半世紀前は)のリデアさんだった。彼女はかごからリンゴを取り出すと、俺に握らせた。
「頑張ってるアキラちゃんに、ご褒美よ。三時のおやつにしなさいね」
と言って俺の頭をぐりぐりして、リデアさんは行ってしまった。また、小さい言われた。
だがリデアさんは間違ったことを言っているわけではない。なんと俺は異世界に来て、ロリショタになってしまったのデス!!
怒りでぶるぶる震え、手の中のリンゴがブシャアァ、とはならなかった。だって、手が小さいんだもん。
とにかく、きっかけになったあの占い師!!
黒ローブを纏っていて表情は見えないし、「ちょっとこっちに」とか裏路地にひっぱり込むし。考えれば考えるだけ怪しい。だが当時の俺は必死だったのだ。
あと半年で30歳になろうとしているのに、彼女いない歴イコール年齢だったからである。すがれるものがあれば、藁にだって、黒ローブにだってすがりたいお年頃だったのだ!
「私の名前は、フロート。見ての通りの占い師。君、30にもなって彼女いなくて童貞でしょ?」
「なっ?!」
「この世界に、君の運命の相手はいないよ。断言する。君は死ぬまで、童貞さ。」
「は?!」
「でも、異世界になら運命の相手が君を待ってるよ。で、どうする?」
「えっ?」
「今なら出血大サービスで、タダで、この偉大な魔法使いの私が、君の運命の相手のいる世界に連れてってあげるよ。」
「えええ?っていうか、職業が代わってる「はい君のラストチャンスまで五秒前~」」
「ちょ、待て、待って」
「四、三、二~「い、行きます!!連れてってください!!」」
とまあこんなことがあった。黒ローブの占い師?がにやっと笑った(様に何故か見えた)と思ったら、辺り一面が光って、俺は拾われた村の入り口にいたのである。素っ裸で。
村では人買いに売られた俺が命からがら逃げてきたのかと思われて、大変な騒ぎになった。なんせ素っ裸だったし、ショタだったし。
俺は色んなショックが重なり、ずっとぼーっとしてたけども。
(え、魔法って本当にあったんか、というか、俺は異世界に来ちゃった系なのか、というか、俺今縮んでない??)
何やかんやあって、今お世話になってるお爺さん家に落ち着いたのだった。
来た初めは、マグロ漁船に乗せられなくてよかった、そういえば運命の相手がいるって言ってたしまだかな~とかのほほんとしてたけど、考えたら俺ショタになってるし、この村ご老人ばっかじゃねぇかあ!!と気が付いてしまったわけで。
「ちきしょ~あの占い師?なんて言ったかな~クロード?いや、フロート?」
「呼んだ?」
「!!」
リンゴを持ったまま、ぶつぶつ占い師に向けて文句を言ってると、すぐ後ろから声がした。
「というか、やっと私の名前を呼んだね、待ちくたびれたよ」
なんかプンスカ怒っている。激おこなのは、俺の方じゃ!!
「な、なんでお前がここにいるんだよ!というか、ここはどこだよ!何で俺、縮んでんだ変態!」
「君は私の運命の相手で、一緒に転移方陣で飛んだはずが君はどこかに行ってしまって、君から名前を呼ばれないと迎えに行けないし私は1人寂しくこの半年を過ごしていた。縮んだのは、君の世界で言うと時差。なにかほかに質問ある?」
「えーと、ツッコミどころ多すぎて、ちょっと…」
「こんなに小さい頭ではしかたないね」
よしよし、となでられた。
「う、うるさーい!何で今日は黒ローブきてないんだよ、ってかあんたイケメンですね?!」
そうなのである。目のつぶれそうなイケメン、超絶美形。俺のつたない語彙力じゃ到底表現しきれません。銀色の髪はロン毛でゆったり後ろで束ねているし、瞳も銀色だし、何だか本当に魔法使いの様な格好をしている。
「聞き間違いだったら言って欲しんだけど、俺があんたの運命の相手って言われたような~」
「うん。私の、運命の相手が君、アキラだね。」
やっぱ間違いじゃなかったーーー!!
俺は千のダメージを受けた。
「俺の運命の相手って…相手って(泣)お、女の子じゃなかったのかよ…」
「運命の相手が女って、私言ってないし。」
あまりのショックで俺はひざから崩れ落ちる。で、でも!とフロートを仰ぎ見ると、愛しいものを見る優しい眼に俺はスライムと化した。
「諦めて、私の運命の赤い糸を引きなさい。息も出来ないくらい、愛してあげるよ」
どうやら俺の運命の相手は、可愛い女の子じゃなくて、男の超美形な魔法使い様(仮)だったようです。