出港。
結婚式を早めに終えた吉晴達は部屋で一旦着替え、短い休息をしてから早々に出発の準備をする。
「結奈さんどうします?」
さっきから真っ赤な顔で気絶したままだ。しかし俺には考えがある。
「結奈だけ置いて行こっかな~」
「ダメダメ!!」
「凄いですね……吉晴さん……」
耳元でささやいた瞬間、何かが解けた見たいに飛び起きた。
「もう出発するから準備しろよ~?」
「ちょっと~待ってよ~」
そんなわんやで、数十分で支度を済ませた結奈と一緒に港に着いたわけだが……
「ミーシャ……これが大型船の一番大きな船着き場か?」
「え?、あ、はい……トローデス1の港です」
考えていなかった。そこには、湖にあるちょっと大きなボート乗り場見たいな物だった。とてもじゃないが、現代の船が泊まる港ではない。聞いたところによると、この世界の普通の貿易船の大きさは10mそこらしかなく、軍艦でも最大で50mぐらいらしい。ここで問題が発生してしまった。
「すみません……」
「ミーシャが謝ることはないよ!こっちの船がでかすぎるのがいけないんだから!」
大鑑巨砲主義者様方、誠にすいません。彼女を慰めるためなので、どうかお許しを……
そんな事を話していると、聞きたくない声が耳に入ってきた。
「どうしたのですかな?勇者殿?すでに行ってしまったかと急いで参りましたが……!?姫様も行かれるのですか!?」
気持ち悪い笑みを浮かべこっちに来たと思ったら直ぐにミーシャを見つけ表情が変わった。ガマデスは予想にしなかったろう。何せ彼の中で俺は死ぬこと前提で話を進めてきたのだ。そんな俺がミーシャを連れて死んでしまったら、どうなるだろう。例え俺が死んでもミーシャも死ぬ可能性が高い。だからと言って俺が生きて帰ってきてしまっても、ミーシャの婚約者になることは出来ないのだ。
「はい。私が無理を言ってお父様から許可をいただきました。私は吉晴様の妻でございます。夫が死ねば私も運命を共にしましょう」
ミーシャもガマデスに喧嘩を売っているような気がする。ならばこちらも参戦しようではないか!
「しかし困りましたね……これ程までに港が小さいとなると私の船は入ってこれないではないか……」
わざと大袈裟に振る舞ってみた。
「こ、ここは軍でも使われる最大の港ぞ!?」
ここで俺にもいい案が思い浮かんだ。
「小さいボートで沖まで出るか……」
そして海にゴムボートを出すとガマデスに別れを告げた。
「問題は解決出来たので、また会いましょう!見送り感謝します。さ、結奈もミーシャも早く乗った乗った!」
俺にせかされ、急いで乗ったミーシャはゴムと言う未知の素材に疑問を抱きながらこれから起きることを待っている。ガマデスが心配そうに話しかけた。もちろん俺のためではない。ミーシャの安否の為だ。
「そんな船で大丈夫なのか?」
「沖の方で戦艦に乗り込みますから問題ないです」
「戦艦!? どこにそんなものが……」
と言いかけたところで、俺がゴムボートを出したことを思いだし言葉を止めた。
俺はエンジンのヒモを引っ張りエンジンをかける。
その異様な音に気づいて様々な船乗りが視線を向けてくる。こう言うの……悪くない……
「でわ」
そう短い言葉をかけボートを進めた。この世界は風で進む帆船が主流だが、一部の軍艦では魔力を原動力にする船もある。しかしいずれにしても、風を受け止める帆は存在する。そんな中、帆もない小さな船が異様な音を立てて進むのは皆に衝撃を与えた。それに速力も比較にならないほど速い。
「凄いですね……この乗り物は……」
「こんなので驚いてたらこの先、心臓止まっちゃうよ?」
「下がぷにょぷにょだよ?」
結奈はちょっと珍しい。と思っただけで、何もなかった。それよりも、下のぷにょぷにょが気になるようだ。
「ここら辺で良いかな……」
では手始めに。何にようかな……ガマデスに衝撃を与えるように……小さいやつから段々と行くか……
「じゃあ暁型駆逐艦全て」
比較的小さな船が4隻現れた。それはこの世界ではすでに最大の大きさだ。
昨日の夜考え抜いた結果。現代兵器が海龍種に何が効果的で何が無駄かは分からないため、時代を超えた混成艦隊を築こうと言う結論に至った訳だが何故暁型なのかは某擬人化ゲームの影響だろう。それに最悪の状況では核兵器の使用も含まれている。
次々に召喚していく。ついでに双眼鏡でガマデスを見たら腰を抜かして後ろに倒れていた。
結局、召喚したのは……
暁型駆逐艦4隻
大和級戦艦一番艦大和
イージス艦5隻
正規空母2隻
金剛型高速戦艦4隻
と言うぐらいの運用バランスの崩壊した鬼畜艦隊になったわけだが……問題はここからだ。
「どうやって動かすんだ?」
俺はボートの上で考えた。
こんな16隻もの巨艦に囲まれてる重圧が半端ない。
「なんですかこれは……」
ミーシャが諦めたように呟いた。
「すみません……全部軍艦です……」
ミーシャは考えるのを止めたようだ。結奈はホヘェ~と眺めているだけだ。
「じゃあ乗りますか……」
俺はあの中でひときは目立つ巨艦に乗り込む。それこそ大鑑巨砲主義の象徴であり、技術の結晶とも言える美術品……
「お待ちしておりました。MYマスター!」
やっぱりこう言う系になるか。良いんだが。甲板にはたった一人、セーラー服を着た俺達よりも幼く見える少女が立っていた。他に人の気配はしない。。
「大和型戦艦一番艦の大和です!」
少女の笑顔と敬礼とともに船の汽笛が鳴り響き、機関部が始動を始めたのか、煙突から黒煙があがる。
それに連れられる様にそれぞれの船が次々に汽笛を鳴らし、黒煙をあげていく。それは俺達を祝福しているみたいで、言い意味で鳥肌がたった。
「マスター。いえ……艦長! 目標進路は!」
幼い少女は幼い声を張り上げた。
こうして俺達の新婚旅行は戦艦で海龍種討伐に行くことになった。
鬼畜艦隊改め、第1異世代混成艦隊の初航海は幕を開けた。