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異世界でも、チートよりも大切なこと。  作者: 芳賀勢斗
世のため国のため。
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結婚式。そして海龍種。

「あ~づがれだぁ~」


あれからと言うもの、結奈とミーシャにつれ回され、大勢の貴族に挨拶をしたりと今までで一番疲れた。

てか、結奈のやつ俺のベットでもう寝てるし……


「今日は付き合ってくれてありがとうございました」


ミーシャは非常に気分が宜しいようだ。この笑顔のためなら頑張ったかいがあったと言うものだ。

しかし直ぐに顔が曇ってしまった。


「しかし…大丈夫なんですか? 海龍種ですよ? 吉晴さんの力は信じていますが……」


「あ~勢いで宣言しちまったが、海龍種ってどんなやつなんだ? 海にずっと潜ってるのか?」

その言葉にミーシャはさらに不安をつのらせた。


「海龍種とは海の中で移動して、いきなり近くの海面に出て攻撃してくるのです。その攻撃と言うのも体から空飛ぶ虫みたいなものを出して、船に体当たりさせることもありまして……それに海龍種の皮膚はとでも硬いのです。生半可なバリスタでは役に立ちません。接近しようものなら、その巨大な体で押し潰されてしまいます。」


なるほど…認識は巨大な潜水航空戦艦と言う位置付けで間違えではないか……それに飛行型の虫とやらは特攻隊なのか? めんどくさそうな相手だ…。


「なんとかするさ! それより今日は寝ておきなよ、明日はいよいよ結婚式だからね」


「そうですけど……吉晴さんはどうするのです?」


「俺は少し考えることがあるんだ……先に寝ててくれて大丈夫だよ?」


「大丈夫です。私は出来ることはありませんが……せめて一緒にいたいです」


まったく……嬉しいね~こう言うこと言われると……


「寝たくなったら寝ろよ?」


こうして長いようで短い夜が過ぎていった。





「結奈~起きろ~朝だぞ~」


前から気になっていたが、結奈は朝が弱い。起こすのも一苦労だ。


「今日は結婚式だぞ~」


「結婚……何言って……は!? 今何時!?」


起きたよ……寝ぼけぎみだけども……


「大丈夫ですよ、まだ十分時間はありますよ」


「そう!? 良かった……」


「もうちょい早く起きろよ……もう俺らは準備出来ているぞ?」


すでに俺とミーシャは結婚式の衣装に着替え終えている。


「ちょっと待ってて……って、吉晴君、一旦出てってくれないかな……」


「あ、すまんすまん……しっかしお前のドレスしわくちゃだな……」


「しょうがないじゃない……寝ちゃったんだし……」


「脱いだらそこら辺に置いておいてくれ、」


そう言い残し部屋を出た。は~結婚式か~緊張してきた~






「ガマデス様、海軍の方は長期演習に行かせ計画の方は順調に進んでおります」


「うむ。これで我が王国軍は海龍種討伐に手を貸すことは出来なくなったと言うことだ……」ヒッヒヒ……


「いくら勇者とはいえ……海龍種を一人で倒すことは不可能でしょう。しかもあやつは、自分の船を持っているとは思えませぬ。借り物の船で出来ることなど、たかが知れております。それにパーティーの時のあの態度。どうやら海龍種をよく知らないようでしたし……」


ガマデスはトローデス王国の国防大臣であり、こう言った指示を自由に出すことができる。この特権を使い吉晴に同行するはずだった部隊を長期の演習に行かせ吉晴一人で、行かせることにしたのだ。


「これで海龍種が勇者様を殺してくれれば、婚約者は息子に決まる……そうすれば俺様も王族入りすることが叶う」


ガマデスは全て順調に進んでいると思っている。しかし吉晴はいつ援軍、つまり手助けを必要としていたか。そこに気づかないガマデスは終始、機嫌が良かった。


「われは今気分がいい! 少し勇者様の短い幸せに祝福をしてきてやろう!」


「それはいい考えでございます。すぐに準備いたしましょう」


ガマデスは卑劣な笑みを浮かべこうのべた。


「明日は葬式用の衣装を用意しておけ」


ガマデスの部下は笑いをこらえて、頷いた。

着替え終えたガマデスは上機嫌で結婚式場に向かう。


「やつの最後の出港ぐらいは見届けてやろう……」ハハハハハ……

その笑い声はたからかに廊下に反響する。


「うわぁもうすぐだよ!? ドレス変なところない?」


「無いから少し落ち着いたらどうだ?」


「結奈さんの気持ちも分かりますよ……私だって心臓ドキドキです……吉晴様はどうしてそこまで落ち着いているのです?」


「俺だって緊張するさ! でもあえて何も考えないようににてる……」


ミーシャと結奈は昨日よりも輝いて見える。今日のドレスはどちらも真っ白だ。しかし細かいとこで違う部分もある。


「吉晴殿……もうそろそろ入場です……姫様と結奈様はもう少しお待ちください……!」


係りの人が小声で知らせてくれた。俺は扉の前に立ち出番をまつ。中から出番を告げる音が聞こえた。


「それでは、新郎の入場です。拍手でお迎えください」


この瞬間に大きな扉が開き、地球と似た教会のような景色が広がった。この世界の結婚式は地球によく似た部分がある。それは伝説の勇者の結婚の影響が大きかったそうだ。その例が結婚指輪だ。

拍手のなるなか、俺は壇上に向かい進んだ。途中ガマデスと目があったが、ガマデスはどこか意味の違う笑みを浮かべ失礼のない限界ほどの小さな拍手を送っている。何を企んでいるのやら……

壇上に上がり神父と思われる人の話が数分続いた。


「それでは、新婦の入場です。拍手でお迎えください!」


だいたい俺と同じ様に壇上に上がってきた。

また数分の話が続き、指輪を渡すときが来る。てか、結奈! 手の震え止めろ!

ぎこちなくだったが、無事に二人に指輪を渡すことが出来た。


「最後に誓いのキスを……」


覚悟を決めたつもりだったが……いざとなると凄い緊張する。

ミーシャなんかもう倒れそうなくらい顔真っ赤だ。結奈なんかはそんなのとっ越して、思考停止したようだ。「それじゃあ……」

俺のチキンな心を抑えつつ、二人の美少女にキスをした吉晴。結奈はキス中に意識が回復し、ホントに気絶するハプニングがおきたが、ミーシャは何とか普通にキスできたから良かった。

ま、これからのスケジュールは破裂寸前何だが……


「皆さん聞いてください。本当ならこのあと、食事会を執り行うことが普通なのですが、大変申し訳ありません。今から海龍種の討伐に行かなくてはならなくなりました。どうかお許しください。食事会は後日執り行いたいと思っております」


ガマデスの笑みは今だなお続いていた。

そのまま港に向かう、吉晴だった。

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