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異世界でも、チートよりも大切なこと。  作者: 芳賀勢斗
ギルド会員としての旅立ち。
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古龍

「たがら俺はサーシャのためならなんだってするさ。」


「そしたら、他の二人も?」


「ジャンも奴隷商に捕まったところを助けたさ、カリナは…そうだな…。親が奴隷商に捕まって、一人で路頭に迷っているとき見つけたんだ。あの時のカリナは泣いて泣いて大変だったんだ。そしたらジャンが何か言ったらしくて、それからは泣くことは無くなったな…サーシャも自分が巻き込んだ旅でカリふナがあんなことになって慌てたんだろう…」



俺は終始聞き入っていた。ミランが体験した奴隷の話。自由世界が出来た本当の理由。

何よりも、奴隷商会の会長でありサーシャの実の祖父への裏切りとも言える奴隷の開放を掲げたサーシャの話も聞きたくなってしまった。


「君は奴隷商会の会長の孫娘であるサーシャさんを信じているのか?」


「もちろん。さすがに最初は疑いもしたが、すぐに本気で奴隷開放を目指しているのはわかったよ。」


「じゃあ、なんでサーシャさんではなく君が自由世界のリーダーをしているんだ?話の流れからして彼女がなるんじゃないのか?」


ミランは軽く考え込むが何かを思い出したように少し笑った。


「“リーダーはめんどくさい”だそうだ」





「ところでカリナの状態が聞きたいんだ…治療?は成功したそうだが、この耳で聞きたい…。」


このミランの願いはすぐにニミッツが、答える。


「簡単に言えばあのまま安静にしていれば目が覚めます。しかし、傷は塞ぎましたがなにぶん患部が大きいので、傷痕として残ってしまうかもしれません…いえ…きっと残ります。」


「そう…なのか…」


「私も幼い彼女に一生ものの傷を残すことなんて出来ません。そこで1つ提案があるんです。」


「提案…?」


俺自体も状況を全く把握していない…こんな話聞いてなかったし…


「私は私の知っている医療をしました。ここからは、あなた達の治療をしてください。魔法というものを使って」


「魔法って…治癒魔法か?でもなんで?」


ニミッツはどこか喜んでいる。理由はわからないが、本当に良いことなのだろう。


「今のカリナさんの状態は、傷を縫合しているだけで、本当の意味で塞がっているわけではありません。リュミさんから聞いた話によれば、時間がかかるけど完全に元通りにできると聞きました。時間がかかると言うのは、傷口がくっついてはいないからだと私は推測します。でしたら、傷口をくっつけている今ならそれほど時間もかからず完治出来るのではないでしょうか?」


ミランは最後まで聞く前に部屋を出ていってしまった。途中「サーシャァ!」と呼ぶ声が聞こえたからきっと治癒魔法の上手いサーシャを呼びにいったのだろう。


「見た目によらず彼もせっかちなのですねぇ…。」


「まぁ、今回は特別じゃないかな…」


「そうですね」ニコ


「あ、そうだ!食堂で結奈が待ってるんだった…」


「構いませんよ、お先に行ってあげてください」


かなり時間がたってしまった…。きっと結奈は20分は待っているだろうか…俺も少し急ぎ気味で艦長室をあとにした。








「吉晴君…遅いなぁ~何かあったのかなぁ…」


「先に食べてはいかがですか?」


ミーシャの問いかけに結奈はしっかりと首をふる。


「待ってるって言ったから…ね?もうちょっと待つよ」


「そうですか…なら、私も待ちましょう。」


「え!?ミーシャちゃんは食べてて良いよぉ!」


「良いんですよ、それにこっちだって食べづらいんですから…」


「そう…なの?」


結局、ミーシャと二人で吉晴を待つことになった。

隣では小さな体にも関わらず、シヴィが人並みの食事をとる…


「シヴィ…ってどうなってるのかな…」


明らかに自分の体より食べたものの方が体積がある…一体、食べたものはどこに消えるのか…


「シヴィみたいな種族はダークフェアリーと呼ばれています。ダークフェアリーは物理的な身体こそ持ちますが、私たちとは違って魔素を媒体として身体が作られているんです。大袈裟に言えば魔力の塊がシヴィを作り出していると言えば分かりやすいでしょうか…」


「え?そしたら身体が無くなったりとかはしないの?」


「もちろんです!いくら魔力で出来た身体とはいえ、そう簡単には壊れません。それこそ物理的な強い力が加わらないと分裂はしません。そんな魔力と関わりの深い身体だからこそ周囲の魔素に干渉できるんです。」


シヴィの強固な障壁には、そんな理由があった。

たしかに、人間が魔法を行使するには必ず肉体を通さなくてはいけない。そう思えば魔素で形成されたシヴィなら、空気中の魔素に干渉できるのでは…と理解でなくもない。



「へぇ~シヴィちゃんってダークフェアリーって言う種族なんだぁ…そしたらさシヴィちゃんとはどんな関係なの?」


「シヴィとはもう10年近く一緒にいますね、前にも言いましたがシヴィの一族と私の一族は何百年も昔から仲が良かったんです。そしていつしかシヴィのご先祖はヴァンパイア族を小柄な身体をいかして護衛していただくようになりました。」



リュミは一口水を飲みまた話を進める。


「私がシヴィと出会ったのは3才の頃。私は記憶はないのですが、そう聞かされました。」


「ん?ところでシヴィちゃんは何歳なの?」


「シヴィは19歳ですよ?」


「……、 え?」


「19歳です」


人は見た目によらず。結奈の今日の格言だったかも?







「え?シヴィが19歳だって?」


「…なんか、リアクション薄い…」


「俺に何を求めてんだよ…」


あのあと艦長室を後にした俺はかなり急いで食堂に到着したが、来たとたんこの有り様。


「前々から話し方とか妙に落ち着いてたからなぁ~、薄々年上かも?とは感じてたさ。そもそも異世界で見た目と年齢が合わないのは常識だろ?」


「そんな常識知らないよ!?」


「ともあれ数百歳とかそう言う気違いじみたレベルじゃなかった事は嬉しいけど」


食堂には俺たちの他にも、カリナに治癒魔法をかけ続けていた彼女の姿があった。


「あなたがここのリーダーってことで良いのかしら?」


「そうだよ、たしかサーシャさんだっけか…ミランさんが君のとこに来るはずなんだけど…まだか」


「ミランが?何のようかしら…」


「来てないなら先に話しちゃうか…簡単に言うと、カリナちゃんに治癒魔法をかけて欲しいんだ。」


その瞬間にサーシャは勢いよく立ち上がった。座っていた椅子を倒すほどに。


「カリナに何かあったの!?」


「落ち着いて、落ち着いて。あの子なら時期に目が覚めるよ。ただ、今の状態だと治ったとしても傷口は一生、元通りには戻らないんだ。」


「一生…ほんとなの?」


サーシャもカリナに一生の傷を負わせることには顔を曇らせた。


「すまない…俺達の医療は基本的には患者が元々持っている回復力に頼ってるんだ。だから、治癒魔法で傷そのものを直して欲しい。今の状態ならそんなに時間もかからないはずだから…」


「もちろん!私にできることならなんでもするわ。」


「そうか!詳しい話はあとでしようか」


「カリナちゃん、なんとかなるようでよかったぁ~」



俺はやっと自分の食事にありつくことが出来た。

食事はバイキング形式。さすがに何千人もの食事を定食で作っていたなら調理人は過労死してしまうだろう。さらに言うと本来、空母を含めた艦艇は24時間態勢。いついかなるときも警戒をしている。その為、乗組員の食事の時間は部署ごとにバラバラ。だから多くの艦艇でバイキング方式がとられている。


「やっぱ、アメリカンだなぁ~久しぶりに食った~」


ポテトサラダにフライドポテト。チキンにハンバーグ、さらに国民的炭酸飲料まで…これに至ってはメニューに無いと兵士から不満が出るとか出ないとか…


俺が夕食を食べ終える頃、サーシャからの視線が妙に強いことに気付いた。


「ねぇ…あなたは“あいつ”の事を知ってたみたいだけど…私は“あいつ”を許せない。あいつは何者で何が目的なの?」


「あいつの事を許せないのは判るが、あいつに絶対に関わるな。くれぐれも仕返しなんて考えないでくれ。あいつは一国の軍隊を…この世界を敵に回せるほどの存在だ。今回はたまたま運が良かっただけ。」


「あなたは勇者なんでしょ!?じゃああいつは何なのよ!」


仲間の無事が確認したあとは、敵討ちかたきうちに進むのは自然なことだ。が、今回ばかりは相手が悪すぎる。


「すまない…俺もあいつとの戦い方を考えてはいるんだ…でも…」


正直あいつに勝てる見込みは薄い…

たしかにいくつか可能性はあるにはある。のだが、実行するには確証が無さすぎる。

しかし、何もしない訳にはいかないから、一番可能性のある“あること”をすることにした。幸いしばらくはここにいることになりそうだ。


「サーシャさん…落ち着いたください!今は目の前のカリナさんを治すことが先決ではありませんか?


「…ごめんなさい。」


サーシャは走って食堂を出てってしまった。そんな背中を見ていた結奈が悲しそうに呟いた。


「サーシャさん…泣いてた…」


「これは仕方ないんだ…」


「分かってる。吉晴君に悪気がないことくらい…でも…」


結奈の言葉を遮るように食堂の赤色灯が回りだし、ニミッツの声が艦内にアナウンスされる。


《艦長並びにミーシャ様は至急作戦指令室までお越しください。》


「何でしょうか…」


「何か起きたんだろうな…取り敢えず行くぞ」


「あ、私も!」






「未確認非行物体ねぇ…」


「現在ここから東に480km、高度800m、速度130km/hで真っ直ぐこちらへ向かってきます。」


「130km…普通じゃないな…」


あくまでもこの世界の普通だ。地球なら130kmなんて車でも出せるスピードだがこの世界で空中を130km/hとなると普通では考えられない。

ミーシャも眉をひそめる。


「到達まで時間はあります。偵察を出しますか?」


「そうだな、正体が判らなくちゃ何もできないか…前にもこう言うのはあったのか?」


「いいえ、対空目標はこれが初です。あと目標をこのモニターで確認し必要な措置をこうじます。最悪撃墜も視野に入れても宜しいですか?」


「仕方ないだろうな…」


「了解しました。F/A-18E(スーパーホーネット)、3機は順次発艦。高度5000mから侵入し未確認機の背後をとるように目標高度へ急降下しながら大きく旋回し後方300m以上で待機。1、2番機はそのまま未確認機へ接近しアプローチ。3番機は1、2番機のバックアップ。これで宜しいでしょうか?」


ニミッツはテーブルに敷かれた簡易的な地図と小さな模型を使いながら説明を始めた。

いつになくニミッツの表情は真剣そのものだ。


「相手のでかたによっては直ぐに戦闘に突入する可能性もあります。」


「分かってる。」


俺は無線機をミーシャに渡した。


「これでガーデリックさんに伝えてくれ。迎えは寄越すから来てくれって…」


今、トローデスの城にはこの無線機に通じる誰かがいるはずだ。その人経由で防衛大臣であるガーデリックさんを呼び出せるはず…なにせ勝手に事を決めてはならないからな…


「は、はい!」


「心配なさらずとも目標がここへ来るまでは4時間ほどゆとりがありますので安心して迎えに行ってくださってもかまいませんよ?」


「そうか…じゃあ行ってくる。」


「あ、はい。分かりました…吉晴様!待っているそうです!」


俺は直ぐに甲板へ出る。もうすでにそこにはジェット特有のキィィィンという音が響いているところだった。そんな様子を片目にヘリのコックピットへと乗り込む。これもまたキィィィンと言う音をたてながらエンジンが暖まってゆく。なぜなら大抵のヘリはターボプロップエンジンであるため、ジェットエンジンを積んでいるからだ。

徐々にローターは風切り音をたてながら回転が早くなる。そして直ぐにバタバタバタという音になり機体が浮き始める。

ある程度の高度を保ったらゆっくりと機体を傾け巨大なニミッツの船体を離れる。時間にして数分の短いフライトであるため城までは直ぐにつく。地味に時速200km近く出るんだよね


「吉晴殿、今回は何の用ですかな?」


「久しぶりよのぉ~」


「艦長!久しぶり!」


「え!?国王様!?に、こんごうまで…」


ガーデリックさんを呼んだはずだがまさか国王様まで来るとは…


「もしかして国王様まで…いいんですか?」


「私は止めたのだが…」


「あとで問題になっても知りませんよ?国王失踪とか洒落になりませんからね!」


「ダイジョブじゃよ。」


ガーデリックさんの深い溜め息が聞こえた。何かとてつもない苦労が伝わってきたような…


「で、艦長はどうしてここに?」


「理由を簡単に話すなら未確認機の接近と言うことかな」


「なるほどぉ…ってえぇ!?それ本当!?」


そんなわんやで、国王様もニミッツへ招待することになった。初めて飛んだ感想は「真っ暗で何も見えん…」だそうだ。


「もう終わりなのか…今度は明るいうちに乗りたいものじゃ…しかし遠目では見とったんじゃが、とてつもなくでかいのぉ…それにこの耳障りな音は何じゃ…」


「鉄が浮いている…」


「さぁさぁ、早く中へ入りましょう。いつまでもここにいては邪魔になってしまいますから…」


「おぉおぉ、すまんすまん」


俺は作戦指令室へと案内した。








「おっお父様!!??なぜここに!?」


「娘の様子を見に来てはいかんかね?」


「それは…、もうっ!!」


ま、普通の反応だろうな…

そんなとき一際大きな轟音がここまで届く。


「1番機発艦完了、続いて2番機カタパルトへ。カタパルト用蒸気圧基準値へ回復、遮蔽壁展開、冷却水循環確認、2番機発艦!」


再び音割れしたような轟音が轟く。


「彼女は誰じゃ?」


「彼女が一人でこの船を全て管理しています。名前はニミッツ。そしてこの船の名もニミッツ。お分かりになりましたか?」


「わしはもう常識とやらはもう持っとらんよ…」


「あははは…」


ニミッツは着々と準備を進めるなか、俺は国王様の質問の嵐に対応していた。


「全機発艦完了!高度5000mにて編隊飛行へ移ります。目標接触は約23分後」


「了解、国王様たちはここへお座り下さい。いつまでも立っているわけには行かないので…」


あとは未確認機がこのモニターに表示されるのを待つだけになった。レーダーには例の未確認機とこちらのスーパーホーネットが写し出せれ、徐々に接近していることだけが知らされる。


「しかし、不思議なもんじゃなぁ~何が不思議かもわからんが…」


「しかし、これが敵の手に落ちたとしたならゾッとしますな…」


たしかに、空母は戦略的にも重要な兵器だ。持っているだけでも核兵器同様に抑止力となりえる。

この世界では空母どころか駆逐艦でも抑止力には十分そうだが…


そんなことを考えているうちに23分と言う時間はあっという間に過ぎる。レーダー上で未確認機とスーパーホーネットが交わる。


「目標到達。これより急降下旋回を開始します。」


「大丈夫なのかな…」


「5000mから800mへの急降下旋回なんてしたことありませんが…必ず成功させます。」


ニミッツの操るスーパーホーネットはきれいな編隊を組んで飛行している。そんなとき突然機体が90度以上傾いたかと思えば翼に白い雲が現れる。それが立て続けに3回も続いた。

スーパーホーネットは機種を徐々に海面へと向ける。

高度を示す値が急激に減り続け、機体上部には空気を切り裂いたような薄い雲のベールが包む。

減速用のエアブレーキが少し開いたと思ったら次はフラップが下がる。これを3機とも微調整しながら同時に制御している。ニミッツの本気を感じさせた。

ほぼ垂直に近い角度で急降下していた機体は速度をあげすぎることなく、高度2000mに達する。

ついにスーパーホーネットの特徴とも言える機首付近まで伸びた巨大なストレーキだからこそなせる急激な機首あげが行われる。


「主翼が折れそうです…」


ニミッツが苦悩の一言を口走る…

きっと機体には想像もつかないほどの負荷が掛かっているのだろうか…エンジンの排気音が1段階大きくなった。

しかし、機体は徐々に姿勢を立て直し水平に近づく。


「ふぅ…急降下旋回成功しました…現在未確認機後方450m…モニター開始します。」


「凄い…」


メインモニターに青空と、どこまでも続くような海がが写し出される。

その中央には黒い点が見える。あれが例の未確認機だろうか…


「まだわからないな…」


「了解、作戦通り2機にて接近を開始します。事が事ですので交戦許可を貰いたいのですが…」


「もちろん。でも、先制攻撃を確認してからだ。まずは確認をとりたい。」


「了解しました。」


2機のスーパーホーネットは青空に浮かぶ小さな点を目指し速度をあげる。もっとも時速130kmなんて止まっているようなものだが…

すぐに50m程間隔を開け2機で挟み込み並走する。

スーパーホーネットは巨大なストレーキのおかげで失速がしにくく、未確認機に合わせられる。


「こっ、これは…騎竜ではないか!?」


「ふむぅ…」


「ついに出てきた…」


黒光りする鱗がびっしり生え揃い、黒い大きな竜翼が空を叩く。

足を見れば鋭く大きな鍵爪が衝撃を与える。


「レーダー波はしっかり反射しています。強度も金属並みにありそうです…」


「困った…しかし、何を考えているのだ…あの国は…数日後には重要な会議があると言うのに…」


黒い体につけられた紋様にはどこか見覚えがある。


「もしかして…ギリタフル王国?」


国王様はゆっくりとうなずく。


「まだ建国してから歴史が浅いのに黒龍なんぞどこから持ってきたのか…」


たしか、騎竜を手に入れるには膨大な資金と時間を使って卵から育てるしかなかったはずだ…

騎竜を操っている人間もさすがにこちらに気付いたようだ。その時黒龍と目があったような気がした…

そのあとモニターは途切れた。


「っ!? 1番機lost!2番機緊急離脱!3番機は交戦開始!」



黒龍のブレスで突然火に包まれ爆散した1番機。反対側にいた2番機は急速旋回しながらフルスロットルで離脱する。アフターバーナーが唸りをあげ猛加速する。

その轟音にさすがのドラゴンも衰える。


すかさず3番機の機銃での攻撃が開始される。

M61 バルカンが一瞬だけ火を吹いた。しかし、その一瞬で本来なら敵機を穴だらけにできるのだが…


「やはり一筋縄ではいきませんか…」


何百もの20mm砲弾は、黒光りする鱗で火花を散らしながら砕けた。

黒龍は痛かったのかはわからないが1度咆哮を轟かせる。


「黒龍はそこらの竜とは格が違う。最強と吟われる赤龍、白龍と並ぶ古龍だ。特徴はその堅い鱗と、盾も意図も容易く握り潰す鍵爪。さらに、地獄のブレスだ」


さすが、元ハンターだけあってガーデリックさんは物知りだ。


「20mm砲弾も弾かれるんじゃかなりの強度だな…それに肉薄されれば尻尾で叩き落とされそうだ」


「こちらはヒットアンダーウェイが有効のようですね」


機銃掃射した3番機は一旦離脱し態勢を立て直そうとしたとき、黒龍は一瞬の隙を見逃さなかった。

黒龍は素早く方向をかえ3番機の背後をとり、さらにはスピードも上がり後ろに食らい付かれた。


「な!?なに今の機動は!?それに時速800kmですって!?嘘…まだ上昇してる。あ、あり得ない…」


「ニミッツ落ち着け!」


3番機は必死に振り切ろうとするが、なかなか振り切れない。

それどころか1番機を撃墜したブレスがひっきりなしに飛んでくる。


「完全に支配権を奪われました…。それにしても生き物だとは思えません。まさかここまで食らい付いてくるとは…」


さすがに音速には勝てなかったらしくやっとの思いで振り切ることが出来た。


「見たところ黒龍の最大速度は時速750kmのようです。航空力学的に不可能な値です。ありえません!」


ニミッツが珍しく荒れている…無理もない。自分の航空機が落とされたのだから、たとえ無人だとしてもショックは大きいだろう。


「たしかに、不思議だよな…いくら黒龍とはいっても、所詮は鳥と同じ羽ばたいて飛んでいるからこんな高速に飛べるわけがない…けど、魔法とかでどうにかなってんだろうな…」


あぁ、理屈が合わない時は全て魔法のせいにする…僕の悪い癖…


「今度は本気で倒しにかかります。」


バラバラになってた2機を再び合流させる。


「Fox2!」


ロングレンジからの攻撃。これが、本来の戦い方であり現状でもかなり有効なはずだ。

機体から切り離されAIM-9 サイドワインダーが、生き物のように“目標”めがけ加速する。

飛行中におこる空気の圧縮でおこる若干の温度上昇を感知してロックオンをする。

一瞬で音の壁を突破したサイドワインダーは蛇のように蛇行しながら飛翔をする。


はっきりとレーダー映っている黒龍に物凄い速度で迫るサイドワインダー。

ジリジリ迫り来るその瞬間を俺達は見守った。


「目標に命中!」


「よし!」


「どうなったの!?」


艦内の空気は少し緩まった気がした。

しかし、レーダーが再び黒龍を表示させるまでは…


「…目標はなおも健在…しかし、東へ進路を反転しました…撤退するみたいです…」


「ら、落下しているだけじゃないのか!?」


「いいえ…高度は落ちていません…。艦長、追撃なさいますか?」


「…。」


このまま帰しても良いのだろうか…俺はあの龍とはいつか必ず会いそうな気がする…状況はどうであれ脅威になることにはかわりないだろう。


「追撃だ…。撤退と言うことはあちらの方も無傷ではないと言うことだと思う。だから今のうちに倒す。」


「了解しました。新に2機の増援を送ります。よろしいですか?」


黒龍との第2ラウンドが幕をあけた。

空戦を書くのはなかなか難しいです…

スーパーホーネットの機動力を動画で見ましたが、よくあれで機体が折れないですね…

これからも現代兵器は活躍しますので皆さまよろしくお願い致します。

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