隠された優しい真実。前編
今回からラブコメとハーレム要素が強くなっていきます。
俺たちは今、広大な大地の一本道をひたすら前に進む。
「やっぱり運転代わって~飽きた~ずっとおんなじ景色見飽きた~」
「無理もないけどさ~音楽でもかける?」
「早く言ってよ……」
俺の部屋の激選アニソン集と、ラジカセを召喚する。
「それは何ですか?」
ミーシャが首を傾げる。しかし何もないところから物が出現する現象にミーシャリアを含めこの世界の人々はそれほど驚かない。これが魔法のある世界とない世界の違いか~と思ったのはついさっきだ。
「これは音楽を聞くための物だよ」
「これで聞けるのですか!?」
「おぅ! じゃあ一曲目!」
再生ボタンを押し込む。どこかで聞いたことがあるようなフレーズが流れる。
「これが異世界の曲……いい曲ですね~」
「歌詞は分かりますが、知らない単語も多くて……しかしとても気分が高揚しますね♪」
成る程……俺が召喚したものにも言語理解の効果が及ぶのか……使い勝手の良い能力なこった。
ちなみにミーシャが一番興味を示したのが、魔法少女エリカ★メミカの主題歌だったりする。これで結奈の飽きやすさも時間稼ぎ出来るか……
全ての曲を聞き終わる頃には辺りは少しずつ暗くなる所だった。
「夜になるけどどうする?」
「この辺りには本来魔物は居ないのです。たまにあの様なはぐれ者に出会うだけですので、この辺で一夜休憩なさってはどうでしょう? 私は急ぐ用もありませんし……明日、日の出の頃に出発すれば昼頃には王国に入る事は出来そうですから……」
なんだ? 何だか帰りたくなさそうだな……
「ミーシャが良いなら良いけど……」
こうして俺らは異世界生活初めての夜を迎える。
もうすでに辺りは一面真っ暗であり、頼りになるのは薪の光だけである。
「暗いな……」
都会ではまず味わうことのできない完全な闇夜。今日は曇っていて月明かりもダメだ。
「こんなに暗いのは久しぶりだなぁ~」
ガーデリックさんもこの様子である。
俺は普通に近所にあった街灯を召喚する。それと発電機も。
「何故街灯だし……」
「俺もわからん」
発電機とうまく繋がってくれてホッとした。
直ぐにパチパチッとしてパッとつく。
明るすぎない光が全体的に闇を照らす。
「これは良いな……」
ガーデリックさんもご満悦である。
「さ、明かりもついたことですしご飯にしましょうか」
と言うと、使用人さんの顔が曇る。
「申し訳ありません……この様な長旅は予定になかったので食料は……」
それもそうか
「じゃあ私達の国の料理を披露しましょう!」
結奈が張り切って提案する。そういや料理は出来るって自慢してたことあったけか? おもむろにポケットから出したメモ帳になにやら書きはじめる。
「それでは吉晴君! これをお願いします!」
そこにはニンジン、玉ねぎ、じゃがいも……。あれって日本料理にして良いのか? その他にも、ガスコンロや包丁、鍋からお皿、スプーン、お米、炊飯器……炊飯器!?
意外にもちゃんとリストアップしてあって少し驚く。ま、あえて抜けているとすれば水だけどな。こっそり天然水を付け加えておいた。
「これで良しだな! 終わったぞ~! 水は10リットルで足りるか?」
「ん~あと5リットル足してくれると助かるな~」
天然水ペットボトルを三本追加する。
「ありがと~!」
「頑張れよ! 俺はガーデリックさんとテント張ってくるわ」
「了解でーす! 腕によりをかけるよ!」
と腕をまくる。 どうやら気合い十分らしい。 俺もとっととやることやりますか!
「ガーデリックさん!ちょっと手伝って貰えませんか?」
見るとガーデリックさんは愛用の剣の手入れをしていたらしい。
「おぁ? 良いぞ? 丁度暇していたところだからな」
俺はキャンプ用の大きめのテントを召喚した。
「これがテントなのか?」
「いえいえ、これから組み立てるんですよ!」
「ほ~伝説の世界はスゴいな~」
「伝説の世界って……そんなに良い世界じゃ無いですよ……ホントに……」
俺達はせっせとテントを組み上げる。そんな時、結奈の声が聞こえた。
「吉晴ぅ~お肉忘れてたぁ~!」
やっぱり結奈はどこに行っても結奈だった。
「早くぅ~」
「はいよ~!」
俺はスーパーで見かける豚バラのパックを召喚する。
「すみません、これを結奈に届けてやってください。ここまで来たら一人で出来ますので」
「そう言うことなら分かった。後は頼むぞ!」
ガーデリックさんはパックを受け取り結奈の元へ向かった。
一方クッキングチームの場合、
「結奈さーん……目が……涙が止まりませーん……」グスン
「気合いよ気合い!」
「姫様は大丈夫なのでしょうか……」
使用人の人が心配そうにミーシャを見つめる。
「大丈夫よ! 一時的なものだからね! 立派な主婦への試練よ♪ 」
「成る程……」メモメモ
只今、ミーシャは玉ねぎを切っているが、お約束の涙が止まらないを引き起こしてしまっている。
使用人の人は手際よくニンジンを輪切りにしていく。流石はプロである。
「それにしても結奈様は何をお作りになるのですか?」
「それはね~簡単! 早い! アレンジしやすい! カレーライスと言う料理だよ♪」
ま、そうなるわな。キャンプの定番と言えば定番だからな……
「炊飯器の準備完了だね!後は待つだけっと」
炊飯器は街灯を出したときに一緒に召喚した発電機に繋がっている。
そこにテントを張り終えた吉晴君が帰ってきた。
「あれ?他の護衛のメンバーは?」
「あいつらなら、この辺の見回りをしてもらっている」
「そんなことさせてすみません……」
「いやいや、頼っているのはこちらの方だ、これくらいのこと当然な事だ!」
「そうですか……ではお願いします!」
そうしていると、懐かしい匂いが漂ってくる。
「そろそろかな?多分、もうすぐご飯が出来るので、みんなに知らせなくちゃ」
「そうか?では呼ぶか……」
取り出したのは2つの青い鉱石の様な物。俺が不思議そうに見つめついるとガーデリックさんが教えてくれた。
「これは、魔響石と言うんだ。魔石の一種だな。これは使用者が両手に一つずつも持って、こうして2つを打ち付けると、どんなに遠くに居ても契約した魔響石なら打ち付けた回数分光るんだ。それである程度連絡を取っている。今呼んだからもうすぐ戻るはずだ。」
ここで初めて魔法の世界らしいものを見た。
さて、早速の晩飯だ~!
「昼食ってないからペコペコだ~」
思えばまだ一日も経っていない。教室で勉強してノートを結奈に貸したのが昼頃だとすると、どとうの半日だったな……
ボチボチ見回りをしていた人も帰ってきた。
「それじゃ、頂きますか」
流し込む様に食う者。見た目に戸惑っても食欲をそそる匂いに誘われ、恐る恐る口にはこぶ者。様々な反応を見せるが、皆さんが口にする言葉は、同じだった。
「「「「「「ウマイ!」」」」」」
それを聞いた、結奈とミーシャはたいそう喜んでいた。
それからわいわいやって、眠りにつこうとする。
「お前らは寝てくれて構わないよ。俺達で火の番と見張りやっとくからよ!」
「でも、デーリックさん達も寝てないんでしょ?」
「俺らは仮にも姫様の護衛だ。見張りも任務の内だ」
「分かりました……それではお願いします。そうだ、まだ夜は長いですから、これを渡しますね」
俺は、タクティカルライトと缶コーヒー2個ずつとカイロ、眠気スッキリガムを召喚した。
「これはコーヒーといって苦いですが眠気を多少とってくれるはずです。こうやってキャップを回せば開きます。飲みたいときに飲んでくれて結構です。そしてこれはカイロと言って振ると温かくなります。夜は冷えると思うので……そしてこれも眠気を取ってくれるはずです。包み紙を取って噛んでいるだけです。飲み込まないでくださいね?」
みんな、真剣に聞いてくれている。一番反応が強かったのがやはりタクティカルライトだった。タクティカルライトは懐中電灯に攻撃性を与えた物だ。例えば、本体を頑丈に作って殴る事が出来たり、その強烈な眩しさで相手の視界を奪ったり、など戦術的な要素を含んだ懐中電灯だ。そんなことを説明した。
「これはスゴいな!」
「夜の警備がずっと楽になるぞ!」
これも言っておこう
「使いすぎると光らなくなるので気を付けてくださいね?一番暗い光で居れば、今夜ぐらいは持つと思いますが、一番明るいのだと一時間持たないと思います。なので、なにかない場合は一番暗い光でお願いします。」
「何かとは?」
「例えば夜に活動する魔物がいたとします。そのボタンを押してみてください」
恐る恐るボタンを押したガーデリックさんはビックリした。
光が凄い勢いで点滅しはじめた。
「暗い中、そんなことされたらどうします?」
「俺は逃げるな。」
「俺もだ。神に懺悔するよ……」
「暗い中いきなりこんなの食らうとか、勘弁だな」
「これは便利なものを貸していただき、本当に感謝する」
口々に感謝の言葉を掛けてくれる。
「こちらは寝ているだけですし、出来ることはしたいんですよ。それでは頑張ってくださいね!」
「任しとき~」
「明日からは大金持ちや」エヘヘ
そう言ってライトの光が闇に溶けて行く。残ったのはガーデリックさんだけだ。
「火の番は退屈でしょう? これあげますよ」
俺はまた、召喚で初級から上級までの全部あわせて、20種類の知恵の輪を出す。
おまけにスルメのお摘まみも。
「これを取ってみてください。なかなか難しいですよ? 力ずくは出目ですよ?」
「中々楽しそうではないか! それにこの味、癖になるな~」
「ではお休みなさい」
「おう!」
俺はテントに向かった。中にはもう二人とも要るようだ。使用人さんが出てきた。
「テントでは寝ないのですか?」
「お気遣いなく。使用人が姫様と寝ることは出来ませんので……私は馬車で寝ますので」
「あ、それならこれを使ってください。流石に寒いですよ?」
俺は召喚で寝袋を、出す。
「この中に入って眠ると暖かいですよ」
「私などのために……ありがとうございます。それではお休みなさい」
使用人さんは一礼して馬車へ入っていった。
「寒い……早くテントの中に入ろう」
俺はテントに入った。
「………。すまない」
そこには結奈がブラのホックを取っている途中と思われる光景と、ミーシャがほぼドレスを脱いだ状態でこっちを見ていた。
俺は後ろを向き来た道を引き返す。
収まれ俺の中のものよ! 今のは事故だ! そうだ。俺が目をつぶって召喚した服に二人とも着替えていただけだ。
「もういいわよ……」
ミーシャの声がしたので、恐る恐るテントに入る。
「し、失礼しま~す……」
そこにはまだ顔の紅い二人がいた。
結奈は珍しく顔真っ赤で、下を向いている。
一方、ミーシャはこちらに結奈より真っ赤な顔を向けている。
ミーシャが口を開いた。
「さっき、お話があるって言いましたよね……」
確かに言っていた気がする。
「結奈さんとはもう話は済みました」
「え? あ、はい……」
結奈を見るが表情が見えない代わりに耳まで紅くなっている。
「私達と、け、ケケケケケケ、けっこ……」
ミーシャはもう一度深呼吸する。
「私達と、けっ、結婚してください!!!」
その言葉は意外にも大きく、遠くで知恵の輪の落ちる音がした。
二人の会話。
ミーシャ「あの人は居ないわね…結奈さんお話があります!」
結奈「は、はい!?」
ミーシャ「よ、吉晴さんのことどう思っているのですか!?」
結奈「吉晴君?この世界に来る前は、気の許せる友達…と私は思っていたよ?それがどうかしたの?」
ミーシャ「そうですか、私は…私は吉晴さんに惚れてしまったようです…」
結奈「…そう。…ソウナンダ~アハハ吉晴も側に置けないな~全く~…」
ミーシャ「良いのですか!?け、結婚しちゃうかも知れないんですよ!?」
結奈「ケケ結婚ってまだ…」
ミーシャ「この世界の成人は15歳です!そして3日後、私の誕生日で15歳になるんですよ!?け、結婚だって、ししちゃうんだから!」
結奈「何で、そんなことを…私に言うのかな~…」
ミーシャ「結奈さんはいいんですか!?と、取っちゃいますよ、取っちゃいますからね!」
結奈「え、うぅ~」
ミーシャ「どうしたんですか?」
結奈「ダメ…」
ミーシャ「聞こえないわよ!」
結奈「そんなのダメに決まってるじゃない!」グスン
ミーシャ「その言葉を聞きたかったのよ!」エッヘン(顔真っ赤)