仕事。
長らく間が空いてしまいました…弁解の余地もありません。すみませんでした…
高校にはいって、今のところ全ての追試や課題を受けているわけですが…国語の古文は謎過ぎてよくわかりません…
太陽の日射しが俺を照らして、目が覚めた。
まだ、夜だった面影が残る青い空には目を凝らせばうっすらと星が見えそうな気さえしなくもなかった。
今の時間は分からないが相当早く起きてしまったことは分かった。小鳥のさえずりも、人の気配も外から感じられない。ただ、彼女達の静かな寝息だけがこの部屋に響く。
横を向けばミーシャの寝顔が結構近くにあったり、結奈と言えば俺のわき腹近くに顔を埋めるように丸まって寝ていたりする。
「おはようございます♪」
「ん、あぁ…起きてたんだね、おはよう。」
「はい!昨日は直ぐに寝ちゃいましたから今朝は眠れませんでした…お陰さまで今まで暇で…」
リュミは人間感覚で言えば不眠症と疑われるくらい睡眠を必要としない。リュミはいつも俺達が寝てるときは、銃の分解の練習やメンテナンスしたり、何かと楽しそうに過ごしているのだが、滞在中は長物の銃は目立つため俺が回収していた。しかし、その代わりとなる為に渡した銃は、やはりピッカピッカの状態で机の上に置いてあった。
「暇ですからバラして組み立てて遊んでたんですが…さすがに飽きちゃいました…」
「バラせたの!?凄いな…」
前にモデルガンのリボルバーをいじって、治せなくなった俺を思いだした。普通に分解していくとバネが飛んできて元の配置が分からなくなることがほとんどで、そう言った経験をして相当焦った人もたくさんいるだろう。そんときはたまたま知り合いに治して貰うことが出来たわけだが…。
銃器の中でも構造が単純と呼ばれるリボルバーでさえ素人には分解して再び組み立てるのは至難の技なのだ。
「えへへ♪でも、最初は悩んだんですよ?」
「いや…全然、問題ないよ…むしろスゴいことだらね!?」
「そろそろ、おこしましすか?」
「…。あ…いや、今日は良いや。もう少し寝かせてあげよう…」
「?」
リュミには昨日のことは話していない。シヴィにもだ。伝える必要もないし、何しろ結奈達が決めたことだったからだ。
「あ、そうでした!吉晴さんは昨日いったい何をしたんですか?」
リュミが差し出してきたのはかなり大きな紙だった。雰囲気からして新聞のような感じがする。
大きく目立つ見出しにはこう書かれてあった。
【ギリタフル王国大使死亡!謎の爆音!噂の勇者の仕業か!?】
「…。なっ、何ぃぃぃぃ!?!?!?!?!?!?!?」
朝っぱらから大きな声を出してしまったが、無理もないことだと思う。昨日のやつらの中に大使が居たなんて夢にも思わなかった。そう言えば建物がかなり豪華だったような気もしなくはないような気もする。
勢いで新聞を縦に破いてしまったが、それどころではなかった。あんなヤツでも大使と言うことは国を代表して来ている訳で、そんなやつを殺せば…。
「戦争だぁぁぁ~!」
「何だか分かりませんが、最後まで読んでくださいよ!」
俺は破れた新聞をまた重ねながら問題の記事を読んでいった。
【マリーデス王国の強制捜査で、ギリタフル王国大使の汚職が浮上。大使館の地下からは数人の女性らを救助したがかなり精神状態が不安定で回復し次第事情を聞く予定。更にはいくつかの遺体も発見。この件についてギリタフル王国は「調査中」とだけ回答し救助された女性らの身柄を要求。周辺住人からは黒い事実が…。】
「なんだこれ…本当に大使…なのか?」
「え…?分かってしたことじゃないんですか!?」
「いや…あれはことのなり行きって言うか腹たったって言うか…」
「本当に何があったんですか!?」
これは、俺達勇者と言う名が出た以上、トローデス王国の国王様への迷惑は避けられないな…。
どうしたもんか…。まぁギリタフル王国側も捕らえられていた女性達のことを棚にあげて、俺達を責めることはできないはずだから、そこまで問題ではないにしろ、これで勇者がマリーデス王国に居ることがバレてしまった訳だが…。
「こうも、次から次へとトラブルが続出なんて…俺はラノベの主人公かよ…」
今のところギリタフル王国とマリーデス王国の友好関係がどうかは知らないが…仲が悪ければこの件を切っ掛けに関係を切る事もありそうだし…。良かったときは考えたくない…
そもそもギリタフル王国がどんな国かさえ分からなければ話の進めようがなかった。
「ふあぁ~…。おはよぅ…って、どうしたの?」
「何ですか…今のお声は…」
「うるさいわね…朝っぱらからどうしたってのよ…」
体を伸ばす結奈に、だるそうなミーシャ。シヴィに至っては少し機嫌が悪いみたいだ。
だが、ダルそうなミーシャは俺と目が合う度に複雑な顔になる。結奈は少し顔が赤いかな?位で、特に変わったところはなかった。理由はハッキリしているが、この問題の解決法を俺は見いだすことはできなかった。何となくの気まずい雰囲気が漂い始めると、シヴィとリュミもさすがに気づいた。
ギリタフル大使が殺されていたと言う大ニュースはマリーデス王国だけに留まらず様々な伝達手段で、各国に知れわたることになった。当然トローデス王国の王室にもその情報は入ってきており、城内は少しばかり慌ただしかったような気がする。
「んぅ…。よりにもよってこの時期にこんなことが起こってしまうとは…」
「そうですな…。真意はどうであれ時期が悪すぎる。」
会議室と呼ばれるその部屋には国王に急遽招集された各大臣や補佐官が、神妙な面持ちで何かを考え込んだり、近くの者同士で小声で話したりしていた。
「しかし勇者様と決まったわけでは無いのだろ。そこまで深く考える必要もなかろう?」
「いや、この記事の内容がどうであれ、勇者の存在がこうも公になってしまった以上、こちらとしても黙っているわけにはいかん。なにせこの事案にはミーシャリア姫が関わってくるのだからな。」
「うむ…どうしたものか…。」
大臣達は次々に会話を進めるが抜本的な対応案は誰も思い付きやしなかった。
「ギリタフルは間接的にでもこの事案に触れてきそうだが…」
「いや。あやつらの大使館にいた死体と女性達の説明ができていない以上その線は低かろう。じゃから問題はそこではないのだ。」
「法務大臣の言う通りだ。以前から噂程度で勇者の存在は各国に知れていたことだろう。それが我が国トローデス王国にいると言う情報もだ。それが今朝の記事で各国が動き出したのは考えるまでもない。防衛大臣としての考えとしては、これから他国が吉h…いや勇者をどうするかだ。」
ガーデリックの発言に少しざわめいていた会議室が、時が止まったかのように静まり返った。
「…他国から見ればミーシャリア姫と結婚なされた勇者を、トローデス王国が独占していると思われても無理ない。トローデス王国と対立する国が増えるかもしらん。かといって反論したところでガレッド帝国の話を持ち出されては言い返せんからの…。」
「全くだ。城を破壊したんだからな…勇者の力は証明されてもいる。…始まるぞ…‘勇者争奪戦’が…」
一人で一国の城を一瞬にして壊滅させた勇者。それは各国がいくら金を出したとしても欲しがる‘力’だ。魔法ではなし得ない強大な科学力を前に其々の思惑が交差する。
「何にせよ、全ては三日後の10ヶ国対談までは謎のままか…」
「うむ。対談では勇者関連の審議だけではない。ギリタフルが北方に部隊を派遣させたのも気になるし、数々の遺跡を調査しているのも無視できない。」
「北方だと?あそこは雪の大地だけで何もなかろう?その情報は確かなのかね?」
「間違えない。しかしそれ以上は聞かないでくれると助かるがな」
深入りいてはいけない。そんな雰囲気をかもし出す対外諜報大臣は様々な“コネ”を利用した情報収集得意とする。それ上、情報源は彼にとって生命線なのだ。必要な情報が何処に埋まっているのかは分からない。だから行政機関から露店、さらには道端のおじさんや、いわゆるホームレスに至るまで様々な人脈を生かして相手の全てを知り尽くす。
「ふむ。遺跡…か。嫌な予感がするな…ところでそれは何の遺跡なのだ?」
「そこまでは把握していないが、かなり強制的に先住民族を押し退けてまで調査しているそうだ。」
「少しばかし怪しすぎやしないか?これは調査がいりそうだな…」
深い沈黙と虚ろな雰囲気が部屋を満たしたとき、最初に声を発したのは国王様本人だった。
「他には何かあるのか?」
「…そう言えば、魔族の者を捕らえたと言う報告がありますが…」
「魔族?なぜ捕らえたのだ?」
魔族がこの国においての風当たりは消して悪くない。それどころか一般人と大差ない待遇で生活できる数少ない国で魔族が捕らえられる事は限り無く少い。だから国王は興味をそそられた。
「何でも人探し…と言いますか…暴れまわってたと申しますか…とにかく尋常じゃなく強かったらしいので…。なんでもリュミ様の名前を読んでいるらしいのでもしやと思いまして…」
「…!?しゅ、種族は…」
「残念ながらヴァンパイアです…」
国王様は脂汗をかきながら、書記長にこう言った。
「その方を今すぐに開放じゃ…直ぐに私の前にお連れしてくれ…くれぐれも失礼のないようにせよ。」
国王様はさっきの余裕な態度とは一変し、過労で今にでも死んでしまうのではないかと思うほど老けていた…
街は今朝の新聞で大いに盛り上がっていた。
(よくやったぜ!あの生け簀かない野郎を叩きのめしてくれたぜ!)
(私の店なんて、金も払わず商品を堂々と取っていかれてたわよ…)
町の人々は意外にも歓喜していた。と同時に勇者探しへ移るのも自然な流れで、街ぐるみで捜索みたいなことになった。
「なんだこれ…」
「うわぁぁ…なにこれ…」
「すごいことになってます…」
(勇者様は何処だ~!)
(まず見たことないわ!?)
(くっそ…何処におられるのだ…)
俺達は、あの大群に呑まれないようにそそくさと宿を出た。




