帰還と、もう一人の物語。
「アァァァ!!!」
「ふぇ?吉晴様…こんなに朝早くからどうなさったのです?」
「うるさいわね…。ふぁぁ~…。」
「吉晴君?…おはようね…。」
「すぴ~、すぴ~…」
今日の始まりはみんな本当に眠そうだ。むりもない…昨日はろくに寝れなかったからな…。でも今はそんなことより大事なことがある。
「今は…10時だと!?ヤバい…。急げ!お、起きろ~リュミ~!」
謎の物体を倒し、キロトン級の核爆発と同程度の空間爆発を防いだ俺達は依頼の10体分の牙をとり、限界に来ていた眠気を満たすために、ミハイル公爵の城で睡眠をとっていたのだが…。寝過ぎてしまい依頼の達成期限2時間前になってしまっていた。
「吉晴君は何をそんなに慌てて…。あ!?ギルド!!」
「そうでした!もう時間がありません…。リュミちゃん起きてくださ~い!」
「眠いよ~…。まだ無理…」
「リュミ~お~き~ろ~!」
「頭を揺らさないで~…。」
半分起きたがまだ目がトロ~ンとして、寝ているように見える。
「シヴィ…。なんとかならないのか?」
「なるわよ?簡単じゃない、血を飲ませれば良いのよ?」
「あ、なるほど~。でもなんか生々しいな…。」
「ヴァンパイア族なら普通のことよ?眠気覚ましに飲む人も多いわ。て言うか…、眠気覚ましに使うことがほとんどよ。」
リュミには朝に一杯血をあげるのが良いのかな~。リュミはそんなに睡眠は要らないっていってたけど…。だとしてもリュミの夜型体制はスゴい…。俺が真夜中に目覚めたときには、一人でMP7を分解して遊んでたからな…。ちゃんと元に組み上げたみたいだし…。でも暗闇で赤く光る目はさすがに怖かったな…。リュミの目が猫みたいに光るってあの時は知らなかったからな…。
「ほら血だぞ?早く飲んでミハイルさんに挨拶してトリミアのギルドに戻るぞ」
「血…。」ゴクゴクゴク…ハァ…
「はや…。」
「ヴァンパイア族の本能だからね…。」
200ml位の血を数秒で飲み干したリュミは、銀の髪がツヤを増して、赤い目が更に赤く染まる。目付きとかが色っぽくなるのは本能だそうだ。なんでも、吸血した相手を更に惚れさせて、限界まで吸い尽くす事を出来るようにするためとかなんとか…。
「ふ~。さ、今日も1日頑張りましょう!ギルドに戻るんでしたっけ?」
「よし、毎朝血やるわ。」
「なんですかそれは~!別に血がなくても起きれるんですからね!?」
「そうかそうか…。」
目付きは色っぽいけどやっぱ子供だな…。
やっと脳が覚醒したリュミとみんなでミハイルさんとアレルラ姫にお礼をして城を出た。
「急ぎませんと報酬が貰えなくなってしまいます…。」
一目の多いところで俺の能力は使いずらい。とにかく今は町を離れるしかないか…。
徒歩でゴブリンの群れにより破壊されたままの門をくぐり、10分歩き続けた。
「また太陽…。でも今日は雲があるからましですか…。」
「リュミはキツいかもしれないな…。ここら辺なら人は居なさそうだ。んじゃ…」
何かヘリはもう飽きたよな…。何か良いものはないか…。やっぱり安定のハンヴィーにするか。
「私もこのハンヴィーには愛着が持てそうだよ。」
「このハンヴィー?には私もお世話になりました。」
「私はまだ少ししか乗ってないけど…。馬車よりも速いし、乗り心地も最高です♪」
何かしらこのハンヴィーにはみんな思い入れがあるみたいだ。当然俺もこのハンヴィーには異世界に来た瞬間から世話になってるし…。壊れたら泣く自信があるな。
《それは本当ですか?》
「ん?何が本当なんだ?てか今の声は誰だ?」
「私も聞こえた…。」
「私もです…」
「聞こえたわね…。」
「でもどこから…」
《ここです。ハンヴィーですよ!》
俺達は一斉にハンヴィーに目を向けて、唖然としていた。
「ハンヴィー…なのか?でも…喋れたのか?」
《はい!ある程度の複雑な構造の乗り物とかは自我を持つらしいですね~。私もようやくさっき会話が解禁されました♪》
「さすが異世界だな…。」
「うわぁ~♪会話ができる車なんて、見たことないよ♪」
「なんだかまたなんか起こりましたね…。」
《何でも会話ができるようになる訳ではありませんよ?マスターとの触れ合いとも言いますでしょうか…。その時間が多くないといけません…。》
「たしかにハンヴィーで移動したのはかなりの時間だったからな~。」
《それより今日はどちらに行かれるのですか?》
「あ、そうだった、急いでトリミアに戻りたいんだ」
それを伝えるとハンヴィーのドアが独りでに開いてしまった。
《マスター達、お早くお乗りくださいよ♪》
「あ、おう…。」
「何かすごい…。」
俺達は何時ものように乗り込み、俺は運転席についた。
「まさか自動運転…」
《マスター…。車はマスターが操縦するものです。まぁしかし、出来ないことは無いですが。》
「さようですか…。」
ハンヴィーはハンヴィーとしての仕様を変えたくはないみたいだ。でもそうするとただ話せるだけのハンヴィーと言うことじゃないか?
《…。ありますよそのくらい!そのぉえっと…。居眠り防止…暇の解消…自動緊急ブレーキ?》
「何時からハンヴィーに前方警戒ミリ波レーダー付いたんだよ…。ま、とにかくまぁこれからも宜しくな?」《サーイエッサー!》
「…。」
なぜその返事なのかは深くは突っ込まなかったが、取り敢えず俺たちの乗るハンヴィーは首都トリミアへ向けて出発したのだった。
(そこのねーちゃん、酒を一杯くれないか?)
(はーい、って…朝から飲みすぎですよ?はいこれ200ウィルね?キャッ…また私のおしりを…30000ウィルの追加料金ね!)
(うへ~、30000ウィルか~。また一狩せなアカンな~ヒック…)
(まったく…。)
(ねーちゃん、俺にも酒くれ~)
(ハイハ~イ!分かりましたよ~!)
(俺には日替わり朝食を!)
ここ、トリミアのギルド本店は他のギルドとは違って内装も外装もキレイで清潔感があってとても職場としては最高の場所です。ここの職員は受付とかの事務の仕事と、今の私のように飲食店みたいな仕事をするみたいで、それだけ給料も高額です♪私はギルドの職員になってから一年ちょっとで、本店に配置が決まった時はこれ以上が無いような幸福感でいっぱいした。そしてついこないだ初めて会員登録を担当しました。初めての仕事で緊張はしたけど、マニュアル通りにすれば大丈夫と思ってました。そして登録に来たのはまだ大人には見えない黒髪と黒目男性と、とてもキレイな女の子三人と妖精みたいに小さな女の子のグループでした。ギルド職員の掟で年齢、性別、種族に関する差別は禁止事項と習っていたので、特に疑問を持つ事無くマニュアル通りに別室へ案内しました。そして身分証を拝見したのです。
「家紋ですね?承りました。」
家紋を持っていると言うことはどこかの貴族の方々なのでしょうか…。
そして家紋を確認するための魔方陣にかけました…。
その人は貴族なんてレベルではなく王族の方だったのです…。私は今までの自分の言動、行動を改めて確認しました。でも王族の方々はあまり表沙汰にはしたくないようでしたので、マニュアル通りに書類を書いてもらいました。なんで初めての会員登録の仕事でこんなVIPの対応をしなくちゃいけないの?と自分を呪いました。あのマニュアルが正しいのかさえ疑ってしまう有り様です。
登録は無事に終わってくれました。王族の方々がギルドを去ったあと私は午後の仕事を休んで、汗でグッショリの体を洗い早く寝ることにしました。
次の日、私は昨日の事を忘れて仕事をしていました。でも聞き覚えのある声が聞こえてきました。瞬時に声の主が判明すると、私はトイレに行くと隣の先輩に告げてその場を逃げました。何度もVIPの対応をするのは精神的にキツいです…。先輩は流石です。黒と金の王族専用カードを見ても顔色ひとつ変えません。どうやらパーティー登録をするみたいです。やっぱりあの可愛い女の子三人と妖精さんとでしょうか…。あの人達の関係性は私には分かりませんが、あの女の子達は男性の方にかなり信頼を寄せているようです。
終わったようですね…。王族の方々は出て行かれました。先輩に聞いてみましょう。
「さっきの人たち?ん~。初依頼だそうよ?ゴブリン10体の討伐依頼を受けていったけど…それがどうかしたの?」
「い、いえ…ちょっと気になっただけですので…。」
「そう?じゃ私は仕事に戻るわね~」
先輩は書類仕事に戻っていきました。私も受付に座り仕事を待ちます。
「なに、さっきの可愛子ちゃんパーティーは初依頼でゴブリン狩りするの?すんならドンマイだな…。」
受付にやって来たのは、私がここに来る遥か以前からご利用いただいている、ソロハンター歴18年だったはずの人です。私もこの人の受付は何度もさせていただいています。仕事柄上この人の噂も耳に入ってきて、相当強いらしいです。駆け出しのパーティーに助っ人を頼まれて指導したり、80回連続依頼成功させたりと、このギルドの顔と言っても良いほどの人です。
「どうしてですか?」
「そりゃ~この辺のゴブリンが全然いなくなっちまったんだよ。」
「それって!!」
それが本当なら一大事です。直ぐにギルド長に報告しなければなりません。
「ま~待てって。弱者の行進の可能性はあるが、そこらじゅう探して近くの森にも異常な増加は無かった。少なくとも行進の目的地がトミリアではない事は確かだ。だから今時期ゴブリン狩りはきついと思うぜ。見つけたとすりゃ~それは…」
見つけたとすればそれは弱者の行進の本体、もしくは一部の可能性が高いと言うことだ。少なくとも駆け出しのパーティーが倒せる数ではない事は受付の私でさえわかる。
「そういうこった。そんで俺はこの依頼を受けたいんだが…」
大丈夫だろうか…。私の知る限りではここ最近の犠牲者はこのギルドでは聞いたことがない。初めてだ…こんな気持ち。これが送り出す側の気持ちなのだと初めて思い知った。
ギルドは大抵24時間営業で、私はたまたま夜勤で眠気をこらえながら書類を片付けていました。その時階段を誰かがかけ降りてきたかと思うと、それは副ギルド長でした。副ギルド長は、ギルド長の就寝する夜の時間帯の最高責任者で、夜勤の職員は夜のマスターと呼んでいるそうです。なんか…響がちょっとエロくて私は使ってませんが…。
「副ギルド長、どうされたんですか?」
「さっきシラエのギルドから連絡があった。」
シラエ?あぁ~ここから一番近い宿場町か、あそこのギルドも有名だよね~。
「シラエがゴブリンの弱者の行進で、ほとんど壊滅したそうだ。」
「でも、ギルドの調査団がシラエの方も異常なしって言ってたんじゃ…」
「その通りだ。でも今さっきシラエのギルドから対話結晶で伝えられた事実だ。」
こう言った情報はすぐさま私達職員に伝えられる。ハンターや冒険者の人達により早く有益な情報を伝えるためだ。ギルド側も優秀な会員を失う事は損でしかないからこう言った措置がとられているわけだ。
「分かりました。会員の皆様には伝えておきます。」
「うむ。頼むぞ。」
副ギルド長はまた来た道を戻って二階へ帰っていった。ギルドには私と他の夜勤当番の2人と酔いつぶれたハンターさん数名と夜間限定の依頼を受けるごく少数だ。朝まで暇だな~。私は紙に 用がおありでしたら、お気軽に起こしてください。 と書き置きして受付カウンターで仮眠をとった。私の常套手段だし、これをして怒られたことはない。会員の皆さんも大事なこと以外で私を起こさないので、非常にいい関係です。
でも私が起きたときはとても騒がしいギルドになってしまっていました。
ハンターや冒険者の噂は病原菌のように一瞬で広まります。今回のこの騒ぎの元凶である単なる噂もこんなように一瞬で広まってしまったようです。その噂は、まず弱者の行進でシラエが壊滅したこと。それと…
[その弱者の行進を子供ばかりの無名のパーティーがほとんど単独で鎮圧したこと。]
私は耳を疑いました。私に教えてくれた冒険者の人も嘘を言っているようには見えません。だから尚更訳がわからなくなりました。しかし噂はこれだけではありませんでした。
[竜滅用バリスタが効かない謎の生物が現れたが、子供ばかりのパーティーによって倒されたらしい。その戦いの後は地面がとても深くえぐれていて、どの攻撃自体もとても強力だが理解できない攻撃だったらしい。]ギルドを訪れる会員の皆さんからはその噂の事で持ちきりです。中には空間爆発を起こしたとか起こさなかったとか…。そんなことを言う人まで現れてしまいました。ギルドはもともと会員同士の情報交換の場でもありますからこう言った会話も黙認しています。こう言ったところからギルド側も情報を吸い上げることが出来るからです。でもシラエの竜滅用バリスタが効かなかったと言うのは一度だけ実射を見たことがある私にとって衝撃的でした。それに何よりもそれを倒したパーティーに混乱しました。だって…
「あの人たち…」
心当たりは1つしかありません。子供だらけのパーティーはトローデス全体でも片手で数えるくらいしかありません。それに無名ともなると1つしかありません。パーティー名は分かりません。ですがあの人たちがただの王族ではないことは確信しました。
「うわぁ…ヒデエ目に遭った…。お、ねーちゃん、これ昨日の依頼だ。成功したぜ…」
気付けば昨日依頼を受けに来た本店の顔とも言えるベテランのハンターさんがいました。
「もう依頼を達成されたのですか…相変わらず早いですね…。それにどうしたんですか?そんなに疲れた顔をして…。らしくないですね~」
彼の顔は疲れきったと言う顔をしていて、今にも倒れてしまうのではないかと思うくらいだ。今回の依頼はそんなに危険な依頼では無かったはずだけど…。
「ちょっとシラエの事が耳に入ってな、今朝がた気になってちょっくら見に行ったんだわ…。」
「そんな!…危険すぎよ!何を考えているの!?貴方はこのギルドの主力なのよ!?」
「まぁ…聞けって。そこで何が起きたと思う?」
全然反省していない…。でも彼はきっと皆のまだ知らない情報を持ってるみたい…。吸い取るのはギルドの仕事よね、
「子供だらけの無名のパーティーが戦ってた…とか?」
「なんや、知ってるやないかい。でもまぁここからが本題や。」
「他にまだあるの?」
知ってることを全部吐き出してもらうわよ~!
「まず、竜滅用のバリスタが効かない生物だが…。これは事実や。ついでにシラエの一個中隊位の兵がそいつに喰われよった。本当に一瞬やったよ?一瞬。でもそんときにゃ~生きたゴブリンの姿は見えなくなってたな。そんで、その子供だらけのパーティーの話じゃが…。」
「どうしたの?そこが肝心じゃない!」
「悪い悪い…。わいも十分と把握しきれておらんのだ。せや、その子供だらけのパーティーの武器は召喚系のの魔法だと思うが…魔法の感じはしなかったんじゃ。んで、その攻撃も遠距離から確実に破壊力の塊みたいな物を連射してたわ…。かなり離れて見とったから、詳しいことは分からんさかい。でもな…。一番謎やったのは空からゴーッちゅうか…そんな感じの音が絶えず聞こえとったんよ。でも謎の生物が倒れたぐらいやったかな…そいつが光はじめたあとくらいに、」
「光った?何それ!」
「わからへんって…。んで倒れた後ぐらいに兵が逃げるように城壁の中へ入っていって、そのパーティーは変な乗り物見たいのに乗りこんだんよ。しばらく様子を見ていたら、バコーン!っていう耳が壊れそうな衝撃が聞こえて、そのあとにはとんでもない爆発みたいな事が謎の生物が倒れたところにおきたんよ。何回も何回も聞こえて、耳を守ることで精一杯だったわ…。目開けたら、倒れた辺りがとにかく深くえぐられてたんよ。」「その音の正体は!?」
「なんだろな…でも鳥みたいのが尋常じゃない早さで飛んでたさかい。しばらくしたらその鳥みたいのは海の方へ飛んでった。それからそのパーティーは何故かゴブリンの牙を10体分取って城壁の中へ帰っていったぞ。」
ゴブリン10体…。間違いない…。やっぱりあの人たちだ。それに空からの謎の音なら、つい最近もトリミアであったわね…。あれは勇者の仕業っていう噂もあるけど…それに海龍種も討伐したとか…ガレッドの城を崩したとか…本当かどうかは分からないけど、ミーシャリア姫と結婚したとかなんとか…。ん?ちょっと待って…ミーシャリア姫…。会員登録のとき彼はミーシャって呼んでなかったっけ?
そう思った瞬間かってにこの前のパーティー登録用紙を探していた。もしあそこにミーシャリア姫の名前があったら…彼は…。
あの時は相手が王族だし、初めての登録だったからそんなことは気にも止めなかったけど…。
「お、おいおい…どうしたんや?俺の報酬は…」
「ごめんなさい!少し待ってほしい。急いでるなら他の人に頼んで。」
だって彼は…。
(勇者かもしれない!)
そう思った瞬間、大量の書類の束が床に散らばってしまった。でも私の手には目的の書類の入った封筒が握られている。他の職員が私に何かを言っているが聞こえては来ない。そんなことより目の前の封筒の中身が知りたい。封筒にはしっかりMagic Leadと書かれてある。あの日パーティー登録をしたのは彼らしかいなかったはず。だからこれで間違いない。心臓の鼓動が早くなり、周りの時間が遅くなってしまったような気がする。それは私の手によりゆっくりと引き抜かれた。そこには…
「やっぱり…。彼は… 勇者様。」
私は勇者様と会話しちゃったのか…。やっぱり伝説通り黒目に黒髪だったな…。そう言えばもう一人の女の子も黒髪に黒目だったよね…。やっぱり彼女も勇者様なのかな…。
「お、おい!今勇者とか言っとらんかったか!!??どう言うことや!」
彼の声は結構大きくギルド内にいる会員、職員全てに響き渡った。
(お、おい…聞いたか今の…)
(勇者とか言ってたな…)
(まさか弱者の行進を静めたのって、勇者だったりして…)
(んな訳ないだろ大体勇者なんか伝説だろ?)
(あり得るかもな…。町が壊滅するほどの軍勢相手にパーティー1つで静めたのは事実みたいだしな…。可能性は高い。)
(俺は見たぜ!誰もやりたがらなかったゴブリン10体の討伐を引き受けたパーティー!)
(あ、あれか!あの可愛い女の子引き連れたパーティー!えっと…名前なんつったっかな~)
(俺も見たけどよ…何か、ミーシャリア姫に似ていたやつ居なかったか?)
(確かにいたな~そんなやつ。金髪の子だろ?)
(そんなら、勇者の線は深まったな。)
(何でだ?)
(お前知らないのか?ミーシャリア姫は勇者と結婚したって言う噂)
(マジか!?ならやっぱり…)
どうやら会員達は薄々気が付いてきたみたいだ。一ギルドでは対応出来ないくらい盛り上がったが、とある人物の登場により事態は急変する。
《お前ら、少し黙らんか―!!!!!》
「ゲッ!?ギルド長だ…」
「やっべ…騒ぎすぎた…。」
ギルド長と呼ばれたそのお爺ちゃんは、額の血管をあり得ないくらい浮き上がらせ、一階の人間全てを黙らせる。
「貴様も貴様じゃ!ワシの睡眠の邪魔をするほど騒がせるとは何事じゃ!!」
「すみません!すみません!…」
いや…もう昼過ぎですけど…。
「まぁ良い…。でこの騒ぎは何事じゃ。」
「そ、それが…」
副ギルド長が説明している途中も収支無言の状況が続いた。
「ふむ。成る程。原因は分かった。じゃがその話じゃと勇者はギルド会員みたいじゃ。ギルドは会員の情報の守秘義務がある。例えその者が勇者であってもギルドは調査こそするが、貴様らに教えることは出来ない。情報交換は大いに結構じゃが…。騒ぎすぎるでないぞ。」
それを言い残しギルド長は二階に戻っていった。副ギルド長はにじみ出た汗を拭いている。
止まった時間が動き出したように会員の皆さんは自分の仕事を探したり、勇者の噂を続けたりと、何時ものギルドに戻ったみたいだった。それにしても…
「依頼の期限は明日のお昼か…。」
「明日の昼…。いいこと聞いたで~♪」
「あ、ちょっと!なに盗み聞いてんのよ!」
「それまでワイはここで待たせてもらうわ~」
「何を勝手に…。っていつまでよ!」
「そりゃ、勇者の帰ってくる明日の昼までや。」
彼は私の近くのテーブルに腰かけてそこに居座った。本当にいい迷惑だわ…。それに…
(おい…。明日の昼までに勇者が来るらしいぞ?)
(そんな会話確かにしてたな…)
(あのねーちゃんは、なにか知ってるって思ってたけど、これほどの情報とは…ラッキーだぜ!)
(どうする?)
(ん~。さっき見てきたが良い依頼は無かったからな…。俺達も張り付くか!)
(了解だぜ!)
(なんだなんだ?勇者が明日の昼までに来るらしいぞ~!)
「まったく…このバカ達は…」
結局、今いるメンバーのほとんどが今夜ここで勇者の到着を待つようで、私もまた会ってみたいから、夜勤を自分から申しでました。2日連続の夜勤はきついと思ったけど、一日目はほとんど寝てたし、問題はありません。しかし…
「待つと思ったら、凄く時間の経つのが遅くなるのはなんででしょう…。あ、依頼の受付ですね?どうぞ~」今日のギルドはちょっと異様で、誰かが入ってくるたび、ギルド職員含めた全員の視線が送られます。だから…
「ひぃ…ごめんなさ~い!」
「な、ななんでしょうか…?」
今日入店する人は可哀想です…。
ギルドの中での噂はいつも正しいことが多い。それは沢山の会話から間違った噂は消え去って、正しい噂だけが残るからだ。理屈ではなく、自然に会員間の会話でそれが起こるのだ。故に今回の勇者の噂がガセネタだと言う者はいない。
「暇です…。」
やっぱり寝ましょうか…。昨日と同じように書き置きを書く。きっと、勇者様がくれば皆の騒ぎで起きれるはずです。そうしてゆっくりと目を閉じました。
その夜は私は朝まで目が覚めることはありませんでした。
「勇者様は!?って…まだですよね…」
こんな寝起きは初めてですが…。何がともあれ、あと数時間で勇者様に会えるのです。そう思うと何だかいい気分です!
「起きたんかい…。ワイは…もうくたくたや…」
あぁ…いましたね…こんな人が…。知ってるんですからね?奥さんと喧嘩して家に戻れないことくらい。
いつくるのかな…。
「何時まで待たせるんでしょうか…。あと10分で期限ですよ…。」
「待たせるね~」
その時、ギルドの入り口が勢いよく開きました!
彼こそ…
「時間がない…。みんな急げ~…ってあれ?なにこの視線…。」
やっぱり…。黒髪に黒目のあの人でした。
彼こそ、Magic Leadリーダー勇者様!
「なに?この状況…」
なんか、今回は書きやすかった様なきがします。てか…前回ヤバそうな謎の女性を登場させてしまったけど…どう調理したものか…。トホホ…。これからは携帯火器を中心に話を展開します。
今や空気とかした大和…。回収しなければ…頭が痛い~!




