初めての討伐依頼 後編
お待たせしました!今回は初めて1万文字突破しました…。前編を短く書きすぎたせいですね…。
「間に合え…。間に合ってくれ…。」
「吉晴様…」
暗闇と若干の月明かりに支配される大地を一台のハンヴィーが全速力で走っている。そこは街道とは遠く離れており地面は当然舗装など全くされていないため度々ハンヴィーが大きくはね上がる。さっきまでかき氷を食べていた様子とは全く違った。
「弱者の行進…。」
数十分前。
「長…聞こえてますか?艦長!おきてください!大変です!」
「んぁ…?ニミッツか?まだ暗いぞ…。」
「吉晴様…どうしたんです?」
「ふぁぁ~、まだ真夜中じゃない。」
「あ、すみません…。私のせいで起こしてしまって…」
ヴァンパイアであるリュミは睡眠をあまり必要としていなく、自分から進んで夜中の見張りをしてくれると言ってくれていた。その時に突然無線機からニミッツ声が聞こえて、どうして良いか分からず、あたふたしていたと言うことだった。
「それはいいんだ。 ニミッツ何があった?」
「艦長…。ゴブリンらしき生物を確認しました。で、ですが…」
「それはどこだ?数は?」
「そこから短い森をはさんで東南東に35kmの町…。数は…」
ニミッツはここでいったん息を飲んだ様だ。俺は無線の先からただならぬ緊張感が伝わってきた。
「数はざっと7000以上…。ゴブリンらしき生物は門を破壊…町の被害は甚大。至るところで火災の発生を確認。死傷者負傷者は数えきれません。生き残った住民は領主の城に立て籠っています。」
「ちょっとまて7000!?間違いじゃないのか!?」
「それ以上かもしれません…。すでに3機のF-35Cで、二次被害の起きない箇所にJADMを投下していますが、なにぶん市街地が多いためこれ以上は市民の誤爆が…。今は機銃の掃射で対応しています。ですが…」JDAMでは?
ニミッツの言いたいことは分かる。戦闘機に付いている機銃と言うものは、短時間に多くの弾を発射する必要がある。だから弾切れが早いのだ。
「これから俺らも向かう。ニミッツは補給と発艦を交互にしてとにかく攻撃を続けて、出来る限り敵を減らしてくれ。」
「勿論です。しかし航空戦力だけでは限界があります。お早く到着してくださいね…」
「分かった。」
確かに空爆だけでは市街地に入り込んだ大量の敵の対応は無理だろうな…。これは現代の地球でも同じことが起きているから予想はつく。殲滅には地上部隊が必須なのだ。しかし今はその空爆でさえ、逃げ遅れた人の誤爆の可能性から難しくなっている。滑走路さえあればAC-130という地上攻撃機で継続した強力な対地攻撃が出来るたのだが…。無いものは仕方ない。俺はハンヴィーのヘッドライトを付けて目標の町へ向かった。
ミーシャからの事前情報によれば襲撃された町はトローデス王国のシラエと言う町らしい。シラエは宿場町でありハンターや冒険者と言った旅人が多く利用するらしい。こう言った戦いなれた人が多かったお陰でシラエは一晩で完全に堕ちることは無かったのだとミーシャは言っていた。それにシラエにはミーシャの姉が嫁いだらしくミーシャは不安を隠せないと言った顔をしている。攻者三倍の法則と言う物があるが、今が立て籠る防衛戦でもこの状況は、ゴブリンの方が圧倒的に三倍以上だろう。攻め落とされるのも時間の問題だ。夜明けまでもつかどうか…。一刻の猶予もない中、俺達はハンヴィーでただ待つしかなかった。
「吉晴様…。これは弱者の行進かもしれません…。」
「弱者の行進?なんだそれ…?」
移動中ミーシャが思い付いたように話し出したかと思うと弱者の行進と言う謎の単語が出てきた。
「弱者の行進…。私が幼いときに今のシラエと同じようなことがトリミアでも起きたとガーデリックが言ってました。その時は王国軍全軍で対処したそうです。たいした被害は出なかったそうですが…。その弱者の行進と言うのは低階級の魔物や生物。つまり簡単に倒せて経験値を稼ぐために大量に討伐される種が、大量に集まって手当たり次第に破壊していく。逆襲とも言われています。」
「なんだそれ!?カラスみたいだな…カラスは相手の顔を覚える分、カラスよりたちが悪いな。」
全く…。ゴブリン狩りしすぎてゴブリンの進撃が始まったんか…。めんどくさい…。
「あれは…。!?見えてきました!」
「リュミちゃんどこ?私には何も見えないけど…。」
「私はちょっと夜目が効くので…。でも火が燃えてるのが見えてきました。」
「お、ほんとだ、」
俺は赤外線暗視装置を使い運転しているのだが、火事の炎がやっとうっすら見えてきた。ちょうどその時、町の方から聞き覚えのある轟音が聞こえてきた。
「ニミッツも頑張ってるな…。」
「あと数分で着くから準備しろよ」
「バッチリ!」
「私には伝説の勇者様が付いています!」
結奈はM4A1のチャンバーの弾薬の有無を確認して、ミーシャは89式小銃を抱くように掲げている。
「私は使い方は分かりましたが…うまくできるかどうか…」
リュミは体が小さい分を考えてMP7を装備させた。皆にある程度の弾薬を装備させているけど、多分と言うか絶対無くなる。その為に皆固まって…。いやまて…?敵には対空攻撃はできないはずだ。だから何も地上対地上の戦闘なんかしなくて良いんだ。
「皆、作戦変更。俺達は空から攻撃するよ!地上戦はまだ経験が浅いから危険すぎる。」
「そうだね、それでどうするの?」
「こいつを使う。」
俺ははんびハンヴィーを止めてASH-47Aを召喚させた。この機体は俗に言うガンシップと言うものでありこれでもかと言う火力を持つ。今回は俺一人で操縦して後の皆で、弾幕をはってもらうことになる。なぜこんな大型の機体にしたのかと言うと、目的は人命救助の1つだ。この巨大な機体には十数人乗り込むことができる。俺はありったけのM2重機関銃の弾幕を召喚した。この他にもロケット砲やグレネードランチャーなどの強力な兵器もあるが今回は使う機会は少ないだろう。
「結奈は全部の使い方は分かるな?ミーシャ達は好きな武器で攻撃してくれ。結奈に聞けば全部分かる。」「分かったよ!」
今回の作戦の趣旨を皆に伝え簡単な段取りを立てると、直ぐ様エンジンをかけた。ローターがゆっくり回りだしいつの間にか目にも止まらぬ早さになる。
「後部のハッチは開けたままにするけど、落ちるなよ?命綱付けとけよ!」
「分かったよ~!」
「んじゃ行くぞ!」
ACH-47Aはゆっくりと地面を離れ、燃え盛るシラエに向かった。
「ミラ、こっちだ!」
「ジョイス!?何でこんなところに…」
「そんなことはいい!ここは危険だ!早く城にいくんだ!」
「ダメ…とっくに城はゴブリンに囲まれてるわ。もう入れない…」
「じゃ、じゃあとにかく隠れるんだ!ここにいたら時期にやつらに…!?」
ジョイスと呼ばれた男は間一髪で目の前に現れたゴブリンを短剣で仕留めた。もう勘弁してくれと彼は心のうちで叫んだ。
「それに私には沢山の子供たちが待っているのです!私だけ逃げるわけにはいけません!それにあの孤児院なら結界でそう簡単にゴブリンは入り込めません。でも私は何としても帰らなければらないのです!」
「しかしあそこは…ゴブリンの群れの中だ…たどり着けない!」
「しかし!」
その時遠くからまた奇妙な音が聞こえてきた。この音の正体を一度は探ったが、全く分からなかった。でも1つだけ分かったことがあった。その音は、ゴブリンを倒している事だ。
「またあの音か…一体なんなのだ…。」
「敵ではないようです…。ジョイス後ろ!!!!」
上空に意識をとられ過ぎたジョイスは背後から近づくゴブリンにギリギリまで気づかず、ミラと呼ばれる彼女の声でギリギリの回避が…。出来なかった。ゴブリンの持つ錆びた剣はジョイスの脇腹を不快音と共にえぐり大量の出血をジョイスに及ぼした。
「グハッ…こんの~…ッ!!!」
ジョイスは斬られた脇腹を押さえながら、片手で力任せにゴブリンの首をはねる事に成功したが、あまりのダメージで短剣を手から落としてしまい、それと同時に自分の膝も地面についた。傷は浅いが、出血が酷い。このままでは出血死の道を辿るのは誰の目でもわかった。
「じょ、ジョイス!?し、しっかりしなさい!?動かないで!止血だけするから!」
「み、ミラ逃げてくれ…。もう俺は足手まといだ。」
「バカを言わないで!貴方には貸したお金が山ほど残っているのよ!?そう簡単に死に逃げなんてさせないわ!」
「あはは…グハッ…」
「喋らないで。傷が塞がらない!」
治癒魔法を使っているのだが今一効き目が薄い。予想よりも時間のかかる作業にミラは唇を噛んだ。
傷からは量こそ少なくなったが未だに出血が続いている。それから止血までの5分間に及んで魔法をかけ続けたミラはふらふらになりながらも、ジョイスを担ぎ上げ、身を隠せる場所に向かった。
「また世話になるな…。」
「喋らないでって言ったでしょ!?中の出血は微妙にしか止まってないの!」
その頃また地響きのような謎の音が聞こえてきた。本当に何者なんだろう…。
「これは酷い…。」
「撃ったら当たるんだけど…数多すぎて、きりないよ…」
「私は中々当たってくれないですが…。」
ミーシャは89式小銃をどうやらまだ使いこなせていないみたいだ。でも一番すごいのはリュミだろう。MP7と言うサブマシンガンで的当てのようにズバズバ当てている。初心者だが命中率90%以上と言うぐらいだ。
「リュミはすげぇ~な…。」
「吉晴さんに頂いた一発一発を無駄にすることは出来ませんから。」
「何でリュミさんはそんなに当たるのよ!!」
ミーシャはやけになり乱射を始めた。ま、当たって入るんだけど、ヘリに当たらないかが心配で冷や汗をかいた。
「逃げ遅れた人は…。意外に居ないな…。」
「見つからないんじゃないの?ゴブリンから隠れなきゃいけないわけだし。」
コックピットに座るシヴィが俺に呟いた。
「そう言うことか。確かにそうだな。」
こうなると広場で待っててもらうわけにもいかないし、俺らで安全区域を確保して待つしかないか…
「結奈!多分逃げ遅れた人たちは自分では動けないと思う。だから俺達で援護してやらないとダメだ!」
「そうだね、で、どうすればいいの?」
「これからとにかく逃げ遅れた人たちの居場所をここから探す!このゴブリンだらけの町でしらみ潰しに探すのは出来ないからな。でこいつを近くに着陸させて、ヘリを守る役と救出する役に別れる。」
「分かったよ!で分担は?」
「救出する役は俺と…シヴィに頼みたい。」
「私!?良いけど…」
「残りはヘリの守りだ。」
「吉晴様…二人だけで大丈夫ですか?」
「路地がメインだと思うからな…シヴィが上空から索敵してくれれば大分楽になるんだ。それにヘリ組の方が
多分大変だと思うぞ?いざとなったら俺たちをおいて離陸してくれて構わない。」
ヘリはからり音がするからそれで敵を引き寄せるかもしれない。まるでどっかで見たゾンビ物の映画だな…。「分かった…。」
「俺たちの位置は無線と照明弾で知らせる。」
そう言うと俺は直ぐに家屋、路地や草むらを中心に逃げ遅れた人を探し始めた。
「結奈…メガホン貸すから呼び掛けてくれないか?」
「何て言えばいいかな…」
「素直に逃げ遅れた人は居ませんか?でいいんじゃないか?」
「そうか~」
『逃げ遅れた人は居ませんか~?いたら屋根の上とかにあがってくださ~い!』
結奈の声は町中に届いているかはわからないが、これで少しはましになるはずだ。
「吉晴さん…弾が無くなくちゃいました…。」
「そうかそうか、はいはいこれね?」
俺は直ぐに弾薬入りのマガジンを5つほど手渡した。ミーシャ何かはとっくの昔に弾切れを起こしたのだが…リュミは今か…。射撃センスの有無を感じさせるな…。しかしでもミーシャも少しは当たるようになってきてはいる。それでも50~70%位だが…。結奈はゴブリンの群れにM2を撃ちまくっているが弾薬は後半分ぐらい残ってる。三人のなかでキル数のトップは結奈だろう。
「あ、いた!!いました!」
リュミがついに最初の一人を見つけたようだ。
「4人…?あれは…家族か…。近くに寄るぞ。」
俺はヘリを家族の待つ家の真上につけた。偶然にも近くにはヘリの着陸できそうな場所はなく、直接乗せるしかないようだ。
「みんな…。ヘリの着陸できそうな場所は無いから直接彼らを乗せるしかない!俺はホバリングしてるからその間に後ろのハッチから引き上げてくれ!」
正直ホバリングは着陸と同じような難しさだ。さらにヘリの下はいりくんだ土地で凹凸が激しい。こう言うとこのでのホバリングは乱気流が発生してしまい安定しないことがほとんどだ。能力持ちの俺でも長時間は無理だろう。そう思うが俺はゆっくりとヘリを民家に近づけて行く。
「早く飛び乗ってください!」
リュミはヘリの放つ騒音の中、逃げ遅れた家族に聞こえるような声で叫んだ。それを聞いた家族は見たこともない物で飛んでいる俺達を警戒こそしたが、ヘリの音で寄ってきたゴブリンをみてヘリに飛び乗った。
「乗ったか!?」
「これで全員乗ったよ!」
「よし!」
再びヘリの高度をあげて、ヘリのしたに群がったゴブリンをM2の掃射とシヴィの手榴弾で吹き飛ばし、人探しへ戻った。
「お怪我はありませんか?」
「…。え?あぁ大丈夫だ…。それよりあなたたちは…」
「私達はMagic Leadと言う、昨日出来たばかりのパーティーです。今日はたまたまゴブリンの討伐依頼を受けたんですが…。あ、私はミーシャリア·トローデスと言います。」
「こ、これは失礼いたしました!ひ、姫様とは知らずご無礼を…。」
ミーシャの正体を知った家族は床にひれ伏してしまった。
「頭を、おあげください!私はそう言う事をされるのは好きじゃないのです…。それより他に逃げ遅れた人は知りませんか?」
「私達は何も…。」
「そうですか…。私達はしばらく逃げ遅れた人を探してから、皆様を城の中へ入れますから…。」
家族の父親と思われる男性にミーシャが丁寧に事情を説明しているときに、俺はあるものを見つけた。それは本当に偶然のことで、たまたま目に入ったのだ。
「い…た?いたぞ!?二人だ!一人は血を流した後が男性に…女性だ!完全な路地だからヘリは入り込めないな…結奈!操縦を代わってくれ、俺とシヴィは下に降りる。」
「分かった…。何処に下ろせばいいの?」
「近くまでロープで飛び降りるから出来る限り近づいてくれるか?」
「了~解!」
俺は結奈と操縦を代わり自分の装備を揃える。基本体には初日にきた海兵隊装備モドキと変わらない。やはり防弾ベストは防刃ベストに変更している。ベレッタM9と言う拳銃に、グレネードランチャーの付いたM4A1カービンを装備する。当然サプレッサーも装着する。それから頑丈なロープを召喚し頑丈そうな骨組みにくくりつける。このロープに降下も脱出もかかっているのだ。
「ヘリから懸垂降下か…ヘリボーン作戦みたいだな♪」
「吉晴君!真上にきたよ!」
「わかった!下ろしたとは無線で指示するから」
「シヴィ、吉晴さん。頑張ってください。上からも援護しますから!」
「リュミの援護なら安心だな♪」
何かこの短時間でリュミが変わったな…どこか…自信に満ち溢れていると言うか…なんと言うか…。
「そうね、それより早くしないとゴブリンが集まってくるわ、」
「そうだった…。じゃ行ってくる!」
俺はヘリをゆっくりと降下した。地上とは5~8m位でそんなに高いわけではないから直ぐに着地した。
「シヴィは分身を使って辺りの路地をくまなく見張っててくれ。必要だったらこれを使ってくれて構わないから。」
「分かったわ。」
そう言うとシヴィは10体に別れて飛び去っていった。
「だ、誰なの!?」
「Magic Leadのパーティーリーダーの新島吉晴と言います。ここは危険です。直ぐに離れないと行けません!そちらの彼は?」
「ゴブリンに斬られて…。止血はしたけど応急処置よ…。」
確かに極度の貧血で顔色か悪い。呼吸も浅いし…。でも今なら助かるかもしれない。
「取り敢えず上に運びましょう!ここじゃあ治療もできない。」
「上に?」
俺は女性の方にハーネスを渡す。付け方を教えると共に下がをしている男性にもハーネスをくくりつける。今もリュミたちによる援護射撃でゴブリンはここには来ていない。
「これでいいの?」
「バッチリです。じゃあいきますよ?」
俺は三人分のフックを、ヘリから降ろしてあるロープに繋げ、シヴィを呼んだ。
「もういいの?じゃあせっかく貰った手榴弾だし使ってくるわね。」
「早めにもどれよ、結奈!もう良いぞ!持ち上げてくれ!」
無線に話しかける俺に女性の方は不思議な顔をしている。残念だがそれを説明している暇はなく、直ぐに足が地面から離れて中ずり状態になる。
「あ、ごめんなさい…。ヘリにあげる装置つけ忘れた…。しばらくこのままです…。」
「う、うそ!?」
「ん?俺は空飛んでるのか…。遂に死んじまったのか…」
この人も大丈夫そうだな。俺は群がるゴブリンに向けて40mm高性能炸薬弾を撃ち込んだ。大きな爆発音と共に、ゴブリンの群れの中心に着弾した高性能炸薬弾は、群れの中心からはじけ飛ばした。大分減ってきたか…
「結奈、このまま一旦城に行こう、」
「分かった!それにさっきニミッツさんが…」
その時、体を叩きつけるような衝撃と耳を引き裂くような爆音が聞こえた。慌ててあたりを見渡すと町を囲む外壁の向こうに、確かに黒いキノコ雲が見えた。
「核!?…それにしては規模が違うな…。」
「な、何なの!?今のは何!?」
「多分俺たちの仲間の攻撃だと思う。でも何に攻撃したんだろう?」
「あなた達は何者なの!?」
「ミーシャリア姫の夫で勇者?」
その時の女性の顔は生涯忘れることはないと思えるほど、驚きに満ち溢れていた。
「勇者!?ミーシャリア姫の夫!?」
「そんなに驚くことないだろ?」
「そんなにって…。け、敬語の方が良いのよね…」
「ん?さっきのままで構わないけど…。と言うかさっきのままでお願い。」
ハッキリ言って俺もミーシャと同じで敬語で話されるのは落ち着かない。だからタメ口大歓迎なのだ。
「そうなの?じゃあ頼みがあるんだけど…。子供を助けてほしいの」
「そりゃ急がなきゃな、で、場所は?人数は?」
「場所はちょうどそこの建物で、20人よ」
「え!?20人!?その年でですか!?」
女性は見た目から言えば20歳前半…そんな女性が20人の子持ちとは…さすが異世界。
「ち、違うわよ!私は孤児院をしてるの!」
「あ、成る程、ですよね~…。アハハ…。 結奈、そこの大きな建物に20人の子供達がいるらしい。」
「りょうかーい!でも20人なんて乗れるの?」
「子供だからいけるんじゃないか?ダメなら俺がもう一機操縦するし。」
「その手があったか!でも中学校のグラウンドを思い出すね~、着陸しやすそう」
「俺達を潰さないようにゆっくり頼むぞ。」
「分かってるって♪」
グラウンドの様な場所に降りるため徐々に高度を落としていく。まず先に吊り下げられている俺達が地面に付いき直ぐにヘリから離れる。漸く地面に足が付いた心地を確かめる間もなく、女性にロープを外せとせがまれ、女性は走って孤児院と思われる建物に走っていってしまった。
「私達はどうしますか?」
「待つしかないんじゃないか?」
「それにしても、ここにはゴブリン居ませんね~」
確かに町中どこを見てもゴブリンだらけの割にはここには一体も見受けられない。
「この障壁のせいじゃないかしら?」
シヴィは何もないところをノックするように叩くと、ノックした回数分そこに水色の魔法陣が浮かび上がった。と言うことは孤児院の周りには障壁が張り巡らしてあるのか。
「良くできた魔方陣ね…。」
「そんなに強力なのか?」
「違うわ、この障壁の強度はそこまで高い訳じゃないわ。もともと障壁の類いの魔法は強度の高い障壁をつくる事は簡単にできるけど、それを大きくするのが難しいのよ。それに常時発動型となると、もっと難しくなるわ。しかも私と同じ空気中の魔素を自動的に使って…嘘…自動修復までやってるわね…。こんなの軍の施設より高性能よ…。誰よ、孤児院にこんな魔方陣書いたのは…」
「そ、そうなのか…」俺にはわからん。
この孤児院には軍よりすごい障壁がなされている事は分かったところで、またあの女性の声が聞こえてきた。「これで全員です。」
思ってたより多いな…。しょうがないか…。俺は新たに一機召喚した。
「ミーシャ、すまないが次からこっちに乗ってくれるか?」
「分かりました。」
俺は孤児院の女性に事情を説明しテキパキと子供を乗せていった。
「結奈、俺が先に離陸するから、30m位距離をとって、斜め後ろに着いてきてくれ。それと今度はハッチは閉めておいてくれ。人数多いし子供だからな、はしゃいで落ちたりでもしたら大変だ。」
「了解です。」
ハッチを閉めた俺は城に向けて離陸した。
(僕たち飛んでるよ!?)
(すごいすごい!)
(先生…どこに行くの?)
(んとね、お城にいくんだよ?)
(スッゲー!お城だって!)
「まるで幼稚園バスの運転手の気分だな…。あ、こらこら、勝手にスイッチ触らないの!それはダメ!」
「早く下ろしたい…。」
結奈も同じ様な物だった。程なくしてニミッツからの無線があった。
「先ほどの空爆についてご報告しますね。ん?何か騒々しいですね…」
「構わないぞ。続けてください…。」
「そ、そうですか?では、先ほど新たなゴブリン3000体程の集団がそちらに向かっているところを発見しました。直ぐに燃料気化爆弾で粗方倒しまして、生き残ったゴブリンは機銃で処理しました。」
「分かった…。でもそのおかげで俺は胃のものブチまけそうになったぞ…。」
ここまで来た衝撃波で本当に吐きそうになった。
「それは…。あ、城の方に固まっていたゴブリンも粗方倒しましたので、これで暫く上空待機して掃討戦になるでしょう。もう地元の人だけでも対処できると思いますが…。」
「もうそんなに減ってたか…。俺達は一旦城に向かうけど、警戒は続けてくれな。それにミーシャの姉に当たる人が居るらしいから、その事も含めて話し合う予定。」
「了解しました。」
ここでニミッツとの無線は終わって、城の真上に到着した。
「ミーシャ…普通に降りていいと思うか?」
「構いません。姉様には私から説明しますので。」
「そうか、 結奈、着陸するぞ。」
「了解でーす!」
二機のガンシップはゆっくりと高度を下げて行く。あ、兵隊がうじゃうじゃ出てきた…。
「なぁ本当にいいのか?」
「多分…。」
おいおい…。随分と弱気になったな…。それでも高度は下がり少しの揺れと共に地面に着陸した。
「まず、俺とミーシャが出る。みんなはここで待っていてください。」
「俺達は敵じゃない。武器を下ろしてくれると助かる。」
「まず名を名乗れ!」
「失礼いたしました。私はトローデス王国第三王女のミーシャリア·トローデスです。こちらに姉様はいらっしゃいますでしょうか?」
またこのパターンか…。
「ミーシャリア様だ!直ぐに武器を下ろせ!!!貴様何をしている!!直ぐにアレルラ姫に知らせよ!!!」
「は、はいぃ…!!」
一人の兵が城内にすっ飛んで行き、俺達は暫くまたされることになった。
「あ、アレルラ姫がこちらへいらします…。」
「姫が!?」
どうやらここの城の姫様が直々に来るらしい。
「なぁアレルラ姫ってどんな人だ?」
「トローデス家の長女に当たる人です。私は末っ子ですが…。あと一人姉様が居ます。」
「三姉妹か。」
アレルラ姫について聞いていたら遂にその本人が来た。
「ミーシャ、久しぶりね…。それに貴方がミーシャの結婚相手ね?」
「姉様…。お久しぶりです。逃げ遅れた人を救助してきました。」
「新島吉晴と言います。ゴブリンの件について少し話がありますので。」
「いいわ、貴方とは一度話してみたかったのよ、話によれば他にもお仲間がいたと思ったのだけど…」
アレルラ姫はミーシャとは違い、大人の女性なのだけど、少女の心を忘れてない人だと思えた。容姿はとても美しいと言えるだろう。ミーシャも時が経てばあそこまで大きく…。そんなことは今はいいな。俺はリュミ、シヴィと結奈を呼んで、子供たちと、4人家族を下ろしヘリを消した。
「皆さんは保護してもらうことが決まりましたので、ここでお別れですね。怪我をした人も同じです。」
「いままで本当にありがとうございました!」
「私も本当に助かったわ。お陰で子供たちをみんな怪我しなくてすみました♪」
「いえいえ、良いですよ♪何かありましたらMagic Leadに任せてくださいね♪」
ミーシャさん…ちゃっかり宣伝してるし、抜け目ないな~。ミーシャの言葉に一同はクスッと笑った。
「もちろん!ドラゴン討伐も任せちゃうかも♪」
「暫く勘弁な…。」
4人家族の人たちと孤児院のみんなは案内の人に連れられて別の場所に連れられ、脇腹を怪我した男性は治療を受けるため城の中へ連れていかれた。
「ではこちらへ着いてきてください。」
アレルラ姫に連れられて俺達も城に入ることになった。これで一段落か…。
これで終わりではありませんので…汗




