休日 後編
R15デ許シテクダサイ。ドクターフィッシュ…スミマセンデシタ。シヴィチャン…オ気ヲ確カニ。
「結局このカードって大事なのは分かったけど何に使うの?」
「自分の身分証と履歴書と会員証みたいなもんだ。」
「なるほど~」
結奈のやつ珍しく聞いていたと思ったら、理解していなかったのか…。
「それよりミーシャ?いったいどこに向かってんだ?」
「旅の準備と言うものが必要でしょう?いつまでも吉晴様の力に頼っているわけにはいけませんから。」
そうしてたどり着いたのは、ギルドの紋章が書かれた小さな店で中には様々な色をした薬品が取り揃えてある。
「ギルド公認のアイテムショップです♪一度来てみたかったんです♪」
「そ、そうなのか…」
「たくさんありますね…」
「魔界とは大違いだわ」
皆も陳列棚に並ぶ何に使うか分からない液体や固形物に興味津々になっている。その中で俺はあるものを見つけた。
「媚薬…。」
そんなものまで扱っているのか…。俺はさりげなくその瓶を裏側へ回した。彼女たちには早すぎる。
そんなときカウンターから男の声が聞こえた。
「お客さんかい、いらっしゃい。今日は何をお求めかな?」
「…。」
こいつは…武器屋にいそうな男だな…。何でこんなやつがアイテム屋なのだろう…
「どうした?用が無いならとっとと帰ってくれ。」
なんだこいつ!一応客だぞ!?
「すみません。これから旅にでるので必要なものを揃えようと思いまして。」
「そうか、ちょっと待っとれ。5人分だな…。」
そう言うと、店主らしき人は店の中を歩き回り俺には訳の分からない薬品を集めた。意外に良い店主なのかもしれない。
「これくらいあれば駆け出しの冒険者、ハンターには十分だろ。支払いはカードにするのか?」
「あ、はい。」
俺は自分のギルド会員カードを渡した。このカードには現金をチャージすることで現金の代わりになるらしい事はギルドで聞いてきて、実際に金の塊の一部を換金して皆に振り分けてある。
「ほぅ。王族の方だったか。と言うことは貴女がミーシャリア姫ですな?」
俺達はかなり驚いてしまった。なぜこの男はカードを見ただけで正体が分かったんだ?その疑問が頭を離れない。
「そんなに驚かないでくれ。話はガーデリックの野郎から聞いている。」
「ガーデリックさんとお知り合いで?」
「おぅ。昔は長年ガーデリックのパーティーで一緒にやってたからな。つい最近ひょっこり顔を出したと思ったら、いきなりミーシャリア姫がここに来るかもしれないから、その時はよろしく頼む。それだけ言って帰っちまったんだ。それに王族かどうかなんてこのカードの色を見れば分かるしな。」
「ちょっと待ってください?みんな、この色じゃないんですか?」
店主は目を開いて豪快に大笑いした。他の客は信じられないものを見たと言う顔をしている。
(見ろよ、あの鬼が笑ってるぞ…)
(一生に一度あるかないかだな…)
(俺は怒ったときしか見たことねぇよ)
(俺なんて怒ったときに殺されそうになったわ…)
(明日は危険種がでるかもな…)
どんなオヤジなんなだよ!?物騒な単語も聞こえてきたぞ?ようやく笑いが収まった店主はこのカードについて話始めた。
「その金と黒色のカードは王族専用のカードだ。そのカードを提示すればどこの国でも何でも半額になる。普通のギルドカードは赤だ。貴族のカードは黒、王族は黒と金色に決まってる。他のやつからしたら王族専用のカードは喉から手が出るほど欲しいカードな訳だ。」
その事実を知った俺達は改めてこのカードの価値を見直すこととなった。結奈は全品半額と言う響きに反応しただけだが…。
「便利なカードなんですね…これ…。」
「それはそうと…お前が噂の勇者じゃないだろうな?」
「は、はい!?」
やべ…声裏返っちまった…。もろばれかよ…
「やっぱりな。近頃噂になってんのさ、勇者が来たってな。聞く話によればガレッド帝国が勇者によって壊滅したらしいじゃないか。」
噂の力と言うものがここまで凄いとは思いもしなかった…。
「さすがガーデリックさんと一緒にいただけありますね…。確かに俺と彼女は皆から勇者と言われてますよ…。でもあまり広めないでくださいよ?」
「分かっておる。でもじゃワシに1つ武器を譲ってくれないかの?勇者の武器とならば大儲けできるワイ」
結局そうなるか…。別に構わないが…。当然銃は渡さない。銃と言うのは火薬の問題が解決できれば意外に簡単に作れてしまうのだ。しかもここは魔法の世界だ。装薬位の爆発なら魔法でも代用できてしまうかもしれない。そうなれば俺がわざわざこの世界を選んだ意味がなくなってしまう。そこで俺はこの世界でも当たり障りの無いが、日本人なら大体の民衆が知っている武器を贈呈することにした。武器であり美術品でもあるその外観は、武器と言うことを忘れさせてしまうような美しさを持つ。
「日本刀と言う刀で私の国の伝統的な武器です。私の国は武器の所持が禁止されるほど法律が厳しいですが、その日本刀だけは美術品として所持、製造が許されるほど美しい物で、ごく限られた職人の手で受け継がれてきた物です。」
嘘は言っていない。日本刀は許された材料、製法でごく限られた職人の手で手作りしている。その日本刀は美術展が開かれるほど美しく、許可を取れば個人でも所有できる。
「剣…とは違うのだな?この刃の部分の模様は見事だ。日本刀か…この様な武器は見たことがない。」
「剣とは少し違います。両刃ではなく、この刀は円を描くように振ります。」
店主は、日本刀に商品としての価値を見出だしたらしく5本くれないか?と言ってきた。俺は減るものではないので素直に渡しておいた。
「ところでこのアイテムショップで武器を売るんですか?」
「ん?言ってなかったか。この店の裏が、ワシの経営する武器屋なんだ。このアイテムショップは俺の娘と孫娘が切り盛りしているんじゃが、今みたいに留守の時はワシがやってるんじゃ。」
通りでプロレスラー見たいな体でアイテムショップ経営とか…おかしいと思ったんだ。
「そういうこった。何時でも武器屋の方にも顔出せよ?」
「はい。いつかお邪魔しますわ。」
「邪魔は困るが待ってるぜ!」
この世界には軽いジョークなものは無いみたいだ。
そうして俺達はまた大通りに戻った。
「あのおじさん良い人だったね?」
「そうだな~。武器を求めてこなかったら最高のじいさんだった。ところでさ…みんなはどうやって戦うの?」
「私は本当は魔法で戦いたいんだけど…なんか危ないんだよね?」
確かに神様にリミッターを付けてもらったとはいえ、使いこなすには時間がかかるだろうな…。
「そうだな…。しばらく練習が必要になるな。その間はすまないが銃を使ってくれないか?」
「了解でーす…。」
「次はリュミだな。やっぱりあの時みたいに魔法で戦うのか?」
リュミは申し訳なさそうに首をふった。
「私達ヴァンパイア族は大昔に無理やり魔法を使えるようにしたらしく、魔法の効率が悪くて…。血があれば魔法で良いのですが…。」
リュミも魔法をメインにするわけにはいかないか…。戦闘中にいちいち輸血パックを渡すこともできないし…。シヴィはどうなのだろうか…。
「私は直接的な攻撃魔法は出来ないわ。私は空気中の魔素に干渉して、集めて固めて障壁にしたり、魔素の無い空間を作り上げたり、魔物や魔導師に嫌がらせ程度しか出来ないわ。でも私が意識を保っている間は、無制限に展開できるわ。」
ほぅ中々見所のある能力だな…。シヴィはなんとも思っていないようだが、使いようによっては頼もしい能力だ。
「で、ミーシャは…。」
「決まっています!吉晴様に頂いた勇者の武器です♪」
やっぱり…。89式小銃の5.56mm弾が何処まで通用するかは分からないが、伝説の勇者も89式小銃でこの世界を救ったんだから問題はないだろう。そうと決まれば俺はミーシャ以外の装備を考えなくてはいけない訳か。腕がなるな。
「そんじゃ、明日は練習がてら初任務しますか。」
「やるやる!」
「夢にまで思ったギルドの仕事ですか♪」
「人のため…。私頑張る!」
「私の武器は…」
すまん…。シヴィ。お前だけは装備が思い付かなかった…。
「それなら今日は早めに寝るか…」
もう色々あって疲れた~。今から帰れば夕食前に王宮に着くか。それから俺達はてくてく王宮を目指した。
「そういやトローデスって治安良いよな。」
夕方になりつつある時間帯だが町の活気は静まることは無い。それに悪い騒ぎも聞かない。ここだけを見ると日本のような感じだ。護身用にスタンガンを用意していたが無駄だったようだ。
「そうですね、近頃トローデス王国で行われる十ヵ国対談に向けて取り締まり期間中だからではないでしょうか?」
「十ヵ国対談?」
「簡単なことです。十ヵ国の国の代表が様々なことを議論するのです。今年の開催地がたまたまトローデス王国だったのです。」
「まさか…」
「はい。ガレッド帝国も参加する予定です。皇帝の安否は不明ですが…。今回の議題はその事でしょうね。」「やっぱり…。」
他国にとっては俺達勇者の戦力は喉から手が出るほど欲しいのだろう。ガレッド帝国は完全に奇襲して負けたのだから大きな口は開けないはずだが…。ま、俺には関係ないことなんだが。
そうしているうちに王宮へ着いてしまった。ミーシャが居ることで顔パスで入城することができる。
「お腹すきました…。」
「そうね…」
シヴィはリュミの頭の上に座ってただけだろう。
「久しぶりにこんなに歩いたな…。」
部屋に着いた俺達は早速、夕食を取ることにした。しばらく待つと使用人がルームサービス様にワゴンにのせられた料理をテーブルに並べた。
「お待たせいたしました。ご夕食がお済みになりましたらお呼びだし下さいませ。それでは失礼いたします。」
それだけを言い残し部屋を退出していってしまった。俺の知っているイメージと違うがこれが本来のメイドなのだ…。
「吉晴様、どうされました?あの使用人の子に失礼がありましたか?」
「いやあの子は悪くない…。俺の世界が間違っていただけだ…。」
ミーシャが不思議がっていると、結奈がミーシャの耳元で何かを喋り出したが、俺には聞こえなかった。
「少し恥ずかしいですが、それを言えば良いのですか?」
ミーシャに何を言わすのかは分からないが、少し顔が赤らんでいる。こう言うミーシャも可愛いな…
「吉晴君、録音の準備をしといた方がいいかもね♪」
「それでは…。」コホン
《どうされましたか?ご主人様?お早くお召し上がらないとお料理が冷めてしまいますよ?》
俺はビックリしすぎて録音停止ボタンを押し忘れてしまっている。何だろうこの懐かしい響きは…。
「え?、ど、どうしたのです?吉晴様が固まってしまいました!」
「大丈夫だよ、すぐに戻るから♪」
「ナイスだ結奈…。本物お嬢様系メイドはレア度が非常に高かったぞ。」
「良かったね、ミーシャ♪」
「は、はい?ありがとうございます?」
訳のわからないまま話が進むからミーシャは考えるのを止めたらしい。
そんなことがあったのだが無事に美味しい料理を食べてお風呂に入り就寝時間が訪れたわけだが…。
「ミーシャ…自分の部屋に戻らないのか?流石に2つのベットに四人は無理が…」
「私は構いません。」
「リュミ!?」
「私もいいわ。」
いや…すまないがシヴィはどこでも寝られるだろ…。問題は俺らなんだよ。
「流石に…無理があるんじゃ…」
「ならこうすれば良いんじゃないの?」
結奈は2つのベットを横に1つに繋げてしまった。
「多少はましにはなるけど…」
「だ、ダメですか?」
ミーシャさん…それは反則だと思うんですよ…。それを言われたら断れないのが世の常です。
「狭いとか文句言うなよ…はぁ…」
寝る順番は、右から結奈、リュミ、俺、ミーシャと言うことになった。
「んじゃ明かり消すぞ?」
この世界は灯りを消すと、窓からの月明かりしか光源がなくなる。地球のように街灯等と言うものは、町であっても存在しないのだ。
「ちょ、あぅくすぐったいぃ…ですよ…」
リュミの声だ。断じて俺ではない。暗がりで悪戯するほど俺は変態ではない。でも隣でそんな甘い声を出されたらさすがの俺でも、色々想像してしまう。
「あひ!?よ、吉晴君…そんなとこ…触らないで…」
今度は結奈かよ…。
「俺は何もしてないぞ。」
「そんなぁ…あうぅ…だって今だって…」
暗がりで何が行われているかは俺には分からないが、本当に見えないのが残念に思う。
「え!?な、何か服の中に入ってきました!キャ…え…そこは、そこはダメですぅ~え、あぁ…うぅぅ」
ミーシャもか…。何かほっといたらヤバそうだな…。
「こ、これ以上は…ひぅだダメで…す…」
ヤベヤベ…ほっとくか…この状況を喜ぶ自分もいるが、なんかこれ以上は俺も流石にヤバイと思ったから、灯りを付けた。そこに広がっていたのは服がちょっと乱れ、息が荒く、顔がトマトのように赤い美女3人の姿だった。
「ど、どうしたんだ?」
「分かんない…いきなり…その…。」
ここで俺はシヴィが見当たらない事に気づいた。まさか…
「おい、シヴィ。出てこい。」
「あちゃ~バレちゃった~テヘ?」
そんなことを言いながらミーシャの服の胸元からひょっこり顔を出した。ずるいぞ、そこ変われ…じゃなかった…。
「テヘ?じゃねーよ。何してんだ?お前は…。」
「悪かったわよ…。ちょっといたずらしただけじゃない…。」
「てかどうやって三人まとめて責め、違った。いたずらしたんだよ。」
シヴィはよくぞ聞いてくれました。と言う顔でシヴィは話始めた。
「実は私、実体を持った分身を作り出せるのよ!」
それはすごいな…シヴィ飛行隊で手榴弾投下とか面白そうだな…。
「何か反応薄いわね…。」
「それはすごいことだけど…後ろ…。」
そこには回復した美女三人が恐ろしい顔でシヴィを捕まえようとしていた。
「よくもやったわね…」
「いくらシヴィでも許しません。」
「誰にも触らせた事無かったのに…。」
次の瞬間には逃げるまもなくシヴィは捕獲されていて、美女三人は不気味な会話を楽しんでいた。
「この子どうしましょう…。」
「ヤられたらやり返す…倍返し。同じ事をしてあげましょう。」
「そうですね…私にいい考えがあります。吉晴君…気持ちよくなる薬ちょうだい?」
「お、あぁこれな…」
正直、結奈が媚薬を知っているとは思わなかった…。ちょっとドキリとしてしまった。それに今の結奈ちゃん…怖いっす。
「ありがとう…。それとお風呂のバスタブの中にドクターフィッシュを大量に入れてください。」
「そ、それは…不味いんじゃないか?」
「お願いします?」
「は、はい。」
初の生物召喚はうまくいって実に大量のドクターフィッシュを召喚することに成功した。
「これはすごいや…」
「ありがとうね…。リュミちゃん…魔法でシヴィちゃんを大きくできたりする?」
「出来ます!」
「そう…それじゃあ小さいシヴィちゃん…お風呂に入りましょうね…」
「な、何をする気なの?この瓶は何?ね…謝るから…謝るから…」
結奈は小さいシヴィを媚薬の液体が入った瓶に突っ込んだ。
「ひぃ!?…冷たい…」
「大丈夫だよ…直ぐに暖まってくると思うから…」
こんな結奈見たことありません。のレベルを超してもうシヴィが心配になってくる…。
数分がたった頃に、シヴィが目に見える反応を見せてきた。吐息が熱くなり、顔もほんのり赤い…
「な、何これ…体が熱い…。」
「そろそろいいかな…」
「リュミちゃん…魔法でシヴィちゃんを大きくしてくれる?」
シヴィは一呼吸してから、シヴィに意識を集中させた。するとシヴィの体が光輝き、みるみるうちに大きくなりリュミと変わらない大きさになった。
「リュミちゃん、硬直の魔法って使えたよね…。」
「はい…。」
すると…シヴィは首から上以外が動かなくなってしまった。ついに始まるんだ…
「シヴィ…正気を保てよ。」
俺はそれだけを言い残しベットに潜り込んだ。もう見ていられない…。すまんシヴィ…。
「体が動かないし…熱いし…なんかうずうずする…。」
「はい、体の汚い部分を食べてもらいましょうね~」
三人の美女に持ち上げられ浴槽に入れられた。
「ひぐぅ…あぁ~~~~。何これぇ~~~!やめて~…も、もう限界…あ!!!もういや~!!!ヤダァァ!!!ごめんなさぁぁいぃぃぃ!?ううッ…」
俺は知らない。俺は知らない。寝るんだ俺。
「ヤられたら倍返しなんだよ…。」
結局このあと二時間ほど。シヴィが気を失うまで仕返し?は続いた。嫁達の新たな一面を目前にする吉晴君だった。シヴィ…人格とか変わんないかな…。
「もうだめぇぇぇ!!!!あぅ!!んんん…」




