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異世界でも、チートよりも大切なこと。  作者: 芳賀勢斗
ギルド会員としての旅立ち。
19/97

新たな旅立ち。

ここから新章でしょうか…

「婚約を誓う者は前に出てください。」

結婚式はニミッツの広大な甲板の上で執り行われていた。リュミと俺は滑走路のカタパルトにそって一歩ずつを踏み確かめる様にニミッツの元に向かっている。結奈やミーシャ、シヴィの他にたまたま近くを航行していた大和が加わっている。

「あなた方は共に喜びも悲しみも全て分かち合うことをここに誓いますか?」

「は、はい!誓います!」

「誓います。」

「そうですか♪それは何よりです♪それではこの滑走路のように新たなスタートをきってください♪おめでとうございます♪」

それと同時にニミッツの汽笛が鳴り響き、大量の花火がうち上がり俺らを祝福してくれた。その花火は今も続きリュミはそれを目を開かせ眺めていた。さらには下を向けば甲板の誘導灯が綺麗に点滅している。まさにニミッツの送る最高のもてなしだった気がした。

花火は結奈とミーシャが短時間で必死に準備してくれたもので、俺が手伝うことは拒否された。

「こ、こんな凄い結婚式なんて…私ができるとは思ってませんでした…。皆さん、本当に…本当にありがとうございました!この思いでは一生忘れません!」

リュミは半分泣きながら嬉しそうに感謝の言葉を言った。

ニミッツは見計らったように言葉を再開した。

「それではヴァンパイア一族に伝わる血の盟約を執り行います。」

血の盟約。それは相手の血の味を覚えることでどこにいても大体の居場所を把握する事が出来るようになるらしい。ヴァンパイア一族では血の盟約をする事は当たり前であり伝統となっているようだ。言うなれば誓いのキスと同じ認識でいいだろう。リュミはゴクンと息を飲むとゆっくり首筋に近づいてきた。その目はいつもよりも輝いて見えた。

「!…?」

首筋に噛み付かれたにしては異常に痛くなかった。例えるならちょっとつねられる位の痛さで身構えた身の緊張はほぐれた。ようやく血の盟約が終わったと思ったらリュミは俺の首に手を回し唇を押し付けてきた。

シヴィから話は聞いていたけどヴァンパイア族の夜はここまで積極的になるとは思わなかった。特に吸血の後はさらに積極性が増すらしい。キスだけで終らないリュミは俺の口の中に舌を滑り込ませてくる。リュミの顔は少し赤くなっているし、結奈達は見ていないふりをしてるし、ニミッツさんはニヤニヤこっちに視線を送ってくる。俺もディープキスは初体験でありアワアワしている次第だある。まぁヴァンパイア族の本能らしいから仕方ないが…

「リュミ?そ、そろそろ良いんじゃないか?」

プツンと意識が変わったようにリュミは今の状況を知った。

「え?え、あぁえ?私…また…。」

「ま、仕方ないけど、あんまり深刻に考えちゃダメだからな?」

「は、はい…」


「凄かったね…リュミちゃん…私もあそこまでしないとダメかな…」

「そうでしたね…。あんなことまで…」

「リュミちゃんが意外な強敵だったりするかもね…」

「あ、あのまま二人が続けてたら…」

式のあと純情な二人は顔を赤くするのでした。



「艦長?どうしますか?真夜中ですが…王宮に戻られますか?」

「そうだな…どうしようかな…」

「王宮なら夜遅くまで大丈夫ですよ?」

「王宮…」

「それなら…重要な情報もあるし、すまないけど王宮に向かうことにするよ!」

「そうですか。お気を付けてくださいね?それとリュミさん?頑張るのですよ♪」

「は、はい!いままで沢山お世話になりました!」

ニミッツは小さく微笑みリュミの頭を撫でた。

「それじゃあ行ってきますね」

俺はヘリを召喚しコックピットに乗り込み他のみんなも次々に乗り込んだ。俺の頭には暗視装置がつけられている。これで月明かり程度の暗さなら鮮明に辺りを見渡すことが出来るようになる。

俺はゆっくりとスロットルをあげて行き、ヘリは空母を離れた。

「また、飛んでます…」

「さすが勇者ね…」

この世界において人間が空を飛ぶと言うことは研究こそされているが、全くといっていいほど進展がなく、出来て数十mのジャンプに近いことだそうだ。竜騎士は居ないのか?とファンタジー小説を頼りに聞くと、居ることは居るらしい。でも竜は基本的に単独行動であり人になつかせるのは不可能に近いらしく、卵の時から育てていくと辛うじて使役出来るレベルになるらしい。でもそれには膨大な時間と手間が必要になり普通の国ではなし得ない事で、竜の生息地が近く資金力のある大国であり一流の調教師がいる国でないと出来ない。しかも竜が実戦に耐える肉体になるまで50年近く掛かるとされる。でも竜の力は壮絶で竜騎士1体で、町一個。竜騎士10体で国1つ落とすことが出来るらしい。それを今60体近くを保有している2国がありその国たちは数百年前から竜の使役を始めてきて、こつこつ戦力を拡大していったらしい。竜騎士と言う絶対的な力を持つ抑止力。地球で言うアメリカやロシアなどと同じ立場だろうか。

「核兵器みたいなものか…」

「その様なとらえで問題ありません。竜騎士一体の価値は小国と同じ値段なのです。」

「なるほどね~あ、それとミーシャ?」

「何でしょう?」

「旅に出たくないか?みんなも。」

「そ、それは私は賛成…ですが」

「国王様の提案だよ♪」

「お父様が!?」

俺はあの時話した内容をありのままにミーシャに伝えた。それを聞いたミーシャはポロリと涙を流した。

「そんな話をしていたんですね」

「隠してた訳じゃないんだけど…国王様を責めるなよ?」

「分かっています♪」

今後の新たな方針が決まった事で一件落ち着いた俺はヘリを王宮に着陸させた。

王宮の兵は学習能力が高くヘリの音で騒ぎになることはなく、姫様のお帰りと言う違う意味の騒ぎになった。


「夜遅くにすみません国王様…」

「構わんよ…。それにしても…また増えたのか…」

「りゅ、リュミと申します!ふ、ふつつか者ですが…」

リュミがテンパっている後ろからシヴィのフォローが入った。

「リュミ、少しは落ち着きなさい。いきなり失礼しました国王陛下。私達は魔族の者です。」

さすがに国王様も少し驚いたらしくお礼視線を向けたがそれだけだ。

「彼女達は確かに魔族です。」

「そうか…勇者は大変だな~。君達も話があるのだろう?そこに座りたまえ。」

それから俺達はリュミの正体と、今の魔界の状況と、これから人間界に増えてくるだろう魔族は危険ではない事を話した。

「そうか…詰まりはリュミ殿は魔界の姫でシヴィ殿はリュミ殿の護衛と言うことで良いかな?」

実質的に間違っていないためシヴィは頷く。国王様は珍しく必死になにかを考えているようだった。

「魔界の姫と結婚したのは我としても国としても喜ぶべきことじゃ、魔族の受け入れもこの国なら問題ない。それに魔族との争いも無いことが確認できた。うむ。我からはなにも言うことはないな。」

「意外にあっさりなんですね…では本題に入りましょう。」

「そうじゃな。」

俺はテーブルの上に十数枚の写真を並べた。国王様は写真を一目見ただけで顔をしかめた。

「あの難攻不落のガレッドの城が…この港も数年は使い物にならないと見る。」

そう言い国王様は近くの兵を呼びつけると防衛大臣を呼ぶように伝えた。

「ガマデスの代わりをもう見つけたのですか…」

「何時までも空席にしておく訳にもいかないからな。」

ガマデスはもうこの世にはいない。昨日刑が執行されたようだ。

数分してドアがノックされた。

「お待たせしました。国王様」

ん?この声どこかで…

入ってきたのはなんとガーデリックさんだった。ガーデリックさんは俺達が最初にあった護衛チームのリーダーだった人だ。

「久しぶりだな吉晴殿。」

結奈達は話が長くなると言い部屋に帰らせていた。結奈もいたら驚いたことだろう。

「なんだ知り合いだったか。じゃがガーデリック、これを見てくれ。今のガレッドの様子じゃ。」

ガーデリックはテーブルの上に広がる写真を険しい目で見た。

「これは…。」

「そうじゃ。ガレッドの国王が死んでおるかもしれん。」

やっぱりか…。やっぱり報復攻撃にしては倍返し過ぎたか…

「やっぱりやりすぎでしたか…」

「うむ。じゃがガレッドが公式な返事をするまでなにもわからん。それにあのビラで勇者の仕業と言っているのだからそこまで強気な行動はできないはずじゃ。しかしあの城を瓦礫の山にするとは…お主…何をしたのだ?」

「国王様…吉晴殿に聞いても無駄ではないかと…」

「それもそうじゃ」

俺は確かに作戦プランを説明したはずなんだがな…

「この話は我らで片付けよう。」

ガレッドの話はここまでで終わりとなった。

「国王様…。あの~先日のお話ですが…お引き受けしたいと思います。ミーシャからも頼まれました。」

「そうか…ミーシャリアも一人立ちか…んでいつ旅立つのじゃ?」

「そうですね…ミーシャも楽しみにしてましたし、近いうちに出ようと思っています。」

「ま、日にちが決まったら教えてくれ。それと君にこれを渡しておこう。きっと役に立つはずじゃ。」

そう言って机から取り出したのは小さな封筒と、拳程の金の塊だった。

「これは?」

「この封筒には王家の紋章が入っている。これは身分証としても使える。この金の塊じゃが…売って金にしてくれて構わん。」

「い、いや悪いですよそんな…」

国王様は俺を見て溜め息をついた。その顔は国王ではなく父の顔に見える。

「我にはもうこれくらいしかしてやれぬのだ。使わなくてもいい。ただ持ってるだけでも構わん。受け取ってくれないか。」

そこまで言われてしまったら逆に断る方が失礼に思えてしまったため俺は仕方なくそれを受けとることにした。

「では娘を頼むぞ。」

「もちろんです!」

重苦しい会話ではあったが正式に旅をする事が決まった。そのあと国王は酒を飲みすぎて秘書の方に叱られていたのは別の話だ。

「全く国王様!私に仕事を押し付けておいて、夜遅くまで仕事してやっと終わって書類を届けに来たと思えば、なぜ国王様はお酒で酔っておられるのですか!」

「今日はいんれすよ~ぉ~…ミーシャリアのぉ…かどれをぉ祝いきゃんぱ~い!」

「あ、また飲んで…」

「これはいけませんな…私が寝室までお連れしましょう…」

「すみませんね…ガーデリック様…」

「いえいえ、国王様には返せぬ恩がありますので…。国王様!お気を確かに。さぁ寝室にいきますよ!」

「ガ~デリックぅ…今宵はぁ…飲み明かそうぞぉ~」

全くどこの世界でも酔っぱらいの後始末は大変なようだ。

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