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シーフ・ストーリー・ボード ~神々の踊り子~  作者: 方丈治&ととろ
第一章:ミリバール城~旅立ち
6/19

ストーリー5

 

 ※プレイヤーの選択:入れる→200M

 ※所持金:950M


 貯金箱に硬貨を入れると、容器の中でチャリンチャリンと音が鳴った。それをうっとりとした顔で聞いていたエルマは、大事そうに再びリュックの中に戻す。

「うふふふ、頑張って貯めないとね♪」

 エルマはこの旅を始めるにあたって、貯金箱にお金を貯めることにした。「お金を『箱』に隠してしまうなんて愚行だ」と思っていたエルマだが、ある目的・・・・のために、お金を貯めることを決心したのだ。


 *****


 ディオスがドアを開けて中に入ると、普通の民家の部屋といった様子で見たところ変わったところはない。ただ、部屋中が煙でうっすらと曇っている。どうやら二階へと続く階段から流れ込んでいるようだ。しかもこの煙、かすかな刺激臭がする。

(このにおい──?)

 ディオスが無意識に鼻と口を手で覆うと、一階の部屋を見て回った。だが、人の気配は全くない。

 そのとき、ハッとして階段の方を見る。

(もしかすると、二階に人が……!? ──助けなければ!)

 ディオスが全速力で階段を駆け上がると、二階の光景に驚いて思わず足を止めてしまった。

 二階部分は部屋と部屋の間の壁がすっかり粉々になり、一つの大きな部屋があるだけだった。その部屋の真ん中に、ビリビリに破けた大きな袋状の布が、しぼんだ状態で地面の上に散乱している。どうやら、この物体が例の爆発音の原因らしい。

 頭上の天井にはぽっかりと穴が空いていて、青空が見える。部屋の床には、窓ガラスの破片や、ディオスが初めて目にするような器具が散らばっていた。部屋の光景が、目の前にある袋状の布が爆発した時の衝撃がいかに強烈なものであったかを物語っている。

 二階は一階よりも煙が濃いので、ディオスはじっと目を凝らした。すると、部屋の片隅に、一人の男がうつ伏せの状態で倒れ込んでいるではないか。

 ピクリとも動いていないが、階段の方に手を伸ばしているところをみると、下階へ避難しようとしていたらしい。だが、その想いを遂げる前に、この変な臭いのする煙にやられてしまったというわけだ。

 ディオスは男を背中に担ぐと、一目散に家の外へと走った。


「────んっっとに、助けてくれてありがとう!」

 ディオスの手を握り締めながら礼を尽くしているのは、煙を吸って先ほどまで気絶していた男である。ディオスによって家の外に運び出された後、しばらくして目を覚ましたのだった。

 ちなみに、家の前に集まっていた野次馬たちはディオスが助け出した人間を見ると、「やはりこいつの仕業か」と言わんばかりの溜息をつき、それぞれ帰っていった。ディオスは人々のその様子がものすごく気になった。だが、気絶した男をそのままにはできなかったので、人々に尋ねるのは諦めることにした。

「いや~、あのまま倒れてたら、毒ガスでやられてたな!」

 まだ年の若いそうな青年──ディオスと同じ年頃か、それとももう少し若いだろうか──が、ハハハと陽気に笑う。今の今まで、生きるか死ぬかの瀬戸際だったはずなのだが、この青年にとって、このことは既に笑い話になってしまったらしい。

 ところが、ミリバールの治安を守るのは自分だと自負している隊長には、青年の話は少々衝撃的だった。ディオスは面食らった表情で、生き生きとした目を持つ青年を見た。

「ど……毒ガス!? おかしなにおいのする煙だとは思ったが……。おぬしは一体、あの部屋で何をやっていたんだ!?」

「そういや、自己紹介がまだだったな。俺の名前はバルーン。実はな、俺、空を飛ぶ乗り物を開発中でさ」

「ほう、空飛ぶ乗り物か。私も死ぬまでに一度は、鳥のように空を飛んでみたいものだがな」

 バルーンという名の青年の手を握り返しながら、ディオスはそう答えた。その反応に、バルーンは嬉しそうに顔を輝かせた。

「あんたもそう思う!? いや~、あんたとは気が合うなあ。俺、子供の頃からずっと考えてきたんだ。どうやったら空を飛べるのかを。それでさ、最近、こんな乗り物を考えついたんだ!」

 そう言うと、バルーンは薄汚れたズボンのポケットから一枚の紙切れを取り出した。折りたたまれた紙を広げると、それをディオスに見せながら説明を始める。

「『気球』っていってな、大きな袋の中にある・・気体を詰めると、その袋が空中に浮かぶんだ。袋の下に人を載せるためのカゴを連結したら、まさに鳥のように空に向かって飛べるのさ! でも、その気体っていうのが普通の空気とは違ってね。空気より軽い気体じゃないといけないんだよ!」

 その紙には、上に円が、その下に四角形が一つずつ描かれていて、その間を無数の線が走っている。バルーンは熱心な説明と同時に、その図形に指を走らせた。どうやらこの図形が「気球」というものの設計図らしい。図形の上下左右の至る部分には、小さな文字で細部の構造を書き記してある。

 ディオスは半壊した二階で見た大きな袋状のものを思い出した。そういえば、あれとこの紙に描かれているものはよく似ている。

「なるほど……。先ほど私が見た、あの破れた布は、この上の部分の袋を作ろうとしていたものだったのか」

「おっ、気づいてくれた!? そうなんだよ。俺、あの部屋でこの設計図の気球を作ろうとしてたんだ。大きな布を何枚も縫い合わせて、袋状にして……それから、その中に気体を詰めたんだ。そしたら、どっかーーん、さ」

 バルーンは溜息をつきながら、親指で後ろの半壊した我が家を指した。

「理論上では、気球は絶対に作れるはずなんだ! ……でも、それには資金が要る。さっきの爆発も、俺が貧乏だったせいさ。本来のものとは違う気体を使ったんだ。本来使うべき気体は高価で、とても俺には買えなかったからね。でも、やっぱり設計通りじゃないと失敗するよなあ……。あ~あ、開発は一時中断して、働きにでも出ようかなあ……」

 現実を思い出したバルーンは大きな溜息をつくと、肩をすくめた。

 それを見たディオスは、口を開いた。


 ※次の三つから、ディオスの発言を一つ選んでください(所持金:680M)


 ①「よし! 私が、発明費用として680Mを提供しよう!」

 ②「よし! 私が、発明費用として340Mを提供しよう!」

 ③「すまんな。あいにく今、持ち合わせがないのだ」


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