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貫く意志が招いた結果

友人がイラストを描いてくれたので、今回は挿し絵入りです。

自分の中にあると言う「力」。

それと天秤にかけられるように、仲間の命がルキフェルの手に渡ってしまった。

「どうした?手も足も出ないか?」

ルキフェルの言葉が、鋭く尖った矢のように心に深々と刺さる。

得体の知れない力と仲間の命。

失う事の恐ろしさを知っている彼にとって、答えは自然と一つに絞られる。

だが。それ以前に、別の感情が少しずつ沸き上がってきた。

自分自身の奥深くにある、不思議な感情。

――このまま……力を渡して良いのか?

すると頭がずきりと痛む。

それはとても重い痛み。

「さぁ、いつまでも待てないぞ……」

ルキフェルが急かすように言い放つ。

そう。人質をとられた以上、何もしないわけにはいかない。

ペンドラゴンは剣を構え直した。

「何のつもりだ?」

「何もしないで力を渡す。それは逃げる事と同じだ」

剣を持つ左手を竜に変化させる。

否、それは左手だけに止まらず、彼の左半身が鱗に覆われる。

瞳は鋭い光を宿し、目の前の悪魔を睨み付けた。

「僕の中にある『何か』が言うんだ」

ペンドラゴンは左足に力を込めた。

「逃げるな……闘え、と!」

そしてそのまま地面を蹴り、全力で飛び出した。

地面すれすれを滑空するように飛び込んでくる。

「いいだろう。気が済むまで抗ってみせろ!」

面白がるようにルキフェルが笑う。

まるで、自らやって来た獲物を仕留めるかのように。

竜と悪魔。二人は再び剣をぶつけ合う。

互いの斬撃が、互いを傷つける。

しかし。ペンドラゴンにとって、そんな事はどうでもよかった。

「何か」が語りかけてくるのだ。

「闘え。僕にはそう聴こえるんだ」

攻撃を食らわせた直後、ルキフェルの広刃剣を蹴りつけて、ペンドラゴンが後ろに飛び上がった。

そして自身の前に青い魔法陣を展開させる。

「もう……誰も失いたくないから」

魔法陣から発せられた光は水となり、ルキフェルめがけて飛んでいく。

ただの水ではなく、槍のように空を切る。

「なるほど。流水魔法か」

しかし、平然と魔法を打ち消す悪魔をもう一つの衝撃が襲った。

それは炎。

攻撃系魔法の中で最も強力な力を持つ「火炎魔法」。

「ぐっ……」

苦悶の表情を浮かべながらルキフェルは炎を振り払う。

「まだ魔力が残っていたとは……侮ったな」

悪魔は黒い玉を無数に作り出した。

そしてそれをペンドラゴンに向けてほうり投げる。

高速で飛翔する玉は、次々に彼を襲う。

魔法とは違う。悪魔の力そのもの。

明らかな敵意を持って襲ってくる。

最初は剣で防いでいたものの、時間が経てば数に押し負け、隙ができた。

前から、後ろから、左右から。

様々な方向から打ちのめされる。

「この……!」

ペンドラゴンはタイミングを見計らい、魔法を使って周りを飛び交う玉を撃ち落とす。

「他の者たちに比べれば、随分と戦えるものだな」

突如として狂気的な気配が辺りを飲み込んだ。

殺意にも似た感覚。

息が詰まるような感じに、ペンドラゴンは顔しかめる。

「しかしまだ未熟。今まで強大な敵にぶつかった事もないだろう」

ルキフェルが悟るように言った。

だが、そんな悪魔に竜の鋭い視線が突きつけられる。

「つくづく気に食わんな。その眼も、あの女を思わせる」

「それはどう言う意味だ」

すると、力に捕らわれたファルコが言い出した。

「そうだ……思い出した。ベルムードって確か、かつて竜の国を治めていた王家の名だ!」

「王家の……名前?」

これは、自分の記憶に無い。

しかしファルコが言っているのだから本当なのだろう。

「二十年程前、俺は竜との戦争に出向いた」

発せられた殺気はそのまま、ルキフェルがペンドラゴンを指差し嘲う。

「記憶を失ったお前には関係の無い話だろうが、一つ教えてやろう」

ルキフェルはまたもや不気味な笑みを浮かべる。

見ているだけで心を抉られるような眼。

わずかながら額に汗が滲む。

「お前の母親は俺が殺した」

無意識の内に瞳孔が開いたと自分でもわかった。

心臓の鼓動が早鐘のように鳴り響く。

母親がいると言う事を知らなかったのに。

母親がいたとしても、完全に記憶から消え去っていたのに。

それでも、殺されたと聞いた瞬間に沸き上がった感情。

ペンドラゴンはルキフェルの胸ぐらに掴みかかった。

「なぜ……なぜ母さんを殺した!」

「あの女が邪魔だった。それだけの事」

あまりに単純。いや理不尽な理由。

「そんな事で……」

「悪魔が竜を殺す事に、これ以上の理由がいるのか?」

「ふざけるな!そんな簡単な理由で」

その時、左腕に痛みを感じた。

見るとルキフェルが取り出したナイフが突き立てられている。

「餓鬼が……調子に乗るなよ」

酷く冷たく、恐ろしい声音で言い放たれた一言。

同時にナイフにどんどん強い力が込められていく。

「竜風情が、誰に口を聞いているつもりだ?」

今度は首を掴まれる。

その状態のまま、足が空中に浮く。

身動きが取れない。

「お前は俺たちの糧に過ぎない。神の力を持っていなければ、何の利用価値も無い事を分かっているのか?」

「黙れ……貴様に……力は……」

「渡さない、とでも言うのか?この愚か者めが!」

ルキフェルはそのままペンドラゴンを思いきり屋敷の外壁に叩きつけた。

衝撃で壁の一部が崩れる。

伝わったダメージもかなりの物だったらしく、身体を動かした時に大きく血を吐いた。

ウインドラゴンは目を背け、ファルコはただ見つめる事しかできない。

「竜の力を持っていようと、所詮無力。餓鬼が俺に勝てるとでも思ったか?」

怒りが感じ取れる口調。

殺意を剥き出しにしたその姿は、身震いをしてしまう程だ。

ペンドラゴンは、腕に刺さったナイフを抜く。そして剣を支えにして、やっとの思いで身体を起こした。

挿絵(By みてみん)

しかし眼の光は消えていなかった。

「……やはりその眼は気に食わん。まだ分かっていないようだな」

落胆したようにルキフェルが手を動かす。

いくつもの礫が現れ、その照準が拘束されたファルコに向けられた。

その一つ一つが刃物のように尖っている。

「ルキフェル……貴様何を」

「分からせてやる。お前の意志が、かえって仲間を傷つけると言う事をな」

「まさか」

気が付いた時にはもう遅かった。

放たれた礫は、ファルコの身体を引き裂いていく。

愉しそうに笑うルキフェル。

目の前の光景に言葉を失うウインドラゴン。

「どうだ?これが、お前の持つ気高い意志が招いた結果だ」

ペンドラゴンはただ、呆然と立ち尽くしている。

しかし……。

拘束が解かれ、傷だらけのファルコが倒れたその時。



――周りの空気が、不意に冷たくなった。




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