動き出す運命
ペンドラゴンが心を取り戻してから、約1週間が経った。
あの後ファルコはペンドラゴンの部屋を訪れた。
――ごめん。俺、何も知らずに……
そう言いに来た。
しかし、ペンドラゴンは微笑みながらこう言った。
――ううん。僕こそ礼を言うよ
ありがとう。と、笑って。
竜の治癒力が発揮されたのか、ペンドラゴンの怪我はみるみる良くなった。
もう一人で歩ける程にまで回復している。
屋敷の子どもたちとも打ち解けたようで、楽しそうに笑っている。
あの暗い表情が嘘のようだ。
「心が戻った。どうやら心配なさそうだな」
安堵したように、パレスが呟いた。
だが、まだ安心出来なかった。
記憶と言う壁がある。
もし何かの衝撃で記憶が戻れば……。
かつて精神が崩壊した程の傷。それが蘇れば。
「いや。余計な事は考えないでおこう」
そう言って、パレスは空を見上げた。
ここから遠く、天上を見据えるかのように。
少しため息をつき、パレスは一階へと降りる。
そしてペンドラゴンを呼び止めた。
「ペンドラゴン……もし興味があるなら、剣術をやってみないか?」
「剣術……ですか?」
「ああ。せっかくあんな良い剣を持っているんだ。勿体ないだろう」
パレスはペンドラゴンの肩を軽く叩く。
「教授がそう言うなら」
彼は快く了承した。
色々と心境に変化があるようだ。
「そう言えば。生きる意味は何を見つけたんだ?」
パレスは唐突に訊いた。
するとペンドラゴンは、少し照れくさそうにこう言った。
「僕……ここにいる皆を護ると決めたんです。この、竜の力で」
「そうか。それは頼もしいな」
ははっ。と声を上げてパレスは笑う。
「なら、ここの平和はお前に任せるとしよう」
やはり安堵したようにすこしはにかむ。
もう大丈夫。
そう、どこかで確信出来た。
だが何かが引っ掛かる。
プリベスの街を発つ時、グラントはこんな事を言っていた。
――この子はやがて、目覚めますよ
これがどう言う意味か。パレスにはわからない。
ただ……それが竜の力ではない事だけはわかった。
『いや……今は気にしないでおこう』
そう自分に言い聞かせ、パレスは仕事部屋へと戻っていった。
「リリア……こうやってお兄ちゃんと遊べて嬉しい」
嬉しそうに、リリアはペンドラゴンに花を渡した。
それは、リリアが花瓶に生けた花と同じだった。
「この花、いつも持ってきてくれてた」
「これからも、毎日持っていってあげる!」
そう言うと、彼女は楽しそうに笑った。
その風景を、遠くからウインドラゴンが見ている。とても穏やかな表情で。
「よかった。本当によかった」
誰もがそう思っている傍ら。
大きな闇が動こうとしていた。
とある洞窟にて、数人の悪魔たちが集まっていた。
膝まづく彼らの前に現れたのは、一際邪悪な気配を放つ悪魔。
「所在は掴めたのか?」
「いえ。依然、部下たちが捜しております」
「一刻も早く捜してだせ。『神の力』を持つ人間を」
そう言った悪魔は、闇に紛れて消える。
彼らの捜す「神の力」とは一体?
心を取り戻したペンドラゴン。
彼はやがて、竜の力を使いこなし、剣術もどんどん身に付けていく。
誰もが、このまま毎日が過ぎていくと思っていた。
しかし……。
ペンドラゴンに定められた道は。
運命は、ここから狂いだす。
2章は短めにまとめました。
次回から新章です!
急展開になる…予定…?




