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神殺しの転生者  作者: 大入り福袋
第一章 入学 
8/16

7話 出会い

遅くなってごめんなさいっ!

体調不良とテスト期間が、重なってこんなことになってしまいました。

本当にすみません。

 本拠地にしている森の中心部から少し離れたところで、俺は周囲の「魂の力【アルマ】」を探っていた(魔物も生きているのだからアルマは持っている)。無論、昼飯のためだ。ちなみに、月夜は刀の形態に戻ってもらって腰のベルトに差してある(さらに付け加えるなら俺の今の格好は白のインナーで黒のジャケット、黒のズボンというものである)。


近くにあったアルマの反応は全部で五つ(無論、虫などの極小のアルマは除いてある)。一つは人、残りが魔物のように感じられる。こんな所にいるって事はどうやらこの人物は迷子のようだ。が、位置関係的にこの迷子は罠に嵌められつつあるな。この姑息な作戦はあの爪熊か?さすがに可哀想だから食料採取のついでに助けてあげよ。


 でも、助けに行く前にやる事が一つ。


(月夜、ちょっと戻っておいてくれないか?)


月夜と「念話」をしながら、ちょっとばかり大変そうな説得を始める。


(私を差していると「力」の存在を疑われるから、ですか?)


(ああ、そうだ。俺の本領はあくまでも銃と体術って風に見せなきゃならないからな)


(……迷子を送り届けたら直ぐに呼んでくださいよ……。絶対ですからね……)


 案外簡単に説得できたかに見えたが…………違ったようだ。


(今回は戻ってあげますけど……そ・の・か・わ・り)


 何だか嫌な予感がするな~~…………。


(私の言うこと一つでいいから聞いてくださいよ?)


(何だ、そんなことか。緊張して損した)


(……マスターは私をなんだと思ってるんですか……?)


(かわいー相棒)


(はぅ~~)


照れながら月夜は『別空間倉庫インフィニートスペース』で繋げている異空間へ、自らの転移魔法で飛んでいった。


……マジで可愛いかも…………。


(えっ!?ほ、本当ですかっ!?)


まだ居たのかよ!ていうか心読むな!


(読もうとしなくても読めるんです!マスターとは魔力ラインが繋がったままですから。あ、もう今から断ち切ろうとしても遅いですからねっ、そ・れ・と・約束守ってくださいよ!)


……はぁ~~あ。


 


「さて、んじゃ行きますかね。」


SIDE~OUT~


 


 ☆★☆★☆★☆★☆★


 


 そう独白すると恭也は気配を察知した方向を持ち前の鋭い眼で見やる。軽い感じで走りだし、恭也は二,三メートル程跳び上がって木の枝に乗る。彼はそのまま樹々の間を素の身体能力で飛び移っていった。




 向かっている場所は少し開けた場所で、そこに4匹の爪熊に囲まれた迷子はいた。というか、俺もう我慢できませんっ、とばかりに一匹が鼻息荒く、今の俺と同い年くらいの幼い、けれど遠目に見ても可愛いとわかる美少女に飛び掛っているところだった。


「イヤ――――ッ!!!!」


 美少女が悲鳴を上げる。


そこから五メートルくらい離れたところに降り立った恭也は、素早く左のレッグホルスターから銀のゴツいハンドガン――――デザートイーグルによく似ている――――を抜き、今まさに肉を引き裂かんとする爪へ狙いを定め、彼女にあたる可能性があるにもかかわらず、迷いなく引き金を引いた。


 


☆★☆★☆★☆★☆★


 

SIDE~藤達真唯~


――――ズガンッ!


――――ガキンッ


「へっ?」


「グガ……?」


 銃声に驚いた私が「死」への恐怖に閉じていた目を開けると、目の前に不思議そうな顔で自分の爪を見つめる、ナーゲルベアーの姿がありました。


「ふ~、ギリギリのタイミングだったな。…………お」


 それは鋭い中に幼さと優しさの混じった声でした。


この森に私以外の人間がいたことに驚きつつ、声のした右の方を見ると少し離れたところに、銀色の大型拳銃を構えた私と同年代くらいの少年がいました。彼は安堵の息を吐きながらふと、こちらに顔を向け安心させるように、もう大丈夫、と優しく微笑んでくれましたっ!


 その人は驚くべきことに黒髪黒目で、幼いながらも鋭い目つきをしていました。それでいて整った顔立ちしていて、それでその…………とってもカッコよくございましたっ。

いやでも、顔はそうでもない、って言ったらアレですけど上の下くらいの普通のイケメンなんですよね。でも、その顔に黒い髪と黒い目が異常にお似合いでだからこそ、そのあの~、見た目以上に……か、カッコいいんですよね……。


「グガァァアアアーー!!」


 私が自分で言うのもなんですが、九歳のくせにときめいている間に、この大熊は茫然自失の状態から回復したらしく、彼に向かって怒りながら走り出しましたが…………、


ズガンッ!


「グガッ!!!」


瞬時に頭を撃ち抜かれ、仰向けに倒れました。彼はそれを見届けると、どこか馬鹿にしたような声音で喋りだしました。


「デカ過ぎて『素の』動きじゃ遅いってのに、真正面から来てどうする。馬鹿か?あっ、馬鹿か。こんな姑息な作戦立てるくらいだからな~、脳が腐っているんだろうな、うん」


――――えっ、作戦て何ですか!?ていうかいつの間に嵌っちゃったんですか私!?


 それはさて置き、納得したように頷いている彼の言葉の意味が分かったわけではないでしょうが、雰囲気で馬鹿にされたことは理解できたのか、私を囲んでいた三匹の内で最も彼に近かった一匹が怒気を含んだ声で鳴きながら、『魔法』を行使しました。


「ガゥウウッ!!!」


 そもそも、頭のよさを除けば熊の身体能力と大きく鋭い爪しか残らない、ただの熊であるナーゲルベアーが魔物の中でも上位のBランクと言われる所以ゆえん。それは「力」の有無です。Bランク以上の全ての魔物は「力」が使えるんです。そして、魔法の使用に呪文スペルを必要としません。このナーゲルベアーは「力」の中でも魔法に特化していて、今発動した魔法はおそらく、体が青白い魔力オーラに包まれている事から、自然魔力を利用した無属性の身体強化魔法でしょう。


 そんな、ナーゲルベアーの魔法を黙ってみていた彼ですから、余裕なのだろう、と勝手に私は思ってました。


 なので…………。


 身体強化を終えたナーゲルベアーが、先程の馬鹿熊とは比べ物にならない速度で彼に向かって走り出しても安心していました。


 彼の大型拳銃が熊の頭部に向けられ、即座に火を噴きました。


 ズガンッ!


ガキンッ!


「えっ!?」


 この私の驚いた声には二種類の意味がありました。一つは彼の銃弾が熊の左手の爪に弾かれた事。もう一つは、彼の銃弾が当たることを、たった一度の銃撃を見ただけで、信じていた自分に対するものでした。


 彼の攻撃が外れたとき、さっき自分が感じた「死」に対するものより、遥かに大きな恐怖が私を襲いました。


――――どうしようっ!もう間に合わない!!




――――思えばこの時もうすでに、彼――――貫在恭也さんに心を奪われていたのかもしれません――――





幸いなことに(彼には当然の事かもしれませんが)私の心配は杞憂に終わりました。


 弾かれた当の本人は少し感心したような顔を浮べていて全く焦っていません。もうすでに彼はナーゲルベアーの間合いの内に居るというのに。


 音のごとき速さで振るわれた右腕を、彼は残像を生じさせる速さ(何の強化もして無さそうなのに)で上体を反らすことにより回避し、さっ、と背後に回りつつ二百キロはあろうかという、巨体に足払いを掛けました。


 もろに食らったは呆けたような顔で体を仰向けに倒し、彼によってすぐさま眉間に銃口を突き付けられ引き金を引かれました。


「ガフッ……!!」


 彼はその場に留まらないでその有り得ない速度を(私が彼の動きを確認できるのは、彼の残像を魔法で強化した目で必死に追っているからです)維持しつつ、私を囲んだ中でもとびきり大きい、四メートルに届きそうな大型のナーゲルベアーの真正面へ一直線に向かっていきます。


十五メートルという決して近くはない距離を一瞬で詰め、すでに身体強化魔法を発動していたナーゲルベアーの、体を叩き潰さん、と真上から迫ってくる大爪をその優れた速さで股抜けすることでかわし、振り返りながら軽く跳躍して、後頭部に銃口を突き付け、素早く引き金を引きました。


ドサッ、と音を立ててナーゲルベアーが崩れ落ち、同時に彼がようやく動きを止め着地しました。


彼は最後に残った一匹を「力」とは別の本質的な『力』が籠められた眼で鋭く睨み付けます。すると、今まで仲間を殺されて怒り滾っていた戦闘意欲が、目に見えて消え失せました。最終的には背を向け、尻尾を巻いて逃げ帰っていきました。


 彼はそれを見届けるとこちらに向かって来て声を掛けました。


「立てるか?」


その声と視線、顔には気遣いという名の優しさが籠められていました。


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