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神殺しの転生者  作者: 大入り福袋
第一章 入学 
14/16

13話 水野璃緒

 

 真唯がその「彼女」とやらと一緒に戻ってきた。


 さっきのはその「彼女」の声。


「…………またお前か、水野! せっかく俺が恭也ちゃんと厚い友情を育んでいたというのに!!」


 弘斗が叫ぶ。

 邪魔すんな、って顔をしている。

 俺はお前も、結構ウザいと思うが。


「だって、その恭也君からお金、取る気なんでしょ?」


「恭也は別だ!!」


 お前、次からは取るって言っただろうが!


「ま、この馬鹿はほっといて」


「……お前から話しかけてきたくせに」


 流す彼女に弘斗が恨みがましそうな目を向ける。


 こいつらは初対面じゃないんだな。


「昨日寝てたみたいだからもう一度自己紹介するね。私は……」

「コイツは水野璃緒。恭也、俺とお前の友情を引き裂こうとする敵キャラだ」


「正山ぁ――――――!!!」

「ぐおっ!!」


 彼女――――水野璃緒の自己紹介に弘斗が邪魔をし、璃緒がキレた。


 


 だが璃緒はすぐに落ち着きを取り戻し、こちらに笑顔を振りまく。

 身長は真唯よりだいぶ小さく、髪は苗字のような水色。元気いっぱいの美少女、といった可愛い顔立ちをしている。


「…………そこの馬鹿に先を越されちゃったけれど、私は水野璃緒。得意なのは闘気と剣、よろしくね♪」


「貫在恭也だ。こちらこそよろしく」


 俺は答えながら軽く笑う。第一印象は大事だからな。


「う、うん、よろしく////// …………ところで」


 何故か顔を赤くした璃緒は床に目を向けた。


 そこには彼女の手によってボロ雑巾のように倒れ伏した、弘斗の亡骸があった。


「コイツほんとにチームに入れちゃうの? もう少し考えたほうがいいと思うけど」


 お前はもう入ったことになっているんだな、別に良いけど。


「真唯だって言いたいことあるみたいだよ?」


 先ほどから黙っていた真唯を見ると、えー、という感じの少しいやそうな顔をしていた。


「恭也さん。この人、入れるのやめませんか? 絶対悪影響を及ぼしますよ(恭也さんの嗜好に)」


「おおっと、そんなことを言われたら黙っているわけにはいかないね~」


 するとさっきまで惨めったらしく床に転がっていた弘斗がいつの間にやら復活していた。

 

 ふざけた調子で真唯に喋りかける。


「藤達さんや、ちょーっとこっちの方に来てくれないかな?」

「何しようとしてんのっ」

「お前は黙ってろいっ」


 弘斗はチョイチョイ、と手招きをする。


 真唯はジト目を弘斗に向けるが、相手はまるで堪えた様子は無く、手招きを続けている。

 はぁ、と溜息を吐きながら、真唯は弘斗に従い教室の片隅へ移動した。

 そして、こそこそと話し始めた。


 話し声は常人には聞こえないものだったが俺には十分聞くことが出来た。だが、人に聞かれたくないがために移動していたので聞かないように意識を逸らしてやった。


 


 ☆★☆★☆★☆★☆★


 


「……なんですか?私はなにを言われても貴方を入れるつもりはありませんよ」


「まあまあ、仮に、仮にだが、俺が入ったときのメリットを考えてくれよ」


「メリット?」


「例えば、俺が仮にこのチームに入ったとする。そしたら依頼やら訓練なんかを一緒にするわけだ」


「まあ、そうですね」


「そうすると、いつかは一緒に風呂に入ったりもするよな、俺と恭也は。汗を流すために」


「…………」


「俺はさ、いつもカメラを持ち歩いているんだよ。スクープを逃さないために。ほら、今も」


「…………」


「で、もしかしたらその風呂のときにも、うっかり持って行ってしまって、偶然・・、恭也の入浴写真・・・・が取れてしまうかも……」


「……!!!!」


「その写真を男の俺が持っているとあらぬ誤解を受けてしまうから……もし、俺のチーム入りをOKしてくれるならその処分を藤達真唯、君に託そ」

「OKします!!」


「おおう……予想以上の反応……。じゃ、契約成立ということで良いかな?」


「いいとも!」


 


 ☆★☆★☆★☆★☆★


 


 真唯と弘斗がとても満足そうな顔をして帰ってきた。


 …………あの二人がしゃべっていた間、何故か悪寒を感じたんだが……、気のせいだろうか。


「璃緒さん!正山君のチーム入りを了承しましょう!!」


 真唯がつばを飛ばしそうな勢いで璃緒に迫る。


「ええっ!?どうしちゃったの真唯!?」


 璃緒は目を丸くしている。

 俺も不思議だ。弘斗の奴、どんな手を使ったんだ?

 俺が視線を飛ばした当の弘斗はニヤニヤと、悪戯が成功した子供のように笑っている。


「どうもこうもありません!良いから認めましょう!さあ、さあ!」


「う、う~。……まあ、真唯が良いって言うなら良いけどさあ~」


「やったー!」


 だが、どこか納得がいかない様子の璃緒。

 彼女は疑惑の浮かんだ目で弘斗を見る。


「……正山。あんた一体どんな手使ったの?」


「どんな手とは人聞きの悪い。俺はただ誠心誠意心を込めてお願いしただけだよ、ねえ、藤達さんや」


「はい!あまりの真剣さについOKしてしまいました!」


「…………この真面目の「ま」の字さえない男のどこに真剣さなんてあるの…………はぁ」


 弘斗のふざけた態度と真唯の勢いに押され、溜息をつく璃緒。

この雰囲気、どうやら諦めたらしい。


 璃緒は開き直ったように皆に問いかけた。


「……で?とりあえず四人そろったわけだけど、どうする?あんまり人数増えてもアレだし、このチームで登録しちゃおっか?」


 ええー! と、またも先ほどの女子集団から悲鳴があがった。


 どういうわけなんだ?さっぱり分からん。


 だが深くは考えないようにして、璃緒の意見に同意した。


「そうだな。それに、後からでも追加は出来るみたいだし」


 セーフ、みたいな、安堵の雰囲気が女子集団から感じられた。


「じゃあギルドに行きますか?今日はもう帰って良いみたいですし」


 真唯が少し不満そうに女子集団を見ながら提案した。


 周りを見回すと四、五人の小集団がいくつか、教室から出ようとしていた。

 先生はすでにいない。意外と放任主義なんだな、あの人。


「それじゃあギルドへ向かって出発だ!」


 弘斗が声を張り上げて宣言した。


「何であんたが仕切ってんのよ」


「その場のノリ。……そんな事はいいからさっさと行こうぜ」


 弘斗と璃緒は教室を出ようと歩き出した。

 俺も椅子から立ち上がり、真唯と一緒に二人を追った。


 ――――盾元涼二はチーム決め時間が始まった瞬間に教室から姿を消していた。


 


 ☆★☆★☆★☆★☆★


 


「そういえば恭也君、今日の決闘大丈夫なの?」


 昇降口のすぐ外にある「移動門ゲート」に向かう途中の廊下、璃緒が尋ねてきた。


「そうそう。確か十二時って言ってたよな、あいつ」


 弘斗も興味があるようだ。おもしろそうだなあ、と顔に書いてある。


「きついんだったら俺の巧みな交渉術で断ってあげようか?……有料だけど」


 密かに、だがはっきりと言葉を付け足す弘斗。


「早速お金と要求してるじゃん。っていうかあんたが行ったら即効で潰されて終わりでしょ。お・わ・り」


 弘斗を馬鹿にしたように璃緒が突っ込む。


「はっ、甘く見ないで貰おう。俺は既にあいつを説得できるような情報を手に入れているのだぁ!!」


 弘斗はビシッっと指を突き出し、テンション高く答えた。


 真唯は困ったような顔をして弘斗に確認した。


「…………お金については……否定しないんですね」


「うん!」


「うん、じゃないっ」


 俺は弘斗の頭を軽く、はたいておいた。


 ちなみに、並んでいる順番は進行方向側から見たとき、右から真唯、俺、弘斗、璃緒だ。


「冗談はさておき、実際のところ勝算はあるの?何だったら一緒に戦ってあげよっか?」


 璃緒が心配そうに窺ってくる。


 そっけなく、俺は答えた。


「心配は必要ない。そもそも決闘は一対一だしな」


「それはそうだけどさあ」


 不満げに璃緒は口を尖らせた。


 せっかくの心遣いを俺が受け取らないからだろう。


 心配してくれるのは、ありがたいが、それも過ぎれば迷惑だ。

 ……というか、なぜ俺如きをこんなにも心配するのだろうか。理解できない。


「まあまあ璃緒さん。恭也さん本人が大丈夫といっているんですから。そこは信じて応援でもしてましょうよ」


 真唯がなだめるように言う。


「そうだぜ。だいたい、お前が介入すると碌な事にならない」


 肩をすくめて疲れたように弘斗が首を振った。


「なんですってー!!」


 


 そういえば真唯にカッコつけて見物してろ、とか言っておいてこう言うのもアレだが、俺の戦いに注目されるのは不味くないか? 相手は貴族だしアイツと決闘するだけで勝敗に関係なく目を付けられるんじゃ……。


(それを昨日から心配してたんですけどっ!)


 月夜!?

 分かってたのなら言ってくれよ!


(言ったんですけどっ!)


 忘れた!!


(そーですか)


 不機嫌そうな声音だ。

 マジでキレちゃう5秒前だ。

 まああまり深く考えていなかった俺が悪いんだがな。

 少し、からかい過ぎたか。


(そういう考えとか全部伝わっちゃっているんですけどっ!)


 不覚っ!!


 


 …………まあ、分かってはいたんだけどな。


 


「わかった、わかりました。何も手は出さないから」


 璃緒は二人に何だかんだで言いくるめられた様だ。

 そして辟易したような顔から、きっ、と何かを決めたような顔になり、


「でも恭也君っ。君を信じて応援するんだから絶対勝ってよね!」


 なんか変にプレッシャーが上乗せされた気がしたが、ここまで言ってもらって嫌な気はしない。


「ああ、ありがとう。うれしいよ」


 俺は笑みを浮べて素直に感謝の気持ちを述べた。


「そ、そう?……じゃ、がんばってね!」


「了解した」


 璃緒はほんのりと顔を赤くし、てれたように笑った。


 


 


「……いい雰囲気なところ申し訳ないが、俺らがいることも忘れてないよな?」


「むぅ――!」


 弘斗が引きつったように笑い、真唯が不機嫌そうに唸っていた。何故だろう。


「え、いや、も、もちろんよ!」


「当たり前だろ。隣にいるんだから…………っておい璃緒。何でそんなに赤いんだ?」


 俺は平然と返したんだが、璃緒はものすごく取り乱していた。


 ……と、弘斗が、コイツ嘘だろ?、見たいな顔をして、真唯は溜息をついていた。


「え、もしかして恭也ってニブイ……?」


「はぁあ、ゴールは遠そうですね…………」


 ゴール…………とは、どこの場所を指してるのだろう?


「え、あ、えと、そうだっ。そういえば恭也君と真唯に聞きたいことがあるんだった!!」


 真っ赤になっていた璃緒は強引に話を逸らした。


「ん?」


「え?何ですか?」


 俺と真唯はそろって首を傾げた。


「え、えーと、そのー」


 璃緒はこちらを窺いつつも目を逸らしている。


 煮え切らない態度だな。


「何ですか。気になるから早く言ってください」


真唯が急かす。


「じゃ、じゃあ言うよ。えーと……」


 璃緒は上目遣いで聞いてきた。…………とんでもない事を。


 


 


「恭也君と真唯ってつ、付き合ってるの!?」


 


 


 


  ………………話を逸らすのに何故、その質問を選んだんだ…………璃緒……。


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