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神殺しの転生者  作者: 大入り福袋
第一章 入学 
12/16

11話 私と彼の登校時間

 「寮って言うか……もはやホテルだな、これは」


 恭也は第一男子寮の207号室にいた。


 部屋のほうは結構な広さの1K。きれいな家具、トイレ、バスルーム付。一生徒に与えるにしては、勿体無い位ではないだろうか。


「この学校はかなり金持ってるな。まあ……この大陸に存在する全ての国が金出し合って創った訳だし、当然か」


 備えつきのベットに寝転がりながら言う。


「……しかしこのフカフカ具合はいいな。生身じゃないのが悔やまれる。が」


 それはひとまず置いといて、と恭也は呟き考える。



 ――――俺の記憶にロックがかかっているのはどういう訳だ?



 今の自分に、それも記憶のこんな奥底まで干渉できる者が存在するのだろうか?

 自惚れている訳ではない。客観的な事実として。

 第一なぜロックする必要があった?

 思い出させたくないのなら消してしまえば良いだろうに、わざわざロックするなどと七面倒なことを?それも本人に気づかれずに。しかも今の自分が解除できないなんて。


 そんな芸当、この俺でも出来るかどうか疑わしいぞ、と恭也は思ったがとりあえず、このことは放置しても問題ないだろうと判断した。


「それよりも。目下の課題は明日の模擬戦だが……なんとかなるだろ、うん。て言うかこのベット、気持ちよすぎだろ。ということでおやすみなさい」


 


 ベットの誘惑に負けた彼は明日の朝まで眠るのであった(恭也の体は魔力で出来ているので食事をする必要がなく体も汚れない。が、その分の睡眠をとらなくてはならない)。


 


 ――――――――――――――――――――――――


 


 SIDE~藤真唯達~




 翌日の朝八時、わたしは第一男子寮の前にいました。


 玄関からはぞろぞろと眠そうな顔をした少年たちが出てきており、ぽつん、と立っている私を不思議そうに、あるいは顔を赤くしながら、眺めてきました(なぜでしょうか?)。実際に声を掛けてきた人もいます。

 普通、こんな所に一人でいれば「誰か」を待っていることぐらい解るのではないでしょうか。逆ナン待ちの女じゃあるまいし。


 勿論、私が待っている「誰か」とは恭也さんのこと。


 実を言うと昨日、恭也さんに再会した時から一緒に登校することを考えていました。と、言うよりその計画を。


 そもそも、私は彼と別れたその日から共に学校へ向かうこと夢見ていました。

 ですがその夢が実現する今、胸にはちょっぴり後悔の念がありました。


「……こんな事になるならせめて携帯のアドレスくらいは聞いて置けば良かったですね……」


 私は七時半から恭也さんを待っていました。

 始業は八時十五分。

 明らかに早すぎる時間ですがそれにはしっかりとした理由があるんです。……胸を張っていえたものではないんですけど。


 簡単なことで、私は恭也さんと同じクラスになって浮かれていたんです。


 彼の「魂の力【アルマ】」の性質からもしかしたら、の思いはあったものの、実際に当たるとものすごく嬉しいです。

 相手は何しろ初恋の相手で嬉しくないわけがないですよ。しかし、だからといって浮かれすぎていました。

 そんなことを考えて私が少し反省していると、待ち望んでいた声が掛けられました。


「うん?真唯?どうしたんだ、こんな所に」


 恭也さんは右手に持っていたかばんを肩に掛けながら問い掛けてきました。


「あっ恭也さん。その……一緒に学校に行きたいなあ、と思いまして」


「? 教室まで十分も掛からないのにか?」


 首を傾げ、恭也さんは不思議そうな顔をします。


「は、はい。昨日はあまり話も出来ませんでしたし……、駄目、ですか?」


 もしかして断られてしまうかと思い、思わず下から見上げるように顔を窺ってしまいます。(その動作は180センチ近い恭也と、154センチの真唯の身長の関係上、自然と上目遣いになっていた)


 私の動作に恭也さんは(何故か?)感心したような顔をし、すまなそうに答えました。


「いや、迷惑って事は全く無い。でも、だいぶ待たせてしまったんだろ、悪いな」


「いえ、気にしないでください。こっちが勝手に待ってただけですから」


「そうは言っても…………まあ、真唯が良いならいい。とりあえず行くか」


 少し気怠げに歩き出す恭也さんの右横に並びます。


「はい♪」


 意図せず楽しげに返事をしてしまいました。顔が自然と笑顔になるのも抑えきれません。


変に思われていないでしょうか?横をこっそりと、かつすばやく盗み見ましたが…………気づいていないようでした。


それでいいんですけど……少しくらい、んっ?っとか思ってくれても…………いいじゃないですか。




 初めて会ったときには無かった薄い存在感、というか儚げな雰囲気を漂わせ、私の歩行速度に合わせてくれているんでしょうか?彼の足の長さにしては遅めに前を向いて歩いているだけでした。


 恭也さんが気づいていないことに安堵しつつも、心の底からは歓喜という感情が溢れてきていました。相手はそんなこと普通だと思っているでしょうが、私は隣を歩く自分への気遣いがたまらなく嬉しかったんです。


「それで…………昨日は全然話せませんでしたけど、六年ぶりですね、恭也さん」


 心の中が落ち着いたので話しかけてみました。


「ああ、そうだな。真唯は元気だったか?」


「はい」


「うん、変わりがない様で良かった」


 恭也さんは安心したように頷きました。


「恭也さんは変わりましたね」


「そうか?自分あんまり分からないんだが」


「変わりましたよ、たとえばその……」


――――――カッコよさとかです。


 それを思った途端、頬が染まったのを私は自覚しました。


 恭也さんは最初にあったときから既にカッコよかったんですが、昔の少し幼かった顔からはそれが抜けていて、一段と鋭さに磨きが掛かっていました。おかげで教室で再会したときには見惚れてしまいました。(←何故か迷惑な感じ)

 そして偶に見せる優しい笑顔が普段とのギャップもあってとっても…………イイんです。

 だけどその所為で、周りの女子から嫉妬と羨望の視線を食らっているんです。(真唯は気づいていないが恭也にも男子から嫉妬の乗った視線を受けている)


「え、どこらへん?」


 恭也さんは私の方を向き、直視しながら聞いてきます。


「あ、いや////// あ!そ、そういえば恭也さん雰囲気変わりましたよね!!」


 私は恭也さんの直視に照れてしまって誤魔化し気味に先ほどから気になっていた質問をぶつけてみます。


「…………そうか、真唯とは「素」で会っていたからな。気づくか、そりゃ」


 恭也さんは一瞬疑問を顔に浮べ足を止めました。

 こちらを向いてきます。

そしてすぐに納得したような顔をして何事か呟きました。


「は?」


 それによって今度は私が疑問の顔色になります。

 「素」、とはどういう意味でしょうか?


「ああ、いや、気にしないでくれ。真唯にはその内

話してやるからさ」


 そう言って恭也さんは再び歩き始めました。


「……? まあ、説明してくれるなら良いですけど……」


 どうにも気になります。

 ですが、それよりも優先すべき事柄があったので無視しました。


 靴を履き替え教室に向かいます。


「それよりも今日の模擬戦、本当に大丈夫なんですか?相手は馬鹿ですけど一応貴族なんですよ?」


 この言葉には二つの質問があります。


一つは試合に勝てるのですか?というもの。

「力」の才は血に大きく依存します。貴族は優秀な「力」を持った人物たちの子孫からなる一族です。(だからといって平民から強者が出ないというわけではないですが)

 そして昨日の盾元涼二も伊達に貴族ではないんです。それなりの実力も持っているのでしょう。中々の「魂の力【アルマ】」を私も感知できました。ゆえに恭也さんのことが心配なんです。

 私も彼のかなりの実力を見たことがありましたが、体質的に「力」が使えないらしいことを聞いています。

 これはかなり不利なんじゃないんですか?

 私は正直、負けてしまうのでは、と思ってしまいました。

 

これが一つ目。



次に、二つ目。

私には模擬戦の結果がどうであれ、盾元涼二がそれだけで諦めるとは思えませんでした。

ちょっとした言い合いだけで教師に圧力を掛けてまで模擬戦に発展させるような人です。

そんな人と戦って本当に大丈夫なんですか?

…………私は貴方が心配なんです


 


「心配ないって。試合のときが来たら、のんびり見物でもしてな」


恭也さんは、もう大丈夫だから、と言うように苦笑して、


「……まあでも、心配してくれて、ありがとな」


 ――――私の頭を軽く撫でました。


「っ!?////////////」


 た、ただでさえ注目されているのに、こんな廊下のど真ん中で!?


「どうしたんだ? 真唯。そんなに赤くなって」


 恭也さんが訝しげに聞いてきます。


「い、いや、何でもありませんよ?」


 恥ずかしいからに決まっているじゃないですか!!


 でも……それ以上に……嬉しい……です。


 …………できれば、そういうことは二人っきりのところでやってほしいですけど。


「本当に?」


「はい!!」


 再度聞いてくる恭也さんを勢いで誤魔化しつつ、辿り着いた1-Fの教室の扉を開けました。




 幸せな登校時間でしたけれど、…………その分犠牲も大きかったと思います。(視線とか注目度的な意味で)


SIDE~OUT~



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