フェイの知らない秘密
フェイは知らない。
結城がフェイが寝ている隙に和茂と話に行ってたことを。ひっそりと行われているのは結城の部屋の前、仲の良い兄弟での内緒話。
静かに、誰も気付かないように話す二人。
「わかりやすいと思うんだけどな」
「うるさい」
「大変だな」
「現状維持で良いんだよ。今が最上なのはわかってるさ」
「お互い様ってことで」
「そういえば、初恋?」
「・・・さあな」
「オレはそうだよ。頑張れ」
「ふん、和兄こそ」
「昔はお兄ちゃんお兄ちゃんって来てたのがこんな成長するんだからな。俺も成長するわけだ」
「放っとけ」
「ククク、ツンデレ妹は可愛いもんだね」
「別にツンデレしてるつもりはない。辛うじて頼れる兄が和兄だけだからな」
「珍しい」
「好きな人、やっぱ変えたほうが良いか?」
「兄としてはそれを勧めよう。・・・できなさそうだな、結には」
「和兄に?」
「なぜそうなる」
「嘘だよ」
「・・・秋光が最近ほんとに怖いよ」
「ほんとに追っていきそうだな。逃げ切れんのか?」
「今までうまく逃げれてないからな」
「無理すんなよ」
「わかってる」
「ならいいよ、そろそろ寝るわ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
宵の密かな対話は静かに終わる。