オレの居候しているこの家は
オレのご主人様が住む家は遥辺町の商店街の近くにある。賑やかな商店街から少し外れると静かな住宅街がある。そこからまた少し、商店街に沿った感じで外れると少し開けた場所があった。
そこに建てられた普通の家の2倍以上の大きさの一軒家。最近建てられたほど新しくはなく、かといって何十年も前からあるような古さはなく、せいぜい十数年位であろう二階建ての家。
金持ちの住みそうな大きさだが、外装に凝った様子はない。むしろ、その辺は普通の家よりも質素な感じだ。大きさ以外は極々普通の家。
目覚まし時計同様、正確に朝早くから少しづつ声が大きくなる賑やかな家。近所迷惑一歩手前のような毎日は近所から優しく見守られている。また、楽しそうだという羨望の目も向けられている。
新しいご主人様は見た目どおり学生のため、学校に行っている間、オレは留守番。家事の音が微かに聞こえる平日の真昼、家は朝と違ってかなり静かになる。
夕方、朝よりもゆっくりと賑やかさを取り戻し、夜もまた楽しそうな声が聞こえるこの家。
一家団欒の言葉が似合う家族。だが、この家の本当の主は不在である。そしてその妻も不在である。
その2人の親友であり、もはや家族同然の中になった幼馴染・・・ご主人様の両親である夫妻も不在である。
愛する我が子を養うために共働きをしている4人は昼どころか夜も帰ってこない。否、帰ってこれない。懸命に働き続け、出世したおかげでお金に余裕があっても時間に余裕が無くなったそうだ。
仕事柄、世界中を飛び回っているために家を空けるのが普通になってから7年位は経っているとご主人様は言っていた。
「だから姉貴が母親代わりだし、兄貴が父親代わりになるな」
そう、4人は家の事をほぼ全て、99%以上を娘や息子に任せている。
それが、オレを拾ってくれた新しいご主人様の家。
――――この家には汐見家の娘8人と、奥野家の息子5人と娘2人の総勢15人という賑やかな人達が住んでいたのだ。