汐見家の娘たちの朝食風景
現在、あんずを起こすために姉たちは大奮闘中・・・。
「さて・・・今日はどうやろうか」
「くすぐり、効くかな?」
「鼻つまんでみようよ」
「それ最近やったよ。きり姉」
「枕抜きまーす!」
「みさき姉、どいて」
今まさにみさきが枕を掴もうとした瞬間、るりこが静止を呼びかけた。
そしてなんの躊躇いもなくあんずの長い前髪を鷲掴みにすると、思い切り引っ張った。
「いったあぁぁい!!」
「(無視)さぁ、ご飯だよ」
朝から絶叫する妹を無視。全員が部屋を出て、かなり広いリビングへ出る。オレもその後ろをついていくと既にご飯と味噌汁とが暖かい湯気を出しながら待っていた。おかずは魚の切り身。麦茶もちゃんと出してある。おいしそうだけど、オレの分は当たり前にないし、必要ない。
既にさやかとかんなとななこは席についている。空いている席に適当にきりか達5人が座ると、朝食が始まった。
有紗は作りながら軽く食べており、既にバイトの準備をしていた。
男共と結城は席が足りないのとおかず戦争をするという理由から後で食べる。今は何も置いていない部屋の中央で床を机に宿題や予習・復習を必死でやっている。いつも思うのはいくらこの10分で解けるからと結城が昨日の夜放っておいたものをバカな秋光が同じ時間でやり終えようとするのか・・・それでも終わらせられているのは奇跡だと思う。まぁ、ほとんどが答え丸写しか当てずっぽうなのだろう。
切羽詰りながら宿題を進める男どもと結城を横目に有紗は荷物を持って立ち上がる。
「おねえちゃん、7時ぐらいに帰るから家事よろしくね」
家計を親の仕送りで賄ってはいるものの、全員の高校・大学の費用を考えれば急な出費や個人のお小遣い用のお金は残らない。その分を稼ぐのも家事も支えているのは高校を出た3人である。できる人ができるだけやるのがこの家のルール。
「了解・・・あっ、今日までのレポート・・・(冷汗)」
「姉さん、まさかの白紙とか」
「一日くらい大丈夫なんじゃない?」
「そうもいかないの、成績優秀で通しておいてるから」
「そういうの、隆や秋も見習って欲しいわね」
「確かにそうだね。いつもあれらの勉強に関心のなさには呆れる」
「あんな風にいつも一生懸命やってくれれば・・・普段のは酷い」
「秋兄の勉強はなな姉が教えてるしね」
「隆はちなみが教えてくれるから何とかなってるけど秋はねぇ・・・(溜息)」
「のみこみが悪すぎて困るよ・・・そのうち秋は隆と同じになるんじゃないかな?」
「大変だね」
「一番あんずの世話が大変だよ」
「ごめんなさい」
「・・・で?姉さんどうするの」
「向こうで即行書き上げる!今日は無理だから、るりことちなみ、お願いね」
この家の中心人物となる彼女らは毎日の食事と洗濯だけは絶対欠かさない。掃除は当番制なものの、やらない人はやらない。買い物と皿洗いは数回完全放棄したのを見た。もちろん、99%ちゃんとやっている。毎日は無理な為に安心できるるりこやちなみに頼んでやってもらうこともあるが、やっぱりすごい。協力する気持ちが半端ない。できればその一部を旧ご主人様に分け与えてもらいたい。
一人で画期的な技術完成させるのは尊敬するけど、他人を使うことについてもっと考えてほしいなぁ。・・・実験台じゃないほうで。
「たまには俺行くよ」
もちろん、その協力性が男の中に欠片もないわけでもない。年齢的なこともあるからか協力的なほうである和茂が名乗りを上げる。
「和兄は受験勉」
しかし一蹴。
受験生+大馬鹿野郎には家事の代わりに勉強が待っている。もちろん、決して馬鹿ではないがきりかとみさきも受験の事のみで家事がパスされる。普段はやらない結城と秋光にもやらなくていい大義名分ができており、ななこも自分でやるとは言わなくなる。ただ、ななこは手伝うと言うことで姉を困らせないためでもあるように思える。
もし、子供ができるのなら優しい汐見家の娘たちがいいなぁ・・・。