バカとシスコンとエロの実兄3人組
毎朝思うが、オレがこういう風に起こされるようなことになったら本当に眠れなくなる。それでも寝れる3人をちょっぴり尊敬する。・・・・でもやっぱり毎日毎日この光景は可哀そうだ。
「バカ言うな、そして裏声を使うな、気味が悪い」
起きたときの声は不機嫌というより恐怖のほうが多い。
秋光の頭を遠ざけながら起きたのは奥野家長男の和茂だ。
年相応なスポーツ刈りの黒髪で少々吊り目。それ以外はたいした特徴のない普通の人。隆星は和茂の中学生時代と髪以外がそっくりである。古いアルバムを家族で囲んでたのを覗き見した時はあまりに似すぎて結城の肩の上で爆笑して怒られた。
きりかとみさきと同じ18歳。凄めば怖そうなのにヘタレにバカという悲しい称号を手にしている。が、ここ一番というときはビシッと決めてくれる上に男の中では信用できる。弟妹や姉どころか義姉や義妹たちにも酷い扱いをされやすいが、信頼は厚い。肉体派で体力は自身あるも、学問は秋光同レベルとかなりできないのだが奇跡的に運良く受験に合格して、きりかとみさきと同じ高校にいる。
「馬鹿なのは合ってるよ、和兄さん。結、朝から物騒な話をしないで」
結城の右腕を注視しながら起きるのは奥野家の次男、翔平。
教室の隅でじっと読書に耽るような大人しげな雰囲気の顔。眼鏡の似合いそうな真面目な表情が多い。柔らかな髪が顔の周りを覆っているが、頭のてっぺんにアホ毛が小さくある。影が薄そうな風貌のかなり小柄の男子。
表向きは真面目な高校2年男子として和茂と同じ高校に通っているようだが、家にいるときの本当の翔平は極度のシスコンで、うざがられている。弟には面白いからと黒いことしかやらず、唯一の兄和茂には弟たち以上に真っ黒な笑みを見せ続けるという歪んだ性格も持っている。逆に姉には頭が上がらない。体力・学力、共に平均の凡人。身長は悲しいかな、平均をかなり下回っている。
「ふわぁ~・・・隆、お前が言うと別の意味にも取れるからやめてくれ」
欠伸まじりに苦笑したのは奥野家三男、恭助。
男のくせに奥野家で一番髪が長い。丸顔で大きさの違うアホ毛が同じところから出ていることからトマトのあだ名があり、学校でよく呼ばれているらしい。垂れ目なことを除けば和茂と翔平の中間辺り。似ているのに和茂とは対照的に影が薄そうな顔立ちだ。
今年兄達と同じ高校に入学した16歳。秋光・和茂と同格の成績なものの、人が良い。・・・というのが表書きで、裏はただのエロ野郎で何度も女姉妹に怒られているが、まったく懲りない。超マゾな性格もあってか、和茂と2人で弟2人の同性好きの餌食になりやすい。しょっちゅう妄想や思い出し笑いをしていて、できれば一番見たくない人。
「「「ククッ」」」
3人の文句は無視して笑っている弟妹3人。毎日、必ずと言っていいほど兄3人は寝癖が酷い。恭助は360度見事に爆発状態になっているし、一見正面から見ればまったく寝乱れていない翔平も後ろは派手に髪が跳ねている。和茂なんか、良くできるよなって思うくらい短いのに、わずかに長い前髪があっちこっち向いていて・・・クククッ。
結城たちはさっさと部屋を出ると、1階へと足音大きく降りていく。
二度寝は簡単にできるだろうが、そうしては義姉であるかんなに怒られる上に、朝食は全て食べ盛りの奴らに盗られるだろう。かといって新しく自分たちで作ろうとすれば、面倒な家事をついでにと押し付けられるというのがオレでもわかるのだから、和茂達もわかっているだろう。
逆らわずにちゃんと起きるのが利口な手であった。
のそのそと起きて各自無言で着替え始めた3人の部屋をオレは早急に退散した。男の着替えに興味はない。女の着替えを見るのもどうかと思うがな。
たぶん結城はこの後トイレだ洗顔だといろいろするだろう。
暇になったオレは1階にいる究極の癒し娘を見に階段の手すりを滑り台代わりにして降りていった。