03-01(02)
→教室へ続く廊下へと向かった(02)
「アレが輝いて見えるのは何故ですか」
湊が入浴を終え、リビングに戻れば目の前には先程まではなかった異様なブツがぶら下がっていた。
予期せぬことに呆然とする湊を待っていたのは、いつも以上に変態的な笑みを浮かべる同居人だった。
「掃出祭の際、是非着て貰おうと思いまして」
「……」
湊ならきっとどちらも似合うでしょうね、などと言いながら両手に提げたソレ等をそれは楽しそうに変態は見比べた。
「ナース、いやセーラーも捨てがたいですね。湊はどちらがお好きですか?」
拒否反応から聞き流していた、アレを着るのが誰か、ということをさらりと質問に乗せて突き付けられた湊は、本日一番の深い深い溜め息を吐いた。
「絶対着ませんから、絶対!」
「メイドの方が良かったですか?」
「そう言うのは可愛い女の子が着るモノです!」
…ではなくて。何より問いただしたいのは。
「昔ながらの体操服もありますよ」
どこで入手したのかは聞きたくないのでどうでもいい。何故ソレ等を湊へ着せようと目論んだというのか。まさか妄想の末の暴走かと危惧したが、けれどそれは杞憂に終わる。決して歓迎できる理由ではないとは言えど、暴走よりは幾分ましだ。
放課後、その日二度目に予期せず理人と遭遇する直前、彼は湊のクラスメイトと話した際に彼らのクラスの出し物を聞きつけたのだと言う。既知らしい彼らが話題に上げるに不思議はない内容ではあるが、その後湊には到底理解できない理人お得意の変態独自曲解論を展開し、数着のコスプレ衣装展示がリビングで行われてるに至ったようだ。
普段なら溜め息と苦言で済ませる湊だが、これについてはそれで終わらせることができなかった。何故なら、長年家計をやりくりして来た者として、度を越した浪費は許せるものでは無かったからだ。
翌日、朝食こそ用意されていたものの湊に先に登校された上、湊によって不要の烙印を押された品々をリサイクルショップへ持っていくことを約束させられた変態もとい理人が、己の行動を反省したかどうかは定かではない。