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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

深闇

作者: Lawlite


母さんは殺された。

母さんが殺されたから

父さんは死んだ。


復讐してやる。

二人の敵をとるんだ。




俺だけだ。

この青空でさえも

汚れきっているのを

知っているのは。


そう、俺だけだ。







ガッチャン!!

飛び散るガラスの破片と

水の破片。

2つともとても綺麗で

とても脆い…


「た、大変申し訳御座いません!!いますぐ片付けますっ!!」


エプロンの女性は

深々と頭を下げる。

その前には割れた

ガラス瓶と薔薇の花、

水、そして横幅の広い

小さな男。


「片付けはいらん」

静かに低い声でいう。

スーツ姿の小男の声は

広い部屋の中に冷たく

響き渡る。

「えっ…」

女性は声の冷たさに

たじろく。

「お前はクビだっ!!

無能なやつめっ!!

わたしの大切な

コレクションを

壊しやがって!!

賠償金二千万だ!!」

「そんな!?」


女性は小男にすがりつく

スーツの端を強く

握りしめて懇願する。

「すいません!!

お金は払いますから

クビだけは…

夫が病気でお金が

必要なんですっ!!」


すると小男はケタケタと

下品に笑う。

「病気だぁ?そんなの

知るかっ!!」


そして表情を一転し、

女性に顔を近付ける。

そして…

「お前は、クビだ。

いま、この時点からなあ」

そして乱暴に女性の

手を振りほどき、

踵を返して歩いていく。

周りには黒い

サングラスをした

屈強そうな大男達。

「外につまみだせ」

大男達は表情を

変えずに女性に近づく。

女性が細い体で

必死に抵抗する。

「離して!!」

大男達は乱暴に

髪の毛をひっつかみ

女性を引きずる。

「いやぁあぁああぁ!!!」


どこかで扉が閉まる音

数秒後にはドスン

という鈍い音がした。


ドアをノックする音

ドアが開く。

「社長、御時間です」

スーツ姿の男性が

静かに告げた。

「今行く」

小男は低い声で返事した


二人が部屋をでて、

並んで大きな廊下を

歩くと体型の違いが

著しい。

片方は横幅が広く、

身長が低い。たっぷりと

ついた脂肪が男の首を

永遠のかくれんぼへと

導く。年齢は60~70。


片方は長身で細身。

髪は長く、顔は整っていて

年齢は25ぐらいだ。


「今日のスケジュールは

午前中に1つ社内会議、

午後に四菱電気社長と

会談となっております」

「分かった。帰りは

何時だ?」

「7時30分を予定して

おります」

「7時にしろ。会談は

短くする」

「分かりました。

先方に伝えます」

スケジュール帳に

メモを加える。

歩幅を小男に合わせて

男性は歩いていく。

廊下はまだ続く。

どこかの城みたいな

廊下だ。

「ところで碓氷、

今日はどうすべきだ?」

スケジュール帳を

胸ポケットに収めて

小男を見る。

「と、いいますと?」

「四菱との契約を

結ぶためにはどう

運べばいい?」


碓氷は目をつぶり

首を横に振る。

「わたくしのような

いっかいの秘書が

社長の御仕事に

口を挟むことは

出来ません」

小男はニヤニヤする。

「白々しい。お前ほどの

男は初めてだぞ。

お前のおかげで

わたしが何億稼いだ?

五億はくだらん」


会議室の前についた

二人はお互いを見る。

「わたしの秘書は

数ヶ月で辞めていく。

無能ばかりだ。しかし、

お前はもう三年も

秘書をやっている。

わたしの仕事についても

助言をする。

その結果がすべて

成功している」


碓氷を指差す。

ニヤリと笑い、

「社長命令だ。

言ってみろ!!

長年、対立していた

四菱と契約する方法を」

「社長命令なら

仕方ありません。

小耳に挟んだのですが」

そう言うと小男の

耳元で何か囁く。

「おお!!そうかっ!!

良い情報だ!!

そのように準備しろ!!

よくやった碓氷」


そう言うと

またもや下品な

ケタケタ笑いをして

会議室に入っていった


碓氷は少し笑った

そのまま扉に背を向け

長い廊下を一人で

戻っていった。



「金を重視しろっ!!

分かったな」


ぴっと携帯を切る。

小男の身長の二倍ある

大きな扉を開けると

ヨーロッパの宮殿の

ホールが眼前に広がる

小男が入り終わったあと

続いて入った

碓氷が閉めた。

「お帰りなさいませ

旦那様」

老執事が挨拶をかける。

「食事だ」

「かしこまりました。

では、食堂へ」

「碓氷!!由香里を呼べ」

「承知しました」

碓氷は小男に一礼すると

ホールの階段を登っていった。



碓氷はあるドアで

立ち止まった。

一息おいてノックする

「どうぞ」

ドアノブをひねり

部屋にはいる。

部屋はピンクが基調で

明るい色ばかりだ。

天蓋付ベッド。

豪華な装飾なイスに

クマのぬいぐるみが

ちょこんと座っていたり

全身鏡、フリルのついた

様々な衣装などが

置いてある。


「あ、碓氷さん」

18ぐらいの女性が

きらびやかな衣装をきて

イスに座っていた。

長く、細い腕、足は

モデルのようだ。

顔も可愛らしい。

まだあどけなさが

残っている。

「どうしたの?

まだいつもの時間には

早いよね」

「御食事の時間です。

食堂に行きましょう」

「そういうことか。

分かった準備するから

外で待っていて」

「分かりました」

碓氷は部屋から出た。

数分後、由香里が

出てくる。

衣装が変わった。

「行きましょう」





食堂には長テーブル。

その上には白い

テーブルクロスに

ロウソク、食器、

草花、冷やされたワインが

のっている。


長テーブルには

イスがその長さ分

並べられているが

座って食事しているのは

三人だけだ。

カチャカチャと

食器が触れ合う音がする


上座に座る小男が

話し出した。

「由香里、聞け」

「何?虎鉄お父様」

「お前、四菱を

知っているな」

「存じています」

「あそこの社長と

お前の婚約が決まった」


「え?」

由香里は明らかに

困惑した表情を浮かべる

「分かったな?」

虎鉄が念をおす。

由香里は黙ったまま。

それを了承の意と

とったのか虎鉄は

「以上だ。食事を

続けよう」


数分後、ナイフと

フォークを由香里が

置いた。まだ食器には

料理が残っている。

「すいません。

気分が優れないので

部屋に戻ります」

と言うと立ち上がり

食堂から出て行った。



午後9時30分

碓氷は由香里の部屋の

前にきていた。

ノックしようとすると

中から泣き声がする。

ノックしないで

静かに碓氷が入ると

ベッドで顔をふせて

泣いている由香里がいた


「由香里様?」

その声で碓氷に

顔を向ける由香里。

その頬は涙に濡れていた

「碓氷さん…」

由香里は時計を見る。

「いつもの時間ね。

じゃあお話して」

9時30分になると

碓氷はこうして由香里の

部屋に来て、世間話を

する。秘書になって

初めて来た日からの

習慣だった。


「大丈夫ですか?」

由香里の顔をのぞく

碓氷。

「大丈夫…かも」

しかし、また泣いて

しまった。

「私、私…どうして

知らない人と結婚を

しなくちゃいけないの?

お父様はいつもそう。

私の気持ちは

考えてくれない。

私…私」





「碓氷さん、私

アナタが好き」




「私、アナタと

結婚したい」



真剣な眼差しで

碓氷を見る。

「僕もです」

「えっ…」

由香里が驚く。

「僕もアナタと

結婚したいと

思っていました」

「本当に?」

「本当です。しかし

私は秘書です。アナタに

恋はしてはいけない。

してしまったら、

クビですし

アナタにも逢えなくなる

ずっと黙っていましたが

好きです」


沈黙が訪れる。

「じゃあ、どうすれば

私達は結婚出来るの?」

悲しい声で由香里が

言う。すると碓氷が

囁いた。




部屋を出た碓氷は

また少し笑った。





次の日。

朝食の時間。

碓氷は虎鉄の部屋へ。

「社長、朝食です」

「分かった」

虎鉄はすぐに出てきた

「今日の婚約が

成功すれば5億が

わたしの懐に

転がりこむ」

杖をつきケタケタと笑う。

二人は並んで食堂へ。

ホールの階段を

降りている最中に

ガッチャンという音。

そして叫び声。

「なんだ?」

虎鉄が急ぎ足で

音のほうへ行く。

「なんだ、どうした?」

女中がわなわな震えて

いた。「救急車を…

由香里様が顔に怪我を」

「なんだと!!」

女中が指差す方には

顔から血を流す由香里が

「お父様…救急車を」

弱々しく由香里が言う。

傍らには割れたツボが。

「救急車の必要はない」

虎鉄はわなわなと

震えだした。

「お前はわたしの三千万のツボを割った挙げ句、顔を怪我した。これでは今日の婚約は破棄。先方はお前の容姿がいいから承諾したのに…」


虎鉄は由香里を

持っていた杖で殴った

「お前はもういらん。

死んでしまえ!!」

虎鉄は何回も杖で

由香里の顔、頭を殴った

「痛いっ!!止めて」

「うるさい!!黙れ!!

何のために育ててきたと

思っているんだ!!!

金にならん娘など

死ねばいい!!!」

殴り続ける虎鉄の杖は

次第に血で染められて

いった。

「お止め下さい!!!

旦那様!!!」

老執事が間に入る。

一旦、虎鉄が止まる。

「どけっ!!」

「ダメですっ!!!

これ以上は由香里様が

死んでしまいます!!」

由香里は何の反応も

見せない。

「もう一度言う…

どけ」

「ダメです」


骨が折れる音と

同時に老執事は倒れた。

頭からは大量の血。

「お前達いいか!!

わたしに逆らうと

死ぬぞ!!金も権力も

全て使って殺してやる!」


虎鉄は大男達を読んだ。

「このボロ雑巾を

捨ててこい」

大男達は血だらけの

由香里を背負って

どこかにいった。







虎鉄は部屋に戻った。

「むなくそ悪い」

するとドアをノックする音。


「社長。簡単な書類に

サインをお願いします」

碓氷が入ってくる。

「あ~あ、分かった。

サインだな」

面倒くさそうに

書類も見ずにサインを

書いた。

「書いたぞ」

書類を碓氷に渡す。

サインを確認するように

書類の下右端を見る碓氷

「有難う御座います」




チャキ。

「なんだ、それは?」

碓氷に聞く虎鉄。

「銃ですよ。

知らないんですか?」

「知っている。

何をする?」

「あなたをうつ」

虎鉄はため息をつく。

「お前もそうか…

だがな」


杖を碓氷に向ける。

「これも銃なんだよ…」



銃声…

ドサッ








虎鉄が撃たれた。

「なん…だと…」

白煙がでているのは

碓氷の銃だけ。


「杖が銃なのは

知っていますよ。

前任者も同じように

死んでいることも

調査済みです。

あなたの知らないん間に

普通の杖と入れ替えて

おきました」

倒れた虎鉄を

見下して言う。

反応はない。

ピクリとも動かない。

「さっき書いた書類は

あなたの死後、

全ての財産を由香里様に

譲るというもの。

あなたには沢山の

妻がいましたが

これで由香里様の

ものです」


部屋から碓氷は

出て行く。

「サヨナラ、社長」








「由香里様?」

「碓氷さんやったの?」

「はい、大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫」


顔は血だらけ。

体はあざだらけの

由香里は女中達により

部屋に運ばれた。

「2人っきりにして」

由香里がそういうと

女中達はでていった。

「碓氷さん、その紙は?」

「これですか?

婚約届です。サインを

してくれますか?」

「喜んで」

そういうとさっさと

サインを書いた。

「有難う御座います…」




銃声




「碓氷…さん?」

由香里の胸の真ん中を

弾丸が貫いた。

「由香里様、ありがとう。

これで僕はこの家の

財産をもらえます」

「そんな…だって

私のこと好きって…」


「あぁ、あれですか」

にこやかな笑顔で

「嘘ですよ」

「う…そ?」

「そうです。僕は

この家の財産を

得るために、復讐の

ためだけに生きてきた

僕はこの金に汚れた

私利私欲に汚れた

家が大嫌いです。

無論、汚れた家にすむ

アナタもね。

汚れた金で育った

アナタは僕から

言わせればゴミです」


「ご…み」

由香里は涙を流した。

顔についた血が涙と

混ざる。涙が赤い。


「では、長居はしたくないので」


碓氷は部屋から

でていった。


由香里は

絶望のなか死んだ。




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