掻き乱される
神島に対する自分の気持ちを自覚し始めた頃に、神島の態度が変化した。
どういうわけか、以前のように厳しく、冷たくなったのだ。
「嶌崎。この棚の整理、まだ終わっていないのか。午前中で終わらせるように言ったら、お前はできると言っていたよな」
神島の目に怯みそうになるも、以前言われた言葉を思い出して勇気を振り絞った。
「今日は来店するお客様が多く、対応に追われていましたので。神島さんに整理が終わりそうもないとお伝えするつもりでしたが、店長と話し合いをされていましたので、伝え損ねました」
俺の反論に対し、神島は一瞬驚いた顔をした気がしたが、即座にますます苛立ちを露わにした。
「伝え損ねた後、お前はどうした。また伝えに来なかっただろ」
「すみません」
流石に反論の余地もなく、素直に謝ると、溜息が降ってきた。
俺は泣き出したいような、喚き出したいような気分を募らせた。
こういうことは、実は最近になって急に増えたのだ。以前だったらそこまで怒られなかったことや、他の従業員が同じ間違いをしても怒らないようなことを俺に対してだけ過剰に怒り、苛立ちを露わにする。
俺、神島さんに嫌われるようなことした?
神島さん、何で。
神島を呼び止めて問い正したくても、冷たく突き放されそうで怖くてできない。
「神島さん、俺が言ったこと気にしてるんすかね」
いつもの如く坂井はいつの間にか横にいて、引っかかる物言いをする。
「坂井、何か言ったのか」
「睨まないで欲しいっす。俺はただ、嶌崎さん好きなら正攻法以外も考えたほうがいいんじゃないすかって言っただけです」
……お前が原因じゃないか。
ますます睨むと、坂井は悪びれもせずにやっと笑う。
「その顔、答え出たんじゃないすか。今日、神島さんの退勤時間、嶌崎さんと同じっすよ。もう時間すよね」
手のひらで踊らされているような感覚を味わいながらも、俺は神島の姿を探して走り出す。
背後から、やれやれと聞こえた気がしたが、無視した。




