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武士の子孫、異世界を制す  作者: ふみぃ


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聖騎士団

「アキ、これで出来ているか?」


「ああ、今の貴様からは妖気はまったく感じ取れん」


「どうにか間に合ったな」


 早朝の宿屋、採用の決まった聖騎士団へ出立する時刻前に、どうにか妖気の(おさ)え方を習得することができた。


「たった一日で習得するなど我の指導力があってこそだな」


「ああ、ありがとう」


「……うるさい、早く行ってしまえ」


 アキはそのまま布団の中へ(もぐ)ってしまう。


「行ってくる」


 一度断りはしたのだが、結局は徹夜で付き合わせてしまった、後程何かで返してやらなければ。


―――

「今日から入団する者か、集合場所は向こうだ」


 聖騎士団の門を通り(しめ)された道を進むと、数日前とは違う広間に辿(たど)り着いた。


 他にいる者達も恐らく採用されたのだろう、皆どこか緊張(きんちょう)したような面持(おもも)ちをしている。


 その後も数名が外から来た所で、壁際(かべぎわ)に立っていた聖騎士が紙と見比べてから近くへとやって来た。


「全員そろったな、まずは此方(こちら)が言う通りに整列(せいれつ)をしてくれ」


 名前を呼ばれた者から次々に移動していき、横に三列の並びとなる。


「そのまま待機していてくれ」


 聖騎士が広間から出ていき入団者だけとなると、それぞれで会話が始まる。


 皆この国の出身なのだろう、全身では無いにしても何処(どこ)かに白く染められた物を身につけている。


 だからなのか、白い装いをしていない私に対し好奇(こうき)の視線が向けられていると感じる。


 悪意の込められた者も混ざっているのも気の所為では無いだろう、だからどうするというわけでもないが。


 (しばら)くそのままで待機していると、先程出て行った者と、全身を白の分厚(ぶあつ)い鎧で固め巨大な剣を背負う騎士が現れた。


「良く来てくれた、新たなる聖騎士達よ」


 重鎧(じゅうがい)の下から低い声が放たれると、隣から(つば)を飲み込む音が聞こえてきた。


「私は聖騎士団支部団長ルキウス=カンディドゥス、今日より君達の同胞(どうほう)となれる事を(ほこ)りに思う」


 背中の大剣を扱えるとすれば、魔術で自身を強化するにしても相当の力があると見える。


「君達には自らの力を振るう事で、聖国を白の輝きで満たしてくれる事を期待している」


 白の輝きとは聖国の女神の事を考えるに、平穏(へいおん)という意味なのだろうか。


 支部団長の話はここまでなのか、広間の外へと歩いていった。


「この後は団内施設を回った後に鎧用の採寸を行う、そしてその後は宿舎の振り分けだ、邪魔になるから隊列を(みだ)すなよ」


 ーーーー


「ここが訓練場だ、先日入団試験を行ったばかりで記憶に新しいだろうが一応紹介しておく」


 訓練場の中では騎士達が素振りや打ち込み、模擬戦などを行なっている。


「自主的な訓練を行いたい場合は基本的にここを使うといい、他にもう一つあるがそっちは基本部隊長格が使うからな、気まずい時間は回避できるぞ」


 質の高い模擬戦を行いたければそちらに向かえばいいということだろう。


――――


「ここは祈り場だ、解放されているのは早朝から日没迄まで、時間に注意するように」


 私には関係の無い場所ではあるが、構造は覚えておくべきか。


――――


「ここが支給所だ、必要な物資を購入できる、」


 装備を手入れするための道具や、栄養価の高いであろう軽食が置かれている。


「一日中空けられている、必要な物があればここで揃えるといい」


――――


「ここが聖騎士用の宿舎(しゅくしゃ)だ、起床時間や門限(もんげん)などは無いが、任務に支障を来さないよう心がけてくれ」


 この宿舎が誰かとの相部屋であるとすれば、アキには常に獣のままでいてもらう必要がある、もっとも共に居ることを彼女が望むのならばだが。


「左側が男、右側が女だ、部屋の行き来に制限は無いが節度(せつど)を持って生活するように」


 男女の建物は分けるものだと考えていたが、聖人とは違い聖騎士団は戒律がそこまで厳しくは無いのだろうか。


「施設の案内はここまでだ、次は後採寸を行う」


―――


 男女で分かれた後、机と椅子の設置された室内にて適当な席へ着くと、鎧への希望と書かれた紙が配られる。


「そこに希望する鎧の型や装備などを記入した後、記入が終わった者から採寸を行う」


 記入欄には聖騎士団側に用意して欲しい装備の記入とあるが、現状の装備で完結している為、これ以上何が欲しいという物はない。


 強いて言うならば(どう)腰巻(こしまき)になるのだろうが、動きが制限されるような物は()けたいところだ。


 しかし希望する鎧の型とある以上ある程度の自由が利くとすれば、現状の物よりもいい装備が手にはいる可能性も高い。


 無理な要望(ようぼう)だとしても一先ずは希望してみるとしよう。


 全ての記入欄に書き込み、分かりやすいよう横に絵を添えてから席を立つ。


 どうやら私が一番最初のようだ。


「書き終わったか、それを持って別室に移れ」


 指の差された扉の前に立ち、一応はと二回叩く。


『どうぞー』


 中から聞こえた声に従い扉を開いて中へ入ると、二人の聖騎士に迎えられた。


「そこに座ってください」


 刀と弓矢を外して椅子に座り、二人に悟られぬよう観察をする。


 採寸というものは同性が行うものだと考えていたが、人手が足りていないのだろうか。


「それじゃあ紙を受け取っちゃいますね」


 二人の鎧は違う形状をしている、先日対峙した者も騎士団長もそうだったが、やはり鎧は自由な物にしても良い考えて良さそうだ。


「……」


 騎士は中身を見て何やら困惑(こんわく)したような表情をすると、不安にさせないようにしてるのか此方へ笑みを見せてからもう一人に紙を手渡した。


「すみません、初めて見た形の鎧だったので……」


「……なるほど、上から説明をしてもらっても良いですか?」


 初代の故郷で使用されていた鎧を元にして私なりに考えた物だが、この国でも似たような物は使われて居ないようだ。


「まず(かぶと)に取り付けた角はドラゴンを()したものであり、私の存在を示すと共に威圧感(いあつかん)を与える事を目的としている」


「どちらかといえば象徴的(しょうちょうてき)な意味合いなんですね、横の位置にある()り返った物はどういった意味が?」


「これは斬撃や弓などから首を守る為の物だ」


「なるほど、では此方(こちら)の面が顔の全体を(おお)っていないのはどうしてでしょうか」


「視界を(さえぎ)らないこと、顔への一撃を防ぐ事を両立する最小限がこの面積だと考えた」


「合理的ですね、では肩に着けられた物は盾の様なものですか?」


「そうだ、私は盾を持たない、その代わりに弓などの一撃を防ぐ役割を担う部位だ」


「……考えられた果ての形なんですね、分かりましたこれで行きましょうか」


 どれかは否定されると考えていたが、どこも変更を加える必要は無いようだ。


 初代の故郷が褒められているのは素直に(ほこ)らしい。


「では採寸を始めましょう、準備して」


「はい!」


 もう一人が採寸の準備をしている間に外套(がいとう)()ぐ。


「服はそこの(かご)に入れてくださいね」


「分かった」


 外套を折りたたみ入れ、籠手(こて)脛当(すねあ)てを外し一緒に入れる。


「……ああ下着以外は脱いでくださいね、団服の採寸も()ねていますから」


「そうか」


 採寸も済ませ、指示された場所で他の参加者と共に最後の一人が終わる頃を待っていると、建物の方から聖騎士の一団が歩いて来るのが見えた。


「はははは」


「それは面白いな」


 談笑(だんしょう)をしながら通り過ぎていく最中、一瞬(いっしゅん)だが我々を値踏(ねぶ)みするような視線が確かに向けられていた。


 そして採寸を終えた最後の一人が集団に混ざると、案内役の騎士が前に立つ。


「これで全員の採寸は終了した、宿舎の部屋割りは建物前の掲示板(けいじばん)に張り出してあるから確認するように、この後は自由行動とする」


 集団を離れる数人に続き宿舎(しゅくしゃ)へと向かい掲示板を確認すると、私だけではなく恐らく入団者の全員が一人部屋となっていた。



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