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武士の子孫、異世界を制す  作者: ふみぃ


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再開

 

 騎士団詰所の正門を通り、建物の傍に止まった所で御者台から降りる。


 続いて馬車を操縦していた騎士が降り、胸に手を当て敬礼をする。


「アルマ指揮官、お疲れ様でした」


「ああ、手を貸してくれて助かった」


「私達は自らの役割を果たしたまでですから」


「そうだな」


 馬車の扉をゆっくりと中を確認する、まだ眠っているようだ。


「彼女達を連れてきてくれ、私は人を呼んでくる」


「了解しました」


 幾ら相手が助けられた人間とはいえ、寝覚めて直ぐ目の前に男が現れるのはまだ恐ろしいだろう。


 人を呼ぶ為に建物を目指し歩き出すと扉が開かれ、見知った騎士達が現れた。


「アルマ殿、無事に戻ったか」


「ああ、馬車に保護した者達が居る、五人が休める程度の部屋を用意してくれ」


「すぐに用意させよう」


 騎士が手を上げると控えていた一人が建物の中へ走っていった。


 馬車から五人が降りてきたのを見て騎士達が駆け寄ろうとするのを手で制止する。


「……彼女達の案内役は同性の者だけにしてくれ」


 五人に気を使わせていると思わせないよう、なるべく抑えた声で告げると騎士は目を見開き小さく頷いた。


「私が案内をします」


「任せたぞ、アルマ殿も中へ、シーラン様より預かっている物がある」


 騎士の後に続き建物の中へ入ると、石積の外観からは想像できない豪勢な空間が広がっていた。


 広間の中央には青く透き通った巨大な鉱石が設置され、壁際には左右対称の様に置かれた装飾の凝った金色の鎧や勇ましい魔獣を模した像が並べられ、壁には何処かの風景を描いた絵が掛けられている。


「……これらは商人達から寄贈(きぞう)された物でな、断るわけにもいかず外から見えないこの場所に置いているんだ」


 困ったように苦笑する騎士。


「領地内の者達と友好的であるのは悪い事ではない」


 増長して各地から買い付けている訳ではないようだ、そういう者達であれば中になど飾らず表に並べているか。


 広間を抜け階段を登り、通路を奥へ行った位置にある一室へ通された。


「アレを持ってきてくれ」


「はい」


 騎士の一人が部屋の外へ出ていく。


「今回の件もそうだが、アルマ殿には随分と迷惑を掛けた」


「自らやった事だ、問題ない」


「そう言って貰えるのは有り難いがな……」


 何やら複雑そうな気がしている、騎士ではない民間人が活躍するのは民からの信頼を揺るがす程の事だろうか。


「失礼します、例のものをお持ちしました」


 部屋に戻ってきた騎士が中央に置かれた机の上に、2人がかりで大きな包を乗せる。


「これはアルマ殿への礼だ、中を確認してみてくれ」


 言われるがまま包に近づき上の方で縛られている封を解くと、その中には金に輝く硬貨が大量に詰められていた。


「是非受け取ってほしい、これは騎士団の総意だ」


「気持ちは有り難いが私も旅の最中だ、このような物を渡されても荷物なってしまう」


 重量に関しては大したことは無いだろうが、これを身に着けていては行動に制限が掛かってしまう。


「ならばこれを使って欲しい」


「これは?」


 騎士が机に置いたのは中央には赤い石が埋め込まれた黒く薄い板だった。


「これは騎士団の技術部が開発した通貨専用魔道具、つまりは財布だ」


「魔導具……」


「使い方を見せよう」


 布袋の中に手を入れ数枚の硬貨を取り出し机に並べ、魔導具を硬貨の上に載せて赤い石の部分に人差し指を乗せる。


「この部分に魔力を流し込む事で……、収納する事が出来るんだ」


 赤い石が光ったその直後、効果が板の中へ吸い込まれていった。


「見事な物だな……」


 手渡された板の赤い石に触れてみるが、何も起こらない。


 やはり魔力を扱えなければ、使用できない代物のようだ。


「アルマ殿?」


「私には魔力が無くてな、魔導具の類を扱う事は出来ないんだ」


 故郷にあった魔導具はみな充填式であり、魔力を操る事の出来ない私でも扱えていた。


 初代当主が魔術無い世界出身の人間であり、そのままでは不便だとそういった物を揃えていたのだろう。


「……!済まなかった、盗賊の討伐やリゾールの件で魔術を扱える前提で考えていた」


 騎士は深く頭を下げる。


「気にしないでくれ、そう考えるのが普通の事だ」


 不要な事で頭を下げさせてしまった、今後は気を使わせないよう予め魔術が使えないと伝えていく方が無難なのかもしれない。


「そうか……」


「しかし魔盲(まもう)ですか、それであの動きができるものなんですねぇ」


 先程まで黙っていた、眼鏡を掛けた騎士が疑問を口にする。


「おい……!」


「私の身体は生まれつきおかしくてな、魔力は無いが普通の人間よりがずっと力が強く、頑丈だったのだ」


「なんと……!それは非常に面白いですねぇ、いつか貴方の身体を調べさせていただきたいものです」


 騎士は目を見開き、輝かせる。


 その視線からは何処か熱が籠もっているような、純粋な何かが伝わってくる。


「すまんな、こいつはずっとこうなんだ……」


「僕が変みたいな言い方をするなんて失礼ですねぇ」


 呆れたように頭を抱える隊長と、眼鏡を光らせながら抗議する騎士。


「哀れまれるよりずっといい、それに元より魔導学術園にて調べて貰うつもりだ」


「ほう、僕の母校にですか」


「あそこまで続く道も魔物が多くでている、それに行方不明者も増えているらしくてな、まったく情けない話だ」


 騎士は壁を叩き、悔しさを滲ませる。


 近年の魔物の活発化、その対応に追われ盗賊をのさばらせていた、騎士の誇りをこれ以上と無く傷つけられていることだろう。


「だが私達は戦い続けるしか無いだろう、この武は民を護るためにあるのだから」


「ああ……、そうだな!」


 何故魔術が使えない身体に産まれたのか、何故人よりも頑丈な身体をしているのか、その意味は未だ見出せてはいない。


 だがこの力にはきっと理由がある。


 旅を続けていればいつか見つかるかもしれない。


 その為にも、先へ進まなければ。


「素敵な心意気ですねぇ!……所でこのお金どうします?」


「まったくお前は……、街には金融屋があるから邪魔になるようならそこへ行くといい、俺も金を預けている」


「僕もです、我々騎士の目もありますから、そこが一番安心かと思いますねぇ」


 金融屋という施設を聞いたことは無いが、騎士の面々が使っているのなら多少は安心出来る。


「ふむ、良いことを聞いた、後ほど行ってみるとしよう」


「話したいことはこれで全部だ、付き合わせて悪かったな」


「構わない、したくてやった事だ」


 硬貨の詰まった布袋を肩に担ぎ上げる。


「おお、流石の怪力っぷり」


「入り口まで送ろう」


「その前に人と会ってもいいか?」


「ああ」


 騎士達の後に続き広間へ降り、セレナ達が居るという部屋まで向かうとカルミナが壁を背にして立っていた。


「出立前には声を掛けてくれ」


「分かった」


 騎士達は広間の方へと戻っていった。


「カルミナ」


「!」


 歩きながら声を掛けると、カルミナが勢いよく振り向き駆け寄ってくる。


「アルマ様……!貴族へ挑まれたとお聞きしておりましたが、お怪我はありませんでしたか……?」


「ああ、この通り無事だ」


 カルミナは安心したように、胸に手を当て小さく息を吐く。


 どうやら心配を掛けさせていたようだ。


「他の者達はこの中か?」


「はい、セレナさんとアーティアさん、それと使用人の方々はこの中に、他の方々は先程迎えが来られお帰りになられましたわ」


「一足遅かったか……」


 出立の前に挨拶をしておきたかったが、無事に家の者と合流できたのは喜ばしい事だ。


「カルミナは何故部屋の外に?」


「折角の再会ですもの、水入らずにして差し上げようかと」


「そうか、優しいのだな」


「ありがとうございます……、ふふっ」


 カルミナは表情を綻ばせると、口元を隠して笑う。


「カルミナの迎えはまだ来ていないのだな」


「はい、(わたくし)の家は少し離れたところにありますから、迎えが来るのは明日になると思います」


「そうか」


 談笑を続けているとふと部屋の扉が開かれた。


「カルミナさんごめんなさい!話すのに夢中になっ……て……て?」


 部屋を飛び出して来たセレナと視線がぶつかった、また泣いていたのか目の周りが赤くなっている。


「あ、あ……アルマ様!」


 胸に飛び込んで来たセレナを受け止める。


「セレナさん、いきなり殿方に抱き着くなんてはしたないですわよ」


「あ……、ご、ごめんなさい、うれしくてつい」


 顔を赤くしたセレナが素早く側を離れ、両手で顔を隠す。


「一先ず部屋へ入ってもいいか?話がしたい」


 二人姉妹とその使用人達のこれからについてだ、頼る者の居ない彼女達がどうするべきなのかを考えておきたい。


「はい……!」


 共に部屋へ入ると、緊張した様子の使用人達に出迎えられた。


 助けた張本人とはいえ警戒するのは当然か。


「あるまさまー!」


 勢いよく飛んできたアーティアを受け止めると、身体に抱き着いてきた。


「すごいすごい!本当に三人共助けてくれたんだ!」


「約束したからな」


 輝く翡翠の瞳で見上げてくるアーティアの頭に手を乗せ撫でる。


 ――


「セレナはこれからどうするつもりだ?」


「どうする、べきなんでしょうか……」


 セレナは紅茶の入った器を置き俯いてしまう。


 様々な事から解放されたばかりの彼女には少々急すぎた質問だろうか、だがこのまま騎士の施設に身を置く訳にはいかないだろう。


「私達には帰る場所もありません、資産も今身に付けている物が全てです……」


 着の身着のままの状態で屋敷を飛び出し、現在も身に付けているものも私が買い与えた物だ。


(わたくし)の屋敷へ連れていけたら良かったのですが、貴方のご実家や懇意(こんい)にしている相手と対立する可能性を考えますと、私の独断で決める事は少々難しいですわね……」


 セレナが家を飛び出した要因を考えれば貴族の屋敷に匿って置くことは難しいだろう、その者達は未だに探し回っているかもしれないのだ。


「考えてくれただけでも嬉しいです」


 セレナが力無く微笑む。


「貴族同士ではやはり難しいか」


「はい、信用と繋がり力の地盤を固めるのが貴族社会ですもの、もしその関係を妨害するような姿を見せれば立場が一気に危うくなります」


 とはいえ貴族以外の者に彼女達を任せる事も難しいだろう、幾ら金を積み約束させようとも追い詰められ差し出される可能性もあるのだ。


 貴族では薄く、戦う力があり、金銭では揺るがない確かな地位がある者で無ければならない。


「んぅ……、ある、さま……」


 寝言と共に軽い金属のぶつかる音が聞こえ視線を下げると、膝の上で眠るアーティアの手でも触れたか連盟具が床に落ちていた。


「話してみる価値はあるか……」


 連盟は貴族との関わりが薄く、彼女達を護るだけの戦う力があり、各地に支店を展開するだけの桁違いな資金力がある。


 アーティアが起きないよう彼女の身体を抱え上げ、長椅子に移してから連盟具を拾い上げる。


「アルマ様?」


 カルミナが不思議そうな目で此方を見上げる。


「少し外へ出てくる」


 依頼の品を受け取るついでに相談をしてみよう、保護は出来ないにしても有益な情報が手に入る可能性は高い。


 ――


「ようこそれんめ……、あっ」


 連盟の建物に入ると受付嬢と一番に目が合ったが、途端に表情が固まり裏へと下がって行ってしまった。


 併設された酒場からも幾つもの視線を感じる。


「アルマ殿戻られましたか……!」


 仕事相手だった行商人のコラルが酒場から駆け寄ってきた、その表情はやや悪く見える。


「コラルか、一体どうした」


「騎士の方々に連れて行かれたとお聞きしました……、ですがご無事なようで何よりです」


「確かに連れられはしたが……、それ程に焦るような事なのか?」


「騎士団には街の治安を維持する役目もございますからね」


「そうか」


 それに連れて行かれた私は、拘束されたと勘違いされていたようだ。


「リアメインはここにいるか」


「リアメイン殿ですか?ええ、恐らく居られるかと」


「リュウガンジさん、支部長がお呼びです……」


 裏から戻って来た受付嬢が怯えながら話しかけて来た、それ程に私は恐ろしいのだろうか。


「すぐに行こう」

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