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武士の子孫、異世界を制す  作者: ふみぃ


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ゴブリン討伐

 


 準備を済ませ街の正門で待っていると、待ち合わせていた一行が表れた。


 ミーアがこちらにいち早く気づき大きく手を振りながらこちらに駆け寄ってくる、それに追随(ついずい)して後方に(ひか)えた三人も走り出す。


「あーくんお待たせー!待たせちゃったかな?」


 ミーアはやや乱れた呼吸を整えながら顔を(かたむ)ける。


「いや、私をつい先程来たところだ」


 矢の補充をするために街を歩いていたが、中々好むようなものを見つけられずに時間が掛かってしまった、そのお陰かそれなりの物を入手出来たので満足はしている。


 各地で展開をしている店のようで、見つける度に矢を買い込むのも良いだろう。


「よかったー」


 ほっと胸を撫で下ろすミーア。


「じゃあいこっか!」


 手を引き依頼へ出発しようとするミーアを止める。


「少し待ってくれないか?」


「どうしたの?忘れ物でもしちゃったかな」


「依頼を始める前に彼らと自己紹介をさせて欲しい」


 ミーアとはある程度話したが、彼らとはまだ(ほとん)ど何も話していない。


「あれ?そうだっけ」


「いや俺達は別に……」


「必要あるか?」


「……」


 思っていた以上に歓迎されていないようだ、どうしてここまで嫌われているのかは分からないが、考えていても仕方のない事なのだろう。


「私からは一応しておこう、名前はアルマ、主にこの刀と弓を使用している、短い間ではあるがよろしく頼む」


「……」


 三人は特に返事をする事も無く、素知らぬ方向を向いてしまった。


「……はぁ」


 ミーアが小さくため息をつく、呆れたような表情はまるでいつもの事だと慣れているという様に見える。


「じゃあ行こっか!」


「そうだな」


 再びミーアに手を引かれ依頼へと出発する。


 (むし)ろこういった|狭量《》な相手と同行する事になった場合の、予行訓練になると考えればいいだろう。


 ――


 ある程度舗装された道から外れ、森の中へと入っていく。


「ゴブリンは今繁殖期で凶暴化してるんだってー」


 ただでさえ数が増えやすいゴブリンは繁殖期になるとその数が倍以上になり、エサ不足で人里に現れることが増えるという。


 さらにその増えたゴブリン達を狙った大型の捕食者達も現れるため、早急に対処しなくてはならない。


 幸いこの辺りのゴブリンが繁殖を行う場所は大体把握されているようで、定期的に連盟が討伐依頼を出しているのだそうだ。


「ミーアちゃん、そろそろ目的地に着くよ」


 剣を持つ冒険者が先程と打って変わり、穏やかな表情で話しかけているが、ミーアの反応はどこか微妙なままだ。


「あーくん準備は出来てる?」


「勿論だ」


 木々の拓けた草原が見えて来た、そこには無数のゴブリン達が塊となっていた。


 周囲に転がった木の実や小型の魔物の亡骸(なきがら)は彼らが作り出したものだろうか、そう考えるならば現在は食事中であり攻め入る絶好の機会と見える。


「ごはん中かな?じゃあ私から始めるね」


 そういってミーアは背中から長杖を外し天に掲げる。


「貫け閃光、『ルクス・ハスルチェート』!」


 杖の先から光の玉が出現し天高く浮かび上がる、それは複数に分裂すると槍へと姿を変えゴブリン達を貫き焼き焦がした。


 ミーアは慌てふためくゴブリンの群れを満足そうに眺めると、こちらに振り向き満面の笑顔を見せる。


「どうかな?」


「ああ、見事な魔術だ」


 彼女も冒険者である以上戦えるだろうとは思っていたが、相当な使い手のようだ。


「えへへ、でしょでしょ?」


 軽く姿勢を下げ刀に手を掛ける。


「では、援護は任せよう」


「任せて!」


 両足に力を込めて走り出しの群れに飛び込み刀を振るおうとするが、突如現れた炎と雷が前方のゴブリンを薙ぎ払うのを見て足を止める。


「おい、お前ちょっとまてよ」


「あんだけ懐かれて、さぞいい気分だったんだろうなぁ?」


「……キエロ」


 いつの間にか近くに来ていた剣士と斧使いと短刀使いが、戦っている最中だというのに前方に立ちはだかる、彼らは一体なにを考えているんだろうか。


 ただ魔術の腕は確かなようで、こうしている間にも周囲のゴブリン達は次々と(ほうむ)られていく。


「聞いてんのか?」


「ミーアちゃんにこれ以上近づくんじゃねえよ」


 彼らは一体何が言いたいのだろうか、確かに距離感は多少近いのかもしれないが。


 それにこちらからではなく彼女の方から近づいてきているのだからどうしようもないだろう、親しくなろうとしてくれている相手に拒否の姿勢を見せることなど出来ない。


「近づいたとして、どうする?」


 そういう場合では無いという事は分かっているが、彼らの真意を探るべく挑発的な姿勢を見せてみる。


「多少は痛い目を見てもらう事になるぜ」


 剣士がこちらに剣を突きつけ敵意を見せる。


「そうか」


 どうにか依頼の間に親しくなれないかと考えていたがその必要は無さそうだ。


「分かったな、この依頼が終わり次第どっかに消えろよ」


「断る」


「何?」


「断ると言った、お前達に決められるようなことではない」


「そうかよ、おい壁張れ!」


 剣士の男が声を上げると短剣使い反応し呪文を唱えだす。


「夜の帳よ世界を閉じろ『テネブラ・レムルズ』」


 世界が闇に区切られた。


「じゃあよ、近づきませんって言わせてやる」


「もう少しで完成するんだからよ、お前みたいなのに奪われてたまるかよ」


 男達は卑しく顔を歪めそれぞれに武器を構える、どうやら本気で一戦交えようとしているらしい。

 世の中にはこれ程までに愚かな者がいるのかと、思わず溜息をついてしまう。


「お前達に聞いておこう、今迄どれほどこのような事をしてきた?」


「さてなァ、たまに歯向かってくる奴が来た時は毎回やってるぜ」


「……そうか、ではやろうか」


 無駄な思考(しこう)を捨て心を静め、刀に手を掛ける、無論斬るつもりなどは無い。

 彼等が考えを改めるように、多少痛い目を見てもらうだけだ。


「意気地だけは認めてやるよォ!」


 剣を抜き放ち飛び掛かってきた男の振り下ろしを横にずれて躱し、気絶しない程度に力を落とした左拳を腹に叩き込む。


「グホっ!?」


 剣士は身体を折り曲げ後方に吹き飛び転がる。


「!?……『ファルガル・ブレット』!」


 斧使いが飛ばす雷の弾を躱し切り裂きながら一気に加速し近づき、掌底を胸に打ち込み吹き飛ばす。


「オゴぅ!」


 その勢いのまま短刀使いまで走り、抜刀斬りの構えを取る。


「ひィ!」


 防御をするために突き出された短刀を根元から切り飛ばし、左手で胸倉を掴み地面に叩きつけ押し付ける。


「ガァぁえ……!」


「今すぐこの魔術を解け、さもなくばその首を捩じ切るぞ」


 胸倉から手を離し首を掴み、圧し折ってしまわないようにゆっくりと力を入れていく。


「わ”わ”がっだ……」


 恐怖の涙に濡れた短刀使いが魔術を解くと、闇の壁が千切れるように消えていった。


『ゲギギッ!』


 男の首を解放し、近づいて来たゴブリンを左手で掴み群れに投げつけ、幾つもの亡骸を完成させる。


「お前達には話を聞かせてもらう、いいな?」


 刀を構えながら倒れている男を見下ろす。


「は、はい……」


 ――

 ――


「お疲れ様、あーくん」


「ああ、ミーアも少し疲れただろう、休むといい」


「うん……」


 ゴブリン達の亡骸から離れ、木陰(こかげ)で空に浮かぶ赤い光を眺める。


 あれはサークルスと呼ばれる物体を射出する機能を持った魔道具によって発生した光であり、処理依頼を受けた者達に依頼の終わりを告げ位置を知らせる物らしい。


 例えば大量に発生した魔物を全て倒したとしても死体がそのままならば魔物が増えるという結果は変わらない、それを防ぐために連盟が依頼を出すのが処理依頼だ。


 死体を解体し素材を集め大地を浄化することが主で、忌避(きひ)され易い仕事だが報酬は高く素材も分けて貰える事からそれを中心に受ける冒険者もいるらしい。


 そして、冒険者の亡骸を回収することも仕事の一つだ。


「これからどうするつもりだ?」


 横に座るミーアへ問う。


「どうしようかな、一人になっちゃったし……」


 既にいない三人のいた場所を見てから、私の肩に頭を預けるミーア。


 彼女は彼らが今迄してきた事を知らなかった。


 ゴブリンの群れを討伐した後、気絶した男達を叩き起こし改めてミーアの前で全てを明かさせた。

 その時のミーアの反応は怒りと困惑と悲しみに満ちたものであり、とても演技には見えなかった。


「思考を奪って好きにさせちゃう薬だって……、あーくんが街に来なかったらミーアはどうなってたのかな……」


「考えたくもない話だな、だがあの三人はもう近づくことは無いだろう」


 ミーアには近づくなと(おど)しをかけておいたが、後程連盟にも報告をする事でさらなる対処が望めるだろう。


「よく考えると良い、話したいことがあれば幾らでも聞こう」


「ありがとあーくん」


 一先ずの方針を決めていると、茂みから独特の装備を身に着けた集団が現れた。


 頭を全て多い隠す兜を被り、そこに繋がった管が繋がった金属の容器を背負っている。

 血が身体に触れないよう対策をしているのか、隙間の無い分厚くも動きやすそうな装備を纏っている。


「処理依頼で来ましたー、死体はあそこにあるのだけでいいっすかー?」


 異彩(いさい)を放つ装備の中から陽気な声が聞こえて来た。


「ああ、よろしく頼む」


「了解っす、よーしお前らやるぞー」


 皆軽口を交わしながら死体を解体し袋に詰めていく、ナイフの迷いない動きを見るに随分(ずいぶん)と手慣れているようだ。


「さて、我々も戻るとしよう」


「そうだね」


 彼等の護衛でもしようかと考えたが(みな)しっかりとした武装をしている、自身の身を護ることは出来るだろう、それに今回はミーアの件もあるのだ。


 背を預けていた巨木から離れるとミーアが立ち上がり隣に並ぶ、その表情に暗さは残っていない、一先ずは大丈夫だと考えて良さそうだ。


「――――――!」


「何だ……」


 辺りを見渡し出所を探すため耳を澄ませる。


「どうしたのあーくん?」


「誰かの叫び声が聞こえた」


「叫び声……?」


 どうやら彼女には聞こえていないようだ、処理依頼の彼らも特に動きはなく作業を続けている。


「――――――!」


「あっちの方か、済まないがミーアは先に連盟へ戻っていてくれ」


「え?」


 声が聞こえていた方へ走る、木々を躱しながら流れていく景色の中から何も見逃さないように目を凝らす。


 森の中を進む程に轟音や叫び声が大きくなっていく。


「あれは……!」


 血塗れで倒れ伏している冒険者を見つけた。


「大丈夫か!……酷い傷だ」


 全身の青い鎧は所々が罅割れ砕け至る所から血が溢れ出し、左手に握った剣は中程で折れ、盾を付けた左腕は在らぬ方へ曲がっている。


 抱き起こし治癒の魔力が掛けられた聖水を掛け綺麗な布を押し当て包帯を巻き付ける、この傷ではそこまでの効果は得られないだろうが何もしないよりは良い。

 口元に耳を寄せるとまだ息をしていることが確認できた。


「たすけ……てくれ……」


「ああ、すぐに街へ連れて帰る……!」


 腕を掴み担ぎ置こうとすると、冒険者の手がある方向を指していることに気付いた。


「仲間が……まだ……、……」


 そこで言葉が途切れてしまう、だが呼吸はまだ続いている。

 袋からサークルスを取り出し天に向かって撃つ、放たれた弾は空高く上昇し青い光を放つ。


「念の為にと救難信号弾を私にも持たせてくれたライラには感謝しなくては、……少しここで待っていてくれ」


 冒険者を木に凭れ(もた)れさせ魔除けの香水を振りまく、これで救援が駆けつけるまでの間を稼いでくれるだろう。


 立ち上がり彼が指した方へ駆け出す、彼の仲間や危険な魔物が居るというのなら急がなくてはならない。



サークルス

銃のような鈎型をした射出機

魔道具なのだが使用者に魔力の使用を求めず、誰でも使えるようになっている。

赤い光は死体回収の報せ、青い光は救難信号を意味している。

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