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武士の子孫、異世界を制す  作者: ふみぃ


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試験を終えて

 


 夜も()け、あちこちで冒険者が酔いつぶれ出した頃、この連盟の長であるガロスがやってきた。


「ようアルマ、あいさつは一通り済んだかよ」


「ああ、だが全員が話をする度に酒を飲ませてこようとするのでな、対応に困った」


「俺ら流の挨拶だ、まあ多めに見てくれや!」


 豪快(ごうかい)に笑いながら、これまた豪快に酒を飲み干すガロス。

 冒険者達が持ってきた乾杯の器を次々と開けていく、彼も随分(ずいぶん)と飲んでいた(はず)だが、話は詰まりも留まりもしないかなりの酒豪らしい。


「これが連盟具だ」


 ガロスから銀色の板を受け取り灯りへ(かざ)すと、光を僅かに反射し(にぶ)く輝いた。


「腕輪型と板型があるが、馬鹿力のお前には板型がいいだろうよ」


 ガハハと笑ってガロスは酒をまた飲み干す。


「アルマ」


 酒を飲む手を止め、真剣な顔つきになるガロス。


「なんだ?」


「おめえは本当に魔術が使えないのか?ゴブリンはまだ分かるが、ボア受け止めたりサイクロプスぶった切ったりよ、魔盲(まもう)の人間には到底できねえぜ?」


 魔盲とは、極稀(ごくまれ)に現れる魔術の使えない人間の呼称(こしょう)だ。


「事実水晶も反応せず、魔物達も(たお)して見せただろう」


「そらそうなんだがよ……、俺も長いこと生きてっから魔盲の奴は何人も見て来たが、おめえみてえなのは一人もいなかったぜ」


「珍しい者達の中でもさらに珍しいという訳か」


 そう考えると今の自分は幸運だったと言えるのだろう。


「そういやおまえは何か目的があって旅をしているらしいが」


「ああ、私は聖国に行きたいんだ」


「聖国ってぇと例の大聖女様がいるって国だよな、なんだおめえ聖騎士にでもなるのかよ」


 聖騎士とは聖国に使える騎士であり、厳しい関門(かんもん)関を突破した者だけがなることが出来ると聞いたことがある。


 父上によれば、聖国には村出身の剣士が居た事もあるようだ。


 だが今回の目的はそれではない、とはいえ詳しく語る訳にもいかない。


「いいや、そういう訳ではないんだ」


「……まあ、深くは聞かねえさ」


 何かを察してくれたのか気まずそうに酒を(あお)るガロス、豪快だが気を利かすところもある男のようだ。


「だが聖国に行くってんならよ、ついでにあの学び舎に寄るってのはどうだ?」


「魔導学術園か」


「そうそれだ、国内有数の頭のいい奴らが集まる場所だ、お前自身のことも何か分かるんじゃねえか?なんで魔術も使えねえのにそこまでの力があるのかとかよ」


「そうだな……」


 己の事を知ればさらに強くなれると初代当主が書に残していた。


 それにリズリーが通っている場所だ、部外者である私が入れるかは分からないが顔を出すのも悪くないかもしれない。

 旅の本筋からは外れるが余裕があるならば寄ってみるとしよう。


「ありがとう、参考になった」


「よせや、真正面から礼を言われると流石にむず(かゆ)いぜ」


 そういってガロスは顔を隠すように酒を飲み干した。


 ――

 ――

 あれだけを酒を飲んでいたガロスが仕事へ戻ると話す相手も居なくなり、することも無くなったため一先ずは依頼を見てみることにした。


「まあそう上手くはいかないか」


 聖国へ近づける馬車の護衛依頼があればよかったが、近場での討伐依頼や採集以来しか残っていないようだった。


「あーくん、なーに探してるのー?」


「ミーアか、実はな」


 いつの間にか懐いていたのか腕に抱きついてきたミーアに状況を説明すると、ミーアは顎に人差し指を当て左右に揺れる。


「護衛依頼かー、確かに移動にお金かけたくない時とか楽したいときには有用だよね~」


 道中を安全に進みたい雇い主と、道中を節約したい冒険者の双方に利のある依頼だと言える。


「でもリー君なら明日からモテモテだと思うよ?あれだけ大立ち回りしてたんだもん、私も思わず好きになっちゃったかもー、なんて」


「だとしたら有難いな」


「……ふーん?」


 行商人達が優先して依頼を受けさせてくれたり、既に護衛依頼を受けている冒険者達が信用して同行させてくれるのならば、あれだけ戦った価値もあるというものだ。


「さらに好かれるようにがんばるとしよう」


「うん、がんばってね……」


「ありがとう、ではまた後でな」


「……調子狂っちゃうなー」


 掲示板に残された依頼書を全て剥がし受付の方へ向かう。


「失礼」


 なにやら疲れた様子の受付嬢に話かけると、ゆっくりとこちらへ振りむいた、どうやらまだ仕事が終わっていないらしい。


「はい、ってアルマさんどうしたんですか」


 先程よりも随分と砕けた口調になっている、この変化は連盟の仲間として認めて貰えた証なのだろうか。


「依頼を受けたいのだが」


 台に依頼書を全て並べていく。


「今からですか!?さっきあれだけ戦ってましたよね……」


「そうだが、何か問題でもあるのか?」


 もしかして一度に受けられる以来の数に制限でもあるのだろうか……。


「いや問題も何も、ていうかなんで全く疲れてないんですか……?それにもう夜も遅いですよ」


「昔から体力と夜目には自信がある、それに依頼主も早く解決して欲しいだろう」


「はぁ……、分かりました、貴方の強さは分かりましたし受注はしますが、くれぐれも無理はしないでくださいね?」


 頭を抱えながらも受理をしてくれた、それにしても。


「今度はなんですか?」


「優しいんだな」


「……なんですか急に、口説いているんですか?」


 呆れたような、冷めたような目で見つめられる。


「見ず知らずの人間だというのに、こうまで必死になる所がな」


「人として当たり前のことです!」


「それもそうだな」


 確かに危険なことをしようとしている者を止めることは誰でもやるかもしれない、少なくとも私は止めるだろうし駄目でもついて行こうとするだろう。


「……なんなのもう」


 受付嬢はついに頭を抱えてしまった。


「では行ってくる」


「はい、行ってらっしゃいませ」


 あまり感情が込められていないように聞こえるが、ちゃんと返してくれるのも優しいからなのだろう。


「そういえば」


 外へ向かおうとしたが、あることを思い出して足を止める。


「……ナンデスカ」


「名前を聞いていなかったと思ってな」


「……ライラです」


「今後ともよろしく頼む、ライラ」


「はい、よろしくお願いします、アルマさん」


 扉を開けると外は暗く星も見えない、普通の人であれば灯りが無ければまともに街の外を歩けなそうな程であった。


 もし森の中に人が残っているのならば、自分の位置を知らせる為に灯りを持っていくべきだろうか。


 (きびす)を返し再び建物の中に入る。


「ライラ、ここでは灯りの貸し出しはやっているのか?」


「何なのよもう!灯りの貸し出しはやってます!」


 ライラが何故か怒り出してしまったものの、無事携行式魔光灯を借りることが出来た。


 その後大量の採取品と討伐の証である魔物の一部を受付に持っていき、再び怒られてしまった。

ガロス

かつては一端の冒険者であったが、功績が認められ連盟の支店長となった。

豪快な一面があるが、人の表情に鋭い所もあり、気を遣うのも上手い。

妻には長生きする為に痩せろと怒られているが、本人は酒が燃料だからと大きくなり続けている

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