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武士の子孫、異世界を制す  作者: ふみぃ


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アルマ=リュウガンジ①

この物語はフィクションです。登場する人物や団体などは実在のものとは一切関係ありません。

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高頻度な更新をしていくので是非ブックマークをお願いします

 

「……すぅ、 ……ふう」


 (まぶた)を閉じてゆっくりと深呼吸を繰り返し、全身の神経と感覚を研ぎ澄ませる。


 左手で(さや)を握り右手を(つか)()え、最後に息を大きく吸い込み、姿勢を(わず)かに下げる。


「フンッ!」


 息を止め、目前にある大木を蹴りつける。


 樹皮(じゅひ)は砕け、衝撃の伝わった枝から()の葉が舞い落ちる。


「はあああああああああ!」


 息を吐きながら鞘から(やいば)()き放ち、不規則に舞い落ちる木の葉が着陸しないように全てを両断する。


「すぅ……ッ!」


 再び大きく息を吸い込み、右脚を後ろに下げると同時に、刀を胸の横の位置にまで引き左手を前へ伸ばす。


「ハァッ!」


 右脚を大きく前方に踏み込みながら、左腕を引きながら右腕を前方に突きだした。


 地面に足が沈む程の踏み込みによって(しょう)じた力が刃を震わせ、大木にめがけて放たれた一刀は樹皮を裂き(みき)容易(たやす)容易く貫いた。


 そして流れるように刀を引き抜くと同時にその場で体を回転させ、勢いのままに太い幹へ刃を走らせた。


 青年は僅かに刃を確認してから鞘に納めると、大木を裏拳(うらこぶし)で軽く叩きその場を離れる。

 大木は軋むような音を立てながら、青年の元々立って居た場所に倒れていく。


「悪くない……」


 大きく息を吐き緊張の糸を(ほど)く、布で汗を拭き取りながら空を見上げると日は沈みかけ赤く染まっていた。


「少々熱中しすぎたな……、急げば夕食に間に合うか」


 木に立て掛けてあった弓と矢筒(やづつ)を背負うと、倒れた気に(つな)を結び付けそれを掴み走り出した


 ――――


「おーい、アルマー!」


 長い期間の往復で踏みならした道を歩いていると、聞き馴染(なじ)みのある声が聞こえて来た。


「……ん?なんか聞き覚えのある引き摺り音?」


「私に何か用事かリッド」


 聞こえるようにやや大きな声で返事をしながら近づくと、同じ年の青年リッドがビクりと震え、勢いよく振り向いた


「うわっ!そこにいたのか!……ってなんだその木!?」


「森で切って来た、(まき)置きに持っていく」


「相変わらずの馬鹿力だなまったく……、てか最近修練場で見ないけどいつもどこに行ってるんだ?」


 やれやれといった表情のリッドが横に並び歩き出す。


「今は森の奥に場所を移し個人で修練を積んでいる」


「森の奥?どうしてまた」


「あそこならば全力を出そうとも誰にも迷惑は掛からないからな」


 数年前までは村の修練場などを使用していたが、歳を重ねて力を増していく程に行く事も少なくなり、今では森の中が修行の場となっている。


「まあ凄いもんなぁ、お前のアレは」


「普通で無いとは自覚している」


 一度全力を出した時には、周囲の人間には引かれていたとリッドが教えてくれた。


 とはいえどそれを辞めるつもりも無い為、こうして人が来ることのない森奥(もりおく)へ時間を掛けて往復を続けている。


「それにしたって林の所にも修練場はあるんだからそっちを使えばいいだろうに」


「あそこは兄上がよく使用しているからな」


 村には幾つも修練場があるとはいえ。基本的にそこを使うことは無い。


「兄上って言うと……、あっちの方か」


 兄は二人いるがどちらともあまり親しくはない、とくに次兄(じけい)はどうにも私の事が気に入らないという様で、どのように歩み寄ればよいのかと半ば(あきら)めた状態だ。


「私が居ると気を悪くする、なるべくならば不和を起こしたくはない」


「そりゃそうだけどさ」


 私自身あまり気にしてはいないが、周囲の人間に負担(ふたん)が掛かるのは忍びない。


「いずれ向き合う事もあるだろう」


「お前がそれでいいんなら俺からなんも言えないけどさ……」


 父上の事を思えばここままで良い訳では無いのだろうが、こればかりは私だけではどうしようもない事だ、たとえ私に原因があるとはいえど。


「それよりも私の名を呼んでいたが、何か用件があったのか?」


「あーそうだった」


 リッドは立ち止まると身体からこちらへと向き直る。


師範(しはん)が呼んでたぞ、何やら急用だとか」


「父上が?」


 何があったか分からないが、すぐに向かった方が良いだろう。


「伝言ありがとう」


「おう、じゃあな」


 木に巻いていた綱を解いて回収し足に力を込めて一気に走り出す、この距離であればそう時間は掛からない。


  ̄ ̄ ̄ ̄


「失礼します」


 部屋の戸を開け中に入ると視線が集まる、どうやら他の面子(めんつ)(すで)(そろ)っていたようだ。


(おせ)えぞアルマ」


 次兄であるジリアンに苦言(くげん)(てい)される、傲慢(ごうまん)不遜(ふそん)を人の形にしようだと周囲には言われているそうだ。


 だがその実力は確かであり、長身と十文字(じゅうもんじやり)の長さを活かした戦いは中々に厄介だ。


「何分距離が遠かった物で」


 いつかは本気での手合わせをしてみたいものだ。


「まあいいじゃないか、アルマも座りなさい」


「はい父上」


 父上の言葉に従い空いている敷物(しきもの)に座り、腰帯(こしおび)から外した刀を身体の左側に置く。


「さて、これで全員揃った訳から早速用件を伝えるよ」


 『ミリザレフ=リューガンジ』、リューガンジ家現当主にしてヤナギ流剣術師範代(しはんだい)、私の師であり父親だ。

 刀、槍、弓、全ての武器を使いこなす持つ私の憧れの一人だ。


 今よりもずっと幼かった頃に何度も勝負を挑んでみたものの、結局一度も勝つことは出来なかった記憶がある。


 あの時から成長した今はどれほど通用するのかを確かめてみたいのだが、どうやら近頃は忙しい様でその機会が中々訪れてはこない。


 その隣では次期当主であり長兄であるガイウスが座っている、腰ほどまである青みがかった黒髪を揺らし流麗に戦う姿が非常に美しいと村内で評判らしく、彼が主に使っている修練場は他よりも女性の数が多いようだ。


 魔術と剣術を合わせた彼の戦闘法は相当な練度であると私も知っているのだが、私が何度も試合を申し込もうとも全く引き受けてはくれない。


 理由を聞いた時には『殺し合いになってしまう』とだけ、双方ともそこまでの戦闘狂では無いと思っているのだが、言葉を発したガイウスの瞳には嘘が見えなかった。


 それ以来、一度も試合を挑めずにいる。


「近々この道場でイルマ騎士団との合同訓練が行われることになってね、君達には騎士の方達との模擬戦をお願いしたいんだ」


 『イルマ騎士団』、この国の首都であるイルマの名を冠した騎士団だ。


 日夜厳しい修行を行っているであろう彼らとの合同訓練ならば、強者へと至る道のさらなる糧を得られるだろう。


「といってもここもそんなに広くないからね、今回来てもらうのは希望者の中から選抜された人たちだから君達の修行にもなるはずだよ」


 それを聞いてより一層楽しみになった、強者との戦いは己を強くすることにおいて大事な要素の一つだ。


「戦ってくれる人が来るの?やったやったー!」


 隣で小さな体躯ながらに、自分の背丈よりも長い刀を持った少女が喜び飛び跳ねている。


 彼女の名は『サリア』だと父上から聞いている、村の修練場を使っていた頃に数度見かけた事がある。


「ふふっ、きっと君の期待に沿える人が来てくれるよ」


「話は終わりか?それだけならわざわざ呼ぶ必要ねえだろ」


 ジリアンが気怠そうに立ち上がると、部屋から出ようと戸に手を掛ける。


「ジリアン、話はまだ終わっていない」


 ガイウスが鋭い視線を向けジリアンを(たしな)める、その際に放たれたとてつもない圧力は見事と呼ぶ他にない。


「ああ?」


 だがジリアンはその圧力にまったく動じることもなく、(むし)ろ更なる圧を放ちガイウスを睨み返した。


 正に即発(そくはつ)といった様子だが、この二人が顔を合わせると大抵はこうなる為、この場に呼び集められるような人間にとっては慣れたものだろう。


「勿論それだけじゃないよ、今回は騎士団長も視察に訪れるそうだから」


 『騎士団長』の単語が出た途端にジリアンは目を見開き視線を父上に向け、先程まで発していた圧を綺麗に消しさった。

 それを見たガイウスも同様に圧を収め再び(まぶた)を閉じる。


「これは君にとっても価値があるものだと思っているよ、ジリアン」


 ジリアンもそう判断したのか再びドカリと座りなおす。


 何でもジリアンにとって騎士団長という人間は憧れの存在らしく、いずれ彼の右腕として副団長になることが目標らしいとはリッドの談だ。


 あまりそういうことは吹聴(ふいちょう)してやるなとは言っておいたが、ジリアンの態度を見れば大抵の者はそれを察することは出来るだろう。


「それともうひとつ、近隣の村近くで賊を見たって報告があった」


「賊が?」



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