本田弘之「言語としてのピクトグラム」まとめ
・「ピクトグラム」…視覚的に意味を伝えるシンプルな絵記号。
「駅でサイン掲示を考える」
・「公共サイン」…不特定多数の人が利用する公共性の高い標識・案内。
「公共サイン」、特に「空港や鉄道駅といった公共交通機関の施設」を調査
…「空港や駅は、世界のどの場所でも共通する役割を持った施設なので、比較対照がしやすく、しかも、その地域の住民だけではなく、世界各地からの旅客が通過する場所なので、その地域の言語政策や、言語障壁への問題意識が明確に表れると考えたため」。
→「日本のサイン掲示の特徴がかなり明瞭に」
「日本の「多言語サイン」と、それに対するヨーロッパの「ピクトグラム」の使用の差」
◆「日本の「多言語サイン」
「近年、急速に多言語化が進み、一般的には、標準モデルの四言語で書かれたサインが広く見られます」。
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「このような状況について、「日本もグローバル化が進んで、やっと欧米に追いついてきた」と考える人は少なくない」。
(しかし)「実は、日本のように多言語サインが採用されている国・地域は、むしろ珍しい」。
◆外国の例
・「ヨーロッパでは、このフィンランドの例のように、自国で使われている言語のみを表記するという例が少なくない」
・チェコでは「チェコ語のみが表記」。
×「ヨーロッパのように多言語・多文化が共存し、さらに移民を数多く受け入れている地域では、きっと公共サインの多言語化が進み、将来の日本が進むべきモデルを見いだすことができるにちがいないという考えは、完全に「思い込み」にすぎませんでした」。
…「現在EUは、加盟国が申請した言語(ただし申請できるのは、一国につき一言語)を、すべて「EU公用語」としています。もし多言語化を進めるとすれば、そのすべてを表示することが(少なくとも努力目標として)求められるわけですが、それは物理的に不可能でしょう」。
〇「特定の言語(文字)に依存しないピクトグラムの使用」
・「自国語のみのサインの例」…「「ピクトグラム」という、言語に代わる記号が文字の横に添えてある」
・「ヨーロッパでは、ピクトグラムの使用によって、その地域で使われている言語を解さない人たちに情報を伝えることが一般的に行われています。つまり写真1と2は、自国の公用語+ピクトグラムという「多言語表記」だった」。
〇「ピクトグラムの使用によって、多言語・多文化社会につきものの言語障壁を乗り越えようとしている」
「どのような言語を話す人に対しても等しく情報伝達をするほとんど唯一の方法が、「ピクトグラムの使用」なのです」。
「ピクトグラムはイラストではない」
「ピクトグラムによるサイン掲示をするときに気をつけなければならないこと」
…「ピクトグラムは「言語」であり「挿絵」ではない、つまり、文字によるサインを補完・装飾するために使うものではない、ということ」
×「ピクトグラムの挿絵化」
…「ピクトグラムが文字を飾るためのイラスト代わりに使われてしまっています」。
「ピクトグラムがサインになっておらず、文字情報の装飾の役割しか果たしていない」
〇「ピクトグラムだけでは伝えられない情報を、文字によって書き加えなければならない場合」
…「地名(通りや広場の名前)のような固有名詞の表記」
◆ピクトグラム表記を採用する場合のルール
①「「固有名詞的なもの」以外の文字表記は、極力掲示すべきではない」
→「そのルールが決まっていれば、その土地の言語がわからない人でも、そこに書かれている文字は「地名だな」と推察できます」。
②「ピクトグラム表示を徹底させようと設置者が努力することが、利用者目線の「利用しやすい施設」を作っていくことに貢献する」
◎「ピクトグラムを情報伝達の記号、すなわち「言語」と同等のものと見なし、それを最もよく機能させるためには」→「どのように作図し、どこに掲示し、どれだけの文字情報(固有名詞など)を添えればよいか(日本語の場合は、仮名やローマ字などの「表記法」も考えて)、という手順で検討していけば」よい。
◆あとがき
東京オリンピックの開会式で話題となったピクトグラム。各種目のピクトグラムが、生身の人間によって次々にテンポよく再現される面白さ。今もユーチューブで見られます。
東京2020オリンピックスポーツピクトグラム - YouTube
Breathtaking Pictogram Performance at Tokyo 2020 Opening Ceremony | #Tokyo2020 Highlights